児童書

2017年6月 7日 (水)

たんけんクラブ シークレットスリー

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「たんけんクラブ シークレットスリー」
ミルドレッド・マイリック/ぶん
アーノルド・ローベル/え
小宮由/やく
大日本図書 本体1400


おれの名前はビリー、ともだちのマークがとまりにきて海辺で遊ぶことにしました。砂浜をみるといろいろなものがあって、ビリーは砂浜に捨てられていたみどりいろのビンをみつけます。ビンの中には手紙が入っていて、そこにはへんてこな字が書かれていました。マークは見事に謎解きをします。むこうの島から投げ込まれたもののようで、それによると手紙を書いたのはトムという子どもらしい。ビリーとマークはもちろん返事をだそうと、それも暗号で書かれた手紙を汐にのせて返信します。そして、ふたりで「たんけんクラブ」をつくりました。もちろんクラブへ誘う暗号の手紙です。ビンはちゃんと届くでしょうか。
 幼い子どもたちの冒険物語、冒険というより探険と行ったほうが良いか、ドキドキ感もありクイズをつくったり、(暗号を考えるなんてすごい!)ただ感情だけの物語でなく、具体的に書かれた友情物語として読むことができます。ところで昔、子どもだった人は良くこんなことをして遊びました。今はどうなのかしら?
 この本は「こころのほんばこ」というシリーズでだされているものです。「こころのほんばこ」というのはあんまり好きでないけれど、どれも読みやすく、挿絵も良いし、ちょっと楽しみなシリーズです。


2017年5月27日 (土)

ちょっとおんぶ

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「ちょっとおんぶ」
作 岩瀬成子
絵 北見葉胡
講談社 本体1350円


つきちゃんには動物の声がちゃんと聞こえます。つきちゃんが言ったことも動物につたわります。ある日家に遊びにくるいずみちゃんを驚かそうと物置のかげに行こうとしたら履いていたお母さんのサンダルが大きすぎて転んでしまいました。地面の下から声がしたので掘ってみたらだれかが何かを言っています。つきちゃんに動物たちの声が聞こえるといってもだから冒険がはじまるわけではありません。たとえば、表題の「ちょっとむおんぶ」、月夜に誘われて外に出たつきちゃんはフクロウの鳴きまねをしたら、木のうしろから子グマがでてきて”くたびれたのでちょっとおんぶ!”といわれてしまいます。おんぶして小学校へ行ったりいっしょに歌をうたったり、そして、迎えのバスに乗って子グマは行ってしまいます。そんなちいさなおはなしが7話オムニバスの形式のようにはいっています。このお話にでてくるつきちゃんと話をした動物は見返しにみんな描かれています。ひとつひとつのお話も結論がなくだからどうしたということでなく、話をしたということだけが淡々と書かれています。そういえばこのつきちゃんくらいのこどもは誰しもこうやって動物たちと話ができるのかもしれません。この時を大切にしたいと思います。ひとりで本を読むということは本を介していろいろなものと話をしている、いろいろなものたちの話を聞くことなのです。最後の物語ではつきちゃんのお父さんは単身赴任?で日曜日の夜出かけて土曜日に帰ってくると書かれています。とても気になる話です。
 あなたは今日風の話を聞くことができましたか?ペットの話を聞くことができましたか?それになんといってもお父さんやお母さんや友だちと話ができましたか!

2017年5月19日 (金)

シノダ!指きりは魔法のはじまり

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「シノダ!指きりは魔法のはじまり」
富安陽子
大庭賢哉・絵
偕成社 本体1300円


