一般書籍

風がおうちをみつけるまで

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「かぜがおうちをみつけるまで」
話 ボブ・サム
訳 谷川俊太郎
絵 下田昌克
スイッチ・パブリッシング 本体1600円


 今は亡い星野道夫のエッセイにたびたび出てくるボブ・サムの物語詩です。彼はアラスカの先住民族クリンギットの語り部といわれています。
 いきは小さな風です。これはむかし、気が遠くなるほどの昔、風にも心があって、それがだんだん大きくなりました。それに北極の寒さが風をつかまえました。氷河期です。風はひとりぽっちで南にくだり、人々に家にいれてほしいとたのみますがいれてもらえません。やがて、氷河期が終わり、少しばかりの人と風が残ったけれど風はもう元気がなく、やがて小さないきになってしまいました。ひとりぽっちの風は貝殻に入れて欲しいとたのみます。だから貝殻に耳をつけると中にはいっているやさしい風のいきが聞こえます。
 海の風、貝殻のなかの風、くじらが満天の星を仰ぎ見て風の音を聞いています。(とても絵がいい)最後の一本の木の上で風の音を聞いている鳥、そして、作者はどんなものにもこの世界にうちがある、この世界はすべての生きとし生けるものが分かち合う<おうち>なのだとーあとがきー語っています。
 

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傷はぜったい消毒するなーその1

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「傷はぜったい消毒するな」
ー生態系としての皮膚の科学ー
夏井睦・著
光文社 本体840円



 形成外科医である著者は既に、『痛くない!早く治る!キズ・ヤケドは消毒してはいけない「うるおい治療」のすすめ』という分かりやすい実用書を、主婦の友社から出しているが、今回の新書は、副題に「生態系としての皮膚の科学」とあり、その理論書です。
 従来の「消毒して傷を乾かす」治療は、傷が治るのを妨害するだけだ。「消毒しない、乾燥させない」だけで傷が速やかに治ってしまう。著者はそれを「うるおい(湿潤)治療」と呼んでいます。
 消毒薬は、病原菌やウイルスを殺す前に人体細胞を殺し、皮膚常在菌まで殺してしまう。また乾燥させると細菌の増殖は止まるが、それ以前に皮膚の細胞(真皮や肉芽)が乾燥で死んでしまう。それがカサブタです。ですから傷口の浸出液を乾燥させないようにすれば「食品ラップ」で覆っただけでも治るそうです。そもそも傷口に細菌がいただけでは化膿しない。(細菌はどこにでもいるのだから)それが増殖できる場(体液が溜まって澱んでいる血腫や膿やカサブタ)がなければ化膿しない。そういう場は血管との交通がないから、免疫細胞も抗生物質も届かない。消毒薬は血腫のタンパク質と結合して細菌に届かない。つまり血腫や膿を取り除き、傷口を乾燥させなければ、消毒も抗生物質も不要で、カサブタも出来ずに治ってしまう。この治療法は、傷にもヤケドにもアトピーや床ずれにも効くそうです。
 ではこの実証された治療法がなぜ普及しないのか?まず皮膚科は、皮膚内科医であって、皮膚外科医でないと指摘します。それなのに皮膚外傷(擦り傷やヤケド)を分担させられてる。こういった首をかしげる現状を導入部に、消毒して乾燥させる間違いが、なぜ起こったか、医学史をさかのぼっていきます。
 つぎに、傷薬(クリーム)に含まれる界面活性剤が、人体の細胞膜を破壊すると指摘します。皮膚科の教科書にも「クリーム基剤の軟膏は健常な皮膚にのみ使用する」と書かれている。それなのにヤケド治療用のクリーム基剤の軟膏が作られてる。むしろ薬剤(主剤)なしの油脂性基剤(白色ワセリン)を塗るほうがいい。白色ワセリンは炭化水素の分子量が小さいために抗原性(アレルギーを起こす性質)を持たず、常温での反応性が乏しく、生体との反応もほとんどなく、皮膚の乾燥を防ぐのに最適だそうです。
 一方、界面活性剤は皮膚常在菌の細胞膜を破壊します。つまり洗剤による過度な手洗いは常在菌を殺し、バリアーのなくなった皮膚は、病原菌に直接さらされます。ーつづくー
         (高橋峰夫)

