児童書

すてきなルーちゃん

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「すてきなルーちゃん」
たかどのほうこ作・絵
偕成社 本体1200円



 ルーちゃんというのはママの妹です。つまり私にとってはおばさん、時々居候?に来ます。ママは”ほんとに!”といいますがまんざらでもありません。だってルーちゃんはママのお手伝いをして、かわりに食料?をもって帰ります。なんといってもルーちゃんは楽しい話をしてくれます。ルーちゃんは絵描きさんです。ちょっと不思議な絵を描きます。とってもきれいな色で私は大好きです。そのルーちゃんがやってきました。そして、ルーちゃんは絵を描きながら毎日話してくれました。
 ルーちゃんのお話が6つ、たとえば月曜日はソーラという名前の女の子の話です。ソーラは毎日青いハンカチをかぶって学校に来ました。不思議におもって三人の友だちがソーラの家に行ってのぞいてみると、ハンケチは手の中で揺れて、青いアゲハチョウになってソーラと遊びはじめました。
 こんなふうに火曜日はスー、水曜日はスーキー、木曜日はポリー、金曜日はアンリ、そして、土曜日はキムとお話はすすみます。ちょっと不思議で明るいお話ばかり、そういえば作者の物語は女の子、それも元気な女の子を主人公としたお話がほとんどです。ある意味ではこんな女の子は現実にはいないかもしれない、あこがれの(誰にとって?)女の子かもしれません。それも人気の秘密です。
 この作品は1993年に出版されたものを一部修正、絵は全部描き直したものとのこと、一枚だけ「たけだみほ」の画が入っています。
 

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でんしゃがおうちレイルちゃん

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「でんしゃがおうちレイルちゃん」
作・おおたにみねこ
絵・100%ORANGE
理論社 本体1300円



 お父さんは山で遭難、おばあちゃんもいなくなり、大切な犬のワンまでがどこかにいってしまって、レイルちゃんはお母さんと2人きりになってしまいました。レイルちゃんは悲しくて自分の部屋の机の下でただ泣いていました。お母さんはスイスの超特急列車の運転手です。それで、レイルちゃんを自分の仕事場に連れて行くことにしました。だんだんレイルちゃんは元気になりましたが、学校にいきません。とりあえず、列車にのってヨーロッパ中を旅する、でも、いつか学校にいくことになるでしよう!と、お母さんは思っています。
 表紙の赤い列車、本を開くとかわいいヨーロッパの地図が挟み込んであります。今日のレイルちゃんはイタリアのミラノまでチザルピーノで、そこで乗り換えてローマへ、そして北に、ウィーンまで行くことにします。列車に乗るだけでなく、あちこちでおいしいものを食べよう、こんな調子で物語は軽やかにはじまります。おまけに行き会う人たちがみんな愉快な人たち、そして、レイルちゃんと列車の中で知り合ったピピという男の子は、なんと変装の名人怪盗シンシン(ヨーロッパいちの有名な大どろぼう)の子どもとのこと、怪盗シンシンは殺し屋マゾッホに命をねらわれています。と、いうふうにナンセンスなお話はドタバタとにぎやかにすすみます。なんといってもレインちゃんの乗ったスーパーエクスプレスは速いのです。”勇気ある人の夢の旅”ゴーゴー!と進みます。その速さにのって楽しく読んでしまいました。

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おおきなおおきなおいも

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「おおきなおおきなおいも」
市村久子・原案
赤羽末吉・作絵
福音館書店 本体1200円


 秋に取り上げたいロングセラーの絵本とおもうと、いつでもこの本に手がのびます。さつまいも色のさつまいもと子どもたちの絵本です。と、いうのは原案と描いてあるように、この絵本は市村久子さんの幼稚園での実践から生まれたものだからです。内容はさつまいもをめぐっての子どもたちの想像力そのものです。雨が降って芋掘り遠足にいかれない子どもたちは、おいもはどうしているだろうと問いかけます。おいもは土の中でこんなにも大きくなってまってるよといえば、子どもたちの想像力は、どんなに大きくなっているだろうかと紙をつないで表そうとします。それから〜それから〜と子どもたちの想像はふくらんでいきます。
 それを画家はさつまいも色と墨で一筆書きのように表します。線は流動的でどんどんすすんでいきます。たくさん遊んで、たくさん食べて、夕焼け雲にのって(夕焼け雲はさつまいも色!)おうちにかえ〜ろ!なんど読んでも、子ども時代に帰って楽しむ、子ども時代にこういう本を親や先生に読んでもらう、そして、友だちと笑い転げて楽しむ、そんなひとときを持てるのは大切な宝物です。

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パーシーの魔法の運動ぐつ

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「パーシーの魔法の運動ぐつ」新装版
ウルフ・スタルク
菱木晃子 訳
はたこうしろう絵
小峰書店 本体1300円


 この作品は作者の子ども時代を書いたとのことですが、(1950年代のストックホルム、コルセットなどいまではあまり使われないものがでてきますが、)読んでみてそのわりにはあまり古いとは思いませんでした。日本流でいうと小学校高学年位の男の子の気持ちが良く書かれているからとおもいます。私が最初に読んだのは祐学社版です。その後小峰書店にうつり、今度は本の型もちょっとおとなびた本になりました。日本とスウェーデンという国の違いがありますが、内容はどこか幼さが残っているのに、背伸びして、かっこよくなって、女の子にもてたいと思う男の子たちがでてきます。その頃の年齢ではずっとおませさんな女の子たちにとっては、それはなんかちょっとおかしくて、でもちょっぴりうらやましく思います。
 主人公ウルフは恵まれた家庭に育っています。一方パーシーは貧しく、おせいじにも良い環境に育っているわけではありません。でも、ワルとわかっていても、運動もけんかも強いパーシーのかっこよさにウルフはあこがれます。パーシーのボロの運動靴を履けばなんでもできるようになるといわれ本気にします。一方愛情を求めているパーシーの気持ちもせつない。けれど、すこしも暗くありません。作者のどの作品にもみられる暖かな視点といきいきとした子どもたち、もしかしたら女の子の方が楽しく読むのではないでしょうか。男の子は照れくさくて・・・というかもしれませんね。

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チュウチュウ通りのゆかいななかまたち

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チュウチュウ通りのゆかいななかまたち
 1ゴインキョとチーズどろぼう
 2クツカタッポと三つのねがいごと
エミリー・ロッダ作
さくまゆみこ訳
たしろちさと絵
あすなろ書房 本体各900円
 
 チュウチュウ通りには1〜10番地まであって、さまざまのねずみたちが住んでいます。今回はそのうち1番地に住んでいるゴインキョと2番地にすんでいるクツカタッポのおはなしです。ゴインキョはお金持ちです。もっともねずみのおかねはチーズですが、そのゴインキョのところにどろぼうが押し入りました。ゴインキョを一室に閉じ込めてチーズをいただき!でもそうかんたんにはいきませんでした。2巻の主人公はクツカタッポ、冒険家で世界のあちらこちらを旅をして、すてきなものを見つけると持ち帰って磨きます。そして、それを売る、つまり古道具屋でもあります。ある旅から持ち帰ったのは青いビン。そう、良くお話にありますがビンの中から不思議な人があらわれ、3つ願いをかなえてくれるといいます。でも、クツカタッポの願いは?
 自分でお話を読むことができる小学校1.2年生の子どもにとても良い本がでました。1冊50頁位で全ページに楽しい絵が描かれています。それに読みやすさの秘密は縦書きで1行15字なのです。ちょっぴりおかしくて、なんだか変で、小さな冒険があるお話です。
 幼年童話ではなかなかこの年齢の子どもたちに薦められる本がないので(特に自分でも読みたがる)これから10番地まで、どんなお話が続くか楽しみです。


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愛蔵版 みどりのゆび

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「愛蔵版 みどりのゆび」
モーリス・ドリュオン作
ジャクリーヌ・デュエーム絵
安東次男 訳
岩波書店 本体2600円

 時々岩波書店はクロス製のとてもきれいな本を出します。この本も美しい本です。その時は箱入りがあまりムダに思いません。「星の王子さま」と同じように若いファンがいます。私はおとなになって読んだのですが、やはり印象の深い本の一冊です。
 ある国にチトという小さな男の子がいました。チトについてはこんなふうに描かれています。髪の毛は金色で先っちょはカールしている、目は大きくて青い、ほおはつやつやとバラいろをしていてかわいいぼうやです。それだけでなくチトには不思議な力がありました。おやゆびを押し付けるとみどりの草花が伸び花が咲きます。でも、教室ではぼんやりとしていて、居眠りをするしまつです。先生はチトは普通の子どもでないので教育が出来ないといいます。チトの両親は大金持ち、なんといっても大砲をつくっているのです。チトは学校へ行かないで実学的な教育を受けることになりました。そして、ムスターシュという庭師が教育係になりました。ムスターシュはチトの特殊な隠れた才能を見つけます。チトは<みどりのゆび>をもっていたのです。大砲の中に親指をつっこむとタマがでないで花が咲いたのです。
 とても印象的な物語ですが、私はじつは最後の<チトは天使でした>ですこし肩すかしをくったようにがっかりしました。とても哀しく思ったのを覚えています。この物語の静かな詩的な文をとおして、まだ見たことのないフランスに憧れました。「みどりのゆび」をもっていたらいいなぁと憧れました。世の中は1960年〜70年ベトナム反戦や安保反対運動で大きく動いていた時代でした。

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かんぺきな人なんていない

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「かんぺきな人なんていない」
マーリー・マトリン作
日当陽子 訳
矢島真澄・絵
フレーベル館 本体1400円


 耳の聞こえない子どもミーガンのお話「耳の聞こえない子がわたります。」の続編になります。
 ミーガンのクラスに転校生がありました。名前はアレクシス、かわいくて美人、それだけでなく勉強もすごくできるし、またたくまにクラスの注目のまとになってしまいます。でもアレクシスはあまりみんなと仲良くしようとはしません。アレクシスには秘密がありました。アレクシスの弟は自閉症で、なかなか周りの人の理解が得られません。アレクシスはその弟のことを知られたくありません。かんぺきでないと気がすまないアレクシスは、弟がそばにいると落ちつかない。自分はかんぺきでないように思ってしまうのではないだろうかとミーガンのパパはいいます。耳の聞こえない自分もかんぺきではないかというミーガンにパパはこういいます。”ミーガンはミーガンだ。パパたちはそのままでいてほしい。ミーガンはかんぺきであってほしくない。ミーガンらしいミーガンが好きなんだ。耳が聞こえないということはミーガンの個性のひとつだ。ある意味では、耳が聞こえないということが、ミーガンを特別な人間にしているのだよ”P141。誕生会の招待をことわってきたアレクシスにどうしてか?とつめよるミーガン、それに正直に真剣に自分の気持ちをはなすアレクシス、二人の話し合う場面は、読む人たちにみんなと同じでないことはどういうことかと問いかけます。
 この物語に描かれている学校生活は外国の話なので、日本の実情とはずいぶんとちがいますが、学ぶということについても、興味深いことがたくさん書かれています。サイエンス・フェア(おもしろそうです)、1〜3位までの科学的にすばらしいプロジェクトには賞がでるしくみ、賞もいろいろあって、楽しい賞もあります。協力しあって研究発表をするやり方、耳の聞こえないミーガンの勉強の仕方はいろいろと参考になります。それだけでなく、話すということはかならずしも口で話すだけではないこと、自閉症のアレクシスの弟に手話が有効だったということ、ものごとは決して決めつけてはならないことなど、そしていつもユーモアを忘れないようになど、ミーガンの家族から教えられることがたくさんある内容の濃い本でした。矢島眞澄さんの絵もこのさわやかな楽しい物語に良くあっています。
 *昨夜ちょっと気分が悪くなって、良く見直さないままにUPしてしまいましたが、大変間違いが多くて後で直しました。すでに読んでくださいました方にはお詫び致します。

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この子 なんの子?魚の子

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「この子 なんの子?魚の子」
たくさんのふしぎ 2009年9月号
吉野雄輔 文・写真
福音館書店 本体667円


 
 まるでほおかむりをしているような魚が”ねぇ、ねぇ、遊ぼうよ!”というように向かってきます。
クマノミの成魚とのことです。水中カメラマンが魚の不思議のひとつを教えてくれました。子どもの魚と成魚が似ても似つかぬということ、この魚の親はどれ?と写真が載っています。なんとなくそれらしく思えるものもありますが、驚くくらい違うのもあります。色はもちろんのこと姿、形まですっかり違ってしまっている魚もいます。ふしぎ、ふしぎ!この本にはそれがどうしてなのか、どんな海の中に住んでいるのかは書かれていません。著者はこれからもキャンピングカーで日本中の海の魚を撮ってあるくのだそうです。

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 家の近くにユリが咲いているのを見つけました。雨と雷とおまけに地震、昨日は出かけなかったので、今朝見つけました。塀の際に咲いています。種がとんだりして時にびっくりするようなところに花が咲いていたりしますが、ユリは球根、どこからか飛んでくるわけないし、どうみても植えたとは考えられません。とてもきれいに咲いています。
 今夜は「ペルセウス座流星群」が見えるとのこと。空は雲も多いけれど、星も見えます。うまくいけば何個か見ることができそうです。
 わたしたちのまわりには不思議がいっぱいです。

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ルルと魔法のぼうし

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「ルルと魔法のぼうし」
スーザン・メドー作
おおつかのりこ訳
こやまこいこ絵
徳間書店 本体1400円


 ルルが一緒に住んでいる家族は手品師たちで、この一族には同じ代でほんものの魔法使いがひとり生まれるといわれています。もちろんこの手品師の家族に拾われ育てられたルルは、ほんものの魔法使いのわけがありません。ある日不思議なぼうしをみつけました。どうもそのぼうしは魔法のぼうしらしく、ルルかがそれをつかって手品をするとなぜか大成功、大人気ものになりました。ところが犬のコッチョがぼうしのなかからでてきません。コッチョはぼうしのなかからいろいろのもの追い出し、また集めてぼうしの中に戻すことができるのです。いろんなものがでてくるルルの手品はコッチョの手伝いがなくてはできないのです。ルルはコッチョを探しにぼうしのなかにはいっていきました。
 ストーリーはとっても単純でちょっと冒険もあり楽しく読むことができます。いたずら好きのアールという男の子が話をおもしろくしています。ただ残念なのは表紙の絵は女の子のルルなので男の子は手にしない、いたずらっ子アールも描いてあったらなぁと思います。(3年生位から)

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こぶたのむぎわらぼうし

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「こぶたのむぎわらぼうし」
森山京・作
佐野洋子・絵
小峰書店 本体1400円




 ぶたのおかあさんがこぶたたちにむぎわらぼうしを編んでくれました。同じではまちがえるといけないので、しるしを付けた方がいいと言いました。みんなは考えましたが、いちばんおちびさんのこぶたはなかなか決まりません。やっとねこのおばあさんのお手伝いをしてうすももいろのリボンをもらいますが、それを見たおかあさんのお気に入りになりそうなので、おかあさんにあげることにして、またこぶたは探しにいきます。きょうだいこぶたもみんなそれぞれ見つけて帰ってきました。みんなにからかわれて、空の青い色と答えてはみたものの、どこにあるでしょうか?
 7匹のこぶたなので、いろは虹のいろになりますね。特別どきどきするようなお話ではない、日常的なことを物語にしていますが、こぶたの気持ちがそれとなく書かれています。それになんといっても挿絵がとてもいい。甘ったるいこぶたたちの表情でなく、目の細い、鼻の大きな、はち切れそうな頰、健康なこぶたたち、元気なかあさんぶたが我と忘れて踊る場面はとても楽しいです。こぶたはねえさん、にいさんにいじめられてからかわれても、ぐちゅぐちゅといいません。空色のしるしは見つかった?もちろんですよ!
 1・2年生の子どもたちがひとり読みのできる本です。

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ネコのホームズ

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「ネコのホームズ」
南部和也・作
YUJI・絵
理論社 本体1200円




今年は早くの夏休みの入りになりました。いつものことですが、7月後半から8月は絵本より読物、科学の本について聞かれます。読書力がない、国語の成績が悪い、夏休みに読ませたい本などの質問が多いのもこの時期です。まえほど作文のための課題図書についての質問はなくなったのは、良いか悪いかは別として、千葉では夏休み前に感想文を提出してしまうためと思われます。でも、学力向上のためにの読書という呪縛はなかなかなくなりません。
 この本は「ネコのタクシー」(福音館書店)で子どもたちの人気が高い作者の新刊、ここでのネコは探偵、つまりホームズという名前のネコの探偵の話です。ホームズはイギリスのヘイスティングスにある動物病院、モーガン先生に飼われていたネコでした。けれど、モーガン先生はホームズに家の所有権と病院の営業権を残して死んでしまいました。残されたホームズはこの病院をひきついでくれる人を求む!と広告をだします。そこに来たのはちょっと気が弱いのですが、若い獣医師ダニーです。ホームズとダニーと住み込みのやさしい家政婦サットンさん、役者はこれでそろい、ネコのホームズの探偵の物語ははじまります。
 物語は3話はいっています。もとのシャーロックホームズの小説のように、どの話もちょっとイギリスの話らしく、理屈っぽく推理小説らしい、(探偵小説なのでこれ以上紹介しませんが!)でも、ネコが主人公なのでユーモアもたっぷりです。”このネコかわいくないね”といったおとながいましたが、なんといってもホームズはパイプをくわえたネコの名探偵、このおかしな探偵コンビはふしぎな事件をみごと解決します。
 3年生位からにおすすめです。124ページとあまり厚くないのも暑い夏の読書にはうれしい?!

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宇宙に秘められた謎

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「宇宙に秘められた謎」
ホーキング博士のスペース・アドベンチャー2
作 ルーシー&スティーヴン・ホーキング
訳 さくまゆみこ
岩崎書店 本体1900円



 昨日のお天気とうってかわって、今日は晴れた日になりました。自然は人に都合良くはいきません。
でも、すこしだけ自然は宇宙の神秘をみせてくれました。
 ホーキング博士、親子の宇宙の本の2巻目です。一巻目が主にブラックホールのことだったし、最後の挿絵から2巻目は彗星、宇宙と星の話ではないかと思っていましたが、2巻目は宇宙と生命のはなしでした。見返しは「1984年2月7日有人軌道ユニットをつけて地球をみおろす宇宙飛行士」の写真です。1巻目の主人公ジョージとアニー、そしてあたらしくコンピューターに関しての天才少年エメックが仲間にはいります。
 天才科学者のエリックはフロリダの国際宇宙機関に行くことになりました。アニーと別れるのはつらいけれどしかたありません。エリックは記念の望遠鏡とジョージの質問に答える「宇宙を知るためのガイド」を置いて行きます。ところが、アニーはいろいろと策略を練ってジョージをイギリスからフロリダに招くことを考え、おばあちゃんの協力で成功します。そして、エリックに預けられたエメックと知り合います。はじめはいがみあっていたものの、3人は知恵を出し合い協力しあわなければならないことになります。国際宇宙機関では地球以外に生物がいるか、まず一番その可能性が高い火星を探査するロボットホーマーが火星に降り立つことを見守っていました。火星着陸に成功しますが、なぜかおかしなことがおこります。故障?それを直せるのはコスモスしかないことに3人は気がつきます。コスモスはこわれていて、なんとか再起動できたもののまた、動かなくなってしまいます。でも、コンピュータープログラムに天才的なエメックの力でコスモスは動いて、ジョージとアニーが乗り込んで宇宙に飛び出して行きます。「宇宙を知るガイド」を読みながら。惑星、恒星や衛星、生物はいるのでしょうか、どんな生物でしようか、壮大な宇宙の秘密にせまります。
 1巻目と同じように冒険科学小説なのですが、科学コラムでこの巻にでてくる宇宙旅行、有人飛行、ロボットの働きなど、宇宙の成り立ちや生命のことが書かれていて、その間にたくさんの写真(鮮明できれい)や図版が入っています。とてもわかり易く訳されまとめられているので、科学コラムだけ読んでいてもおもしろく、また単なる冒険小説として読んでもおもしろい物語になっています。
 昨日の日食をはじめ、8月26日の天文の七夕の日の銀河、8月の見ることのできる流星群など、夜空を見上げての楽しみが夏休みにはたくさんあります。学校での学習とちがった本を読んだり、観察したりができる夏休みです。
 ホーキング博士は入院したとか、少し前新聞にでていましたがどうされたでしょうか。3巻目も期待してしまいます。

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化石から見えるもの

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「0.1ミリのタイムマシン」
地球の過去と未来が化石から見えてくる
須藤斎
くもん出版 本体1400円




 わたしが初めて化石にふれたのは小学生で学校の遠足で出かけた先でした。山道を歩いていて、先生が崖になったところの地層の説明をされました。土のなかから掘り出した石っころの破片から、ここは昔は海だったとの話に、そんなことがわかるなんてと不思議に思いました。
 この本に登場するのは植物プンクトンであるケイソウの化石、その化石から地球の謎を知る話です。ケイソウは海や川にあり、その土や砂にもくっついていて、木や草とおなじように二酸化炭素を吸って、酸素を出す、大きさは約1㎜から0.01㎜より小さい、光合成をするために光を必要としますが、どこにでもいる働きものとのことです。絵を描くことが大好きな少年は生きた化石の「シーラカンス」をテレビでみて化石に興味をもちます。そして、化石という昔のいきものである古生物の研究から、ケイソウをとおしての地球の歴史を調べていきます。その調べ方が順序よく描かれています。まず観察、ともかく観察をして調べる。それを分類する。そして、それを他の人にもわかるように記録をし発表する。どのようにして、どんな道具を使って、どうやって記載したかの道筋がとてもわかり易く描かれています。絵描きになりたかったといわれるだけあって、本のなかのイラストもほとんどが作者の自筆、写真より手書きのほうが、よりわかりやすいとの言葉はうなずけます。(絵本でも写真と手書きでは全然別のものといえます。写真は時間を瞬時に切り取ります。一方立体的な表現は手書きの方がすぐれているとおもいます。)
 そして、ケイソウのなかまのひとつ、著者の言葉では「お休みケイソウ」の化石が世界で初めて分類され、地球の歴史を調べるために北極海に行ったことが後半に書かれています。一緒に暮らした世界の研究者たちとの交流も書かれていて、勇気をもっていろいろな人と話し合うことの大切さと楽しさにもふれています。

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とびらをあければ魔法の時間

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「とびらをあければ魔法の時間」
朽木祥 作
高橋和枝 絵
ポプラ社 本体1000円




 水曜日はバイオリンのレッスンの日です。いま、わたしはメヌエットでつっかえています。練習もしているのに、どうしてもうまくいきません。おかあさんはもちろんのこと、犬のトトにさえ嫌がられています。”どうしたのですか!もう嫌になりましたよ。”といわれているようです。今日もレッスンに行く途中、どうしても気がすすまなくて、つい途中の小さな駅「鳥の井駅」におりていまいました。どこともなく歩いていくと雨が降り始めたので、雨宿り、「すずめいろ堂」という看板にひかれ、中にはいってしまいました。誰もいません。ともかく床から天井まで本がつまっています。陶器の犬がおいてあり、そばに、やはり陶器のスズメがちいさなメッセージカードをくわえていています。<どんな本をお探しですか>と書かれているので一冊の本を手に取って開けると、白いハトがとびだしてきました。次の本では黒ウサギ、ラクダまででてきます。どうなっているのでしょう。魔法の家で魔法の時間のはじまりです。
 おとなでいえばスランプというのでしょうか。おとなは子どもはいつも元気と思っているので、そんな落ち込み方はあまり理解できません。つい、なまけているとか、努力がたりないとか、あげくのはてには”そんなに嫌ならやめなさい”なんていってしまいます。そうではない、そのスランプを脱するためにはちょっと魔法が必要なのです。
 作者はとても言葉のつかい方が上手です。感情にもたれかからない、そして、日常に使わないけれど心に響く言葉を意味をこめてつかっています。<すずめいろどきが、そろそろ、しゅうりょうします。また、きてください><☆のように、いそがず>(これはゲーテの言葉と注があります。)そして、その言葉が絵に描かれるように書き込まれています。魔法の言葉です。
 <すずめいろどきが、もはや、しゅうりょうしてしまいました>こんど来たときはすずめ堂の本のなかからいったいなにがとびだしてくるでしょう。わたしはまた、レッスンに行こうと思います。

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不思議な博物館ークグノタカラバコ

9784035283805


「クグノタカラバコ」
いとうひろし
偕成社 本体1000円




 
 あるところにクグという人がいました。「クグノタカラバコ」というのはこのクグという人が造った博物館のことです。博物館といったって、どんな博物館なのでしょう。じつは集めてあるのは、どこにでもあるかもしれない、もしかしたら、どこにもないかもしれない小さな子どもが集めるようなものがあるタカラバコのような博物館なのです。おにいさん以外、はじめはみんなはなんとつまらないといいますが、クグのはなしを聞いているうちに、それらはとてもすてきな宝物に思えてきます。どこにありますか?うぅーん!探してもなかなか出会えません。何かの拍子に迷子になったりして行き会ったりするのだそうです。
 わたしも道に迷い込んで、行きあたったところに建っている家に「ミュージアム オブ クグ」と描かれていたのです。扉をあけて入ってみると「水鉄砲」「食パン」「小さなビンにはいった虫」・・・
不思議なものがならんでいました。ながめていると老人がでてきて話をしてくれました。その3つの話がこの本にはいっています。
 作者のはなしはいつも絵と共にふんわりした内容のものが多いです。時間がゆっくりながれているから、そんな感じがするのでしょう。あまり宝と認められていないもの、でもある時その子どもにとって、それが一日がすべてであったように、欠くことのできなかったもの、それが宝物なのです。第一話の「水鉄砲」、このお話はそんな水鉄砲が凶暴なワニを退治したお話です。読んでいるうちに、キャアキャアいって水鉄砲を飛ばしている幼い子どもを思います。どんな怖い物も退治できるように思っていた幼い頃を思い出します。
 幼年童話のつくりになっていますが、中学生あたりにもおすすめします。作者の本はとても哲学的です。ゆっくりと読んでみませんか。

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「ベラスノアとキックオフ!」って?