いよいよシノダ!も10巻目、10巻で一区切りというような話も聞いたのでちょっと残念だなと思っていました。でも、あとがきには続く・・・・というようでまずはちょっと安心。ふつう10巻も続くとちょっと飽き?みたいのところがあるのだけど、決してそんなことはありません。登場人物はシノダ一家、パパは人間だけれどママは信太の狐の家系、3人の子どもたちはだれもがキツネ一族の血をなにかしら受け継いでいます。長女の結ユイは風の言葉をきく能力「風の耳」を、長男の匠タクミは過去や未来を見る「時の目」そして、末っ子の萠モエは人以外の生きものの言葉を伝える「魂よせの口」をもっています。このきょうだいたちに親戚の一族、おじいちゃん、おばあちゃんおばさんおじさん、妹ととママの親族が入り乱れて話はすすんでいきます。10巻目は末っ子のモエが幼稚園で見慣れない男の子に垣根の穴をくぐっていいところに行こうと誘われます。そこは隣の園長先生の庭にある池です。そして、このことは秘密にしなければならないと風変わりの指きりで約束をします。”指きりげんまん、うそついたらカエルの口になぁれ”それはキスした相手をカエルに変えてしまう呪文でした。そして、これには昔のいわれ、伝説がありました。(1巻目のチビ竜が登場します)
 このシリーズは3人のきょうだいを中心に、その土地の伝わっている物語を定本にしておのおの持っている超能力をつかって難問を解決していく、妖怪やあやかしの者たちが登場しますが、充分に歴史の謎をとく物語性と、推理、そしておもしろさが書かれていて、ちょっぴりドキドキはしても、しっかり解決しておしまいになるという楽しさが味わえます。出てくる「もののけ」も不思議こそあれ元気で明るい、気持ちの悪いような妖怪たちではありません。それらが子どもたちに人気のあることのひとつなのだとおもいます。
 それにしても著者は前に講演のなかで”私は嘘つきの家系でして・・・”といわれたが、こうもつぎつぎとほら話というか物語を編み出していく、そして、絵本のお話から(絵も上手)低学年から中学生まで、たいへんひろい年齢の子どもやおとなまで楽しませる力にはいつもすごいなぁと思います。
 

2017年2月24日 (金)

さてさて、きょうのおはなしは・・・・・・

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「さてさて、きょうのおはなしは」
日本と世界のむかしばなし
瀬田貞二 再話・訳
野見山響子・画
福音館書店 本体1100円


40年から昔、会留府が開店した時のこと、子どもの本の店である以上は「おはなし会」をしなければとの意見があった。いまこそ図書館などで「おはなし会」をするけれど、その頃児童書部門をサービスしている公共図書館も少なかったし、まして語る人も少なかった。千葉市では会留府が開店すると同じ位の時期に地域や家庭に文庫がひろがった。今までいた所で文庫活動等をしていた人たちが、引越してきてあまりにも本屋も図書館もなくびっくり?して自分たちの手で作りはじめた。そのなかで子どもたちにお話を語る事が必要と感じ勉強しはじめた。お客さんがそうなれば、当然会留府でも勉強会やおはなし会をもたなければと、いろいろな人に聞きながら活動をはじめた。今からはびっくりするくらい子どもたちが集まった。子どもたちに背中をおされるようにあちらこちらで勉強会がもたれおはなし会が開かれた。会留府ではおはなしの活動ははじめから夫の担当になっていた。それは夫のほうが私よりはるかに熱心だったし楽しそうにできたからだ。
 じつをいうと私はいわゆる昔話などをほとんど聞いていないまま育った。新潟のある城下町に育った私は、しかも祖父母と一緒に暮らしていたこともあったのに、わたしの育った家庭は昔話を聞くと言う環境になかった。父も祖父もひとりっこ、おまけに父は5歳位までいまの朝鮮の平壌で育っている。(父は瀬田さんと同い年、生きていれば100歳だ)母は大きなお寺の娘だったが父親は漱石の門下生、母親は結婚前は数学の教師だったとか。一家をあげて本を読む家庭だった(強制された事はない)地方の公務員の一家、つまりあまり地域との繋がりがない家庭だった。もちろん育った時代もあって、私が幼かった頃は絵本もほとんどなかった。街には藩の学問所がそのまま図書館になっていたけれど、子どもが出入りするような図書館ではない。わずかに祖母が伝説のような話をしてくれたのを覚えている。
 それにくらべて祖父母もいない親子だけの家庭だった夫は早くに父親が病気で仕事ができない、母親がひたすら働いていた家庭だったので地域の人や親戚とのつながりが強い。お話の世界はすんなりと彼の中にはいってきていた。ネコを相手にお酒を飲みながらよくお話を覚えていた。私たちの世代はテキストでお話を覚えてそれを自分のなかで語るようにしていく。彼がそのテキストに選んでいたのは瀬田貞二のものが多かった。覚えやすくて語りやすいといっていた。
 おはこだった「おんちょろちょろ」からはじまるこの本を手にしながら、覚えていた時のようすを思い出しながら本を開いてみた。日本のむかしばなし18話、世界のむかしばなし10話がはいっている。従来出版されていた本と重複しているお話が多いけれど、こぶりの装丁は手になじむので自分で読むのにも向いている。先日1年生の子どもが自分で読むといって買っていった。挿絵があまりないけれどひらがながたくさんなので大丈夫読めるといっていた。いっしょに来てお金を払ったお父さんが読んでやりたいと言っていたのが私はうれしかった。
 もし、幼い時に昔話をたくさん聞いて育っていたら、どうだったかな?でも、そうでなかったけれど充分本好きになったのは両親のおかげだと感謝している。