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それでも、日本人は「戦争」を選んだーその2

ー昨日の続き

 とここまでが私見ですが、肝心の日本の戦争がよく掴めない。と思ってたら、ぴったりのこの本がありました。著者は07年の年末から08年の年始に、足掛け5日間の授業を栄光学園でしました。歴史研究部を中心に中1から高2の17人の生徒相手の講義録が、この本です。先生と生徒の応答がいい授業です。他の生徒相手でも可能でしょうが、特に栄光学園の生徒は歴史知識が豊富なので、先生の望んでる事項がパッと頭に浮かびます。おかげで中高生相手とは思えない深い歴史考察がされてる。前提の知識さえあれば、他の生徒でも考察は可能でしょう。
 そこで「そうするためには、時々の戦争の根源的な特徴、時々の戦争が地域秩序や国家や社会に与えた影響や変化を簡潔に明解にまとめる必要が生じます。その成果がこの本です」
 また「もし自分がその当時生きていたら(国家の)そのような説得の論理に騙されただろうか、どうも騙されてしまいそうだ、との疑念があったからです」とも言ってます。
「はじめに」では「小選挙区制下にあっては、確実な票をはじきだしてくれる高齢者世代の世論や意見を為政者は絶対に無視できない」「若い人々に光をあててゆく覚悟がなければ公正には機能しない…教育においてもしかり」とも言ってます。そうであれば高齢者を敵に回した時点で、自公政権の崩壊は決まっていたのです。
 本文も目から鱗の本です。ぜひ読んでみてください。
        (高橋峰夫)

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それでも、日本人は「戦争」を選んだーその1

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それでも、日本人は「戦争」を選んだ
加藤陽子
朝日出版社 本体1700円




 
 本を紹介する前に私見を述べます。
 戦争はなぜ起こるのか?は、難しい問題です。でも現代の戦争は、昔の、封建時代までの戦争とは違うような気がします。それには、国民国家が絡んでるらしい。いや、今の国家(つまり国民国家)は、当たり前のものじゃなくて、ごく新しいものらしい。だから戦争に、イデオロギーやナショナリズムが絡むようだ。
と言うような事が、遅まきながら私にも分かってきました。そこで国民国家の勉強を少しづつ始めました。さて国民国家には、国民と国語と国軍が必要です。国語は母語とは違います。いわば人造語です。『国語元年』ですね。だから国語の教科書は、道徳の教科書を兼ねるんですね。日本は明治維新で国民国家に衣替えしました。 これが、すんなりいった、世界史的にも稀な例らしい。        
 じゃあそれまでの国家はどんなものだったのか?これが、極論すれば国家はなかったらしい。例えばドイツは、ナポレオンが作ったと言われます。つまりナポレオンの再編前のドイツには 314の領邦国家と1475の帝国騎士領があったそうです。
 日本も江戸時代は、大小様々な大名領があり、その間に天領が点在してました。越後の国とか武蔵の国とかは、国としてまとまってた訳ではない。世界も、日本の中にある様な状況だったらしい。ですからヨーロッパの王族同士の結婚で、領土の国同士がくっついたり分割したりする。つまり領民には、国民という感覚はなかった。
 アメリカ合衆国は誤訳だ。合州国が正しい。と言ったのは本多勝一ですが、そんなバカなと言ったのが高島俊男です。江戸幕府が万国図を翻訳しようとして一番驚いたのが、アメリカという国には王様がいなくて、庶民が自分らの代表を入れ札で選ぶ、と言う事です。つまり当時、民主制の国はアメリカだけだった。だから一番の特徴を合衆国と訳したのです(その前に清国が合衆国と訳してて、それを取り入れたらしい)大工の棟梁らが集まって代表を選んでる様に、見えたのでしょうか?
 さてアメリカの独立革命は、イギリス女王の財産の簒奪です。その後のフランス革命はパリ市民が、ルイ王朝の財産を簒奪した事になります。でもパリ以外の人々が、自分達はパリ市民の財産だと認める訳がない。では王朝の領土・財産は誰のものか?ここで、みんなのものという考えが出てきます。「みんなはみんなのものである」というのはよく分からないが、つまり「国家は国民のものであり、権利において平等である」という事で、国民国家が意識されます。
 さてナポレオンは革命の輸出を始めます。革命への干渉に対する、自衛の為の侵略なのでしょうが、周辺国が驚いたのが、国民国家は戦争が強いことです。国軍の強さという事でしょう。その為に、植民地以外の国家は(日本のような立憲君主制も含めて)国民国家に、体制変換します。一番遅れたロシア帝国は第一次世界大戦中に共産革命に見舞われます。ー 明日に続く
               高橋峰夫