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「ベラスノアとキックオフ!」
片平直樹 作
平澤朋子・画
福音館書店 本体1200円

 表紙の絵はワニとサッカーをしている男の子、これだけでも魅力的です。けれど、子どもたちが何を期待して手にとるかわかりませんが、じつはサッカーの本ではないのです。
 最初に書かれているようにー古くからサッカーがさかんなある国の、ある町でー主人公のぼくは母親と二人きりで住んでいます。サッカーが大好きな10歳11ヶ月の少年はこの町のプロサッカーチーム<ロケッティー>の下部組織の<ロケッティー・ジュニア>の入団テストを受けようとしています。このことは母親にはないしょ、というのも、少年の良く知らない父親が、かってはロケッティーのキャプテンをしていて、11年前なぜか八百長事件にかかわったとかの疑惑で町を離れ、それ以後ロケッティーも二部に転落、それから何かにつけていろいろのことを言われて来たからです。少年も母親もそのことや悪口も聞こえない、言わないという生活をしてきました。
 突然、その父親があらわれます。ワニになって。(もっとも少年にはまわりのサッカーがらみのおとなたちは動物にみえています。)父親、ベラスノアは臭くてオナラやゲップをして、ぼくと母親の間に割り込んでくるし、ゆるせないと嫌います。
 そうです、これはサッカーの物語でなく父と子の物語、10歳頃からの男の子はこんな感じで成長していくのかもしれません。だから、もしサッカーでなく音楽でも同じようにいえます。男の子は中学生になり、夏休みが終わった頃から急におとなになります。体つきだけでなく、いうことからすることまで、おとなをからかうようなものの言い方までします。
 決められた滞在の日が終わり、父親は町を出て行きます。追いかけて行きながら主人公ははじめて”おとうさん”と言います。実際はこんなふうに劇的には終わらないと思います。父親が社会でどういう役割をしているかということを知り、感じながらゆるやかに自立していくのだとはおもいますが、そうならない父子もいる、何が分かれ目なのか、少年の目から語っているこの物語のなかには、それも描かれているように思います。
 

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グリーンフィンガー

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「グリーンフィンガー」
 約束の庭
ポール・メイ作
シャーン・ベイリー絵
横山和江・訳
さ・え・ら書房 本体1700円


 物語は冬からはじまります。ケイトたち一家は新しく住もうとしている家に来ています。そこは荒れはてた庭のある古い家でした。荒れはてているのはその家だけでなく、ケイトや家族みんなの心、でもほんとうは荒れはてているのではなく、このままでいたら荒れはててしまう寸前といったら良いかもしれません。主人公のケイトはいわゆる学習障害児で、困難な問題をかかえているだけでなく、これまでの教師やまわりの人たちに理解を得られにくい子どもです。知能に問題はないのに文字を読むこと書くことがとても不得意、だからトラブルをうまく落ちつかせ対処することができません。そのために転校しなければならないような状況に見舞われます。母親は仕事をもっていてどちらかというと現実派、父親はこれを機会につとめをやめて自分なりに仕事をしていきたい、それで庭を欲しいと思っている妻のためにこの不便な荒れはてた家を買って、自分のおもいこみ?のアットホームをつくろうとします。離婚寸前という状態、しかもケイトが行くことになった学校の教師たちは、以前の学校の教師のようにケイトの状況をきちんと考えようともともせず、ケイトはだめな生徒と決めつけます。やるきがなく、気持ちもすさんできているケイトの前に現れたのは、この家に以前住んでいた老人ウォルターと、その孫娘でケイトの同級生のルイーズでした。ケイトは離婚しそうな両親、特に母親に戻って来て欲しいために、庭を再生させようと思います。
 ケイトはたしかに困難な問題を抱えてはいますが、ウォルターと同じようにグリーンフィンガー「みどりのゆび」を持っていました。母親がいなくなってしまったので、幼い妹に本を読んでやるため、そして、庭の再生、植物や樹々のことを知るために、コンピューターを使って文字を読むことが出来るように工夫するところ、ウォルターのように記録していたノートがその努力を証明させ、両親や教師やまわりのひとたちの偏見をかえていくところは、心理描写もふくめてとても丁寧に書かれています。
 優等生のルイーズがケイトとちがうかたちで自分らしくあろうとする姿、妻を亡くし老いを迎え無気力な老人になっていくウォルターが、ケイトやルイーズの力で老いを受け入れて死を迎える最後の場面、きばるけれど現実的に家の修理をする力がない父親を助ける素朴な隣人マーティー、両親と姉のケイトの間で、本を読むことで現実から逃れてはいるけれどとても繊細でやさしい弟マイク、仕事を捨てて家庭の主婦だけになりたくないと、自分の生き方に悩んでいる母親など脇役の描写も確かで、この物語に厚みをつけています。ケイトやルイーズ、ケイトの両親とルイーズの両親、ウォルターの老いの生き方、そして教育のあり方など、いろいろの年代と視点から読むことができる本です。
 そして、シャーン・ベイリーのイラストがとても美しい、きれいな本です。


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ぼくのネコにはウサギのしっぽ

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「ぼくのネコにはウサギのしっぽ」
 朽木祥・作
片岡まみこ・絵
学習研究社 本体1200円




 表題はネコのはなしですが、他に犬のはなしが2編はいっています。雑誌で以前発表されていたものが書籍になって出版されました。雑誌で手頃に読むのも良いのですが、雑誌は重版されることがまずないので、書籍の形で出版されると読み継がれていく可能性がたかくなります。それに学校の図書室等にも入るので、いろいろな子ども、おとなに手に取ってもらえる可能性もたかくなります。
 それとあらためて挿絵の力を強く感じます。画家の絵は私は好きで、出るたびに気にする一人です。特にネコはいわゆるかわいいと、ひとくちでくくれない様子があります。今回のこの本の中の3つの物語にでてくるいぬ、ねこはいわばちょっとばかり落ちこぼれ、それを落ちこぼれとしてしまう今の社会に問題があるのですが、外見が変わっていたり、すこしトロかったり、おくびょうだったり、横並びを要求される今の社会のなかで生きていくのはきびしいのです。これはいぬやねこのはなしにしてありますが、そのことを誰よりも強く感じているのは子どもたちです。でも、子どもたちは自分の無力も知っていますからおとなにあわせてしまいます。
 かわいい子犬だとおもってもらったのに、大きくて元気、ぼくを主人と思わないダンという犬にアイスクリームを取られて悪口をいうとお母さんは”口のきけないものや自分より小さい相手に、意地の悪いおこり方をするんじゃありませんP32”とぴっしゃりいいます。一方ダンにも”ダン、かんちがいしない!”とこれもまた、ぴっしゃりといい、ダンのいぬとしての習性をぼくに説明します。こんな言葉をさりげなくいれている作者の考え方が私は好きです。それでいて作者のまなざしはあたたかい。表紙のウサギのしっぽをもったネコのまなざしは子どもたちの思いを伝えているようです。
 自我が芽生えてくる小学校高学年のこどもたちに手渡したい本です。

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復讐の誓い

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「復讐の誓い」
クロニクル 千古の闇5
ミシェル・ペイヴァー作
さくまゆみこ訳
酒井駒子 画
評論社 本体1800円

 次の巻がでるのに少し時間があく為に、刊行されるとあっというまに読んでしまうといわれます。なんといってもそれほど待たれるくらいおもしろいからでしょう。
 この巻でトラクはベイルを殺され復讐するためにシアジを追いかけます。オオカミのウルフとワタリガラス族の少女レン、ワタリガラス族の族長とフィン=ケディン、それにワタリガラスのリップとレックが一緒です。ベイルを殺したシアジはオーク族の魔導師で<魂食らい>のひとり、深い森の支配をもくろんでいます。深い森はトラクの生まれたところです。深い森は呪術に満ちていています。そこで暮らしている部族たちの生活の仕方、寝る、食べる、そのやり方が丹念にかかれていて、この作品をたんなる冒険物語でなく、立体的に深みのある物語にしています。
 森の火事はトラクを追いつめ、あやうく命を失いそうになります。その火事もさらわれた子どもを探しての母親の放火でした。その女はトラクを殺そうとしたのです。トラクはやっとシアジに復讐することができ、ベイルの霊は別れをつげていきますが、トラクの気持ちは晴れやかになりません。復讐するとは!この巻ではトラクの母親の秘密があきらかにされます。トラクの心をしばし平和にしたのは、レンの支えとレンへの愛、フィン=ケディンのトラクの母親をめぐっての自分の体験からきたアドバイスと誠実さ、それになんといってもオオカミのウルフのあたらしい家族でした。
 すっきりとした訳の良さでしようか。言葉ひとつひとつが丁寧にに訳されているので、知らない世界なのにあたかも現実の世界の中のように思いを巡らすことができます。最後の6巻目がはやくもまたれます。


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タイムチケット

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「タイムチケット」
藤江じゅん作
上出慎也 画
福音館書店 本体1200円


 もしかしたら魔法使いの家系なのに、今はつまらない生活を送っている、でも活躍する時が来た!とするハリーポッターの物語のようなことはありえない、ありえない物語としても、ゲームの世界の方がもっとおもしろいといま子どもたちは思っているようです。でも一方では、いつもの世界はつまらなくもうすこし冒険がまっていないだろうかとも、子どもたちは物語のなかに期待しています。
 この物語の主人公マサオには特別の才能がありません。どこにでもいるような子どもです。趣味は数字のならぶ電車のキップを集めること、特に自分の誕生日の4月4日のキップが欲しいと思っています。平成4年4月4日は手に入れられたけれど、昭和44年4月4日はまだです。
 夏休みになり、することなくつまらないので外に出かけるとネコに出会うのですが、ネコはマサオを招くようでついていくと路地に入り込みますが、ネコはいなくなって紙が落ちていました。この物語ではこの紙切れは時間限定のタイムトラベルのキップで、マサオは思い切って2時間指定して使ってみることにします。キップを手に入れるために昭和44年4月4日を指定して。
 最初に書いたように特別の冒険がまっていたわけではなく、一般書ではよく使われるタイムトラベルしておこったこと、この場合は父親やその友人、犬、剣道教室の先生や獣医の先生など、今のマサオに関係する人たちとの出会いでした。ただ、おとなの小説と違うのは、この時間のなかでマサオは自分がいろいろの人たちのつながりのなかで生きていると気がつくことです。マサオはすこし成長するのです。え!キップは手にはいったか?それは読んでみてください。

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おばけのトケビはわすれんぼう

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「おばけのトケビはわすれんぼう」
 李錦玉・朝鮮のむかし話1
李錦玉 文 金正愛 画
少年写真新聞社 本体1500円


 いうまでもなく朝鮮は日本から近い所にあるためでしょうか、日本の昔話と良く似たおはなしがあります。最近中国もふくめてだいぶ昔話集が出版されるようになりました。創作の絵本では韓国の絵本がたくさん日本でも紹介されています。韓国の昔話絵本ではこの本の作者の「さんねん峠」が教科書にもでていたのでおなじみです。
 この本は9編のお話がはいっています。「ももたろう」や「天女」のはなし、また「王さまの耳はロバの耳」のようなお話、あまり長くなく、大きな活字で総ルビ、ひとりでも読み易いお話ばかりです。
表題の「おばけのトケビはわすれんぼう」はトケビにお金を貸した時に、必ず返してくれるように念をついたら、いつもいつもトケビが返しにくるおはなしです。あまりメリハリのあるおはなしではなく、とても不思議な雰囲気のあるお話です。
 昔話なので一人で読むだけでなく、読んでもらうのにも適しています。運動会の練習で子どもたちも少しくたびれています。毎日一話づつ読むお話はいかがですか!

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二丁目の犬小屋盗難事件

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「二丁目の犬小屋盗難事件」
ー夏休みだけ探偵団ー
新庄節美 作
大庭賢哉 絵
日本標準 本体1500円




 あれ!どこかで聞いたことがある本だな?そうです、1988年に講談社からでていました。しばらく手にはいらなくなっていたのですが、読みやすくなって再販です。
 おとなに限らず子どもたちにも、探偵ものは昔から読み継がれています。その代表的なのは小林少年が活躍する、江戸川乱歩の作品です。でも、あれはちょっと怖いと思っている人に、元気な子どもたちが智恵を出し合って解決していく物語、しかもあんまり子どもっぽくなくて、というと以外とないものです。
 この本は塾に行けば新しい自転車を買ってもらえるということで、じつはあまり勉強が好きでない和戸尊(ワトソン)と学校はちがうけれど塾でとなりで仲良くなった飛田透(トン)、ワトソンの同級生の双子の姉妹、穂積冴と麗が町内で4つも犬小屋が消えてしまったことから、謎を解きながら犯人をつかまえる話です。しかも、犯人をつかまえるのに、夜中に家の人に内緒で見張るという冒険もあって、読み応えのある物語にもなっています。いま、探偵ものなどというとやたらとホラー的になっていて、テレビものも多いのですが、活字を読んで自分でも謎解きをしてみるおもしろさ、10歳位からの子どもたちに薦めたい本です。


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すごいぞプンナちゃん

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「すごいぞプンナちゃん」
へそをまげてもピクニックのまき
いとうひろし
理論社 本体1100円




 全ページに挿絵がしっかり入っている幼年向きの本です。
ちょっとへそまがりのプンナちゃん、言うんでなかったなぁ!するんでなかったなぁ!と思っても幼いながらのプライドがあって、ついしてしまう、そのままが描かれています。それをおとなは”かわいい!”とつい思ってしまいますが、言ってはいけません。本人はやせ我慢をしながらも自覚していますし、悩んでもいますし、でもすぐ立ち直っていくのはすてきです。
 63ページのなかに4つのおはなしがはいつています。たとえば、春になってプンナちゃんは川へピクニックに行くことにします。はりきっておべんとうをたくさん作って、なかよしのパンナちゃんを誘いにいきますがいません。一人はつまらない。むこうからヘンナちゃんがきます。ヘンナちゃんはプンナちゃんより自分は良い子と思っているので、いっしょにピクニックになんていやと思います。もし見つかったらどうしようと思いますが、ヘンナちゃんはちょっとも気がつかなくて通り過ぎて行ってしまいます。プンナちゃんの気持ちは複雑です。
 自意識過剰とおとなには言われてしまいそうですが(昔、教師に言われたことがあります。)こんなことは子どもならずも若い時は良く感じることではありませんか。作者の描く子どもはなかなか意味が深いですね。

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ポークストリート小学校のなかまたち

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9「みんなそろって、はい、チーズ」
10「コンクリートで目玉やき」
ーポークストリート小学校のなかまたちー
パトリシア・ライリー・ギフ作
もりうちすみこ訳
矢島眞澄 絵
さ・え・ら書房 本体各1300円

ポークストリート小学校のみんなの物語も10巻そろいました。
 9巻は2年生最後にクラスでピクニックに行くことになりました。バーベーキューもするし、みんな大喜び。でも、一緒になる友だちがいないエミリーは憂鬱です。なんといっても親友と一緒なら楽しいに決まっています。でも、思ったようにいきません。ひとり離れて森のなかへ、迷子になってしまいます。
 10巻目はいよいよ夏休みです。エミリーの家にはプールがあります。ビーストとマシューはエミリーと毎日プールで遊ぶことができてごきげんです。ある日エミリーは出かけていないので、マシューはガレージで目玉やきの実験をしますが、たまごはつぶれてそうじをしなければならなくなります。だから今日はエミリーの所へはいかれません。そうじをしているうちにマシューの家にしようとします。マシューは引っ越しをすることになったからです。とうとうマシューとの別れがきます。


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この物語にでてくる子どもたちは決して優等生ではありません。たとえば1巻目からでてくるビーストは<読み>がにがて、落第していて2年生を2度しています。エミリーも気の優しい子どもで、いじめられっ子、おねしょのくせのあるマシュー、かけっこもなわとびもだめで泣き虫のジル、先生も権威的な先生もでてきますが、子どもたちの目線にたって、子どもたちの気持ちを受け止め励ます先生が描かれています。(たとえば8巻目ターザンロープがこわくてしかたがないビーストとイライラのミラー先生の話)子どもたちはとてもいろいろのことを感じています。悩んだり、喜んだり、悲しんだり、この物語に出てくる、いわばおちこぼれの子どもたちに等身大の自分を重ねあわせて読む、それがこの本の魅力です。地味な本なので小学校低学年の子どもたちに手渡しで薦めたい本です。

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言葉の力「風の靴」

朽木さんの文は美しい、イメージが豊かにふくらみます。ていねいにきちんと書かれているから。でも、それだけでなく朽木さんご自身がとても豊かなものをもっていらっしゃる、たくさんの本を、とくに詩を読んでいらっしゃるからだとお話をお聞きして思いました。そして、柏村さんの絵がまたいいです。キラキラした希望に満ちた海です。
このことについては4月1日のブログ、3月29日のブログにくわしく載せてあります。特に3月29日は朽木さんを囲んでお話を聞きました。その感想も載せてあります。

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風の靴

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「風の靴」
作・朽木祥
画・柏村勲(カバー・見返し)
  服部華奈子(挿絵)
講談社 本体1600円

 3月29日に朽木さんのお話を聞く会を予定していたので、この新刊の刊行に気をもみました。しかも取次ぎの決算とぶつかってしまい、会に参加した人たちに読んでいただくのは間に合いませんでした。
私一人がともかく内容を知りたいとねばって直接おくっていただきました。
 柏村勲さんの画はさすがです。空と海と混じりあってキラキラと輝いている湘南地方の海、裏の見返しには相模湾をヨットが走っています。私は日本海の近くで幼少期を過ごしたのですが、太平洋の海はちがった輝きがあります。その絵がこの物語のはじまりです。
 海生は私立の中学受験に失敗します。兄は秀才、勉強だけでなく運動も抜群です。両親、とくに母親は海生の気持ちがわからず嫌な気持ちをずっと引きずったまま、しかも海生の良き理解者だったおじいちゃんが急死してしまいます。海生の気持ちはプツンと切れてしまいます。家出をしよう!おじいちゃんの別荘まで、おじいちゃんの残していたヨットに乗って。一緒に航海するのは親友の田明と見つけられてしまい乗せることになった田明の妹、そして、犬一ぴき、途中で大学生を助けて江ノ島から三浦岬の先端まで航海をする冒険物語です。もちろん海生は小学生時代ですがヨットの操縦の仕方は知っています。
 朽木さんの他の作品のようにとても自然描写が的確でていねいで美しい。海の上をタイトルのように風の靴を履いて進んで行くヨットと情景が、船のことを全然知らない私にもイメージがわきあがります。静かな文体のなかにはたくさんの詩や外国の本からの引用もあります。でも、読んでいて胸がワクワクするのはこの海とヨットについての確かな表現力だとおもいます。(なんと船舶免許をもっていらっしゃるそうで、びっくりしました。)
 ただちょっぴり残念だったのは話が盛りだくさんすぎて、つい朽木さんには続編がありますか?とお聞きしてしまいました。最後の秀才の兄が船酔いをするからヨットはだめ、という落語のようなオチはいらないのではないだろうか、おじいちゃんと父親との確執や遺言したものを見つけるためのところなど、中途半端に思えました。これだけの冒険を描ききる日本の児童文学の作家はなかなかないので、たんなる冒険小説としても充分ではないか感じました。でも、きっと朽木さんはそれだけでなく、物語をとおして訴えたいものがあるのでしょうね。
 この夏休み、男の子たちを中心に薦めてみたい一冊の本です。

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おばけのジョージーてじなをする

おばけのジョージーまたまた大活躍です。

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「おばけのジョージーてじなをする」
ロバート・ブライト作・絵
なかがわちひろ訳
徳間書店 本体1200円




このシリーズも4冊目になりました。そのなかでもおおてがらをする巻に人気があります。いつも話すことですが、この本の型が少しなまいき?さんになってきた子ども、一人で文字を読みたい気持ちの年齢の子どもにちょうど良いのです。絵本でもなく、しいていえば絵物語とでもいったら良いでしょうか。各ページに絵が大きくあって、しかも文もしっかりあるのだけれど、行間があいていて読み易い、内容もちょっとドキドキしたりユーモアがあってと、1年生前後の子どもたちの注文です。
 ところで、この巻のおはなしは村の牛小屋が火事で焼けてしまい、新しく建てることになります。ジョージーが住んでいる家のホイッティカーさんは手品をすることになるのですが、いくら練習してもできません。そこで、ジョージーが手助けをします。なんといってもジョージーはおばけなので大丈夫、なかよしの友だちと協力して大成功です。かわいいおばけのお話です。
いま、福音館書店では、このジョージーの絵本が復刊されています。


9784834007251

「おばけのジョージー」
ロバート・ブライト作/絵
光吉夏弥 訳 本体1100円

地味な色の絵本ですが、素朴でいかにもおばけらしくて私はなかなか捨て難い絵本です。子どもたちはギィーとなるところが好きです。限定復刊なのでお求めは早めに。

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トビー・ロルネスの冒険

9784265040940

9784265104796

「トビー・ロルネスシリーズ」
1空に浮かんだ世界
2逃亡者
3エリーシャの瞳
4最後の戦い

ティモテ・ド・フォンベル=作
フランソワ・プラス=画

伏見操=訳
岩崎書店 本体各900円

 1.5ミリの小さな人トビー・ロルネスの冒険物語が完結しました。少し時間をおきながら出版されたので、”もう!前は忘れちゃうよ”と子どもたちにはいわれてしまいましたが、楽しみに待っていた読者がいました。(08年9月13日のブログに紹介)1巻の始まりのトビーは7歳で大きな木の世界に住んでいました。父親シムは学者であたらしいエネルギーを発見していました。そのため、木の世界の支配を目論む者たちに追われる身になります。しかも親友のレオもどうしたことかトビーの命をねらいます。でも、最後までトビーは両親を助け出すことと、冒険の途中で行き会ったエリーシャの愛を信じて大きな木の世界を救おうとします。何度も捕まり、脱出、そして草原の民に助けられ勇気をふりしぼって生きていきます。ジョー・ミッチとの対決、親友だったレオとの決闘、木の命がつきかけた時、トビーの冒険はやっと実を結びます。
 たくさんの登場人物がめまぐるしく活躍し、あっちこっちへの移動と、そのなかでおとなになっていくトビーと仲間たち、できれば4巻一気に読みたい物語です。また、大きな木という舞台のなかの物語なので、読みながら映像にしたらおもしろいだろうなぁとも思いました。正と悪という二元論の物語なので、10歳位から冒険物語として読み楽しむことができます。この春休み、5月の連休など緑も豊かになる長い休暇におすすめの本です。

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プーカはなにもの

 「プーカと最後の大王」について伊東良徳の超乱読読書日記さんから読後感文が送られてきました。
たしかにプーカは何者かよくわからない、それにJJの子どもっぽいこと同感です。もしかしたら作者は続編を考えているのではないでしょうか?時間のない国へいってしまったその後とか!
JJは親としては自分勝手ですよね。自分の音楽、楽器のことしか考えていないというか。でもまあゆるしてあげましよう。ちょっと、ドキドキした楽しい物語でした。

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学校物語ーターザンロープがこわいー

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「ターザンロープがこわい」
ポークストリート小学校のなかまたち8
パトリシア・ラリー・ギフ作
もりうちすみこ訳
矢島眞澄 絵
さ・え・ら書房 本体1300円




 低学年向きの学校物語がこんなに続くのはとてもめずらしいことです。それに、シリーズものはだんだん読まれなくなっていくのですが、この本は愛読者がついていて、楽しみにしてくれます。登場人物が普通の子どもたちというより、時には落ちこぼれてしまうような子どもたちだから等身大に感じられるからでしょう。この8巻目もターザンロープに登るのがこわくてできないリチャード、けれど幼いながらもプライドがあってこわくて登れないとは言いたくない、そしていつもイライラと怒る怖い先生に知られるのはとても耐えられないと思っている、その子どもの気持ちが良く書かれています。はじめのうちはママが登ってはだめだといっているとママのせいにしてなんとかごまかそうとします。
 教室ではトカゲを飼うことになりました。ターザンロープに登るのは平気だけれどトカゲは恐い、えさのコウロギが怖くて触れない友だち、リチャードはみんなそれぞれに、にがてのことがあるのを知ります。そして、怖い先生の一声でターザンロープに挑戦し、半分は登れるようになります。
 嫌なこと、恐れ、などに対してこの物語に登場する子どもたちは元気でからっとしていますし、登場する先生も重く書かれていません。だから読んでいて、気持ちが軽く明るくなります。こんなところが
読まれる秘密なのでしょう。

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キップコップどこにいるの?