2017年2月17日 (金)

わたしたちが自由になるまえ

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「わたしたちが自由になるまえ」
フーリア・アルバレス
訳/神戸万知
ゴブリン書房 本体1500円

ドミニカ共和国ってどこにあったっけ?ほとんどの人がそんな認識しかもっていないと思います。そしてかってあったことの真実をもとに書かれているとはいえ、あまり切実には思えないのが私たちの気持ちかもしれません。この物語は時代と状況はちがいますが、ドミニカ版アンネの日記のような物語といったらなんとなくわかるかもしれません。アンネの日記ではアンネは殺されましたが、この物語にでてくる主人公アニークのいとこがアメリカに渡っています。(圧政をのがれるために)作者はこのいとこと思われます。
 ドミニカでは1930年から1961年までトルヒーヨ大統領の独裁政治が続いていました。アニークは大統領を尊敬していましたがいとこたちが突然アメリカにいってしまい、それからも次々に親しい人がいなくなります。アニークは真実を知ります。そして、父たちが囚われアニークも母と乳母?も身を隠せずにはいられなくなります。物語の後半はクローゼットに隠れた生活のなかで日記を書くことがが生きていくことの支えになるアニークです。それはアンネの日記がいまなお若い人たちに読まれていると同じ、その中にはアニークの瑞々しい情感があふれているからだと思います。
 私たちは未来を考える時にやはり過去を振り返ります。それはなにも国家ということではなくとも、日常のなかで自分の生き方を思うとき、困難なことに突き当たったとき、身近な人が亡くなったりしたとき、新しい命の誕生を迎えたとき、全てにあてはまることです。
 でも、国家によって命があぶなくなるなんてありえないとおもうかもしれませんが、おこりうることです。(いまメディアでとりあげられている共謀罪などもそんな視点から考えなければならないことだとおもいます。)今はそうではないけれどあまり遠くない未来に私たちもアニークのようなことがおこるかもしれない、それは私の心配しすぎなことなのでしょうか。
 「わたしはただ日記をつけたいだけで、世界をすくいたいわけじゃないって、ママにいった」「手かふるえてしかたがないーだけど、世界の人に知ってもらうために、この記録を残したいー」アニータの日記より。12歳の少女の物語です。


2017年1月31日 (火)

走れ!!機関車

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「走れ!!機関車」
ブライアン・ブロッカ作/絵
日暮雅通 訳
偕成社 本体2400円