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ゆびさきの宇宙

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「ゆびさきの宇宙」
福島智・盲ろうを生きて
生井久美子・著
岩波書店 本体1800円


 先日の休みでひたすら読んだ本のなかにこの本がある。けれど、すこし残ってしまいやっと今日読了できた。
 この本のオビには福島智のことを「世界で初めての盲ろうの大学教授」と書いてある。1962年神戸生まれ、父親は中学校の社会科教師、三番目の子どもでよく病気をした。1歳の頃目の異常が見つかり、白濁してきて緑内障とも虹彩炎ともいわれ3歳で右目失明、4歳で右眼摘出手術、けれどとてもわんぱくな元気な子どもだったとのことである。そして、いじめにあい、また難聴がわかり6歳の時は左目も失明、1981年頃にはほぼ全盲ろう状態になった。孤独と絶望を救ったのは母親が考案した「指点字」と「指点字通訳」の実践で、全盲ろう者としてはじめて大学に進学(年表による)する。
 著者は朝日新聞記者、あとがきにこんなことが書かれている。「伝えかったことはただひとつ。この世にいま、「福島智」という人が生きていることです」。新聞取材をもとに追いかけ続けた。どんな困難にあっても自分の人生をあきらめない、なげださない、へこたれずに、ありのままに生き続けることこそ、冒険!と気ずかされていったとのことが、熱い思いで書かれている。
 福島智は一番の苦痛は「人とコミュニケーションができない」こと、コミュニケーションは魂にとっての酸素、水という。「こどもたちへ」という章がある。そこにこんなことが書かれている。生きる上での力を与えてくれたものに1、ユーモアのセンス2、常識にとらわれない自由な発想3、自分が生きているのはなにか必ず意味があるにちがいないと確信すること。子どもたちだけでなく、困難さに立ちすくんでいる人たちへの大きな助言だと思う。

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「王さまと九人の兄弟」の世界

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「王さまと九人の兄弟」の世界
君島久子
岩波書店 本体1700円




 先日のシルバーウィークとやら、いろいろとあって出かけ損ねたので、2日間は本を読んですごした。しかも児童書は一冊も読まずに、積んであった本をひたすら読む、そのうちの一冊がこの本だった。
 私は赤羽末吉さんの大ファン、一度来ていただいておはなしをお聞きして、ますます尊敬するようになった。日本の文化を深く描いてある本はもちろんのこと、モンゴルや中国の広い世界を描いたものも大好きだ。私にとって、中国は近くて遠い国、広く壮大な国、そして、人々は元気というか激しく、エネルギーに満ち満ちている国、そして、「西遊記」のなかにでてくるふしぎな者たちがいる不思議な国だ。
 「王さまと九人の兄弟」は中国の昔話を絵本にしたものである。作者の君島久子さんはこの絵本の誕生についてこう書いている。”それぞれの特技を発揮して、王さまの押しつける無理難題をのりこえていく、あっぱれな兄弟たち、おもしろくて力づよい兄弟たちの元気の秘密はどこにあるのでしょう”・・・。この本の中に書かれているようにこの話は雲南省での調査団によってイ族から再話されたものがもとになっているとのこと、それを絵本にしたのはその頃の岩波書店の編集者いぬいとみこさんが”こどもたちに元気をあたえるお話”をいうことで民話集「白いりゅう黒いりゅう」がだされ、赤羽末吉さんがそれを大乗り気で絵本にしたとのことだ。たぶんその調査団のようすをもとにしての講演(スライドも見た)を国学院大学で私は聞いている。その時の講演は「西遊記」のことだったのだが、とても興味深く聞いた。ちょうど福音館書店刊の「西遊記」を読んだり「孫悟空の誕生」(玉川大学出版部)を読んだ後だったので、また、講演もユーモアいっぱいでとてもおもしろかった。
 この本は一部は地理的に、二部ではそれを歴史、時間をさかのぼって書かれている。中国は広い、その広い国土と深い文化のなかで類似しているお話を述べながら、中国という多民族の国の民の願いのあらわれたものと、互いの個性のちがいをみとめあいながら成長していくことの意味をのべている。
 もうひとつ私にとってやっと納得できたことがある。同じような絵本「シナの五人きようだい」のことだ。物語のはじまりといい、最後のオチといい、村人たちの立場は権力者と同じ立場になっている場面など、私はとてもなっとくがいかなくて、あぁ!「シナの五人きようだいは」描かれているのは中国であり、中国人なのだけれど、フランスやアメリカの国の一遍を見る思いだったし、どうしてこの絵本がもてはやされるか正直わからない。しかも、「王さまと九人の兄弟」という絵本があるのに。ここでは「浜辺の五つ子」と「シナの五人兄弟」がくらべてくわしく書かれている。それにしても同じようなお話が中国にはほんとにたくさんある。
 このような地味な本が、異なる国や文化を掘り起こし、平和への架橋になるのだとあらためて強く思った。
 