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「キップコップどこにいるの?」
文と絵 マレーク・ベロニカ
訳 羽仁協子
風濤社 本体1300円



 シリーズ7册目の新刊です。キップコップは「せいようとちの木の実」から生まれました。この実は食べられませんが、この実でお人形や動物を作って遊びます。キップコップはテイップトップとキピコピと森に住んでいます。朝起きて食事をして、しばらく雨が降らなかったので水を汲んで小さな松の木にあげたり、その後みんなで遊んだりして毎日楽しく暮らしていました。ところがある日大風が吹いて雨が降り、みんななんとか家の中に入れましたがはっぱちゃんだけがいません。大雨のなかキップコップははっぱちゃんを探しに嵐の中に出かけていきました。やがて嵐は止み、はっぱちゃんは見つかりましたが、探しに行ったキップコップが帰ってきません。みんなで探したのですが、なかなかみつからなかったところこうもりが教えてくれました。キップコップは穴に落っこちてしまったのです・・・。
 この絵物語はとても色がきれいです。作者はハンガリーの国立人形劇場で働いた後絵本作家になった人です。日本では「ラチとライオン」が子どもたちに人気があります。見返しにはキップコップたちの住んでいる森のマップ、そしてこの物語のイラストが描かれています。見開きの左側には文が書かれているのですが、各ページにきれいな色紙が使われています。右側は白に絵が描かれています。その色のバランスが良くて、しかもハンガリーなどの東欧的な色づかいがされています。(「ラチとライオン」は墨の中に命のシンボルのリンゴの赤が印象的ですが)
 シリーズのどの本もちょっとした冒険と遊びのようすが描かれていて、ひらがなが主なので、一人で本を読む子どもにも読みやすいのはうれしいことです。

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すりばちの底にあるというボタン

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「すりばちの底にあるというボタン」
大島真寿美
講談社 本体1300円


 すりばち状の敷地にたっている団地、名前は「すりばち団地」、晴人はいまはこの団地でおばあさんとおじさんと暮らしています。晴人は母親を知りません。父親と大きなマンションにすんでいて、遠くの私立の学校へ通い、身の回りのことはお手伝いさんがめんどうみてくれて、友だちはネットのなかになんでも話す?二人の友だちがいます。けれども、ある日突然父親はいなくなり、施設に預けられ、それから父親の弟のおじさんが迎えにきてくれて、いまの生活になったのです。おじさんは中国語の翻訳家、中国人の奥さんとは離婚、子どもをつれて奥さんは中国に行ってしまいます。おばあさんは晴人をかわいがってくれ、あいさつなどにはきびしいけれど、わりあいにほおってくれ、孤独だけれど穏やかな生活が続いていました。ある日おじさんから父親との子どものときの話を聞いていたとき、この団地に伝わっている、<すりばち団地の敷地の底にあるボタンをおすと夢がかなう>という言い伝えを聞きます。晴人の願いは父親に会いたいということでした。ところがそのボタンをなんとなく探しているうちに同級生の雪乃と薫子にあい、その言い伝えのことをはなすと、雪乃と薫子はそれは違うといいだします。夢がかなうのでなく、すりばち団地が消えてしまうのだといいます。
三人は本当をさがそうとします。いろいろ調べてみるとこの二つの言い伝えがあり、おとなたちもまた、真相を探しています。雪乃の兄邦彦もこのはなしに加わります。邦彦が知っているのは沈んでいく団地を救った英雄、少年のはなしでした。
 いま、あちらこちらでいわれている地域社会の崩壊と希薄な人間関係と不安をよぶ都市伝説、そのなかで希望や未来はいったいあるのか、各々の家庭状況や生き方をからめて、子どもたちが考えていこうとする、それに大人との関わり、ときにはユーモアを交えて物語っています。子どもたちの学校生活はほとんどでてこない、各々ちがった家庭形態をもっている子どもたち、地域という土俵をすえている所に、作者の思いがあるのでしょう。その意味ではやや、大人よりの土俵になっているかもしれません。
 この物語はweb上で連載されていたものですが、こうやって本の形になると、いろいろ考えながら読み込むことができること、PCと本の違いを再認識しました。

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いきいきとしている子どもたち

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「盗まれた宝石」
ベイカー少年探偵団
アンソニー・リード
池央耿・訳
評論社 本体900円



 このシリーズも5巻目になりました。ダイアモンドがはめ込まれている有名なティアラが盗まれました。容疑をかけられたのは召し使いの少女ポリーです。ウィギンスを中心におなじみのベイカー少年探偵団が活躍して事件は解決しました。もちろんホームズも変装して、あわやというときに登場します。
この種類の本はこれ以上かけません。犯人が簡単にわかってしまうとおもしろさが半減しますから。
 ただ、この物語が犯人探しと単なる謎解きだけでなく(実際推理小説としては犯人が解り易い)この少年団の子どもたちはとても魅力的にかかれています。私が昔小学生だった頃のこと、それ以後本好きになった物語がありました。そのなかの1冊にケストナーの「エーミールと探偵たち」があります。その物語のなかの子どもたちが活き活きと活躍するのにすっかり憧れてしまいました。この本のシリーズの魅力も同じです。まず、おとなから自由(でも、尊敬する、たよりにできるおとな、この場合はホームズたちがいます。)各々個性的で、その個性を活かして貧しいなかでも元気に生きています。悪いおとなもでてきますが事件の背景や時代の背景がきちんと書かれていて、そのことが物語に厚みをもたせています。金持ちの有名な名家の内実や煙突掃除の子ども(体の小さい子どもがこの仕事をさせられることが多かった、そしてそのあげく結核で死ぬ子ども=孤児が多かった)の様子、あとがきにあるようにこの物語にでてくるハットン・ガーデンとその中央にあるブリーディング・ハート・ヤードとそこでの事件なども興味深いことも書かれています。作者はそれらの背景をを上手にミックスして、そこに子どもたちを活躍させています。
 

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アキンボとクロコダイル

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「アキンボとクロコダイル」
アレクサンダー・マコール・スミス/作
もりうちすみこ/訳
広野多珂子/絵



 アキンボのはなしも3冊目です。アキンボのお父さんは動物保護区のパトロール隊長です。この物語はアキンボとクロコダイルのおはなしです。アキンボのところへ動物学者のジョンが来ます。ジョンはクロコダイルの孵化の研究をしていて、クロコダイルの巣を見つけ、生まれた赤ん坊に標識をつけ、大きくなるまでの行動範囲や生態を研究しています。調査チームにアキンボも入れてもらうことができでかけます。クロコダイルの巣もみつけました。けれどある調査日にジョンはクロコダイルにおそわれ大けがをしてしまいます。このままにできません。クロコダイルがいる川を渡って助けを呼びに行かないと、ジョンの命はお終いになってしまいます。勇気をふるってアキンボは助けを求めにお父さんたちの所へいきます。凶暴なクロコダイルとアキンボの戦いです。
 ワニはすきですか?大きくて怖いけれど、赤ん坊はかわいい?!どんなふうに危険にむかっていくのか、勇敢なアキンボがとても魅力的です。
 この出版社の本は教科書体の活字が使ってあったり、地味ですがとても読み易くできています。この本も活字も大きく3年生位の冒険と生き物が好きな子どもへぜひおすめです。挿絵を描いている画家はかわいい絵本が多いのですが、ワニなどが的確に描かれているこの本の挿絵は、この物語の世界をうまく描いています。


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かりんちゃんと十五人のおひなさま

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「かりんちゃんと十五人のおひなさま」
なかがわちひろ
偕成社 本体1200円



 近年2月ちかくなると、すっかりバレンタインデーにおかぶをとられたようにチョコレートの話題があふれています。不況なんてどこ吹く風、万単位のチョコレートがあるとか、残念ながら私はおめにかかったことがありません。お菓子屋さんの陰謀だなどといってはいけませんよ。流行る理由があるのでしょう。まず、食べ物、贈ったり贈り返したり、現代人は人のつながりに飢えているから。それにひとりでも絵になるから。自分に買う人も多くなっているとのことです。チョコレートは男も女も子どももおとなも年寄りにも幅広く楽しみにすることができます。だから、近年すっかりお株をとられた「ひなまつり」、友だちをよんだり、よばれたりはめんどくさくても、チョコは買って来てもいいし、その気になれば親しい人で、家族で手作りしてもいいからと言っていた人がいました。
 このお話の主人公かりんのおひな様は犬のおひなさまです。欲しいと言っていたら、前からいわれていたようにひいおばあちゃんはホームに入ることになって、それはそれはりっぱなおひなさまが届きました。しかも、そのおひなさまは由緒ある家のおひなさまのようで、どうも張り合っている家のおひなさまが近くにあるようです。かりんの友だち3人もまきこんで、おひなさま同士が争うことになってしまいます。
 作者は女の子の世界を描くのがとても上手です。女の子同士の独特の日常の世界を、少し不思議な世界に広げて、ほんわりとした奥行きのある物語にします。言葉遊びがあったり、なぞなぞがあったり、この物語からはおひな様のお囃子の音まで聞こえてきそうです。ただ、男の子は読みませんし、小学校高学年になりちょっとおませさんの女の子は離れてしまい、読み手が限定されてしまいます。
 作者は絵も描くし、翻訳もする人なので、物語の世界はとてもバランスがとれていて、おとなにも楽しめる本になっています。

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ふたごの兄弟の物語

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「ふたごの兄弟の物語上・下」
岩波少年文庫
トンケ・ドラフト作
西村由美訳
岩波書店 本体各720円


 ああ、おもしろかった!久しぶりに楽しい本を読みました。1ヶ月も前から側に置きながら、仕事がつっかえて読むことが出来なかったのですが、想像していたとおりとっても楽しく読みました。
 章のはじめにこのお話を生み出したもとになった昔話や古典の言葉が引用されています。最初はアンでルセンの「雪の女王」です。昔、バナビ国という美しい都があって、貧しい靴屋の夫婦が住んでいました。ある日2匹の子犬が来てえさをねだります。おかみさんが飼ってやろうといいます。はじめは靴屋は大反対でしたが、根はやさしい人なので飼うことにします。ところが次にはネコ、ハト、みんな2匹ずつです。やがて、靴屋に生まれた子どもも二人、双子の男の子でした。そっくりで両親しかどちらがどちらか見分けられません。二人は元気な若者に成長します。お兄さんのラウレンゾーは美しいものを作る貴金属細工師になり、弟のジャコモは冒険を求めて旅をします。二人はそっくりなことを利用して、智恵をだしあいさまざまな冒険をくぐりぬけ、仕事をみつけ、恋をして幸せに暮らしたそうです。時には牢屋にいれられたり、殺されそうになったり、ハラハラとした冒険の話や謎解きもあって、冒険推理小説を読んでいるようです。古典や昔話風な作品なので、背景も構成も古いように思われるかもしれませんが、なんといっても二人が活き活きと書かれていて、とても50年近く前の作品にはおもわれません。魅力的な挿絵も作者が描いています。以前に出版されている「王への手紙」やその続編「白い盾の少年騎士」も好評でしたが、それよりは読み易く楽しい作品です。
 作者は少女時代3年間日本軍収容所で暮らし、この作品はそのときに発想されたもので、作者最初の本、そのことなどは訳者があとがきにくわしく書いています。
 寒い冬をおもわず忘れさせてくれる楽しい本です。

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女の子のあこがれ物語

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「リンゴの丘のベッツイー」
ドロシー・キャンフィールド・フィッシャー作
多賀京子・訳
佐竹美保・絵
徳間書店 本体1600円



 赤ちゃんの時に両親が死んでしまい、街に住む大おばさんに育てられた女の子ベッツィー、大おばさんが病気になったために、違う親戚に預けられます。ベッツィーは9歳になっていましたが、食も細く神経質な子どもになっていました。ベッツィーが暮らすことになったバーモンド州の農場はりんごとカエデ糖、そして、鉱石(大理石など)がでる豊かな自然たっぷりの美しいところです。人々が暖かく見守るなかで、ベッツィーはしてもらうだけでなく、自分から行動することもおぼえ、健康になっていきます。
 1917年に出版された本で、アメリカの農場物語というと「ローラー・インガルス著の大草原シリーズ」を思い浮かべる人もあるかもしれませんが、開拓をしているわけではないので、それほど自然が厳しくありません。どちらかというと、むしろ「赤毛のアン」に近いかもしれません。でも、それとも少しちがいます。「赤毛のアン」よりはベッツィーは幼く、はじめは街に過保護に育てられていたこども、農場にはおじさん、おばさんが二人、その人たちは普通の素朴な人たちです。
 読んでいてべッツィーに小学校高学年位の女の子は憧れるかもしれません。両親はいないけれど、面倒を見てくれる親切な親戚がいます。貧乏の経験がありません。きれいな自然がたっぷりあって(けっして汚くない)イヌやネコのかわいい動物がいて、それも自分のものにできる、いじわるな子どもたちがいなくて、おとなは皆良い人で、ベッツィーの世話をちゃんとしてくれる(一人だけちょっとベッツィーを預かりたくない人がいますが)明るく安心して読める、ちょっと涙がでそうな物語だからです。
 都会で暮らしている今の子どもたちはどんなふうに読むのでしょうか。聞いてみたい、むしろ児童文学の分野でない方が良いように思いました。元気のないあなたにぜひおすすめです。


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鬼は外、福は内

 K文庫の人たちとの読書会、風のない穏やかな一日でした。会場の入り口に大きなコブシの木があって蕾がずいぶんふくらんでいましたが、2月はまだ油断ができません。2月の雪は気温が低いので積もるとなかなかとけません。3月では土がそろそろ暖かくなってくるので、雪が積もっても雪解けは早いと子どもの頃聞かされました。湿度が低いので冬の空は高くきれいです。
 帰りに買い物に寄ったスーパーで、ひいらぎの枝と豆や落花生をみつけました。節分です。時々子どもたちに読む本のなかに、行事に関係のある本のことの相談をうけます。節分ではやはり鬼の本、ちょっと年配の方は「ないた赤鬼」のことを聞かれますが、残念ながらおとなが好きなほどこの本を子どもは好きではありません。わたしのお薦めはなんといっても次の絵本です。

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「かえるをのんだととさん」
ー日本の昔話ー
日野十成 再話
斎藤隆夫 絵
福音館書店 本体800円

 おなかが痛くなったととさんは和尚さんに相談します。虫退治に蛙を飲んではみたものの、おなかのなかでは今度は蛙がさわぎ、蛙たいじに蛇、雉、猟師、鬼、つぎつぎとすすんでいきます。最後の鬼はどう退治したらよいでしょうか。和尚さんの智恵は節分の豆、おしりの穴から鬼は逃げ出していきます。めでたし!めでたし!すっとぼけた和尚さんのしたこと、おかみさんのおおらかさ、庶民のエネルギーが感じられる昔話です。それに絵がとってもいいのです。斬新な絵でこのお話のおもしろさが充分に描かれています。
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「菜の子先生はどこへ行く」
富安陽子 作
YUJI 画
福音館書店 本体1500円


 この本はシリーズの3巻目、3学期のことなので雪女からはじまって卒業式までのお話がはいっています。なかに節分の話があります。節分では鬼とおにごっこ。作者は子どもたちの日常の世界にちょっとみえる不思議なことを楽しい話にしています。もっともその不思議な世界が見えるのは子どもの特権ですが。
 「鬼」といえば、気がつかないかもしれないけれど、誰でも自分の心の中に鬼が住んでいるのではないでしょうか?静かにしているとき、ときには暴れまわるとき、いったい「鬼」とは? 昔の人たちはどんなことを考えていたのでしょう。

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 「鬼がでた」
大西廣 文
梶山俊夫 え
福音館書店 本体1300円
たくさんのふしぎ傑作集


 鬼の百科です。小学校高学年の子どもたち向けの本なので、絵や写真もたくさん入っていて読みやすくなっています。もちろん、おとなにとっても良い入門書です。

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The Book of Everything

 「不幸な少年だったトーマスの書いた本」
 9784751522103
フース・コイヤー 
野坂悦子=訳
あすなろ書房 本体1200円



 主人公のトーマスは9歳、「あらゆることの本」という秘密のノートをもっていて、おこったこと、感じたことをこのノートに書いています。もちろんこのノートは秘密のノートです。というのは、トーマスには友だち等に知られたくない悩みがあるからです。
 このノートをつくるキッカケになったのは、他の人には見えない事が自分には見えるのだと、ある日アラレで街路樹のはっぱがバタバタと落ちるのを感じたからです。(現実には葉っぱはまだまだ樹々にたくさんついていた。)その感じた事を書いていきたいと思ったからでした。
トーマス家には他の人に知られたくない秘密がありました。それは、父親が自分の考え方や意に添わないことがあると家族に暴力をふるうことです。どうやって、だれが、その父親の暴力にノンと言ったか、この物語ではトーマスの家族の再生が、ときにはユーモアを交えながら書かれています。
 特徴的なのはこの物語が家庭内暴力のことや、暴力を振るうようになった父親の単なる性格だけの問題として描いているだけではなく、その時代的な背景が描かれていることです。最初にこの物語の背景、1951年戦争でナチス・ドイツに占領されていたオランダの、戦後人々の価値観が大きくゆらいだ時代が書かれています。トーマスの父親は熱心なキリスト教徒で、自分の考え方がなににもまして確たるものだと思っています。女、こどもは自分に従うものとおもっています。従わない者をみると怒りでいっぱいになって暴力を振るってしまうのです。自分は強くて導く立場にいる、そういう偏狭な考え方は逆に弱い存在なのだということがわかっていない。いや、感じているからこそ暴力で他の人を従わせようと思うのでしょう。
 日本では事件がおきるたびに、単に感情をコントロールできない、おとなになっていない大人の存在が話題になります。だから道徳教育が必要だという人がいます。でも、ほんとうにそれだけの問題なのでしょうか。毎日不況で雇用状態が悪くなるばかり、とても社会が不安な時代になっています。そのことは当然暴力的な社会になっていく原因です。
 隣に住んでいるファン・アーメルスフォールド夫人はトーマスに勇気をもつということ、自分と向き合って真摯に生きていくことを具体的に教え励ましていきます。アーメルスフォールド夫人だけでなく、トーマスの母親や姉さん、おばさん、義足の少女、トーマスのまわりにはたくさんのすてきな女の人がいます。トーマスは父親がひざまずいて目を閉じて祈っているのでなく、考え事をしてほしいと願っています。

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わたしたちはなにからできているの?

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「せかいはなにでできてるの?」
こたい えきたい きたいのはなし
キャスリーン ウェドナー ゾイフェルドさく
ポール マイゼル え
ながのたかのり やく
福音館書店 本体1300円

今日はとても寒い一日でした。家の中に一日いたので気がつきませんでしたが、少し雪がチラチラしたとか、夜そんなメールがはいってきました。
 わたしたちのまわりにあるものを物質といいます。それは見えるものもあれば、見えないものもありますが、著者はこの絵本のなかで「ぶっしつは みんなこたいか えきたいか きたいかのどれかです」といっています。とうぜん変化します。この絵本はイラストをつかってその変化をさまざまにとてもわかりやすく描いています。
 それなら私たち人間はどうでしょうか。


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「宇宙のかけら」
竹内薫
片岡まみこ え
講談社 本体1429円




 この絵本というより絵物語ではカロアというねこがいろいろと教えてくれます。カロアがこんなにおりこうねこになったのは、ひろってくれたカオルという男の子が宇宙の研究をしていて、それをみているうちにおもしろくなって宇宙ねこになったのだからそうです。カロアはとても賢い宇宙ねこです。ところで宇宙ってなんでしょうか?なにからできているのでしょうか?そして、私たち人間はなにからできているのでしょうか?なぜ、この宇宙があるのかはまだわかっていません。それだけでなくこれからどうなるのかもまだよくわかっていません。ただ、星のかけらがあつまったものである私たちは、死んでしまってもそれは星のかけらに戻ること、そして、新しい私たちが生まれてくるのです。
 このねこのカロアは2008年に18歳の命をおえていること、著者は哀悼の意味も含めて宇宙のなりたち、命のなりたちを描いています。参考図書が最後にたくさんあげてあります。
 ブルーバックスのあたらしいシリーズ、科学の本というよりイラストいっぱいの科学と哲学がいしょになったような本です。
 

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死とむかいあった子ども

 とてもきびしい本です。主人公は11歳、YA向きではないかと思ったのですが、あえて10歳位からの子どもたちにも読んで欲しいおもいます。
9784037449100


「永遠に生きるために」
サリー・ニコルズ作
野の水生 訳
偕成社 本体1400円


 名前はサム11歳の少年、彼は白血病です。はじめは余命1年というように思っていたのに、物語はクリスマスからはじまって、4月14日午前5時30分頃にサムは永眠します。この物語はその主人公サム自身が書いた物語です。サムの病気を絶対認めない、認めたくない父親と母親、(特に避けつづける父親)冷静にそれでいて愛情深く励ますおばあちゃん、自宅学習の先生は飄々としています。真実をかくすことなく、力のかぎりサムをはげますドクタービルや看護士さんのアニー、たくましくにくたらしいことばかりいうけれど、幼いなりに兄を理解しようとする妹エラなど、家族や身の回りの人々がサムの病気にとまどいながらもサムの病気に真摯に向きあっていきます。もうひとり、サムの悪友フェリックスは、だれも答えてくれないサムの質問に、おおいに皮肉まじりに答えてくれるのですが、そのフェリック自身もガンであっというまに死んでいってしまいます。だれにも答えられないサムの質問1、そもそもなぜ、人は死んでしまうのか?2、死んだら、人はどこへゆくのか?3、どうしたら、自分は死んだんだってことがわかるのか?”ぼくはほんとうのことを知るのが好きだ”サムはみんなに問いかけ日記を綴ります。
 この本は答えのでる本ではありません。今流行のあの世のことを書いた本でもありません。もちろん癒し本でもありません。読んでいてつらい本、答えることはできないけれど、一緒に考えたいとしか私には言えないのですが、10代のあなたたちにぜひ読んで欲しい本です。

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青いトラ

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「青いトラ」
テレザ・ホルヴァートヴァー文
ユライ・フルヴァート絵
関沢明子 訳
求龍堂 本体2000円




 とても不思議な本です。帯には物語絵本となっていますが、確かに絵がたくさん入ってはいるものの絵本というより物語の本でしょう。絵は版画、2色で描かれています。挿絵のいれかたも見開きの左右に短い文がついて入っていたり、小さな物語になっているのもあります。妻が文、夫が絵、2人は2000年にできたチェコで注目されている出版社、バオバオ出版のメンバーとのことです。
 ある日突然街に小さな青いトラがあらわれ、追われてヨハンカとマチアーシの親が仕事をしている古い植物園に逃げ込みます。ヨハンカの母親とマチアーシの父親は隣同士で仕事をしているのにヨハンカの父親が家をでていってからほとんど口も聞きません。でも、ヨハンカとマチアーシは兄妹のように仲良しです。ヨハンカは物語をノートに書いていて、その物語が全体の物語の中に入っています。植物園をつぶしてショッピングセンターをつくり、しかもどこからともなく現れた青いトラを、捕まえて儲けようとする市長とその友人の悪人、その悪人たちに捕えられている生き物たちは、翼竜や双頭のワシ、人間の言葉を話す黒鳥など風変わりなものばかりです。最後には植物園の植物が異常に成長して、大洪水がおこり、植物園は島のようになり、ヨハンカとマチアーシ、母親も父親ももちろん青いトラも流されてどこかに行ってしまいます。現代の寓話とも読む事ができるし、ヨハンカとマチアーシの冒険物語として読むこともできます。
 あとがきで訳者が作者のこんな言葉を紹介しています。「善はいつも、悪にうち勝つとはかぎらない。しかし悪がいっとき勝利しようとも、善はいつも人知の及びがたい、不思議な力でつづくものである」