土曜日のことでした。近くの文化施設にイベントがありました。幼い子ども対象のイベントなのでしたが家族づれも多く、賑やかでした。そのなかでのこと、両親と妹が一緒の男の子、入って来るなりこの本を見つけました。あとはどうでもよいらしくこの本を抱えて離しません。父親の賛成もあって買ってもらいました。次にまた、この本を欲しいといった男の子、なかなか母親が「うん」といいません。でもねばってOKでした。どちらの男の子も学齢前、聞いてみると4歳と5歳でした。ちょっと難しいのではないかと思ったのですが、2人共鉄道ファンなのでしょう、それくらいこの絵本はインパクトがあります。大型の絵本、表紙は機関車の正面の絵が真中に、裏表紙はその機関車の側面、6人の男たちがみがいたり油をさしたりしています。レトロっぽい、ほんとにこんな機関車が走ったのかしらとおもうほど装飾ぽいけれど力強く走っているようすが伝わって来ます。乗り物好きの子どもだけでなく、おとなの好奇心も充分にそそられます。
 1896年ある家族がアメリカ大陸の東、カルフォルニア州サクラメントから西、カルフォルニア州サンフランシスコへ旅をします。その時乗った大陸横断鉄道のことが描かれています。時代はリンカーンの時代南北戦争のころです。東から西にセントラル・パフィク鉄道会社と西から東へのユニオン・パシフィック鉄道会社、二つの合流点はユタ準州のプロモントリー・サミットが選ばれました。この鉄道がひかれるまでの社会の背景、そして、その機関車そのものが走る様子が描かれています。機関車がどういう原理で動くかということ、そこに携わっている人びと(機関士とか)のことが時にはユーモアいっぱいに描かれているのは楽しい。後のページにくわしく書かれている解説もたっぷりと書かれています。この工事をした人びと、新しい人たちをつれてきたということ、一方先住民を抑圧したことなども書かれていて、しっかりおとな読みができました。こうだいな土地をこの機関車に乗ってわたしもまた、旅をしているような気持ちになりました。
 買っていった男の子、いまは絵をながめているだけかもしれないが、その小さな心の中では好奇心が渦巻いていることでしょう。

2017年1月29日 (日)

紅のトキの空

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「紅のトキの空」
ジル・ルイス=作
さくまゆみこ=訳
評論社 本体1600円


物語の始めから最後まで文から立ちのぼる熱気にあてられっぱなしになって読んだ。その熱気というのはこの物語の主人公スカーレットだったり、母親だったり、スカレットの里親になったルネやその夫のシーオだったり(この家族が一番あたりまえにある家族のかたちか)、魔女といわれているマダム・ポペスク、どの人をとっても尋常ではないように思える。主人公スカーレットは12歳で肌は褐色、会った事のない父さんと同じだ。弟のレッドは実年齢は8歳だけれど4歳位にしかみえない。肌の色は白、オレンジ色の髪の色をしている。母さんも白い肌、薬とタバコが片時も離せない、もちろん子どもたちの世話もできなく一日中タバコを手に家の中にいる。幼くて自閉症でアスペルガーのレッドは鳥にしか興味を示さない。だからこの家の主婦はスカーレットだ。家をきれいにして、食事をつくり、レッドのめんどうをみて学校に行く、尋常ではない生活だけれどスカーレットにはなにものにも変え難い生活だった。それは3人でいられるということが理由だ。ベランダの隙間にリトルレッドが巣をつくり卵を産んだ。レッドのためだけでなく、スカーレットはこの卵から孵るヒナを守る事が家族を守る事だと思っている。それは自分自身の存在にかかわることだ。けれど、母親のタバコの不始末から火事になり、3人は別べつに、母親は入院、レッドは保護施設、そして、スカーレットはルネとシーオ一家のもとに一時ひきとられることになる。このままではレッドといっしょに暮らす事にはならないとレッドをひっさらって逃げる決心をして、魔女といわれながらも傷ついた鳥の世話をしているマダム・ポペスクにかくまってもらうように頼み連れて行く。スカレットはルネとシーオ一家と暮らすなかで、自分の渇望だけでなく、少しづつ客観的に考えることができるようになる。
 登場人物のどの人をとっても描写がしっかり描かれているので、読む人は引き込まれてしまう。「家族」この深くて心を包み込むもの、でも深く傷つけあうものでもある。この物語のなかにはいろいろの家族の形がでてくるので、読む人は自分と置き換えて読む事ができる。スカレットの絶望感と渇望と望みが熱気のなかに胸にせまってくる。
 ありきたりの疑問、家族ってなんだろう。血の繋がりだけが家族ではない、とすると!