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続きがあった「獣の奏者」

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「獣の奏者」探求編
「獣の奏者」完結編
上橋菜穂子 
講談社 本体各1600円
      
 

 じつをいうと誰しも1・2巻でこの物語は終わりと思っていました。それなのに突然夏休みの真っ盛りに出版されて驚きと大きな驚きがながれました。
 そんなわけで書店には山積みのなか、買った人読んだ人もいる一方、やっとこれから読む状態の人も多いのであまり筋は書かないことにします。
 2巻から11年後の話、闘蛇村で突然牙が大量に死ぬことがおこり、エリンは大公にその原因を探る命令をうけます。原因は卵詰まり、特滋水が関係があることを見つけます。なおも原因を探っていくうちに秘密裏に埋もれていたことを知ります。それはエリンの母とつながりがあることでした。一方はるか東方の隊商都市の領有権をめぐって戦いがおこります。エリンに科せられたことは、民を救うため、王獣を武器にして制覇、そして同盟をむすび民を救うという政に従うということでした。エリンにとってそのことは母の秘密を知ることにもなります。そして、それゆえに迷いながらも戦いのなかに突き進んでいきます。
 3・4巻はエリンというより息子のジェシの物語ともとれるかもしれません。夫イアルとの物語ともとれるかもしれません。いま風にいえばエリンは王獣を育てるため何もかも犠牲にした。それは、ある意味では母の民たちがたくさんの人たちの死のうえに、避けた智恵だったともいえるのですが、エリンはそのパンドラの匣を開けてしまったのです。王獣を愛するうえに。
 現代の社会のなかで作者の意味するところを、しばらく考え考え読みすすめました。そして、読みすすめるうちに、エサルの存在がエリン以上に私のなかで意味をもってきました。もうひとつの生き方です。


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ニセモノ食品作り最前線

  食品添加物は善か?悪か?うまく付き合うには?

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「ニセモノ食品作り」最前線
ー激安の裏に「添加物」!!
別冊宝島1519ノンフィクション
宝島社 定価980円

 安い食品の代表といえば、即席麺やコンビニのおにぎりでしょう。助かりますし、その値段と品質は「企業努力」で維持されています。そのために「食品添加物」が使われているのは当然でしょう。だいいち添加物なしの食品では、常温下でたちまち腐敗してしまいます。添加物な 別冊宝島では「食品のカラクリ」をシリーズで出しており、その11に『「ニセモノ食品」作り最前線』があります。この本の特徴は、理科の実験さながらに、食品を実際に添加物で加工し、図解までしていることです。監修は「ドクターくられ」となっており、薬理凶室のメンバーです。薬理凶室は「第一線の先端技術を民生品で代用する方法を数多く編み出したり、そういった技術を分かりやすく伝えることで定評があり」数々のアブナイ実験を手掛けているグループです。                        
 この本に紹介されている加工食品は、誰でも作ることができます。こういった実験は学校教育でも取り入れられ、NHKの高校講座の家庭科でもやってました。それこそラーメンスープ、ジュースから、しょうゆ、おにぎりごはんまで載ってますし、功罪も解説してます。驚くのが、ジュースの糖分の量です。 500mlに47gペットボトルの1〜2割が砂糖か、それより安い果糖ブドウ糖液糖です。そのままでは甘すぎて飲めませんが、実験でクエン酸かリンゴ酸や酒石酸を加えると、おいしいジュースになるのだそうです。即席麺スープで驚くのは塩分の量です。 100mlに2.5g〜3gで塩辛くて飲めないが、グルタミン酸を 0.03%加えると、塩味がマスキングされてマイルドになるのだそうです。塩酸にも触れています「強酸でありながら揮発し…加熱すれば除去」できるので、缶詰用のみかんを投入するとセルロースが加水分解し甘皮が溶ける。加圧すると粒と粒をつなぐセルロースも分解でき、ツブツブみかんができる。「因みに胃袋の胃液も、塩酸である」
 「化学調味料不使用」食品には「たんぱく加水分解物」が入ってます。アミノ酸が長く繋がったたんぱく質を、塩酸と高圧で加水分解すれば、羽毛からでもチキンエキスが作れる。SF映画の食品工場が可能なのです。しかし「塩酸で処理をすると、一体どれだけの塩素化合物が出来ているのかよく分からず」「なにせ加工食品のほとんどに<たんぱく加水分解物>は使われてるので…ちりも積もればけっこうな量となる」「むしろ化学調味料のほうが安全性が明確にされてる」まったく、うかうかできません。
 「ならばどうすればいいのか?」「あとがき」には「逃れられないのであれば、知識を付けて、適度にうまく付き合っていくという他にありません」とありました。  
         高橋峰夫