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あたしが部屋から出ないわけ

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「あたしが部屋からでないわけ」
アメリー・クーテュール作
末松氷海子 訳
小泉るみ子 絵
文研出版 本体1200円




 リュシーは9歳の女の子、おとうさんと新しいおかあさんのイザベルとその間にうまれた小さな弟ルカと暮らしている。リュシーを生んですぐに死んでしまった母親のお母さん、リュシーのおばあちゃんが、すっかり生きる力がなくなってしまったおとうさんからリュシーをひきとって育ててくれた。けれど、そのおばあちゃんも死んでしまい、リュシーは田舎のおばあちゃんの家から引越してきた。おばあちゃんが恋しい、なにもかも腹立たしくてつまらない、おばあちゃんの家からつれてきた小鳥「サクランボちゃん」だけがリュシーの慰めだった。サマーキャンプのことからリュシーは自分の部屋に閉じこもるストライキをはじめる。けれどはじめきらいだったルカが「サクランボちゃん」と仲良しになるのをみて、ルカにおばあちゃんの家のまわりや小鳥たちをみせようと思い、家をでるが途中で保護されてしまう。
 悲しみのあまりに心を開かなくなり、閉じこもってしまう子どもの声にならない叫びと、誰も解ってくれないとおもう怒りを抱え込んでしまう子どもの心が、とても良く書けている。特に小鳥と弟ルカと義理の母親のイザベルが、リュシーの心に寄り添い、語りかける最後の場面が印象的だ。おばあちゃんが死んだとき流さなかった涙が、イザベルの言葉を聞く事で大泣きしてしまう場面におもわず、そんなに泣くことができるのだからリュシーはもう大丈夫と思ってしまった。
 子どもだけでなく、おとなでもどうにもならないくらい悲しい事がある。ただ、泣くしかないとおもうこともある。あるおとなに”泣いたらいいのですよ、ご主人とやっぱり話し合って!”とつい最近言った事を思い出した。

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ウィロービー・チェースのオオカミ

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「ウィロビー・チェースのオオカミ」
ジョーン・エイキン作
こだまともこ訳
冨山房 本体1619円


 クリスマスのプレゼントを求めにいらっしゃる方で賑やかな毎日です。少しでも子どもたちに楽しい本を、と探しに来店される方々のお話を聞きながら本を選ぶのはとても嬉しいことです。一年にこの時期だけいらっしゃる方、幼い子どものサンタさんになるご両親、一昨日は半年にもならない初めての子どもと妻のためにといらっしゃった若いお父さん、すぐその後には娘のために(成人している)といらっしゃった50代のおとうさん、閉店間際だったのでゆっりと本を選んでいただけました。
 10代の子どもといっしょの方は、クリスマスプレゼントというより、冬休みに読む本を買いにいらっしゃいます。このお休みのお天気はどうでしょうか?不況のことでもあり、あまり遠出をしないでゆっくり読書ができるお休みになるかもしれません。そんな人たちにお薦めです。しばらく出版されていなかったエイキンの「ダイドーの冒険シリーズ」の第一巻にあたるこの本は装丁、訳者があらたに出版されました。勇敢で元気なポニーとロンドンからきたいとこのおとなしいシルヴィアの冒険物語です。エイキンのこのシリーズはファンタジーとはちょっとちがって歴史上の事件が背景にでてきたり、ちょっとかおをだしたり、かといってリアリズムな物語でもなく、すこし不思議な作品です。どれもドキドキする冒険物語。きっと冬休みのたのしい読書になること請け合います。
 はやくつづけて続刊がでるといいと待たれます。


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フィンランドの神々のおはなし

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「カレワラ物語」
フィンランドの神々
小泉保 編訳
岩波少年文庫 本体640円


フィンランドの天地創造からはじまって、18章のお話がはいっています。私が北ヨーロッパ、日本からはるか離れた国に興味をもったのは、やはり「指輪物語」を読んでからでした。ほぼ日本と同じ面積の小さな北の国、オーロラと森と湖の国、そこに伝わっている叙事詩をあつめたのが「カレワラ」というタイトルで出版されて、この本はその翻訳本の岩波文庫「フィンランド叙事詩 カレワラ」からとりだされています。1935年に医師のエリアス・リョンロートが農村を尋ね歩き記録したものです。くわしくは「カレワという部族の勇士たちの国」という意味とのことです。すべて韻をふんでいます。叙事詩なので当然うたわれます。呪術の力、英雄たちの活躍が描かれています。
 この本のなかの17章「月と太陽の誘惑」のおはなしはバーバラ・クーニが美しい絵本にしています。


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「北の魔女ロウヒ」
バーバラ・クーニーえ
トニ・デ・ゲレツ原文
さくまゆみこ 編訳
あすなろ書房


 歌の名人のワイナミョイネンがカンテレをひいて歌うとすべての生き物がその魅力にとらわれます。魔女ロウヒはそれをやっかんで月と太陽をひとりじめして隠してしまいます。ワイナミョイネンは鍛冶やのイルマリネンの力をかりて月と太陽をとりもどします。

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また、シベリアを舞台にM・ミトゥーリチが絵本を描いています。(福音館書店刊)春がきてみんなが喜んでいるとお日さまが突然かくれてしまいます。この絵本ではかくしてしまうのはフクロウ、それをたすけにいくのはクマとウサギ、シベリアの昔話がもとになっている、水彩の輝くばかりの明るい絵本です。
 フィンランドはキリスト教をひろめようとするスウェーデンに占領され、またスウェーデンはロシアに戦い敗れた為にフィンランドがロシア領になったという歴史があります。自分の国の言葉と文化を守ろうとするフィンランド人の心が「カレワラ」を伝えているのです。

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ケンケンとムンムン

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「ケンケンとムンムン」
ぶん なんぶかずや
え  たしませいぞう
福音館書店 本体1600円


 小学校1年生位からの子どもたちに人気がある「ネコのタクシー」の作者の新刊です。ネコのお医者さんである作者は、今回は自然のなかの小さな妖精の兄弟たちのお話をかきました。南の海=沖縄の方?で小さな妖精ケンケンとムンムン、父親はケンムンといって毎日太陽を東の海からひっぱりあげて、夕方には西の海に沈めるのが役割です。母親はミンミン、日が沈むと月を呼ぶ役割があります。その子どもケンケンとムンムンのお話が5話はいっています。ケンケンとムンムンはごたぶんにもれず、元気で好奇心がいっぱい。たとえば、自分たちに仕事が与えられるまで成長するのがまちきれないケンケンとムンムンは太陽を早くに海から引っ張り上げてしまい、まわりを混乱させてしまいます。怒る父親を年寄りの妖精磯じいが間に入って父親をなだめて、ケンケンとムンムンにはちゃんと仕事をするという責任感を教えます。早々と父親のいうことをきかないで、家を出て行ってしまったケンケンとムンムンのお兄さんが冬にかえってきたときも、間にはいって父親に取りなしてくれます。
 でも、こんな話が説教くさくないのは、挿絵というより絵本のようにいっぱい絵が入っていて、画家ののびやかな楽しい絵の力だとおもいます。画家の田島さんは大病後、とてものびのびした明るい絵、自然の絵が多くなりました。この絵も南の海の感じ、小さな妖精のこどもとその他の生き物がかわいい、父親のちょっと子どもっぽい描き方なども充分に描かれています。
 お話も絵もユーモアいっぱいです。この本を楽しめる子どもたちの年齢は自然が大好き、親子で楽しむ事ができます。

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学校物語ーライオンの風にのって

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「ライオンの風にのって」
ポークストリート小学校のなかまたち6
パトリシア・ライリー・ギフ作
もりうちすみこ訳
矢島眞澄 絵
さ・え・ら書房 本体1300円


 この物語はアメリカの学校が舞台です。だから落第があります。この6巻目に登場するビーストは1巻目ですっかりおなじみ。成績がわるいと、また、落第してしまいそうな子どもです。それなのに一番にがてな作文が宿題にでてしまいます。しかも<じっさいに生きていた人について、ほんとうのことを書く作文です>と先生はいいます。さぁ、ピートとポークストリート小学校3年生のみんなの物語、元気で愉快な学校物語です。
 店にこのシリーズの本を楽しみに1冊づつ買いに来る子どもがいます。図書の先生がその子にすすめてくれたのだそうです。あの子はきっと本が好きになると話を聞いて嬉しくなりました。子どもにとって先生の影響はとても大きい、この本のなかにもタコづくりのじょうずな校長先生をはじめ、学校が楽しくなる先生がでてきます。

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しあわせの子犬たち

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「しあわせの子犬たち」
M・ラバット作
若林千鶴 訳
むかいながまさ絵
文研出版 本体1200円


 夏休みの話ですし、クリスマスには関係ありませんが、冬休みに読む本を探しにいらっしゃる方もあるので紹介します。
 エリザベスは夏休みにいつものようにおばあちゃんの農場へやってきました。今年の夏はちょっといつもと違う事がおこりそうです。と、いうのはおばあちゃんといっしょに暮らしている犬のエルシーがあかちゃんを生むからです。子犬は6匹生まれました。おばあちゃんは、子犬も生きていくのに子犬を必要としている人も、どちらも幸せにならなければいけないといいます。物語は犬のエリザベスが出産する様子をしっかり順序をおって描いています。そして、子犬を必要とする人、子犬がもらわれていくまでのようすも愛情たっぷりに、けれど淡々と描かれています。それと、最後に残った子犬のアナベルと、老いたおばあちゃんの1人暮らしのことも。おばあちゃんも子犬を必要としているということに、エリザベスは気がつくのでした。エリザベスの両親は思い出だけでは暮らせないから、この農場を離れて一緒に暮らそうといいますが、おばあちゃんは承知しません。そのおばあちゃんの気持ちをエリザベスは理解しようとします。
 犬の大好きな子どもたちはこの物語を充分楽しむとおもいますが、いのちの不思議や大切さもこめられているので、(出産の場面はとてもリアルです。)中学生などが読んでも良いのではないかと思います。

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月あかりのおはなし集 続

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「続 月あかりのおはなし集」
アリソン・アトリー作
こだまともこ訳
いたやさとし絵
小学館 本体1100円



 前の「月あかりのおはなし集」の続がでました。本の装丁もふくめ、全体の雰囲気はほとんどかわりありません。続編には5つの物語がはいっています。たとえば、最初のお話。町の一角にある貧しい家族の子どもたちにもサンタさんはやってきました。薪が売れなくてがっかりしている父親を励ましながら精一杯のプレゼントを準備する母親、そしてそれをみつけて喜び、両親のために森から柊を切って飾ろうとする幼い3人の兄弟、町一番のおいしいパイを焼くバンティングの店のおかみさん、このお話を読むと、クリスマスはこういうやさしい人びとのためにあるのだと思います。
 作者アトリーの物語にでてくるのは、貧しいけれどまっとうに生きている人たちの夢や願いです。アトリーが子どもの頃過ごした生活と自然は、厳しいけれど不思議がいっぱい、それが物語のなかいっぱいにひろがっています。土くさく、ユーモアもあり、暖かいお話をぜひ子どもたちといっしょにどうぞ。

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ひらけ!なんきんまめ

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「ひらけ!なんきんまめ」
竹下文子・作
田中六大・絵
小峰書店 本体1100円



 おかあさんから犬の散歩とおつかいをたのまれたたくは、あすかちゃんとけんかしてクサクサしていたので、気分がのらないままぶすっとして家をでました。帰り道ジャムを買ったおまけのおつりで、街かどのおばあさんからなんきんまめを買いました。ところが不思議なところに出てしまいどうも迷子?道は行き止まりです。知らない所でおもわず”ひらけ、なんきんまめ”と唱えると、なんと前の塀が開いて道があらわれました。ビックリしておもわず犬のたずなを放してしまい、ころすけは道の奥へ走って行ってしまいました。あわてて追いかけたけれどころすけは見つかりません。とおりかかったおじいさんに道を聞くと、おじいさんはなんきんまめをくれれば教えてあげるといいます。
 お話の内容は特別ハラハラする冒険話ではありませんが、ちょっと不思議な世界がひろがり、物語の読み始めの子どもにとって、とても工夫されています。まず、絵がいっぱい。見開きの片面いっぱいに絵が描かれているので、読物の体裁は物語本ですが絵本といっても良いくらいです。55ページの厚さ、読物らしく読み易い縦組、絵は親しみやすく描かれていて、絵のなかにはユーモアがあります。たとえば、本屋が描かれているのですが、店の名前は「こみねしょてん」と「みけねこしょてん」パン屋には「おなかパン」と看板が、まいごねこも時々顔をだします。見返しにはこの物語に描かれているものたちが並べて描かれています。
 絵本も良いけれど、一人読みのできる幼年童話の良いものがなかなかありません。子どもが手を出し易い工夫が必要だとあらためて思いました。出版社の人たちと機会をみて話してみようと思います。

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三つ穴やまへ、秘密の探検

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「三つ穴山へ、秘密の探検」
ペール・オーロフ・エンクイスト
菱木晃子 訳
中村悦子 絵
あすなろ書房 本体1300円


 物語の始まりは6歳のミーナがワニおしりをかまれたと言った事からはじまります。ミーナはベットに寝ていたし、パパもママも本気で心配してくれません。話を聞いてくれたのはおじいちゃんだけです。少し離れた所におじいちゃんは奥さんのグニッラとシベリアン・ハスキーのメス犬ミーシャと一緒に暮らしています。グニッラはミーナのほんとうのおばあちゃんではありません。ミーナの話を聞いたおじいちゃんはグニッラとミーシャとイーアとマルクスとで田舎の別荘に行くことを提案します。おじいちゃんには何か考える事があるようです。2日後おじいちゃんとグニッラ、ミーナと妹のモーア、いとこのイーアとマルクス、そしてミーシャで別荘にむかいます。途中でペットショップへよって子犬のエルサ(おじいちゃんはもう名前をつけていた)を買って車に乗せます。別荘はヴェルムランド地方の山の中、まわりは森と山ばかり、どうやらおじいちゃんは探検するという計画がありそうです。その計画とは子どもたち4人とおじいちゃん、二匹のいぬをつれて別荘の東側にある<三つ穴山>へ登ることで、<三つ穴山>には洞窟が三つあり、標高は千メートルちょっと、まずベースキャンプにする山裾にある一つ目の洞窟までいって食料などをおいてくることにしました。ところがその途中で密猟者に追われたクマと出会います。これはこの計画のとても危険なはじまりでした。携帯の電波も届きません。子どもたちといぬとおじいちゃんの秘密の探検はとてもたいへんな冒険になりました。
 ミーナの話のようですが、この物語のタイトルのように主人公は4人の子どもたちとおじいちゃん、そして二匹の犬、それぞれが重要な役割をし、それぞれの子どもたちが勇気をだして活躍する物語です。そして、比較的現実的なイーアが犬のミーシャを信じて助けを求めて一人で下山する時、くじけそうになるとき聞こえてくるパパの声”これくらい平気だ”、助けられて思わず”あとひと晩はわしはもたなかつただろう”というおじいちゃんのつぶやきに”そんなことはないわ。人は思っているより、じょうぶなものよ”というミーナの言葉、現実と夢がいつもごっちゃになってしまうマルクスを”お前を信じるぞ”というおじいちゃん、母オオカミが子オオカミを慈しむ様子を見た子どもたち、この物語の中には人と人との信頼がしっかりと描かれています。どんな子どもにも個性が豊かに感じられる、ひとりひとりを大切に思う考え方がながれています。また、かわいくて男の子に人気があっても無関心なミーナ、ママはこんなことをいいます。”人はあらゆることに、忍耐強くないといけないのよ。恋愛においてもね”そして、おじいちゃんと暮らしているグニッラについて<グニッラは男女平等論者だから、おじいちゃんは自分でそうじをしないといけないし、「なにかてつだおうか?」といってはいけない、家事はてつだうものではなく、自分から進んでするものだからだ。(P28)>など、日本の児童文学にはあまりみられない描写があります。国のちがいとはいえ、スウェーデンの人たちの生き方考え方が所々に垣間みられ、人は、たとえ子どもでも誰かの所有物でなく個としてとらえられていることに、いまの日本の子育て、生き方をあらためて考えさせられました。
 自然の描写、犬や猫だけでなく自然の中で生きているクマやオオカミのようすなど、スウェーデンの作品らしい物語に挿絵も良くあっています。舞台は冬の話ではありませんが、この冬休みに親子で読みあってみたい本の1冊です。

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ありのフェルダ

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「ありのフェルダ」
オンドジェイ・セコラ さく/え
関沢明子 やく
福音館書店 本体1400円

 なんといってもたっぷりはいった挿絵がユニークです。この原作は1933年チェコの「リドヴェー・ノヴィニ新聞」の子ども欄に連載され、大人気でキャラクターや人形劇などにもなった作品とのことです。(著者紹介より)本の見返しの絵からもその人気がおしはかられます。主人公はあり、フェルダは何でも屋でとても器用です。自分でつくった馬車をカタツムリにひせて、虫たちが音楽を奏でながら行進しています。本文ではバッタを捕まえて調教して馬車をひかせます。自分の事というより、ひとめぼれしてしまったてんとう虫のベルシカを喜ばせるためです。でも、ベルシカはわがままでうぬぼれや、自分に注目して欲しいばかりに、なんとフェルダは暴力をふるったと訴えます。おまけにベルシカの機嫌をそこねたくないばかりに不利な証言をする虫があらわれ、フェルダに死刑の判決がでます。でも、真実は。そして、フェルダの無実を支持してくれる虫たちのおかげで助かります。
 お話は勿論、絵も全部虫ばかり、とてもユニークな愉快な虫たちです。パーティをして、フェルダはクモの糸で飛行船にのってさようなら、みんなも帰りました。でも蚊のおばさんたちはベルシカに泥団子をなげつけてこらしめます。七つホシてんとう虫のベルシカに泥団子は15もくっついて、ベルシカは”えーんえーんとなきました。”おしまい(P127より)
 7歳位からの虫好きな子どもの読物におすすめです。

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シノダ!魔物の森のふしぎな夜

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「シノダ!魔物の森のふしぎな夜」
富安陽子
大庭賢哉・絵
偕成社 本体1300円

 富安陽子さんの本が続けてでました。「やまんばあさん」も「鬼灯医院のはなし」も続編がどんどん出版されました。どれも続編とはいえ、でも単独で読んでも充分楽しめます。
 ところでシノダ!のシリーズ4巻目がこの本です。シノダ!=信田家は人間で研究者のパパ、ママはキツネです。子どもたちは人間ですが、ママの影響もあって三人ともちょっと不思議な能力をもっています。パパとママ、つまりイッチとサキがはじめて出会った時の物語です。(ところが物語の舞台は夏のキャンプ場とその廻りの樹々と山、川なのでいまの季節ではちょっとちがうお話です。)
 イッチは子ども会のキャンプでキツネが人間になっているサキと出会います。物語のなかのあやしい魔物伝説は三輪山神話のような物語をもっていて、イッチの目の前で不思議な出来事がおこります。古代の伝説と謎、これらは作者の得意とするところ、でも安心して読む事ができるし、とてもおもしろくて子どもたちに人気があります。この物語は5巻に続くとのことです。それにしても同時進行でいくつかのお話を書き続ける富安さん、いくら大ほら吹きの家系(作者自身のことば)とはいえ、よくこんがらがらないと感心してしまいます。小学校高学年から。

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カナリア王子

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「カナリア王子」
イタリアのむかしばなし
イタロ・カルヴィーノ再話
安藤美紀夫 訳
安野光雅 画
福音館書店 本体650円

 イタリアの昔話集「カナリア王子」が文庫になりました。再話者はカルヴィーノです。イタリアは地形が北から南へ長くのびているために、いろいろな風土がまじりあっているのが特徴的とあとがきにのべられていますが、そのため民話の宝庫といわれているそうです。ただ、私たちにはあまり馴染みのある国ではありません。民話以外では、「ピノキオ」や「チポリーノのぼうけん」などが良く知られています。この本には7編のお話がはいっています。不思議な生まれ方をした娘や王女の話が入っていています。私はやはり表題の「カナリア王子」がいちばん好きです。本をはじめのページからめくると鳥になり、後からくくると人に戻るというお話です。それに、イタリアの昔話はとても色彩的に感じます。それは安野さんの画で引きたっているからだともおもいます。本の間にはいっているのも挿絵でなく、口絵として入っているので本らしい?ように感じます。
 福音館文庫はどれも本の装丁がきれいです。今の子どもたちは本の絵もアニメ調のものに手を出す傾向が強い、テレビアニメがそっくり本で使われているのをみると、つまらなくおもいます。おとなの文庫本は挿絵があまりはいっていない、でも児童書は本のつくりが良くできているものが多い、活字も読みやすいので、おとなにもお薦めです。鞄の中にいれて通勤の途中にも、ぜひどうぞ!!もちろん、子どもに読んでやるのにも良い本です。

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スウェーデンの森の昔話

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「スウェーデンの森の昔話」
編・絵 アンナ・クララ・ティードホルム
訳 うらたあつこ
ラトルズ 本体1880円


 11月のこえを聞いたら急に朝、夕寒くなりました。3連休の真ん中、お天気も良くて、すこし風があるためでしょうか空のきれいなこと、里の木、樹が色ずく前のひとときです。
 寒くなると昔話が楽しくなります。私だけかもしれませんが、昔話は暑い時は想像力が落ちるためなのかあまり楽しめません。それに昔話は以外とリアルな話が多く、暑い時はちょっと避けたい気持ちです。特に外国の話は以外と生臭い、首がちょんぎれたり、殺し、殺されたりします。そのような内容の昔話でも、耳で聞く、それも寒い時に聞くとドライであっけらかんと聞く事ができます。
 このお話集には12の昔話がおさめられています。しかも「スウェーデンの森」とタイトルにあるように、深い森の中でのできごと、ちょっと怖いお話がはいっています。もちろん、それだけではありません「くぎスープ」のようなニンマリと笑いたくなるおかしな話、「仕事を取り替えたおやじさんとおかみさん」のようなユーモラスな話もあります。「太陽と月の娘」は太陽が母親、月は父親、そして母親の方が娘の困難さに手を貸します。けれど最後に娘の願いを父親が聞き入れて天の星にした、娘と子どもたちはスバル座になったという話です。全体的に森の昔話だからか、地域、風土的な理由からか、やはりグリム童話と同じような雰囲気をもっています。
 編・絵のアンナ・クララ・ティードホルムの作品、今唯一手に入る「あるいていこう!」(ほるぷ出版)の絵と感じが違うので驚きました。でも、森の昔話なのですから、この挿絵はとても良くお話の雰囲気を描いているとおもいます。秋の夜長の読書には最適です。

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ネコに九つの命がある

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「ネコのアリストテレス」
ディック・キング=スミス作
ボブ・グラハム絵
石随じゅん訳
評論社 本体1300円


 ある所に白い子ネコが生まれました。ベラ・ドンナというちょっと変わった顔をしたおばあさんにもらわれてアリストテレスという名前になりました。子ネコのアリストテレスはとっても元気で好奇心いっぱいでなんにでも首をつっこみます。そのため危ないことにでくわします。例えばえんとつに登って中をのぞき落っこちてしまったり、高い木から落ちたり、鉄道線路にいって汽車にひかれそうになったり、どきどきすることばかりです。ネコには九つの命があるといわれていますが、そんなわけでアリストテレスは8つも無くしてしまいますが、最後のひとつはベラ・ドンナの予言どおりだいじょうぶ、アリストテレスは賢い魔女ネコになっています。
 作者は動物が主人公の幼年童話をたくさん書いています。主人公というか人と動物のかかわり、きずなをお話にしています。その元気で憎めない、動物と子どもが持っているパワーを読むと元気がでます。1922年生まれというから86歳。この本の最後のお話に獰猛な犬ガブリを抱いてベラ・ドンナはこんなことをいいます。”あやまりに来たんだ。ほうきでぶったりして、わるかったよ。さもないと、あんた、トラックに、ひかれるところだったからさ。だが、きっと、おしりだけじゃなく、心もきずついたことだろう。ゆるしてくれるかい?”ディック・キング=スミスの作品にはいつもこんなおとながでてきます。

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カイサとおばあちゃん

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「カイサとおばあちゃん」
リンドグレーン作
石井登志子 訳
岩波書店 本体1800円


 リンドグレーンの新刊がでました。10のお話が入っている短編集です。登場する子どもたちは条件の悪い環境で暮らしている子どもたちです。両親のいない子ども、現代風にいうと虐待されている子ども、貧しくて労働力になっている子ども、8歳で死んでしまった子どもまで描かれています。でも、それらの子どもたちはかわいそうに描かれているのではなくて、子どもの心で前向きに生きている姿がリンドグレーンの作品らしく淡々と描かれています。辛い環境のなかの子どもたちがいきいきとしているのは充分に生きているからだと思います。たとえば、表題の「カイサとおばあちゃん」(以前偕成社からこのはなしが単独ででていました。現在は在庫がないとのことです)、カイサは生まれて3ヶ月で小さな家の戸口におかれていた子どもです。カイサはとても元気な子どもです。育てているおばあちゃんは他人なのですが、本当の孫のようにおもっています。それはカイサの元気さがおばあちゃんの活力のもとになっているからです。カイサも卑屈にならなければ、おばあちゃんもカイサをかわいそうとはおもっていません。(かわいいと思っています)クリスマスにケガをしてしまったおばあちゃんのかわりに7歳のカイサがいろいろと準備をするはなしです。まわりのおとなもしごく当然のようにカイサに力を貸します。だから読者は心が暗くならない、カイサに元気づけられます。
 岩波書店さん、今までどうりの箱入りのりっぱな本になっていますが、もうすこし手軽なかたちにならないでしょうか。価格もそれでおさえられれば良いのにと思います。小学校高学年位の子どもたちに読んで欲しい本です。リンドグレーンの作品は子どもたちが大好きです。

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キャンプで、おおあわて

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「キャンプで、おおあわて」
ジェニファー・リチャード・ジェイコブソン
武富博子 訳
講談社 本体1200円

 ウィニー・ヴァネッサ・ゾーイの仲良し三人組はサマーキャンプに行くことにします。このキャンプはロッククライミングや機織りや湖で泳いだりいろいろなことができます。偶然一人だけ違う子どもたちといっしょのテントになったウィニーはロキシーという子と一緒になります。ロキシーは牧場にすんでいる活発な子でウィニーとすぐに仲良しになります。ところが絵を描くのが上手なウィニーはこの才能はママゆずり、ママは有名な画家だとうそをついてしまいます。ウィニーのママはウィニーが生まれてじきに死んでしまっていて、パパと2人暮らしなのです。うそはうそを生みます。そして、どんどん大きくなります。さあ、困ってしまったウィニーはヴァネッサやゾーイに助けてもらってなんとかきりぬけようとしますが。
 ウィニーたちは小学三年生という設定です。そのためもあって物語はさわやか、少々簡単で軽いけれど、外国の話なのでかえってそれが良いかもしれません。ところどころに少女たちの悩みがちょっぴり、あまり深刻にならずに描かれていますがそれもひとつの方法です。ちょっぴりのうそのことを考えるのは読者なのですから。あなたがウィニーだったらどうしますか?