2016年10月29日 (土)

ホイッパーウイル川の伝説

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「ホイッパーウイル川の伝説」
キャシー・アッペルト&アリスン・マギー
訳=吉井知代子
あすなろ書房 本体1400円


昔、ある兄弟がいた。二人は同じ娘を好きになった。どちらと結婚するか決まらなくて娘に選んでもらうこともできなくて、川に選んでもらうことにした。地下の空洞を流れる川を泳ぎきって先に池に出た方が娘と結婚するという伝説がある。兄が娘と結婚する、けれどそのことには大きな秘密があった。サムはこの伝説を思っている。サムの兄さんエルクは親友とジークとアフガニスタンへ行った。サムはエルクが帰って来るまで願い石を川になげるだろう。もし、帰ってこれなかったらジュールズに「石の洞窟」に行ってこの石を置いて来て欲しいとエルクは言って出発していった。ジュールズはサムときょうだいのように仲良く育った石少女だ。4歳のころから石を集め石のことならなんでも知っている。二個の瑪瑙をあずかったジュールズ、でも「石の洞窟」がどこにあるかは知らない。そして、エルクはアフガニスタンから帰って来たけれどジークは戻っては来なかった。ジュールズにはママがいない。ママは死んでしまった。ねえさんのシルヴィとパパの3人暮らし、願い石を投げる川の側、奈落の渕に行ってはいけないと固く言われている。ママが死んでからシルヴィは突然走り出した。ともかく早く、ジュールズはとてもついていけない早さで。どうしてそんなに早く走って行ってしまうのかジュールズにはわからない。ママが死んだとき、その前におこった小さな出来事も幼かったジュールズは何も理解できなかった。ある雪の降った日の朝、シルヴィたちは小さな雪だるまを作った。そして、シルヴィはジュールズがとめるのも聞かずに奈落の渕へ向ってやっぱり走っていってしまった。ジュールズにはおいつけない。シルヴィはとうとう帰ってこなかった。
 森の中ではキツネが生まれていた。3匹のうちの1匹は雌、セナと名付けられた小さなキツネは自分を呼んでいる者を知っている。それは人間の女の子だ。セナはその子に渡さなければならないものをもってる。それは洞窟の中にあり、ある日やっとジュールズを連れて行く事ができた。そのために生まれて来たといっても良いセナ、ジュールズはシルヴィの秘密と願いを知る事ができた。
 この物語は大切なものを失ったものたちの魂と再生がいくつも交差しながら描かれている。森や川、クマやピューマン(これは実際にいるのかわからない)そして、母ギツネと3匹の子ギツネたち、特にエマと兄さんギツネがつないでいく。
 この物語は二人で書かれているそうです。この物語を読んでいる私にはその事についての違和感はありませんでした。おそらく二人で交互に呼び合って書かれたからだと思います。それはジュールズとシルヴィ、エルクとジーク、その生者と死者の間でサムがいて、パパがいて、セナはもう帰って来なかったけれど、セナを語るものは残った。こうやって魂はつながっていくと思うからです。
 
 

2016年10月18日 (火)

わたしたちのカメムシずかん

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「わたしたちのカメムシずかん」
やっかいものが宝ものになった話
 たくさんのふしぎ11月号
鈴木海花 文
はたこうしろう 絵
福音館書店 本体667円


 この本は以前から出版案内があって出たらともかくと思っていたのに、とうとう紹介するのに2週間もたってしまった。私に出版の案内をくださったのは全国農村教育協会という出版社の大久保清樹さんだった。向かいの県立中央図書館で「図鑑」のフェアをした時、中年?の男の人が入って来て名乗られ、東北の話がでて、あそこで生きていた生き物たちはどうしているのかと問いかけたことに、ある小学校の話をしてくださった。岩手県葛巻町立江刈小学校、そこで子どもたちがカメムシの研究活動をしていて、そのことを少年写真新聞社が出している「理科教育ニュース」にかかわった先生たちの紹介記事が連載されていて、大久保さんも寄稿されていること、「たくさんのふしぎ」11月号で刊行されるということだった。
 この本にもあるようにその話を聞いた時おもわず”カメムシ!あのくさい虫ですか?”と聞いてしまった。小学生くらいの子どもがカブトムシなどに興味をもつのは良く聞く事だけれど、カメムシなんて害虫でしかない(私にとってはゴキブリと同じ)ちょっと信じられなかった。
 大久保さんがおくってくださった「理科教育ニュース」のコピーを読みながら「たくさんのふしぎ」を楽しみにしていた。魔の8月、昨年に続いてさんざんな月になって、9月になっても本を読む事がなかなかできないままに、やっと10月に入ってから読むことができた。それは「カメムシ」のことというより子どもたちの学ぶということの原点を示してくれるような本だった。少しばかりのチャンスとねばり強いおとなの助言で子どもたちはびっくりするような力を発揮して、それはおとなを動かす力になる事を示してくれる。この町は人口7000人くらい、江刈小学校は全校生徒29人、東北の自然の厳しい、かといって観光資源もないきびしい町とのこと、校長先生のひらめきで子どもたちがカメムシの研究をする、それはおとなを動かしていき、おとなたちの生きていくエネルギーになっていくようすが描かれている。教育の基本をあらためて思った。
 ところで「カメムシ」が私の好きな「アメンボ」の仲間とのこと,ワァィー!!
 