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反戦詞華集

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「詞華集 生きていてほしいんです」
ー戦争と平和
田中和雄・編
童話屋 本体1250円




 あたらしい詩文庫の一冊はタイトルどおり41編の反戦詩がはいっています。トップは谷川俊太郎の書き下ろし詩「戦争と平和」です。やめられない自分にうんざりしている夫の戦争、妻の平和は今日もそんな夫と暮らしていて、私を大切にしてくれないと夫の戦争に腹をたてています。爆撃機がそばをよこぎりながらもつづく日常。夫は心のなかでは、生まれて来る子どもは母親似であってほしいと思います。作者特有の皮肉と静かな怒りををこめて書かれた反戦詩は現代の日本、そしてわたしたち自身をあらわしているのでしょうか。<水ヲ下さい 水ヲ・・・・>あの日からずっと渇きつづけているのです(「渇き」谷川俊太郎)より。
 夏がくると「戦争と平和」に関したことが湧き出てきて溢れます。私は以前はそんな世の中を嫌になり、嫌になっている自分自身が嫌になっていたけれど、近年、そんな気持ちをきちんと意識しようと思っています。いつもは毎日の生活に取り込まれてバタバタとしている、せめて夏がきたときには、いま自分はどんなところにいるのか確認しようとおもいます。

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神去なあなあ日常

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「神去なあなあ日常」
三浦しをん
徳間書店 本体1500円



 私は林業のことはまるっきりといってもいいほど知りません。この物語の主人公平野勇気も特別希望したわけでもなかったのですが、この神去村で働くことになります。高校を卒業してからも、取りあえずなんとなく生きていこうと思っていた勇気は学校と親の思惑のまま、神去村に来てしまいました。
 特にひどく逆らおうと思っていたわけでもないのですが、”まあまあ”この神去村でいうと”なあなあ”で、とまどい、ブツブツいい、とうとうとてもやってられないと思い逃げ出してしまおうとします。そんな横浜生まれ、育ちの現代の若者の一年の物語です。
 木を切る、植林、育てる、林業に代々たずさわってきた人たちと暮らしがとても豊かに書かれています。一本の木を切る、どうやって、どういうように切ったら木にも人にも良いか、それだけでなく神さまにも良いか、計り知れない自然の力と共存していく知恵と経験と言葉(なあなあはいろんな意味があります)、神隠しやオオヤマヅミさんの祭り、山火事などハラハラ、ドキドキとします。ちょっぴり恋がからみ、結婚、老人、古いしきたり、かなりエンターテイメント小説としてもおもしろく、ヤングアダルト向きの骨太な小説です。それは著者の綿密な資料の裏付けがあるからでしょう。
 そういえば、昔から国を支え、生活を支えてきた職業を舞台にした若い人向けの小説があまりみられません。この本を読んでいて、日本の基盤産業、そして物づくりのなかで働いている人たちの現代の物語がほとんどないに等しいのに気がつきました。個性豊かな人たちがいる、いたはずです。
 この小説がきっかけになって出版されると良いのにと望みます。

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