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負けるな、ロビー!

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「負けるな、ロビー!」
マイケル・モーパーゴ作
マイケル・フォアマン絵
佐藤見果夢 訳
評論社 本体1200円


 ロビーは母親と妹そして、犬のラッキーと住んでいます。両親はあまりうまくいっていません。だから別居している父親からは土曜日には電話がきます。今日も電話があってラッキーの散歩はロビーがすることに、戸を開けたとたん門が開いていて、ラッキーはネコを追っかけ飛び出します。ロビーもラッキーを追いかけた所へ自動車がきて跳ねられてしまいます。
 この物語は病院に担ぎ込まれ、意識のないロビーが話しているかたちになっています。よそからみるとロビーは意識がなく眠り続けています。でも、ロビーはまわりの人たちの言っていることなどみんな解っています。ロビーの意識を取り戻すためたくさんの人がいろいろな試みをします。例えば父親は本を読む、ちなみに読んでいるのはロアルド・ダールの「オ・ヤサシ巨人BFG」で、このことからもう一度夫婦をやり直そうと決心します。看護士のトレーシーはとても良く気がついてやさしくいつも歌を歌っている明るい人、ロビーの憧れの人のフットポール選手のゾラまでが病院にきてロビーを元気づけに来てくれます。
ロビーは昏睡状態なのだけれど、みんな聞こえているのに動けないのは、ラッキーを自分の不注意で死なせてしまったと思っているロビーの思いが心を閉ざしているのです。
 病院のベットの上でたくさんのチューブに繋がれているロビーは”はなしかけてよ!”と思っています。いつになったらロビーは目を覚ますのでしょうか。物語はチューブに繋がれたままのロビーの思っていること、感じていることを丹念に拾って描かれています。
 もちろん最後にロビーは元気を出して意識が戻り、心と心を繋ぐことができて安堵します。

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えほん 日本国憲法

 講演会「改正教育基本法 どう変わる教育や図書館」へ出席しました。
講師は千葉大学教授 三宅晶子さんです。平日なのと明け方のひどい雷と雨で交通機関などの混乱があるのではないかとおもわれましたが、会場はほぼ満員でした。「憲法」「教育基本法」「図書館法」などの旧、新の比較を時間いっぱいにひろいながらのお話でした。こうすると国が、政府が国民になにを望み、どうしようとしているのかが良く解ります。基本的なことはやはり法律は市民がつくっていくものだということです。ただ、それらがからみあっているので解りにくいということから、関心はなかなかひろがらないのも現実です。実際子どもたちはどんどんと大きくなって社会に押し出されていきます。そして、問題は子どもや高齢者や障害を持っている人にしわ寄せがいきます。私たちは一体なにをどう読み解いていったら良いのでしょうか。時間がたりなかったのですが、大学生などはどう思っているのか知りたかったことと、今日のお話をもとにして、私たち市民はもう少し現実に学習し深めていきたいとおもいました。
 昨日仲間の定例会で三鷹のプーの森さんから新しい本の紹介がありました。プーの森の野村さんはいま三鷹市会議員です。作者は(名前は同じ野村さんですが別人)プーの森の野村さんの応援団のひとりです。
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「えほん 日本国憲法」
12歳から学ぶ 市民のための人権ガイド
絵・文 野村まり子 
監修 笹沼弘志
明石書店 本体1600円


 どのページにもいろいろな人たちのイラストがたくさんでてきます。鉛筆と水彩で描かれているのでそれらの絵はじゃまになりません。むしろ「日本国憲法」を、描かれている人たちから具体的に読み進めていくことができます。そして、読者に<ケンポーは友だち>と呼びかけています。だから最後には<困った時に相談できるところ>、憲法は<しあわせに生きるための道具>と書かれています。どのページにもあなたがいて、そこからみんなで話し合ってみましょう。
 もちろん、子どもでなくおとなたちにも読んで欲しいし、いっしょに読みあうのにとても良い本です。

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小さな人の冒険物語

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「トビー・ロルネス」
 1 空に浮かんだ世界
ティモテ・ド・フォンベル=作
フランソワ・プラス=画
伏見操=訳
岩崎書店 本体900円


 「指輪物語」など小さな人(?)が活躍する物語はたくさんあります。この物語の主人公トビーは身長1.5ミリ、一円玉の直径は2センチあるのですごく小さいといえます。物語の始まりではトビーは7歳の男の子、父親は科学者で母親はお金持ちの一人娘で美人で気持ちの良い女性です。けれど、慈しんでくれた父親は亡くなってしまい、しかも貧乏なシム・ロルネスと結婚した為に実の母親からは疎んぜられています。それでもロルネス一家は幸せな生活を送っていました。みんなは大きな木の世界に住んでいて、樹液で生活が成り立っていました。シムの「木は成長している」という論文は大きな論争のもとになり、しかも新しいエネルギーの発見はたださまざまな論争を呼ぶだけでなく、当然それを自分のものにして、世界を征服しようとするものたちの手が伸びます。シムはその危険な提案や誘惑を断固としてことわります。そのために捕えられてしまい、トビーも追われる身になります。親友の裏切り、少女との交歓、悪人の手がのび捕まりそうになって、物語はドキドキハラハラとすすみます。それに樹や自然が舞台なので虫や植物の描写がたくさんあって、そのことがこの物語を読み応えのあるものにしています。
 ペーパーバックス版で手頃な定価、シリーズは全4巻、今月中に2巻目、12月、そして4月に4巻完結の予定、5、6年生からの男の子にすすめられる本で、なかなか適切な本がないだけにうれしい刊行です。

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庶民の食べ物ーさつまいも

 大雨のニュース、アメリカのハリケーン、台風、自然が猛威をふるっています。今日から9月になり特別にかわったわけでもないけれど、9月という言葉の響きだけでも秋らしくなります。なんといっても秋といえば「収穫の秋」「実りの秋」でもあるのです。
子どもたちの大好きな本のひとつに「おおきなおおきなおいも」という本があります。

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「おおきなおおきなおいも」
市村久子・原案/赤羽末吉・作 絵
福音館書店 本体1100円


 この本は版型が絵本というより、読物のようなかたちになっています。芋掘り遠足が雨降りでいかれなくなったので、土の中で眠っているおいもがおおきくなるのを想像して、子どもたちが絵を描き始めることからはじまります。市村久子・原案となっているように、幼稚園での実践から描かれた本で、土の中で大きくなっていくおいも、紙をつぎたしていくこと、ページをめくることでどんなにかおおきなおいもだということを子どもたちが表現しています。そして、おおきなおいもなのでどうしようか、力をあわせて抜いたおいもをヘリコプターで運んで洗い、遊び、料理、おなかいっぱいになって大満足、ここでおもしろいのはおいもをたくさんたべるとおなかにガスがたまる、それで空にぷかぷか、夕方になって家へ帰る、というなんとも楽しい本になっています。
 私はさいわいなことに戦争の飢えを知らないのですが、祖父母や両親にサツマイモやカボチャがとても活躍した食べ物だということは聞かされました。先日アフガニスタンで亡くなってしまった伊藤さんが、現地でサツマイモが飢えに役立っていることを書かれたリポートがペシャワール会の会報に載っていました。栄養的にも医療的にも、なによりも満腹感、痩せ地でも育つサツマイモは人々を救う食べ物で、伊藤さんはその農業指導をして収穫できるようになったという、アフガニスタン人が笑顔でサツマイモをぶらさげている写真もあります。
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「落語の人びと、落語のくらし」
小野幸恵・著 林家正蔵・監修
岩崎書店 本体1200円


 この本は落語にみる江戸時代のくらしが書かれている本です。落語にでてくる長屋の庶民のくらし、まず落語の舞台である長屋の生活が描かれています。そのなかに、大家さんは家主でなく、いまでいうと管理人にあたることで、主な収入は地主から支払われる給金で少ない額なのになり手が多かった、その理由は都市に集中していた人々の下肥(共同便所の糞尿)、その代金等は大家の収入になりとても魅力的なものだったとのことです。千葉は青木昆陽のサツマイモの産地、千葉の農家はサツマイモを江戸の人々に持っていき、帰りに下肥などを運んで帰って来た、江戸の町と千葉との間のリサイクルと交易は千葉の歴史にも残っています。
 会留府ではいつも「お話」にいっている近所の保育所の子どもたちが、自分たちで育てたおいも(春にはジャガイモ、秋にはサツマイモ)を持って来てくれます。”いつもおはなしをありがとう”と、とても嬉しいプレゼントです。

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元気のでる詩

 アーサー・ビナードさんの本が好きだ。元気がでる。新しく出版された詩集、「ゴミの日」とは意味有りそうなタイトルだ。

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「ゴミの日」
アーサー・ビナード詩集
アーサー・ビナード
絵=古川タク
理論社 本体1400円


 いつごろからだろうか、新聞に連載されていていたのを時々読んでいた。外国人なのに日本語がとても達者、中原中也賞をもらった詩人、その言葉に魅せられた。その他雑誌などにも載っていて、今は時々英語からの訳された詩も連載されている。言葉が達者というか視点がおもしろい。なによりも言葉が外に向って開かれている。たとえば、この本の最初の詩「トノサマガエルになる」はこんなふうに描かれている。トノサマガエルのたまごはオタマジャクシに、ちいさな足がはえてオタマジャクルに、うしろあしがのびてオタマジャエルに、前足が一本でてオタマガエルに、二本でてオサマガエル、しっぽがなくなってノサマガエル、ああやっと!まだまだ池を知り、虫をとり土にもぐって冬を越して、やっと「トノサマガエル」。日本人のだれがこんなに鮮やかに人生をうたっているだろうか。
 これから中学生に良く勧めるこんな絵本がある。


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 「どんなきぶん」
サクストン・フライマン、
ユースト・エルファーズ作
アーサー・ビナード訳
福音館書店 本体1500円


 野菜に目鼻がついてのおもしろさとユニークさの絵はもちろんだけれど、ものの見方や感情を読み取って表現する=言葉のおもしろさ、うつうつとしている中学生に、ちょっと見方を変えてみようよ!と勧めることが多い。そして、これはまた、全然ちがう本だけれど「ここが家だーベン・シャーンの第五福竜丸」も勧めることが多い本だ。

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ベン・シャーン画
アーサー・ビナード文
集英社 本体1600円


 いま、日本の若い人たちに大切なことは、すこし立ち止まり考えながら、そして、しっかり自分で感じながら毎日を生きていくことだと思う。

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夢の彼方への旅

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「夢の彼方への旅」
エヴァ・イボットソン
三辺律子 訳
偕成社 本体1600円


 この本も冒険あり恋もあり、なんといっても舞台はアマゾン、夏に読むのに良いおすすめの本です。 物語はお決まりのよう、ロンドンの寄宿学校に暮らしているマイアは列車事故で両親を亡くしてしまい、ブラジルに住んでいる親戚にひきとられることになります。孤児になったとはいえお金持ちの娘のマイアは家庭教師を雇い、その人ミントン先生といっしょです。ブラジルといってもゴムの栽培で冨を手にした人たちがジャングルのなかにつくった街で美しい、それでいてアマゾンの自然と混然した不思議なところです。
 親戚一家はこれも定説どおり良い人たちではなく、本当はマイアなんか引き取りたくなく、マイアのもっているお金が目当てです。大量の本をもちこんだ家庭教師のミントン先生は、はじめは冷たいそっけなく感じられるような人でしたが、マイアのことをほんとうに考えていた人でした。突然両親を亡くしてしまったマイアが希望をもって生きていくために、アマゾンの自然が必要なことを知っていた人でした。それに、とてもきれいな声をもっているマイアの才能を伸ばしてやりたいとおもっていました。
 親戚のカーター一家はマイアの財産をなんとか自分たちのものにしたいと画策します。一方マイアはそんなことはしらず、カーター家で働いている現地の部族の人たちにひかれ、少年クロヴィスと仲良くなっていきます。また、なぜか一人で小屋に暮らしている少年フィンと知り合いになります。少年の父親、バーナード・タバナーは博物学者で母親はシャンティ族の出身で少年を生んですぐ亡くなってしまった。父親が標本の採集にでかけたまま、少年は父親の遺言どおりシャンティ族のところへ行く準備をしていました。けれど少年を捕まえようとする人たちがあらわれます。それは少年の父親バーナード・タバナーは大地主の継承者、彼が亡き後は少年フィンが継承者なので、つれもどそうとオーブリー卿が私立探偵をよこしたのです。
 クロヴィス、フィン、そして、この物語の主人公マイアの冒険と友情、ミントン先生の秘密、原生林とアマゾンの川、陰謀と悪巧みがおりこまれて物語はすすみます。ちょっと都合良くすすみ過ぎと思う人、でもそれもこの物語のおもしろさのひとつです。暑い夏、はるか遠くのアマゾンの自然をたっぷりあじわってください。
 

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こはく色の目

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「こはく色の目」
リッケ・ランゲベック/作
木村由利子/訳
かみやしん/絵




 八月の声を聞いたとたん待ってたとばかり千葉高校の林でも蝉の大合唱がはじまりました。
 この本も夏に読みたい冒険動物物語です。夏休み、モンタナ州の乗馬ツアーに参加した父親とヤーコブ、そしてコーチのアル3人でキャンプをはりました。その時ヤーコブはオオカミの遠吠えを聞きました。ひとりでキャンプをちょっと離れたとき灰色グマに出会い、乗っていたラバはパニックをおこし、いつの間にか山深く迷子になってしまいました。しかも、オオカミのグループに遭遇し、危険を感じますが、なぜかそのなかの黒オオカミが近づいてきて、そのきょりも少しずつ狭まってきます。ヤーコブは父親とアルにすっかりはぐれてしまい、たった一人で飢えと危険のなか、なんとかいきてゆこうとします。オオカミが子どもにするようにヤーコブに食べ戻しを食物としてあたえ、ぎゃくに密猟者のトラバサミから黒オオカミを救ってやり、黒オオカミだけでなくそのオオカミの集団と共にするようになります。とはいえ、ヤーコブの体はどんどん弱ってくる、はたしてヤーコブは生きて父親たちと会うことができるでしょうか。ちょっと、ドキドキするような場面が展開され、最後まで読者をひっぱっていきます。
 作者は獣医でもあり「世界自然保護基金」の活動にもたずさわっていて、「アクション・ウルフ」のキャンペーンもはじめました。その対象の野生オオカミがでてくる物語なのでオオカミの生態がくわしく書かれていて、そのことがこの物語をおもしろく、ドキドキする冒険物語にしています。
 文中のイラストもコラージュをつかったり、この物語の雰囲気が良く描かれています。


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秘密の島のニム

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「秘密の島のニム」
ウェンディー・オルー著
田中亜希子・訳
あすなろ書房 本体1200円


 暑い夏がつづきます。この本はこの暑い夏に読むのに良い本です。理由は1、海の物語2、冒険物語3、主人公の女の子は父親と二人で暮らしている。4、友だちはアシカとウミイグアナ、食料はヤシの実や植物5、魚釣り、貝、その他海の生物がたくさんでてくる。なんといっても父親はプランクトンの研究者6、あらしの話。まだまだこの海の物語には夏らしいことがいっぱいあります。そして、この物語の内容、ごちゃごちゃ考えなくて良い。話のスジはとても単純で、映画化されるそうですが、ディズニー映画になりやすく、楽しい映像になりそうです。表紙の絵では主人公のニムが海の岩の上で本を読んでいます。自然のなかでこんなふうに読書ができたら、もちろん日中は暑いので、朝早くか夕方、朝早く人のいない海がいいですね。
 

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翔太の夏

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「翔太の夏」
那須正幹・作
スカイエマ・絵
旺文社 本体1238円


 翔太は東京の下町から3月末に引越してきました。この町は父さんの故郷だけれど、2歳から来たことがなかった。それが父さんが勤めていた設計事務所が倒産して、この町で仕事をすることになったからです。合併して双葉市にはなっていますが、前には奥地町という小さな町で、住んでいる人たちには、いまでも奥地町です。5年生の翔太のクラスは1クラスで8人。翔太には驚くことばかりです。クラスの友だちばかりでなく、兄弟、親戚とお互いに皆が親しくしています。
 生活はすっかりかわっていまいます。まず、犬を飼うことができました。そして、なんといっても自然がたっぷりと人びとをつつんでいます。川にはホタルがとびます。ギンヤンマやオニヤンマもみつけられたし、夏の男の子の遊びはカブトムシを捕まえてきて、戦わせることでした。
 強い、大きなカブトムシがいるところ、秘密の場所にこっそり翔太と憲一、保の3人ででかけます。道に迷ってしまい、おまけに保はケガをしてしまう、遭難?物語はカブトムシをめぐっての友情物語だけでなく、冒険物語とも読むことが出来ます。
 那須さんの本は、等身大の子どもが活躍する物語なので背伸びをしないで楽しむことができます。最後の千葉駅の近くの団地にある母さんの実家行ったけれど、奥地町へ早く帰りたいという文はちょっとなくても良いようにおもいます。


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チャンプ 風になって走れ!

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「チャンプ 風になって走れ!」
マーシャ・ソーントン・ジョーンズ作
もきかずこ訳
鴨下潤・絵
あかね書房 本体1400円



ラリーはどんなにがんばってもスポーツがにがてです。それなのにかってダベンポート高校の三年生の時、アメリカン・フットボールの選手で勝利のタッチダウンを決めた選手だった父親はラリーに期待、いえ期待以上のものを求めています。それに答えられないラリーは毎日が苦痛です。ある日今は亡くなっているが父親の親友の子どもケイトと練習をしていてボールをとりそこない、それをよけた車が事故をおこしてしまう。運転者はお金持ちでショードッグのために犬舎を持っている人で運んでいた犬はケガをして手術の結果3本足になってしまいます。そして、その運転者のラーナー夫人がもうショードッグとしてやくにたたないからと犬を処分すると知って、ラリーはおもわず自分がひきうけてしまいます。
 なにごとにも自信がなく、父親との確執が強いラリーがショードッグのチャンピオン犬「チャンプ」を引き取って暮らすなかで支えてくれる友だちや、はじめは理解できなかった隣人のダグラスさんとの交流を深めていく様子、そして、自分でラリーの必要なものをつくっていくなかで、途中でなげださない力をつちかっていく、父親ともちゃんと向き合っていく様子がたんねんに書かれています。
 もちろん、犬好きな子どもたちにもとても楽しい読物です。こういう本を読むと動物は話ができないけれど、人を成長させてくれるものだということが良くわかります。(おとな的にいうと子どもはおとなに生きていくことのエネルギーになる存在だということが良くわかります。)一番にならなくても良い、挑戦することに意味があるという、最後のアジリティー(障害物の競技大会)の様子にハラハラしますが、父親の格好良さに素直に拍手です。


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シチリアを征服したクマ王国の物語

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「シチリアを征服したクマ王国の物語」
ディーノ・ブッツァーティ作 
天沢退二郎/増山暁子 訳
福音館文庫 本体650円



 長い間品切れになっていた私の好きな本が復刊した。とはいえ、文庫というので絵がどうなるのか心配したが、まずまず良い形で復刊した。前の本は大判の絵本形式、もっとも文章も多いので絵物語といった方がよいかもしれない。20年も前に出された時、まず、その絵にひきつけられた。物語はクマの王国で王子の子グマをさらわれた王さまが、厳しい寒さと飢えに苦しめられていたこともあり、人間界に降りて行って暮らすことにする。残忍な大公と戦いやっと人間界と共存でき王子もみつかり、良き国になったはずが、いつの間にか王国内部に退廃がすすみ、王さまはウミヘビとの戦いのなかで裏切り者の侍従長に殺されてしまう。ウミヘビも退治できたが王さまは助からず、すべてを捨てて、山へ帰るとの遺言で人間と別れてクマたちは都を立ち去って行く。富みを得たけれど失ったもの、心の平和をとりもどすために。「山でぼくらの神さまがおよびだもの。夢が終わってしまったいまは、ぼくらのお話もおしまい。さようなら!」(本文P180ページから)
 なんといってもカラーと白黒でのたくさんの絵がとても魅力的だ。日本ではほとんど知られていないけれど、作者ブッツァーティはヨーロッパでは個展も開かれているほど画家としても有名とのこと、この本が品切れになった時とってもがっかりしたのだが、また、良い形で文庫版になった。やたらとアニメ化された挿絵が入っているお手軽な本ばかりが出版されているなかで、こういう内容豊かな本の復刊はとても嬉しい。

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危機のドラゴン

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「危機のドラゴン」
レベッカ・ラップ
鏡哲生・訳
評論社 本体1400円




 一巻目でマヒタベルおばさんがもっている(ここには住んでいないが)孤島で三つ頭の竜に出会ったハナ、ザカリー、サラ・エミリーの三人きょうだいは春休みに、また、孤島に来る事ができた。竜ファフニエルは前と同じドレイクの丘の洞窟にいて、ハナ、ザカリー、サラ・エミリーと再び会えたことを喜びあった。マヒタベルおばさんにかわってこの島の管理をしているジョーンズ夫婦はもちろんのこと、部屋の中も風向計も前と同じ、けれど知らない人が浜辺にいて、島の様子をうかがいうろうろしている、三人は竜に気をつけるよう教えにいく。一体何者か?三人の子どもたちの冒険物語だがそれだけでなく、前作同様三つの頭をもつ竜が(一頭起きていて、後はねむっている)各々子どもたちに語る物語があり、四つの物語を読むことになる。
緑目の竜が語る物語はニコという羊飼いの少年が自分自身で真実をつかむ勇気、青目の竜が語る物語は騎士見習いのガウェンインがエレノアの助けをかりて、本当に価値ある戦いとはなにかを知る物語、銀目の竜の語る物語は奴隷の子サリーが両親とともに自由を求めて逃亡する話、この三つの物語は子どもたちが真実を自分たち自身の手で判断し行動することの大切さを、全体の冒険物語のなかに構成されて書かれている。歴史的な事柄が各々背景に書かれているので、それらを再確認しながら読むのもおもしろい。
 休みも終わり、最後に竜に会いにいったサラ・エミリーに「オ・ルボワール、愛しい子」フランス語で「また会う日まで」・・・物語はまだつづきますか?