2016年10月11日 (火)

もりモリさまの森

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「もりモリさまの森」
田島征三 作
さとうなおゆき 絵
理論社 本体1400円


林太郎が学校から帰って来るとおじいちゃんのヤマタロウさんが穴があいた葉っぱを眺めていて突然森へ行くと言い出した。もう暗くなってきているし”えっ?”といっても明日の朝出かけるから準備をするように言う。森に大変な事がおこっているので行かなければとおじいちゃん、ぼくとママと友だちのみずきちゃんとは出かける事にした。一番大きなナラの木のところでヤマタロウさんが出したちょっと甘酸っぱい飲み物を飲んだ。少したつとなんだか暑い、そのはずぼくたちの身体には毛がはえて動物にかわっていった。でもみんな同じ動物ではない。ヤマタロウさんはタヌキ、ママはアナグマ、みずきちゃんはちいちゃなイタチ、そして、ぼくはテン、林の奥からは大きなタヌキがでてきて、ヤマタロウさんと抱き合って挨拶をかわした。もっともヤマタロウさんは前はタヌキだったそうでグーキチドンと呼ばれているとのこと、やがてキツネやたくさんの動物が集まっているところに来て森一番のお年寄りというミワワさまのところにやってきた。話によるとこの森は<もりモリさまの森>といってみんなのとても大切な所という。ところが最近人間がへんな物(機械)をもってきてどうもこの森を無くそうとしているようだということで、ヤマタロウさんを呼んだということだ。その森を市長を中心にして廃棄物の埋め立て地に使おうとしていること、じゃまな木は全部きりたおしてしまう計画だという。林太郎は動物たちといっしょに困難な戦いをはじめることになる。
 ここまで読むと作者が20年程前に住んでいた日の出町での廃棄物処分場の反対運動を思い出す人もいるとおもう。その戦い(まさに戦い)は造られてしまい、作者は癌で日の出町を離れることになるけれど活動は続けられていった。いまは、奇跡的に作者は元気になって、自然をテーマに創作活動を続けている。この作品はその戦いがベースになっていることはあきらかで、作者もあとがきに書いている。
 元気になったのだと読んでうれしかった。スピード感のある文はいかにも作者らしい。私はこの作者の正直なところが好きだ。林太郎のパパは市の清掃職員、死んでしまった動物たち、そして、タヌキとして森に残っていくおじいちゃんの役目、人間と獣たちとの共生を担うものとしていくという行動は作者の処分場反対運動のその後の決意のような気がする。そして。この物語を書いて次の林太郎についでいこうとする、こういう物語ではとかく<がんばりましょう!>式が多いなかでの一つの生き方なのだとおもう。この物語を読みながら私は福島の原発事故のことをしきりと思っていた。
 この本の挿絵を描いている画家は最初は処分場賛成派の新聞に絵を描いていた人だとのこと、動物たちが好きな人なのではないかとおもう。神木のカツラの木が倒されたときカツラの木から飛び立ったミワワさまがたくさんの小鳥になって飛び立っていくシーンにも作者や画家の願いが込められていると思う。子どもたちはどう読むだろうか。

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