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月のえくぼを見た男

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「月のえくぼを見た男」
ー麻田剛立ー
鹿毛敏夫
関屋敏隆 画
くもん出版 本体1400円

 今日の夕刊に星出彰彦飛行士が国際宇宙ステーションとドッキング入室し、喜びあっている写真がでていました。4日には日本の有人宇宙施設の「きぼう」の船内実験室をつくるとのことです。もし、いまから200年以上前江戸時代に反射望遠鏡で月を見た麻田剛立が知ったらなんといったでしょうか?
 まあ、知るわけはないのは、麻田剛立その人は江戸時代にはじめて月をみて月面観測図を描いていて、この本はその麻田剛立の伝記です。千葉とも関係の深い伊能忠敬に測量の技術を教えた高橋至時の先生にあたる人です。
 剛立は1734年備後杵築藩(大分県杵築市)に生まれました。生まれた時の名前は綾部妥彰、父親の綾部安正は儒学者です。幼いときから天体に興味を持ち夢中になります。1762年当時の暦にない翌年9月1日の日食を予報し、それが的中して話題になります。本職は藩おかかえの侍医、1768年江戸へ、1769年には大阪へ行き藩主の腹痛を一人で治したことをきっかけとして侍医を辞めます。その後大阪に居をかまえます。脱藩したわけですから、まわりに迷惑をかけることをおそれ名前を麻田剛立にしました。日食や月食の観測はつづきます。1778年反射望遠鏡で月を観測しその時描かれた月面観測図は日本で初めてです。天文塾を興し1789年10月1日の日食を異地点で同時にグループ観測をしています。
 この当時の天文学は暦学と関係が深いのですが、学問的に立ちおくれていて、剛立が確立した天文学暦学が国の基礎を造るひとつだったことが詳しく書かれています。伊能忠敬の業績がこのように繋がっていきます。剛立は日本のレオナルド・ダビンチのようだと私は感じました。そして、この天才が親や兄弟はもちろんのこと、その他にもたくさんの人たちに支えられていたことも印象深いことです。現代の日本を造った人たちの生き方を知る事の大切さは、その人たちの生の延長上に私たちはいるからです。

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菜の子先生がやってくる

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「菜の子先生はどこへ行く?」
学校ふしぎ案内❀花ふぶきの三学期
富安陽子 作
YUJI 画
福音館書店 本体1500円


 やっと菜の子先生がやってきました。でも、ちょっぴり残念なのはもう三学期でなく、新学期になってしまいました。三学期なので冬のお話からはじまります。「雪女」「節分」「雛祭り」「卒業式の頃」舞台は変わりますが、いつも学校です。そして、最初の話の桜のところに戻ります。桜の木はずっとたくさんの子どもたちを見てきました。それは、桜の木でもあり、学校でもあり、先生たちなのです。
 子どもたちは富安さんの本が大好きです。富安さんの物語にでてくる子どもたちは普通の子どもたちです。毎日笑ったり、悲しんだり、けんかをしたり、仲良くなったり、いつもの様子が書かれています。物語に出てくるのは読んでいる子どもそのものです。そして、普通の毎日のなかのちょっとした隙間、その隙間では時々不思議な事がおこります。隙間はとても日本的なので、すんなりと入っていくことができます。鬼やたぬきやきつねたちも、おばけでさえいつもいっしょにいるものたちなのです。そして、その不思議な体験のあと、元気になります。
 もしかしたら、菜の子先生は富安さん?今度千葉にいらっしゃるのでお会いできて、お話を聞く事ができるのが楽しみです。
 
千葉市文庫連絡協議会30周年記念講演会
「物語がうまれる時ー不思議への入り口ー」
講師 富安陽子さん(作家)
2008年6月28日(土)2時から4時
千葉市生涯学習センターホール(千葉市中央図書館となり)
参加費500円
定員250名(当日券はありませんので、お早めにお申し込みください。)
託児あり(事前申し込み制・10名)
お問い合わせとお申し込み・
 *TEL・FAX 043-252-7041石渡(とどろき文庫)
        043-424-4042中山(おひさまはらっぱ文庫)
主催 千葉市文庫連絡協議会 後援 千葉市教育委員会

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クロニクル 千古の闇 4巻

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「追放されしもの」
クロニクル 千古の闇 4巻
ミシェル・ペイヴァー=作
さくまゆみこ=訳
酒井駒子=画
評論社 本体1800円



このシリーズも4巻目を迎えた。トラクは胸に<魂食らい>のしるしを刻まれ隠していたが、とうとうみつけられ追放される。氏族の掟で、ハズシにして追放する、ハズシというのは死者として扱われ忌みきらわれることだ。死者なのでなにもかも取り上げられ追放され、トラクの魂は彷徨いあるく。寄り添うのはオオカミのウルフだけ。フィン=ケディンすらトラクをかばうことはゆるされない。けれど、レンもベイルもトラクを救うべく、トラクを探すが、見つけた時はトラクはクサリヘビ族の魔導師セシュルの魔力に従ってしまっていた。
 この巻ではトラクを救うべく、レン、ベイル、そしてウルフと視点をかえて物語がすすんでいく。そして、トラクやレンのもっている謎がそのなかで少しずつ明らかになっていく。物語の中にでてくるのはいまから6000年前と設定された世界、生き延びて行く為の力と智恵、そして、呪術の満ちていた世界、人と動物が同じ所で生きていた時代。いまの私たちからは考えられないような世界かもしれないが、同じように子どもを育て、愛を育み、敬愛と友情、そして、死者をおくり、明日を祈る。この丁寧に描かれた物語は読者がトラクになり、レンやベイル、時には嫉妬からトラクを殺そうとするイノシシ族の少年アキになってみる。
 トラクは最後に洪水から皆を救い、セシュルの魔力を封じ込めることができたのだが、父親が<魂食らい>にそむいてまで、自分の死と交換に<魂食らい>の力のよりどころになっていたファイアオパールの謎とはなにか?母親の邪悪な企みから解放されたレン、オオカミの仲間でなくトラクと暮らす事を選んだウルフたちに待ち構えているのはなにか?1年に1冊という発行がまちどうしい。

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幼年童話の楽しさ

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「ネコのドクター小麦島の冒険」
南部和也 さく
さとうあや え
福音館書店 本体1500円



小学校3,4年生になると読む物語もだんだんリアルになったり、成長していくためにどこか心に残るような物語を読むようになる。けれど、読んでいくうえで、正直疲れてきたり気持ちが重くなってくるものもあり、この物語のような本にいきあうと楽しく心が軽くなる。
 「エルマーのぼうけん」のような長い冒険小説を喜んで聞いている年齢の子どもたちに勧める本のひとつに、比較的新しく出版された本「ネコのタクシー」という幼年童話がある。世界一足の速いネコで、ひょんなことからタクシードライバーになったネコのトムの冒険物語だ。(トムの車は動力がない。トムが足で動かすのだ)2巻目は父親のジョンに会いにサルの王さまの招待状をもって、アフリカにいく話、この3巻目は父親ジョンの若いときの体験と冒険が中心になっている。
 ジョンは人類学者ポート博士のところで助手として働いている。街ではこの頃原因不明の「ゆっくり症」と言おうか、「ねむい病」が蔓延し始めた。どうも街一番おいしいパンやさんのパンを食べた人が、この「ゆっくり症」に罹るようだ。元気なジョンはパンを食べないから大丈夫とのことで、原因を突き止めるよう調査をたのまれる。成功の暁には科学アカデミーで正式なドクターになことができるというので、ジョンはひきうける。パンを焼く小麦粉に原因しているのではないかとおもったジョンは世話係のパコと小麦粉の作られるフラワー島にでかけ、原因になるキノコをみつける。キノコおじさん、発明家で医者の父親とくらしている女の子レンなどと知り合い、とうとう原因を突き止めるが、まちがってキノコを食べてしまう。
 なんともにぎやかなおかしな人たちのお話、こういう本を読むと気持ちが明るくなってくる。子どもの本は、特に幼年童話はだから好きだ。冒険の物語で、ナンセンスな物語なので笑いながら読んだ。この本は著者は日本人なので趣はちがうが「ドリトル先生」の本を読んでいるような錯覚をおこしてしまった。
 ネコの好きな人はもちろん、嫌いな人にもおすすめ、もちろんこういう本は読書コンクールの本にはしないように。笑い転げながら、のびのびと読めないのはもったいないから。

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小さな動物物語

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「森のすみか」
 モモンガ クルルの物語
 さくらいともか
 福音館書店 本体1700円



アナグマが森の中を歩いています。もう少しがんばって歩けば、聞いた場所、おいしいものがいっぱいある所へたどりつくにちがいありません。川の揺れる橋を渡ると目の前の空を横切った者がいます。それがアナグマのズーイとモモンガのクルルの最初の出会いでした。クルルは母親と別れて新しい自分の居場所を探していました。
 この物語はそのクルルを中心にアナグマのズーイ、ヒメネズミのチイなど、冒険しながら成長していく森の小さな動物たちのおはなしです。フクロウに捕まって危なく食べられそうになって、読んでいるとちょっとドキドキする場面があったり、でも、モモンガの長老コバヤンやカモシカのヒヅメばあさんがクルルにいろいろと教えてくれます。やがて、森に冬が来る頃、クルルも大きくなりました。そして、ケガをした長老コバヤンと歳をとったカモシカのヒヅメはクルルにあとを託して旅立っていきます。
 作者は現代美術で活躍しているので、作品中の挿絵(カラーです)もすべて描いています。動物物語が好きな10歳位からの子どもたちにお薦めできる作品です。

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ぼくの羊をさがして

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「ぼくの羊をさがして」
ヴァレリー・ハブズ
片岡しのぶ=訳
あすなろ書房 本体1300円



 牧羊犬ボーダーコリー、ジャックの物語です。ジャックは産まれたときからジャックだったわけではありません。ジャックはボブさんの農場で幸せな子犬時代を送りました。とても元気ないたずらだったけれど、ジャックの使命はりっぱな牧羊犬になることだと知っていました。ただ遊んでいたある日、はじめてトラックにのせられて、たくさんの羊がいるところにつれていかれました。とうさんとリーダーのオールド・デックスの仕事をみながらボブさんにいろいろなことを教えてもらえるとおもっていましたが、農場は経済的に逼迫していました。そして、嵐がきて農場は火事になり、それがもとでとうとうボブさんは子犬たちを手放す決心をして、ペットショップで売られる事になりました。新しい家に連れられていったけれど、そこではまさしくペット、みじめな気持ちでとうとう逃げ出してしまいます。
 それから、いろいろな人に出会い、飼い犬にされそうになります。そのたびに牧羊犬としてのほこり、きっと、農場に戻る事ができると信じて旅を続けます。
 ひたむきでけなげなジャックにハラハラしながら、かならずジャックは農場に戻り、りっぱな牧羊犬になると思いながら、読み進んでいきます。この物語の中には不屈な魂が込められているとはおもいますが、読者は子犬の冒険物語として読む事とおもわれます。けれどただそれだけでなく、ジャックが旅をともにする人、貧しい屋台を引っ張っているおじいさん、どろぼうの兄弟、野良犬収容所、サーカスの動物たち、父親の形見のストップウォッチを大切にしている男の子と養護施設少年の家を転々とし、最後にジャックは里親週間に少年ルークの里親になってくれる人をみつけ、ジャックもその農場で牧羊犬として暮らしていかれることになります。
 最後のおじいさんがジャックに語った言葉「生きていくことでだいじなことはそれほどない。自分なりに考え、努力をし、世の中をすこしは住み良い場所にした、と思えることだ」は新しい環境のなかでスタートをきった人たちに贈られている言葉になります。


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ソフィーとガッシー

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「ソフィーとガッシー」
マージョリー・ワインマン・シャーマット文
リリアン・ホーバン絵
三原泉・訳
BL出版 本体1300円




この物語の主人公は2匹のリスです。森に住んでいてとても仲良しです。絵がたくさん入っている短いお話が4つ入っています。本をみると小学校1・2年生向きのように思われますが、読んでみるとむしろ中学生などに良いのではないかとおもいます。
例えば1話目、ガッシーがソフィーに遊びに来ないかと誘い、楽しみにしているとの返事をもらい、ガッシーははりきって家をきれいにしてお料理をつくります。でも、ソフィーは他所の家に遊びに行く気分にならないからと断ってきます。ガッシーはすっかり落ち込んでしまいますが、ハタとおもったことは、ソフィーが家をでかけたくないなら私が行けば良いのだということでした。作った料理をもって、ソフィーの家へ、ふたりはとても楽しい時間をもちました。思ったようにいかない、期待がはずれてしまっても、がっかりすることはありません。発想の転換です。
落ちついた色で描かれている絵、おしゃれなゆったりしたお話をゆっくりあじわってください。


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まんがサイエンス

     かなり高度かも?でも子供に読ませたい!

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 あさりよしとお(浅利義遠)の『まんがサイエンス』11巻が出ました(学研・ノーラコミックス)。学研「5年の科学」で87年に始まり、もう20年以上連載してます。
 私は前に「まんが日本の歴史」の類いは評価しないと書きました(みなもと太郎の『風雲児たち』(潮出版社・リイド社)は例外だとも書きました)。同じ理由で「科学まんが」の本も評価しないのですが、あさりよしとおは例外です。それは、監修者の文章の漫画化でなく、漫画家オリジナルの漫画になっているからです。科学知識を、漫画家自身が血肉化したあと、漫画表現しているからです。
 20年以上の連載ということで、その評価がわかりますが、まだ11巻目では2年に1冊くらいです。いかに「科学まんが」が割の合わない連載かわかります。ほかの長編漫画で食べているから、取材に手間ひまかけられるのでしょう。
 内容は、専門家の書く啓蒙書を越えた、漫画家の視点からのオリジナル表現になっています。題材は、科学技術、自然環境、生命進化と多岐にわたりますが、著者の関心の高い分野に秀作があります。特に宇宙開発に造詣があり、2巻の「ロケットの作り方おしえます」では、人類のロケット開発の歴史を、物理、技術、政治経済まで目配りし、ツボを得た表現をしています。 漫画だから図解もお手のもの。ストーリーは、ツオルコフスキー・ゴダード・オーベルト・ブラウンといったロケット開発の錚そうたるメンバーが総がかりで、小学5年生の手作りロケットを手伝うという破天荒もの。人類はなぜ宇宙を目指すのかを描いた感動作です。4巻では、宇宙開発の日本版も描いています。ロボットものでは93年に3巻で「我が輩はロボットである」02年に8巻で「ロボットの来た道」と2回特集し、読みくらべると10年間の技術の進歩がわかります。科学技術が、思想にどう影響するかも読み取れます。
 本川達雄の『ゾウの時間ネズミの時間』(中公新書)はベストセラーですが、これを子供にどう説明するかは、結構むずかしい。6巻の「どちらが長生き!?ゾウとネズミ」は,16ページで生命とは何か?を描いています。きわめつけは、5巻の「インフルエンザ大戦争!」ウイルスと免疫の関係を16ページで描ききっています。往年の映画『ミクロの決死圏』のようです。7巻は「『見る』科学」。ビデオから顕微鏡・望遠鏡・AFカメラのテクノロジーを支える、海外の基本特許と日本の最新技術の関係、まで考えさせられます。
 とにかく現在でも全巻が入手可能なのですから、驚異的です。「科学まんが」の先達・内山安二が、あさりの本を「かなり高度なことをやっているね」(7巻)と評していましたが、あさりの苦労をかった褒め言葉と取るべきでしょう。
   (高橋峰夫)

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宇宙への秘密の鍵

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「宇宙への秘密の鍵」
作 ルーシー&スティーヴン
     ホーキング
訳 さくまゆみこ
岩崎書店 本体1900円




宇宙のことに興味をもったのはいつのことだったろう。私にとって宇宙は星の世界だった。アナグロ世代の私は弟がもっていた望遠鏡(たいしたものではない)を借りて、良く屋根の上にあがって星をみた。小学生の頃だった。いつの間にかそれから遠くなって、宇宙や星の世界は本の中になってしまった。最近はおもしろいというか、宇宙の写真が載っているわりあいやさしい本がたくさん出るようになった。たとえば「ハップル宇宙望遠鏡」の本だ。ほとんどが科学としての本だけれど、とても写真がたくさん載っていて私はそれを見ているだけでも楽しい。(ロケットにはあまり興味がないので、宇宙船などの本はあまりみない。)
 今回出版されたこの本は一応物語の本ではあるが、宇宙についての科学的な解説もしっかり書かれている。写真もたっぷりだ。難しいところは昔のように写真だけしっかり見るだけでも楽しむことができる。
 一方、SFを読むように物語のみを読んでもいっこうにかまわない。物語はこんなふうに始まる。ジョージの両親はエコロジストだ。特に父親は活動家なので、食べ物からすべてエコロジー、現代っ子のジョージは不満だ。ある日飼っていたブタ(これはプレゼントだった)がいなくなったので探しているうちに隣の家の庭に入り込んでしまった。そのジョージの前にあらわれたアニーという少女、誘われて入ってみると不思議な家のなか、父親エリックは科学者だという。それに、アニーの家にはパワフルなコンピューターコスモスがあり、宇宙の話を聞くうちにすっかりとりこになってしまう。次の日、アニーに誘われ宇宙に出かけて行って危険な思いをするが、コスモスとエリックにたすけられる。ジョージの担任の教師はなぜかよからぬことを企んでいて、いじめっ子を使いエリックをおびきだし、ブラックホールにおいてきぼりにしてしまう。コスモスを連れ去りエリックを永久に帰ってこられなくしようとするのはなぜか?コスモスを治してエリックを助け、リーバー先生の手から逃れる事もできたが、宇宙の謎はこれで解き明かされたわけではない。
 この本の物語性はところどころ入っている挿絵が読む人の想像力をかきたてることにある。最後のベージは屋根に上がったブタのフレディが夜空の彗星、ほうき星をながめている。1巻のこの本はブラックホールのことを書きたかったというが、2巻目は彗星かそれに関係あることなのではないだろうか。<彗星は太陽のそばを通ると、熱せられて、表面の氷が溶けはじめ・・・P300>と2巻へと物語は続く。1年に1冊づつとか、待ちどうしい。
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宇宙の入門書には「宇宙を読む」カラー版 谷口義明・著(中公新書)が天文学をやさしく解説している。やはり写真がいっぱい入っていてわかりやい。

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マイカのこうのとり

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「マイカのこうのとり」
ベンノー・プルードラ作
上田真而子 訳
いせひでこ 絵



マイカの家にこうのとりが巣をつくり卵を産みました。雛が三羽産まれましたが一羽だけ色が違います。そして、その一羽は親鳥に巣からつきおとされます。命が助かった雛はマイカの父親が何度か巣へ戻そうとしますが、またも落とされて、雛鳥も帰ろうとしないばかりか、犬のヴィトーの寝カゴに入ってくつろいでしまいます。しかたがないので小屋へ連れて行って巣を作ってやります。けれどある日、知らない男の人がきて、こうのとりを連れてってしまいます。
 親に突き落とされてしまったこうのとりと、それを育てようとするマイカ。でも、その考えに父親は反対です。たしかに理屈はそうなのですが、マイカの気持ちは納得しません。母親はマイカの気持ちに添ってなんとかしたいと思います。こうのとりは自然の鳥です。だからいつまでも人の手の中にいてはいけないし、ましてこのこうのとりは渡り鳥なのです。
 こうのとりはある日飛び立っていきます。その前にマイカに別れの挨拶にきました。
こうのとりをめぐっての少女の孤独感を詩情豊かに描いています。その物語に絵がとてもあっていて、絵を見ていると、マイカの気持ちがひしひしと伝わってきます。

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つぐみ通りのトーベ

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「つぐみ通りのトーベ」
ビルイット・ロン作
佐伯愛子 訳
いちかわなつこ絵
徳間書店 本体1400円



 女の子が木にしがみついている表紙の絵、女の子はトーベという名前の小学校2年生です。元気な子どもなのですが、最近ちょっと浮かぬ顔をします。それは仲良しのエンマが他の子と仲良くしていて、トーベによそよそしいからです。エンマの誕生日プレゼントを買った帰り、木に登っておりられなくなったこねこを見ました。その時はトーベも同じようなことになるなど思っても見ませんでした。誕生日のパーティーに行く日、いろんなことがあって遅れそうになり、パパが車で送ってくれました。車に乗っていたので、道が良く解らなくなり、着いたエンマの家ではみんなとてもおしゃれなようすをして来ているので、トーベはすっかり気が重くなってしまいます。しかもミスをしてスカートを汚してしまいみんなに笑われたので、とうとう途中なのに抜け出して、黙ったまま一人で家に帰る事にします。歩いているうちにトーベは帰り道がわからなくなってしまい、木に登って高い所から探そうと思い、木に登ったまではよかったもののこんどは降りられなくなってしまいました。さんざんな日でしたが良い事もありました。男の子と友だちになれた?、エンマのほんとうの気持ちは決してトーベを嫌っているわけでもないことを知ります。なんといつてもトーベは消防車に乗ったのです。これってすごいことです。トーベはエンマや同級生とまた仲良くなり、新しい友だちもでき、ペットも持ちました。
限られた場以外にも新しく行動をひろげていくこの年齢の子どもたちの気持ちが良く描かれています。それに、スウェーデンのお話なので、トーベの両親が家事を分担して働く様子など、おとなからみてもなかなか興味深い場面がある物語です。たくさんのさし絵がはいっていて、ひとりでも楽しく読むことができます。


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フイツシュ

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「フイツシュ」
L・S・マシューズ作
三辺律子 訳
ずずき出版 本体1600円



私の両親はある国の村で救援活動をしている。この国は酷い暑さ、雨が降らないので水がたらない。それだけでなく内戦が激しくなって私たちも危険になってきた。
 そんなある日水たまりといって良いほどの小さな池で魚を一ぴきだけみつけた。この国の戦闘が激化してきたので、私たちはここをのがれて、安全な所に行くことにした。私はこの魚を連れいてきたいと思ったが、むろん両親は反対、でも執拗な私の頼みでとうとう魚をつれて、国境を越え、安全な所へ脱出することにした。ロバを連れたガイドに導かれて出発する。魚ははじめペットボトルにいれられたが、やがて使いふるしのお皿に入れられ運ばれるが、水も無くなりかけていく。険しい山道を通るのに、足を滑らし谷底に落ちそうになったり、積んだ荷物もろともロバを失いそうになったり、部族の捕虜になったり、目の前で人が殺される。もちろん必死に守った魚は一滴も水がなくなり、いまにも死んでしまいそう。最後の手段は魚を口にいれて運ぶことだった。最悪なのは部族に捕えられた時、けれどガイドの口添えで命は助かり、やっと難民キャンプにたどりつくことができた。魚は生きていた。警備兵に渡して川にはなしてもらう事にした。
 この物語は一人の少女が困難な道を、死と隣り合わせのなかで希望を持ち続けて自由になるまでの物語だ。自分を信じる事、そして、はじめて他の人を許せた時にほんとうに自由になる、この少女といっしょに旅をしたあなたが、この不思議な物語のなかにみつけるものはなんだろうか。

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ゴッホの本

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「にいさん」
いせひでこ
偕成社 本体1500円




 ゴッホと弟テオの関係は有名である。南フランスで片耳を切り落とし、近くの人びとから恐れられ、無理解のうえに精神病院にいれられてからも、弟テオは兄の良き理解者だった。理解者というより、兄ゴッホの命は弟のテオによってささえられていたのだ。ゴッホは37年間のなかで700通もの手紙を弟に送っているという。この絵本ではその弟テオの兄への賛美と共感にみちた物語が描かれている。それはこの絵本の作者である画家いせひでこの想いにしかならない。ゴッホの、たとえば「ひまわり」はいせひでこから見た「ひまわり」であるから、ゴッホの燃えるような色彩でなく、テオをとおしたいせひでこの、濃い青と黄色で描かれた「ひまわり」だ。
 一方偶然だろうか、ゴーストになったゴッホが日本にきて、広重や北斎を訪ねるなかでの夢を描いた物語がでた。

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「時の扉をくぐり」
甲田天・作
大田大八・絵
BL出版 本体1400円



 主人公佐吉は絵師広重のもとで見習いをしている。見習いといっても、ていのいい奉公人だ。でも、そんなことに広重は頓着していない。ただ絵のことばかりで頭がいっぱいだった。そこへ現れたのは赤毛で瞳が深い青の男ゴッホの幽霊だった。生き続けると弟の迷惑になるので自殺したゴッホ、けれど、その弟テオも半年もたたないうちに精神を病み死んでしまう。向こうの世界で弟に会い、一生懸命に祈って日本に行ってあの浮世絵を見てみたいとの切実の願いでここに来たという。出島にいたことのある又三の通訳で、広重は長野の小布施にいる北斎の元にゴッホをつれていくことにする。佐吉は荷物持ちだが一緒について行く事になった。3人が北斎に会うまでの旅のようす、いろいろな人と出会うだけでなく、ゴッホは広重の絵の秘密を、広重は北斎に対しての屈折した思いのなかで、ゴッホの自分とは全然違う表現の仕方を学びながら、そして、佐吉と又三は旅をするうちに自分の生きていく意味を考えていく。
 日本の浮世絵が印象派の画家に大きな影響をあたえていたことが、こんな本になって読む人のなかで一層の想像力がかりたてられる2冊である。

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なわとびしましょーフュージョン

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「なわとびしまょ」
長谷川義史
学習研究社 本体1200円




今日はとても暖かい、光の輝いていた春の一日でした。こんな日は「なわとび」を跳んでみるのもいいかもしれません。今、一番のっている長谷川義史の絵本です。男の子がひとり、口をあけて、飛んでいます。でも、縄跳びでもこれは、一人縄跳びではありません。表紙の折り返しの所に子ども、握った縄は裏表紙の子どもが持っています。そして、表と裏の見返しには縄跳びの歌が載っています。“おおなみ〜 こなみ〜”さあ、つなをまわしますよ!子どもの頃の縄跳び、ゴム跳びを思い出しました。とってもじょうずな同級生がいました。いま、どうしているかしら。
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「フュージョン」
濱野京子
講談社 本体1300円



この本を読むまで「ダブルダッチ」という言葉を知りませんでした。その「ダブルダッチ」に音楽の要素を取り入れたのを「フュージョン」といいます。
主人公朋花は偶然家から少し離れた公園で、同級生と隣のクラスの3人が縄跳びをしているのに出くわします。その縄跳びが「ダブルダッチ」と呼ばれるもので、きっちりと優等生の美咲、茶髪にしていてヤンキーな玲奈、そして、おとなしくていつも玲奈のパシリをしているような玖美、到底友だちになるようなことはないと思っていたメンバーでした。誘われるというより、挑発されて勢いで跳んでみた朋花はすっかり虜になってしまいます。朋花の母親は高校の教師をしていて、子どもたちに要求度の高いいわば教育ママ、秀才の兄はその重圧から飛び立とうとして家出をします。朋花だけに写真だけのメールを時々送ってきます。いつもきちんとしている優等生の美咲が服装や髪型をかえて、いわゆる問題児の玲奈といっしょに、気持ちを揃えて「ダブルダッチ」で汗をかいて練習しているなんて、朋花には思っても見ないことでした。高校の文化祭で「ダブルダッチ」を見て4人はコンテストにでることにしますが、教師の誤解から、校則に厳しい学校と対立してコンテストにでられなくなります。朋花から事情を聞いた親友の彩乃の提案できちんと自分たちの主張と実力を学校に認めさせるためにあることを密かに計画して実行します。
 この物語は一応いま流行の運動物語かもしれません。そして、縄跳び=ダブルタッチは気持ちを揃えないと跳ぶ事ができない、個人プレーの競技ではないのですが、だからといって根性物や道徳的な物語ではありません。
 友だち、親とのかかわりと考え方、だれもが青春期に何度か親や世間と対立しながら成長していきます。そのなかで自分らしく、自立していくとはどういうことなのかを考えていきます。
 音楽が大事な背景になっていて、文体はスピード感があり、開放感が感じられます。

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シャーロック・ホームズ外伝

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<カラス同盟>事件簿
シャーロック・ホームズ外伝
アレックス・シモンズ/ビル・マッケイ
片岡しのぶ・訳
あすなろ書房 本体1300円




この本もまた、「シャーロック・ホームズ外伝」と書かれているようにホームズのシリーズのなかの「ベーカー街不正規隊」として活躍する少年たちをもとにして、物語がすすんでいる。この本もまた、というのは、このブログ1月14日に紹介した「ベーカー少年探偵団」と同じ部分を背景にした物語だからだ。
 ロンドンの貧民街に住む私設隊員がホームズのために情報集めをする。特別の待遇を受けるわけではないのに、少年たちはホームズの力になることに誇りをもっている。また、どちらの作品もホームズが困難におちいる(捕まって殺されそうにな)のを少年たちが助けるのだが、相手の悪党が政権転覆と女王暗殺を企てることをめぐっての事件なので、歴史の裏面事件を読んでいるようなおもしろさがある。そういえば、シャーロック・ホームズには関係ないのだが、やはりこのブログ2月27日に紹介した、エイキン作の「ダイドーと父ちゃん」の物語の背景も、ヴィクトリア女王暗殺を企てる一味に加担する父親に、巻き込まれてしまう子どもたちが、事件を阻止するために活躍する物語だった。霧の中、石畳を走る馬車、ガス灯、貧しく、孤児も含めて大人と同じように働き、生活している貧民街の子どもたち。主人公のウィギンズ少年は親友ティムが殺されてしまい、<カラス同盟>をつくり敵討ちをしようとして事件にまきこまれ、はからずしも殺されそうになっていたホームズの命を救うことになる。子どもたちが一人一人の特性を発揮してのいきいきとした集団の動きはとても魅力的だ。

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新刊「衣世梨の魔法帳」

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「衣世梨の魔法帳」
たんじょう日のびっくりプレゼント
那須正幹・作
山西ゲンイチ・絵
ポプラ社 本体840円




衣世梨のシリーズ6冊目です。この物語は衣世梨の10歳の誕生日におこった不思議な話、ちょっと季節外れですが、8月、夏休みの話です。衣世梨は4年生、今年は誕生会はしないでおこうかと迷うところから、話ははじまります。誕生日は9月9日、スーパーで働いているお母さんは仕事を休む?それはまずい!と考えるくらい衣世梨も大きくなったということです。呼ぶ友だちのことなど、なんとなくめんどくさいと思っていましたが、やっぱりすることになりました。そして、両親や友だちと話をしているうちに、幼い頃の思い出が浮かんできました。たとえば、幼稚園、行きたくない事があったことなど、前に住んでいたところのことなど、思いついて幼稚園や住んでいたアパートに行ってみることにしました。花丸と一緒に。いつの間にか衣世梨は幼くなっています。そして、誕生日、びっくりプレゼントをもらいました。そのびっくりプレゼントとは・・・衣世梨はタイムスリップしていろいろのことを知ります。大きくなりたかった衣世梨、すててしまってすっかり忘れていたぬいぐるみのイービーちゃんのこと。
 このシリーズは、とくに今回のように、ドキドキするような事件があったり、その謎解きがあったりするわけではない物語は、ゆっくりと考えながら読みたい。そして、その観点で考えると、表紙の絵もふくめて、衣世梨が幼すぎ、かわいすぎます。
 ともかく、なにはともあれ、衣世梨は10歳になりました。”そうか、あたしたちって、もう十年も生きてきたんだ”と意味の深い事をいっています。

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むかしばなし「いたずらぎつね」

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 1のまきを以前紹介したが、2のまきがでた。
よみたい ききたいむかしばなし
 2のまき「いたずらぎつね」
 1のまき「ねこのおんがえし」
中川李枝子 文
山脇百合子 絵
のら書店 本体各1300円

1のまきと同じように12編はいっている。タイトルどうりに幼い子どもが自分で読んでも良いようにもなっている。それはなによりも親しみやすい絵に負う事が多い。また、読んでもらうのに良いのは、やはり聞きやすく、イメージが浮かびやすい作者の言葉におう事が多い。それは声をだして読んでみると良くわかる。今の子どもたちがイメージしやすい言葉、昔話の特徴である繰り返しの言葉、ところどころに入っている歌のような言葉(そういえばこの二人の共著である「ぐりとぐら」のなかで歌われるうたのルーツはこういうところにあるのかもしれない。)おもわずうたってみたくなる。例えば「きつねとかわうそ」はこんなふうに"さかな 一ぴき おっぽに かかった おれのもの”"もう一ぴき おっぽにかかった おれのもの”そして、"さかな どっさり おっぽにかかった おれのもの”でもきつねはかわうそをだましたために、かわうそにしてやられてしまう。"くっつくな こらっ あっちいけ さかな このおっぽは おれのもの”こんな調子で唱えごとのように歌がはいっている。「たにしときつね」にいたつては"口のとんがり”とか"けつのとんがり”とかおもわず笑ってしまうくらいおかしい。
 12編目のおはなし「マミチガネのぼうけん」というお話は私ははじめて読んだけれど、ファンタジー物語のようにちょっと不思議なお話だ。マミチガネは最後には生家の名声と栄誉をすてて「わたしは、ふたりの父親をやしなうことはできない。父上は養子をもらってください。わたしは、いのちをすくってくれた、妻の家ではたらきます。P136」とさっぱりとおよめさんの家に行ってしまう。
今日も店で新一年生に良い本は?と聞かれた。今の時期子どもはある意味ではずいぶん緊張しているので、こんな本を読んであげてくださいと、この本を薦めた。テレビを消して、ゆっくりとね!

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物語の愉しみ

 エイキンの新刊をほんとに久しぶりに読みました。そして、久しぶりン物語の愉しさを堪能しました。
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「ダイドーと父ちゃん」
ジョーン・エイキン作
こだまともこ訳
富山房 本体1819円




「ウィロビー・チェースのおおかみ」からはじまる一連の物語といっても知らない人も多いくらい、本が品切れ状態になって長い時間があった。今度新刊が出て、この続編も前のものも出版されるとのこととても嬉しい。前の本の大まかな内容は「そもそものお話は・・・」とまえがきのように書かれているし、これを機会に読んでもらう事にして、とりあえずこの本の紹介をしたいとおう。
 舞台はイギリス1832年良き王ジェームス゛三世が即位した。イギリスのドーバーとフランスのカレーをむすぶ英仏海峡トンネルが完成・・・えっ?ちょっとちがうのではない!そう、エイキンにすっかりだまされてしまう。ほんものの歴史ではちがう、これは、この一連の物語のひとつの特徴だ。架空の時代の架空の物語なのだが、読み手はそんなことはどうでも良く、あたかも史実のように思ってしまう、それくらい物語はリアルだ。はらをすかせたオオカミがぞくぞくとヨーロッパ本土を渡って来る。それはけもののオオカミとオオカミのような人間とにかけているのだけれど、ダイドーとサイモン(バターシー公爵になっている)ふごの妹ソフィー、あたらしく登場のイスという少女、そして、たくさんの孤児や浮浪児たちが力をあわせて戦う、ドキドキハラハラの物語だ。対する悪人辺境王アイゼングリム、孤児たちを慈善事業のようでじつは孤児から収奪しているアヘン中毒の女ブラッドヴェセル、音楽家としては天才なのに悪人に加担して、しかも自分だけでなく娘のダイドーを利用しようとする父親トワイト氏、とても魅力的な人たちが丁々発止とやりあうさまは、読み手はいつしかエイキンの物語にはまりこんでしまう。
 そのわけはこの物語の背景の事柄や場所がほんとうに目の前に実在するかのように書かれている事にある。人だけでなくオオカミがぞくぞくとふえてくるところや、氷ったテムズ川を渡るところ、子どもたちが広場や街角で、歌い遊ぶわらべ歌や、トワイト氏の音楽まで、すぐ側に聞こえてきそうだ。それは、ファンタジーの王国でもあり、デッケンズをうみだしたリアリズム小説の王国でもあるイギリスの文学と、ヨーロッパやカナダに暮らし、詩人の両親の資質をもったエイキンの才能に裏付けられている。
 ダイドーやサイモンたちの活躍でこんどもハノーバー党の王殺害の悪巧みは失敗に終わった。続きが待ちどうしい。
 エイキンはこの本のような長編のほかに少し不思議な世界を物語にした短編集「しずくの首飾り」「海の王国」(共に岩波書店刊)など多数あります。

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ヒキガエルとんだ大冒険シリーズ完結

 小学校入学頃の年齢の子どもたちに「エルマーシリーズ」についで人気のあるシリーズものに、この「ヒキガエルとんだ大冒険」があります。しばらく1巻から4巻まででていて、やっと続きがでました。ところがなにか事情があったのか5巻目がとんで6巻、7巻。この5巻がやっとでて、これで全部そろいました。幼い子どもは律儀?なところがあってシリーズものは1冊読んで(または、読んでもらって)おもしろいと全部に手をだします。しかも順番通りに、1冊づつ別べつのおはなしだから続けて読まなくてもいいのだと言ってもなかなか納得しない子どもがいます。

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「ウォートンとモリネズミの取引屋」
ヒキガエルとんだ大冒険5
ラッセル・E・エリクソン作
ローレンス・ディ・フィオリ絵
佐藤凉子・訳
評論社 本体1300円



 この巻はヒキガエルのウォートンの大活躍です。モートンの作ったおいしそうな料理をトゥーリアおばさんのところへ持って行く事にしました。日が暮れて枯れた木の根元をみつけて食事をしてやすんでいるとぞっとする声が響き渡り、小さな動物が逃げる音がします。ウォートンのところへ逃げてきたのは沼地に住む2匹のモリネズミ、ヤマネコに追われてきたのでした。ミリネズミはおもしろいことに、なんでも取り替えっこ、取引をするのです。ところでおばさんは留守、そして、ヤマネコがおそってきます。逃げる事はできたのですが、やっと出会ったおばさんは足を痛めた子鹿の手当をしていました。子鹿の食べ物を見つけなければなりません。ウォートンは取引屋のモリネズミに手伝ってもらうことにしました。かわりの取引はヤマネコを沼に誘い出し追い出す事。さぁ!うまくいくでしょうか。小さな動物たちが協力する様子、しかも、なかなかユーモアのある方法です。
 このシリーズはどの巻も食べられそうになってドキドキします。食うか食われるかの世界が、(もちろん智恵をしぼってのがれられるのですが)展開されます。それに、ちょっとドジなご愛嬌のある動物がでてくるのも楽しいことです。
 装丁がこの巻から変わってしまい、おとなはちょっととまどっていますが、子どもたちはじきになれるとおもいます。前の巻も変わっていくようです。

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「テラビシアにかける橋」本と映画

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「テラビシアにかける橋」
キャサリン・パターソン作
岡本浜江・訳
偕成社文庫 本体700円
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この本はかなり昔に読んだ。作者が来日したおりに話を聞きに行ったこともある。その時の印象はきちんと言うべき事を持ったおとな、媚びる事なく、おもねる事もなく、それでいて今に生きている子どもたちをちゃんと受け止めていっしょに歩いていこうとするおとなの人だと思った。パターソンの作品はどれも家族のことを描いているように思う。ベトナム戦争以後、ちょうどいまの日本がそうなように、人間関係が再編成されるなか、一体、親子って家族(国家)ってなんだろうと問いかけている。。いままでの家族、血のつながりがあって、父親が一家を養い、母親は子どもの成育をにない、貧しくとも助け合い、国家に信頼をおいて・・・親は子どもの成長になにができるのだろう。
 ジェスの家は農家兼、父親は食べていくためにそのほかにも雇われている。4人の姉妹のなかのたった一人の息子、親から見ればたよりにしたいが、あまりたよりにならない11才。父親に反抗はするものの、一方では家の貧しさも親の期待も充分わかっているやさしい子どもだ。ジェスは絵を描くことで学校や家庭からのがれようとする。一方、となりに引っ越してきたレスリーの家庭は対照的だ。一人っ子、両親共知識人で本を書いている。男女は平等で、進歩的な自分たちの思想がすべてだとおもっていて、自分たちのことにいそがしくレスリーの孤独を想う事がない。
ふたりは当然仲良くなり、2人だけの王国テレビシアを森の奥につくる。けれどもその王国は一人で行くには危険な橋を渡らなければ成らない。誰もが一度は渡ろうとする橋、ジェスはレスリーに助けられて渡たり、しスリー亡き後は妹メイベルに手をかそうとする。
 担任の厳しい教師と若くて子どもたちに人気のある音楽教師、貧しくていっけん厳しくレスリーを叱ってばかりいる余裕のない親、子どもに理解があると思い込んでいる親、この二組の、善きおとななのだがレスリーの死に絶望しているジェスの気持ちに真に寄り添うのは。担任の教師とジェスの両親の描き方は作者が言いたかった事だと思う。
 ジェスは作者の息子で映画の脚本を手がけたデヴィット・パターソンがモデルだとのこと、映画のジェスやレスリーは適役で思春期の子どもたちの悩みも憧れも良く描かれている。背景の自然も魅力的、それだけに最後のテレビシア王国の映像はいかにもアメリカ映画らしく、丘の上の宮殿、王国の巨人や妖精たちは底が浅く類型的でつまらない。良く出来た娯楽映画になってしまった。まあ、映画はそれでもいいのだけれども。心の想像の世界を映像にするのはなかなか難しい。

 

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伝えることの難しさ「彼岸花はきつねのかんざし」

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「彼岸花はきつねのかんざし」
朽木祥・作
ささめやゆき・絵
学習研究社 本体1200円




 前作「かはたれ」と「たそかれ」(共に福音館書店刊)の著者、原爆2世で次の作品はそのことを含んだものになるとのことで、期待していた作品だった。
 原爆が落とされた年の春から夏のおわりまで、当時4年生だった也子(かのこ)と子ぎつねのはなしが9章までつづられている。そして、10章はピカドン、11章は子ぎつねの家族のこと、終章は也子の哀しみで終わっている。9章までに語られるのは、広島の少し在に住んでいた也子一家、祖父はすでになく、父親は戦地、祖母と母と也子、使用人の年取った男衆コウさん、ねいや。戦争中は食料難だけれど半農の也子の家は果物の成る木や畑があり、着物を売れば米などが手に入る、なんとか生活をしていける家だ。当然近所にいるのは年寄りと子ども、後は病人ばかりだ。貧しいけれど共同体が生きていた頃だ。
 作者の文体は前作と同様詩を読んでいるようだ。(読むだけでなく、耳で聞くと良くわかる。)特に風景描写は風の音や光まで、「也子のつくったおしろいばな」「きつねのよめいり」「ピカドンが落ちる前の晩の満天の夜空」いまでは人のイメージにしかみられないであろう描写はただ、ただ美しい。けれど、それは情緒的な絵のように読まれてしまう弱さにもなってしまう。
 なんでもない日常生活、ピカドンや戦争がなければ也子は普通におとなになって、祖母や母のようにきつねに選ばれた賢く、やさしいおとなになっているにちがいない。「化かされたい」という也子のその後をあらためて知りたいと思う。

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「バージャック」の物語

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「バージャック」
メソポタミアンブルーの影
SFサード
金原瑞人・相山夏奏 訳
偕成社 本体1500円




バージャックは由緒正しいメソボタミアン・ブルー一族のはずれもの。なんといっても目が緑でない。この名門一族は伯爵夫人の庇護のもと、お屋敷から一歩もでることなく暮らしてきた。怠惰な毎日のなかでバージャックだけは外の世界に好奇心と憧れをもっていた。伯爵夫人の姿が見えなくなり、謎の男が二匹の黒猫をつれてあらわれた。変だ!と思ったのはバージャックと一族の偉大な祖先ジャラールの話をしてくれる年老いたエルダー・ポーだけだ。真相を探り男と黒猫との対決のため、バージャックとエルダー・ポーが考えた事は犬の助けを借りる事だった。そして、エルダー・ポーはバーシャックがジャラールの技を身につけ、一族に伝えていくように話すのだった。
 ちょっと見た目は落ちこぼれの猫が勇気と粘り強さで敵と戦う、よくある話だ。そして、困難を乗り越え強くなり、リーダーになっていく。智恵をしぼり、良き協力者を得て、事件を解決していく。猫の世界ではなく当然人間の世界のことでもある。
 少しドキドキする冒険を味わいながら、満足のいく物語の最後、児童文学の定型の本、活字も大きく小学3年生位から充分に楽しめる。

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ネズミの父さん大ピンチ

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「ネズミの父さん大ピンチ」
ジェフリー・ガイ作
勝田伸一 絵
徳間書店 本体1400円




 前に「番ねずみのヤカちゃん」という愉快なお話を紹介しましたが、今年の干支から「ねずみ」の本を探したらずいぶんありました。良くも悪くも人間とそれだけ関係が深い動物なのでしょう。そして、おもしろいのはネズミは勇敢で、頭が良いことです。もっともこの本にでてくるネズミには馬鹿なネズミもいることは確かです。主人公の父さんネズミは家族想いで、生きていく為にいろいろな事を考えます。この本はそんな勇気ある父さんネズミと家族の物語が2話入っています。
 この家族はハツカネズミで人間の家の壁の中に住んでいます。ネコがいなくて良いと思っていたら、子ネズミの3号が人間にみられてしまい、ネズミ退治が始まります。壁の穴がふさがれたり、毒入り麦が置いてあったり(子ネズミ2号は食べて死んでしまう)、ネズミ取りがあったり、そして、とうとうネコがきた、父さんネズミはドブネズミをつかってネコを追い出す作戦を考えます。 
 2つ目のお話はネコのハンニバルと組んで犬をやつける話です。父さんネズミに注意するようにいわれたのに、自分の方が偉いとうぬぼれていたネズミのキノミカジリの話もあって、それはなんとキノミカジリは同族なのに、父さんネズミをうらぎり窮地におとしいれます。でも子ネズミのヨコットビが大活躍、父さんネズミの家族はネコのハンニバルと奇妙な友情関係?でめでたし、めでたし。
 ネズミとネコとイヌと食うか食われるか、ドキドキする冒険の話ですが、それだけでなく、なかなかこの関係はシリアスでおもしろい描かれかたがしてあります。痛快でカラッとしている、これがこの物語の魅力です。

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母と父の物語「エセルとアーネスト」

 作者はクリスマスに活躍した「さむがりやのサンタ」や「スノーマン」を描いた人です。エセルは母、アーネストは父、この2人の生涯を描いています。
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「エセルとアーネスト」
ほんとうの物語
レイモンド・ブリッグス作
さくまゆみこ訳
小学館 本体2200円




物語は1928年からはじまります。エセルはその頃メードをしていました。アーネストは牛乳配達が職業でした。2人は結婚して、ローンを組んで家を買い、ささやかな生活がはじまりました。すこしづつ家具をそろえていきます。やがてレイモンドが生まれましたが、エセルは高年齢だったので、子どもはレイモンドひとりでした。そして、戦争、疎開、イギリスも戦火にみまわれます。レイモンドは奨学生試験にうかりますが、教育熱心なエセルやアーネストの期待を裏切って進学校をやめて美術学校へ、徴兵と、時代はどんどん変わっていきます。
 コマ割りをつかって1971年に亡くなるまで、この二人の庶民の生活を描いています。時にはユーモアいっぱいに、ときには、社会批判も。一人息子のレイモンドを慈しみ育てた夫婦を描きながら背景のイギリスの歴史もひもとかれていきます。やはりこの本のようにコマ割りで描いている「風が吹くとき」では、核がおとされた時にも国家を最後まで信じて、シェルターの中で命絶える夫婦はたくさんのエセルとアーネストにちがいないと、この本を読みながらあらためて思いました。表題どおり、エセルとアーネストのほんとうの物語です。
 

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元気な「番ねずみのヤカちゃん」

 「ぐりとぐら」と同じように子どもたちからおとなまで、すすめると気に入ってもらう本があります。でも、もしかしたら会留府だけかもしれません。福音館書店の人がちょっと不思議がっていましたから。会留府のスタッフはそのことの方が不思議です。それくらいみんなに人気のある本です。
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「番ねずみのヤカちゃん」
リチャード・ウィルバー作
松岡享子・訳
大杜玲子・絵
福音館書店 本体1300円


「番ねずみ」って?家を守る犬を番犬といいます。このお話は犬でなくヤカちゃんというねずみのお話です。ねずみだから「番ねずみ」勇気のあるねずみのお話です。ヤカちゃんはものすごく大きな声の持主、猫に知られてしまうからもっと小さな声をだすようにといつもおかあさんにしかられます。わかったよ‼すこしもわかっていません。でもその元気な大声が泥棒をたいじしてしまいます。ともかくおもしろい。じつは以前、訳者の松岡享子さんのストーリーテリングを聞いてすごく楽しい経験をしました。訳者だからもちろん言葉がこなれているのですが、力があって、まるでヤカちゃんそのものからお話を聞いているような気持ちになりました。松岡さん以外にもこのお話を語る人がいますが、おはなしそのものがおもしろいので、30分ちかくあきずに聞くことができます。子どもは目を輝かせて、やっぱりヤカちゃんになったように、ヤカちゃんのセリフを言うような表情をします。わかったよ‼
 私はいやなことがあると、家に帰ってヤカちゃんのように言ってみます。わかったよ‼って。
 行間があいているし、絵がたっぷりとはいっているので、2年生位からひとりでも読むことができますが、でも、この本は読んでもらったほうが何倍にも楽しい本です。

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ジーンズの少年十字軍 上・下

 歴史小説を読む
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ジーンズの少年十字軍 上・下
テア・ベックマン作
西村由美 訳
岩波書店 本体上720円 下680円




ドルフはオランダの少年です。父親のヴェーハ博士に無理矢理にたのんで、父親の友人のシミアック博士とクネーヴェルトゥール博士が発明したタイムマシンを見せてもらうため、クリスマス休暇を利用して実験室にやってきました。そして、この実験台になりたいと強引に説得します。同意をえて降り立った所はドイツ、時は1212年、出会ったイタリア人の少年レオナルドと贈りものを交換しあって、もとの研究室にもどろうとしますが失敗、戻る事ができなくなったと悟ります。やがて、ドルフは子どもたちの歌声を聞き、たくさんの行軍をしている子どもたちに出会います。子どもたちは少年十字軍、サラセン人からエルサレムを解放する使命を受けて聖地に行くといいます。
 少年十字軍、歴史でならったことを思い出しました。でも、あまり良く理解してはいません。あとがきによると1212年にフランスとドイツで同時期におこり、フランスの少年十字軍は船が難破したり、生き残った者も奴隷として売られ、悲惨に状態になり、ドルフが加わったドイツの少年十字軍はアルプスを越えてプリンディジについたものの、送り返されたとのことです。
 この物語は歴史小説なのですが、王や英雄の物語ではなく、普通の人たちの夢や望み、現実を描いています。それは、作者の生い立ちによるものかもしれません。ロッテルダム生まれの作者はまず、女性であるということで、次には父親の失業によって、中学校卒業と同時に働き、子育ての後に高等教育を受けた人です。普通の人たちが歴史をつくっているという考えは作品に良くあらわれています。ドルフはタデウス修道士に最後にこんな事をいいます。「・・・そして、その愛をのちの世紀では忘れてしまった、とドルフはおもった。いや、すっかりわすれてしまったわけではない。ニ十世紀、人々は社会制度の全体系をつくりあげた。おかげで、病人や貧しい人々、障害者が、この十三世紀のように飢えで死ぬことはもはやない・・・。だが、愛でやってることがあるだろうか?タデウス修道士のあの素朴な、ときには手段をえらばぬほどの愛で・・・?ぼくたちはそれを忘れ、五倍もややこしい書類にとってかわらせてる。下P244」
 この作品の前に出版された「トンケ・ドラフト作 王への手紙/続白い盾の少年騎士」と同じように興味深く読む事ができます。


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イーゲル号航海記1

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「イーゲル号航海記」
1 魚人の神官
 斉藤洋
 コジマケン・絵
偕成社 本体1200円




 じつをいうとこの作者の本を久しぶりに手にした。最近は幼年童話のようなものが多く、あまり心引かれる事がなく、少し読んではパスしてしまっていた。この本の何に心ひかれたかというと、まず、表紙の絵、そして、見開きいっぱいに描かれている船=潜水艇の構造図、そして、プロローグ「学校は毎日いくところではない」(じゃあ どこへいくのか!)あの「ルドルフとイッパイアッテナ」みたいかな?というわけで読んでみた。
 時代は第一次大戦と第二次大戦のあいだ、日系ドイツ人の少年が学校への道をまがらないで港に行ったら、不思議な船に出会い、ひょんなことからその船に乗ってしまうところからはじまる。その船とは天才科学者のローゼンベルク博士が造った潜水艇で『イーゲル号』という。乗組員は博士とぼくを含めて5人(ひとりは人間みたいな犬)ヘルゴラント島の十海里南南東、どうも巨大な渦がありそれを調べるとのことだ。その渦は異次元の入り口ではいっていくと魚人の世界があった。
 つまり海洋冒険小説、SFっぽいけれどそうではない。アドベンチャーなのだ。作者の小説の特徴的でもあるのだが物語は淡々とすすむ。あまり感情的な言葉はない。昔話のように心理描写や感情の描写が少ないために、わかりやすく、かえって読み手の感情を入れやすい。一面ものたりなさも残るかもしれないが、かまえないで楽しく読む事が出来る。主人公は10歳、つまり10歳位から充分に読むことができる。
 魚人の国でくりひろげられた冒険、もちろん無事に帰って来る。また、次の冒険が待っているようで、早く出版されることを楽しみにしたい。

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昔話の本「ねこのおんがえし」

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「ねこのおんがえし」
よみたい ききたい むかしばなし1のまき
中川李枝子 文
山脇百合子 絵
のら書店 本体1300円




昔話はどんな人にも解りやすく、イメージもわきやすいので、幼い子どもたちにはたっぷりと聞かせたいと思います。けれど日本の昔話集に適当なものがなかなかみつかりません。ひとつは私たち現代の日本人の生活があまりにも変わってしまい、その事自体イメージがとりにくくなってしまったことがあります。畳の部屋がない、障子戸がない(カーテン)食べ物もお米はあまり食べない、着るものにいたっては着物を着るのは一生のうち何回あるだろうか?語ってくれる人もなく、テレビでみたり、アニメでみたりします。日本の伝統がちゃんといきていて、かつ、わかりやすいもの、難しい課題です。
 この本は現代の日本の子どもたちへの昔話です。たとえば有名な「ももたろう」中川さんの文は現代そのもの「たべれば ゆうきりんりん みなぎる力」とみんなでうたいなが鬼ガしまにいく時の唱えごとなど、そして、そのページのさしえのももたろうはすらっとした現代っ子?お供のいぬもさるもきじも土臭くなく、みんなとってもかわいくて親しみがもてます。これは日本むかしばなし「ももたろう」というより、中川李枝子のむかしばなしと言った方が良いでしょう。変にアニメ的な絵本でなくて良かったとおもいました。このような本があっても良いのだと声をだして読みながら納得しました。くずれた話し言葉でなく、きちんとした現代の言葉、明るくて楽しいお話を幼い子どもたちと読みあってください。12編のお話が入っています。2巻はもう12編、2月に刊行予定とのこと、楽しみです。

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花になった子どもたち

 今日の本の紹介はクリスマスの本ではありません。でもプレゼントにも良いし、もちろん冬休みのぽっと開いた時間に読むのにとても良い本のように思います。ちょっと謎めいた物語ですが、静かなこの物語を読むことで、この姉妹と同じにかすかな希望の光があなたの毎日の生活のなかに差し込んでくるのではないでしょうか。


「花になった子ども」
ジャネット・テーラー・ライル作
市川里美/画
多賀京子/訳
福音館書店 本体1400円
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 オリヴィアは9歳、妹のネリーは5歳、夏休みに父さんのおばさんにあたるミンティーおばさんのところへ行くことになります。と、いうのは2人の姉妹の母さんは亡くなってしまい、父さん一人ではとても姉妹の面倒をみることができないからです。とくにネリーは難しい子、気に入らない事があると泣き叫び荒れ狂います。それになにをするのにもこだわりがあります。母さんだけがちゃんとネリーのことをわかっていたのでした。
 おばさんは昔は名の知れた園芸家だったとのことですが、おばさんの家の庭は草ぼうぼうというか、あまり手入れがされていない自然のままの庭です。はじめは嫌だったのにふたりはやがて庭で遊ぶようになります。でも、友だちはなかなかできません。ネリーは友だちと仲良くなろうなどと少しもおもっていませんし、オリヴィアはおばさんの家にあるたくさんの本を夢中になって読んでいます。ある日、おばさんはこの庭にはあれこれ花の世話をやいてくれる花のこどもがいると話してくれます。そして、埋まっている青いティーカップを見つけます。同じ頃、オリヴィアはずっと昔ここに住んでいた作家の書いた本を見つけます。「花になった子どもたち」、その本には悪い妖精の悪巧みで花にさせられた子どもたちのことが書かれていて、その魔法を解くものいわぬ子どものこと、方法は魔法をかけられた時に使っていたカップとポットをその時のパーティーと同じに並べる事と書かれていました。そして、そのカップとポットは庭に埋められているとのことで、馬のかなぐつ型のする庭はこの庭だと気がつき、姉妹は埋められたものを探し見つけていきます。とくに、ネリーは夢中になります。それをを見つけていくなかで、すこしづつ外に心を開いていくふたり、でも、オリヴィアが友だちをつくり、置き去りにされたように思うネリーの気持ちは不安定になり、ついに爆発してしまうシーンなど、おもわず読んでいてつらくなります。幼いこどもにとってどんなに死は過酷で情け容赦のないことか、どこかへいっていまうのではないかという不安と不信感、それと向き合うなかですこしづつ成長していく様子が良く書かれています。そばで見守りながら待つミンティーおばさんには、おとなの読者は学ぶべきことがたくさんあります。この物語の庭は作者の庭がモデルになっているとのこと、庭だけでなく、もしかしたらミンティーおばさんは作者そのものではないでしょうか。高学年以上の子ども、おとなにおすすめです。

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幼年童話「とんぼの島のいたずら子やぎ」

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「とんぼの島のいたずら子やぎ」
バーリント・アーグネシュ作
レイク・カーロイ絵
うちかわかずみ訳
偕成社 本体1000円




 この本は絵本といっても良いほどカラフルな絵がたくさん入って、それは、しかも大きく入っているので子どもが自分で読むのも読みやすく、読んでやるにしても楽だと思います。
この事は小学校に入学する前後の年齢の子どもには大切なことです。いまの子どもは早くから文字を読みます。読むというより読まされます。この位の年齢の子どもは、甘えん坊のくせに、友だちなど意識が外へ外へと向っています。背伸びをします。だから無理をするといけない、文字を内容まで思いながら読むのは根気がいります。
 とんぼがたくさんいるとんぼ島にギダというとても元気な子やぎが住んでいました。ところが、サーカスにいたトラが引っ越してくるとのこと、ギダは”こわくないぞ!!とちょっかいを出したり、困らせようと考えます。このギダはちょうど小学校へ入学するくらいの子どもそのままです。ハンガリーのお話ですが、日本の子どもたちも十分理解して、物語の世界に入って行く事ができます。絵はおおらかなお話の世界を良く描いています。(トラの表情がおもしろい。)子どもと毎日すこしづつ読みあうのに最適の幼年童話です。

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ウォートンとモートンの大ひょうりゅう

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「ウォートンとモートンの大ひょうりゅう」
ヒキガエルとんだ大冒険6
ラッセル・E・エリクソン作
ローレンス・ディ・フィオリ絵
佐藤凉子 訳
評論社 本体1300円




ヒキガエルのウォートンが久しぶりに新作です。小学校低学年の子どもたち、「エルマーのぼうけん」シリーズを読んでしまい次に”どんな本がいい?”と聞かれた時に薦めるのが「ヒキガエルとんだ大冒険シリーズ」です。主人公はヒキガエル、1巻目はフクロウにつかまって食べられそうになるお話です。この頃の子どもたちの本の選書は以外と難しいのです。本の内容を理解する力と自分で文字を読み内容を理解する力とがアンバランスの時なので、文字の大きさや天と地のあきかた、漢字がどれくらいあるか、ほどほどのページの厚さ、挿絵の問題、そして、内容はなんといってもストーリーがハッキリしていて、冒険ものかナンセンスもの。なかなかそんなめがねにかなった本はそう多くはありません。それと、小学校に入学すると親たちは自分で読むようにとあまり読んでやらなくなります。読んでやるのも絵本と違って物語も長くなって、一回で読み終わらないものだから、根気よく毎日続きを読んでやらなければなりません。その根気はなんといっても読むおとなが本が好きでなければ続きません。
 この本はシリーズ6巻目になりますが、5巻目はちょっとおくれてまだ未刊です。ウォートンとモートンはハチミツを採りにでかけアライグマに捕まってしまいました。おおいそぎで木に登って逃げようとする上の方には小さな小屋があり、そこにはちょっとふうがわりの2匹のアマガエルのおばあさんが住んでいました。やっと入れてもらってやれやれと思う間もなくアライグマは木に登ってきます。そして、大雨、木は倒れ、いかだで川を下ろうとしても、風雨はひどく、それからサギに食べられそうになり、捕まるのではないか、食べられるのか、ドキドキハラハラと話はすすみます。
 評論社の本はルビはふってあるもの、漢字が多く文字が小さく、読みにくい本が多いのですが、次々とリニューアルされていて、これはうれしいこと。来月には7巻目が出版されるとのこと、これも楽しみです。

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ゆきだるまくん、どこいくの?

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「ゆきだるまくん、どこいくの?」
たむらしげる
偕成社 本体1000円




昨夜からの雨ですっかり気温が下がって寒くなりました。少し前はあまり暖かくて、そろそろクリスマスの準備なのにどうなることやらと思っていました。やっぱり寒くないとクリスマスの感じはでません。
この本はゆきだるまの話なのに、表紙は真っ赤、でも、不思議なことにあまり違和感は感じません。話の内容は男の子がゆきだるまを作って、おひるごはんを食べに家に入っている間の、ゆきだるまの冒険話です。スキーをはいて滑ったまでは良かったのですが、クマにぶつかって追われてしまいます。ともかくしつこくクマは追いかけてきます。山だろうが、海だろうが、空だろうが・・・それに、ゆきだるまもがんばって逃げます。最後にはまたもとにかえってくる、ナンセンスな楽しい絵物語です。
 作者は宇宙の冒険、ナンセンス的な絵本を描いていて、若い人にも人気のあるイラストレーター。一足早く冬がやってきました。

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新しくなった「ムジナ探偵局」

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「ムジナ探偵局」富安陽子/おかべりか/画 (童心社 本体各850円)6巻目「榎稲荷の幽霊」が出版されたのを機会に全巻ペーパー版になりました。6巻目は榎神社に願をかけたおかげで宝くじに当たった人がいる、お礼に絵馬堂を新築しようとしたら幽霊がでる、おまけに、裏薮から骨が。3人から依頼をうけた、へんてこ横丁の古本屋ムジナ堂の店主ムジナ探偵の活躍です。もちろんおなじみ源太がいっしょにちょろちょろとおしかけ助手よろしくお手伝い?をします。この本の魅力は幽霊がでたり、怪事件がおこっても、きをてらう描写がなく、物語が安定していて、わかりやすく、読者は源太と等身大になって楽しむことができるからだとおもいます。
そして、うれしいことにペーパー版になってとても魅力的になりました。表紙が明るい、なかの活字が大きく読みやすい、定価が安い。このことはこどもたちからは大歓迎です。本全部がペーパー版になれば良いとは思いませんが、こどもたちがもっと気軽に読むことができるように、出版社は工夫するべきだとおもいます。(ただし、図書館はちゃんとハード版も揃えてください。というのは、図書館には保存をする役割があるからです。残念ながら本の定価はあがっているのに、本代=資料費はすくなくなるばかりです。)
ところで「6巻目の推理クイズの絵をみながら、この本のすこしも手抜きをしていない挿絵のうまさにあらためて感心しました。これもこの本の魅力です。

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お金もうけは悪いこと?

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「お金もうけは悪いこと?」
アンドリュー・クレメンツ/作
田中奈津子/訳
講談社 本体1200円



誰もがお金が欲しいと思いますし、お金がなければ困ると思っています。それなのにおおぴらにお金!お金!と言うのはなぜかためらわれます。でも、この本の主人公の一人グレッグはお金が大好き、いつもお金のことを考えて、なんとか儲けたいとばかりおもっています。グレッグは考えるだけでなく、行動力があり、一日の大半を過ごす学校でお金儲けをしようと思います。モーラはクレッグの幼なじみ、でもなぜか喧嘩ばかりしています。今回もお金儲けの邪魔ばかり、しかも、クレッグが制作して、売り出したミニ・コミックスと同じようなミニ絵本を売り出しはじめました。グレッグはモーラの才能を認めざるえません。はじめクレッグはモーラに抗議しましたが、むしろ協力しあった方が儲かることに気がつき、共同で制作して売ることにします。けれど、学校ではものを売ることを禁止します。ここでもクレッグとモーラは協力して、教育委員会の人たちを説得します。
 この本ではクレッグのお金についての哲学も、対するモーラの主張もしっかりと数字を使って描かれています。それはとっても具体的で、説得力があり、それらがこの物語をおもしろくしてくれます。けれど、この物語は具体性はあるものの、お金儲けの本ではなく、クレッグとモーラの友情物語です。それが楽しい。
 もうひとつ驚くのは学校における教師と生徒の関係が自由で開放的なこと、意義があったり提案があるときは教育委員会でどうどうと自分の意見をいうことのできる権利が生徒にあることです。ちゃんと自分の意見をいう、そのために親も教師もちゃんと手を貸し、建設的に解決しようとします。
作者はこれまでにも友情をからめた、子どもたちが生活のなかから知る経済や社会の問題が中心に描かれている本を出しています。アルバイトであろうとも積極的に働く子どもがでてくるのも、もっと私たちは考えるべきことかもしれません。

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ジュリーの秘密

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「ジュリーの秘密」
コーラ・テイラー/作
さくまゆみこ・訳
小学館 本体1500円




「 ジュリー」の続編です。ジュリーは予知能力があり、それを夢のように見ることができます。前編では父親がトラクターの下敷きになり、あやうく命を落とすところでしたが、ジュリーの力で助けにかけつけることができました。しばらく入院していましたが父親は家に帰ってくることができました。ジュリーの家は農家ですから、働き手の父親が思うように仕事ができないのは一家にとって経済的に大変です。この本は予知能力を持ったばかりに苦しい思いをしなければならないジュリーの気持ちが縦糸なら、家族が助けあって困難な状況を乗り越えていこうとするおもいが横糸になって描かれています。
 私たち普通の人間にとって、未来が予測できたらどんなに便利だろうと考えてしまいます。だから未来が予測できないといわれている現代、超能力をもった人の活躍がのべられている本、テレビ、ゲーム、そんなものが大いばりでたくさん登場しています。それらはどこかうさんくさいものだとは思いながら、一瞬の娯楽に耽ってはまり込んでしまいます。でも、良く考えてみるとそんなことはありえないし、もし、あったとしたら人生はずいぶんとつまらないものになってしまうことも良くわかります。ジュリーにとってのその能力は苦しみでしかありません。その能力を理解してくれる両親、特に父親の気持ち、ジュリーがどんなに他とちがっていても、娘を思う父親の愛情が読者の胸を打ちます。ゴードン先生とジョンソン先生の持っている秘密しかり、誰にでも秘密はある、でもその秘密を分かち合える人がいること、たったひとりでその秘密を抱え込んで孤独な生涯を送らなくて良いことの喜び、殺されそうになりなんとか逃げ出すことに成功したビリーの活躍など、ドキドキハラハラしながら読み進みながら、信頼しあうことのすばらしさ、ジュリーはまたひとつ成長し大きな安心感で物語は終わります。

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ワビシーネ農場のふしぎなガチョウ

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「ワビシーネ農場のふしぎなガチョウ」
ディック・キング=スミス作
三原泉 訳
いとうひろし 絵
あすなろ書房 本体1200円




〜むかしむかし、貧乏だけれど働き者の正直な一家があったとさ〜と昔話ふうにはじまってもおかしくないようなお話です。貧乏なワビシーネ農場一家の唯一残ったガチョウが金色の卵をうみました。孵ったひなも金色のガチョウ、それだけでなく次々にお金の儲かることがおきます。心優しいスカンピンさん一家は、お金持ちになったからといって、変わることなく穏やかに暮らします。金色のガチョウは幸運をもたらすだけでなく、触った人をおだやかな気持ちにする不思議なものも持っていました。けれどその幸せはいつまでも続くものではなかったのです。金色はだんだん褪せて、普通のガチョウになってしまうことがわかりました。
 作者は動物がでてくる作品をたくさん書いています。特徴的なのはどの作品も人の善意があふれていて、しかも、それは決して嫌みでなく、読む人の心に素直にはいっていきます。この作品はオチがナンセンス風になっていて、最後には笑ってしまえます。
 それに、挿絵がぴったりあっています。読んでいてディック・キング=スミスの作品というより、まるでいとうひろしの作品のように、ほのぼのと楽しいお話になっています。ルビも充分にふってあるので、2年生位から自分でも読むことができるとおもいますが、秋の夜長、読んでもらって楽しさが共有できる本です。

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たのしいこびと村

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「たのしいこびと村」
エーリッヒ・ハイネマン文
フリッツ・バウムガルテン絵
石井素子 訳
徳間書店 本体1700円




読み物の本というより絵物語、それもカラーの挿絵がたくさんはいっていて、まるで絵本のような装丁になっています。この「こびと村」のお話は2冊目、今回は飢えたねずみの親子が、「こびと村」を訪ねていく話です。たどりいた「こびと村」は花が咲きみだれこびとたちがいそがしく働いていました。いろいろな仕事があります。親子は立ち寄ってペンキ塗りの手伝いしたり、ケーキを焼く手伝いをしてちょつとおしょうばんにあづかったり、楽しいひと時を過ごします。どうしてこんなに元気に働いているのでしょうか。実りのお祭りがあるからです。楽しい時を過ごしているうちに、ある日とても高いモミの木の下を通りかかり、登ってみます。はるかかなたにあるのは自分の村「なきむし村」です。親子は「こびと村」のみんなと別れて家に帰ります。
 なんとのんきな親子でしょう。「なきむし村」では奥さんねずみと子どもたちが待っているのに。でも、ゆるしてあげましょうか。それくらいこの本は楽しい場面、ユーモアのある場面(遊びすぎて、診療所でナオール先生の治療を受ける場面の絵などおもわず笑ってしまいました。)がたくさん描かれていて、読んでいる人たちも明るい、元気な心になります。

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ルガルバンダ王子の冒険

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「ルガルバンダ王子の冒険」
古代メソポタミアの物語
キャシー・ヘンダソン再話
ジェイン・レイ絵
百々佑利子・訳
岩波書店 本体2000円



 楔形文字のことに少しの知識ではもっていましたが、このようにしてひとつの物語としては理解していませんでした。5000年以上も前に、シュメールの都市国家ウルク、紀元前3000年頃には10万人もの人が住んでいて、都市建設がされていて、シュメール文明を築いていました。この文明の特徴は文字を持っていてそれは粘土板に書かれていて、たくさんの物語が書かれ集められていたことです。つまり図書館をもっていたことになります。
粘土板は単なるれんがの破片のようにみえることから、発掘、そして翻訳されにくく、いまでもどのくらいイラクに埋もれているかはわかっていないとのことです。
 さて、この物語はふたつの別べつの詩をつなげ整え、ひとつの物語にしたとのこと、そのへんは解説にくわしく書かれています。ウルク第一王朝の3番目の王の子どもの頃のお話です。そのルガルバンダのむすこがギルガメシュとのこと、やっとわたしにも主人公がみえてきました。
 ウルクの王エンメルカルは遥かの都アラッタの金銀鉱石を求めて戦いをいどむことにしました。7人の大きな息子を率いて出発します。末息子のルガルバンダもこっそりついていきますが、病気になってしまします。父王も兄王子たちもどうすることもできずに、神にいのってルガルバンダをおいて行くことにしました。ルガルバンダは幸いなことに元気になり、持ち前の勇気と知恵の力で怪鳥アンズー鳥に助けられ、ウルクの神殿にいた女神イナンナの力を借りに行き、謎をとき約束を果たし戦いは勝利します。(その約束とはアラッタを滅ぼさないこと、おもわず、現代的にイラクにおけるアメリカ政権のことを考えてしまいました。)
 大変美しい、造本にも配慮の行き届いた(たとえば、綴じの糸の色など)本です。大型絵本のつくりになっていますが、しっかりした冒険物語にたっぷりと絵がついている古代歴史物語ともとれます。活字も大きく組んであるので、小学生にも読むことができます。画家はこのイラストレーションを描くために大英博物館に通い多くを学んだとか、これからの秋、そしてクリスマスに