2008年6月26日 (木)

チャンプ 風になって走れ!

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「チャンプ 風になって走れ!」
マーシャ・ソーントン・ジョーンズ作
もきかずこ訳
鴨下潤・絵
あかね書房 本体1400円



ラリーはどんなにがんばってもスポーツがにがてです。それなのにかってダベンポート高校の三年生の時、アメリカン・フットボールの選手で勝利のタッチダウンを決めた選手だった父親はラリーに期待、いえ期待以上のものを求めています。それに答えられないラリーは毎日が苦痛です。ある日今は亡くなっているが父親の親友の子どもケイトと練習をしていてボールをとりそこない、それをよけた車が事故をおこしてしまう。運転者はお金持ちでショードッグのために犬舎を持っている人で運んでいた犬はケガをして手術の結果3本足になってしまいます。そして、その運転者のラーナー夫人がもうショードッグとしてやくにたたないからと犬を処分すると知って、ラリーはおもわず自分がひきうけてしまいます。
 なにごとにも自信がなく、父親との確執が強いラリーがショードッグのチャンピオン犬「チャンプ」を引き取って暮らすなかで支えてくれる友だちや、はじめは理解できなかった隣人のダグラスさんとの交流を深めていく様子、そして、自分でラリーの必要なものをつくっていくなかで、途中でなげださない力をつちかっていく、父親ともちゃんと向き合っていく様子がたんねんに書かれています。
 もちろん、犬好きな子どもたちにもとても楽しい読物です。こういう本を読むと動物は話ができないけれど、人を成長させてくれるものだということが良くわかります。(おとな的にいうと子どもはおとなに生きていくことのエネルギーになる存在だということが良くわかります。)一番にならなくても良い、挑戦することに意味があるという、最後のアジリティー(障害物の競技大会)の様子にハラハラしますが、父親の格好良さに素直に拍手です。


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2008年6月25日 (水)

シチリアを征服したクマ王国の物語

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「シチリアを征服したクマ王国の物語」
ディーノ・ブッツァーティ作 
天沢退二郎/増山暁子 訳
福音館文庫 本体650円



 長い間品切れになっていた私の好きな本が復刊した。とはいえ、文庫というので絵がどうなるのか心配したが、まずまず良い形で復刊した。前の本は大判の絵本形式、もっとも文章も多いので絵物語といった方がよいかもしれない。20年も前に出された時、まず、その絵にひきつけられた。物語はクマの王国で王子の子グマをさらわれた王さまが、厳しい寒さと飢えに苦しめられていたこともあり、人間界に降りて行って暮らすことにする。残忍な大公と戦いやっと人間界と共存でき王子もみつかり、良き国になったはずが、いつの間にか王国内部に退廃がすすみ、王さまはウミヘビとの戦いのなかで裏切り者の侍従長に殺されてしまう。ウミヘビも退治できたが王さまは助からず、すべてを捨てて、山へ帰るとの遺言で人間と別れてクマたちは都を立ち去って行く。富みを得たけれど失ったもの、心の平和をとりもどすために。「山でぼくらの神さまがおよびだもの。夢が終わってしまったいまは、ぼくらのお話もおしまい。さようなら!」(本文P180ページから)
 なんといってもカラーと白黒でのたくさんの絵がとても魅力的だ。日本ではほとんど知られていないけれど、作者ブッツァーティはヨーロッパでは個展も開かれているほど画家としても有名とのこと、この本が品切れになった時とってもがっかりしたのだが、また、良い形で文庫版になった。やたらとアニメ化された挿絵が入っているお手軽な本ばかりが出版されているなかで、こういう内容豊かな本の復刊はとても嬉しい。

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2008年6月22日 (日)

危機のドラゴン

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「危機のドラゴン」
レベッカ・ラップ
鏡哲生・訳
評論社 本体1400円




 一巻目でマヒタベルおばさんがもっている(ここには住んでいないが)孤島で三つ頭の竜に出会ったハナ、ザカリー、サラ・エミリーの三人きょうだいは春休みに、また、孤島に来る事ができた。竜ファフニエルは前と同じドレイクの丘の洞窟にいて、ハナ、ザカリー、サラ・エミリーと再び会えたことを喜びあった。マヒタベルおばさんにかわってこの島の管理をしているジョーンズ夫婦はもちろんのこと、部屋の中も風向計も前と同じ、けれど知らない人が浜辺にいて、島の様子をうかがいうろうろしている、三人は竜に気をつけるよう教えにいく。一体何者か?三人の子どもたちの冒険物語だがそれだけでなく、前作同様三つの頭をもつ竜が(一頭起きていて、後はねむっている)各々子どもたちに語る物語があり、四つの物語を読むことになる。
緑目の竜が語る物語はニコという羊飼いの少年が自分自身で真実をつかむ勇気、青目の竜が語る物語は騎士見習いのガウェンインがエレノアの助けをかりて、本当に価値ある戦いとはなにかを知る物語、銀目の竜の語る物語は奴隷の子サリーが両親とともに自由を求めて逃亡する話、この三つの物語は子どもたちが真実を自分たち自身の手で判断し行動することの大切さを、全体の冒険物語のなかに構成されて書かれている。歴史的な事柄が各々背景に書かれているので、それらを再確認しながら読むのもおもしろい。
 休みも終わり、最後に竜に会いにいったサラ・エミリーに「オ・ルボワール、愛しい子」フランス語で「また会う日まで」・・・物語はまだつづきますか?

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2008年6月 3日 (火)

月のえくぼを見た男

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「月のえくぼを見た男」
ー麻田剛立ー
鹿毛敏夫
関屋敏隆 画
くもん出版 本体1400円

 今日の夕刊に星出彰彦飛行士が国際宇宙ステーションとドッキング入室し、喜びあっている写真がでていました。4日には日本の有人宇宙施設の「きぼう」の船内実験室をつくるとのことです。もし、いまから200年以上前江戸時代に反射望遠鏡で月を見た麻田剛立が知ったらなんといったでしょうか?
 まあ、知るわけはないのは、麻田剛立その人は江戸時代にはじめて月をみて月面観測図を描いていて、この本はその麻田剛立の伝記です。千葉とも関係の深い伊能忠敬に測量の技術を教えた高橋至時の先生にあたる人です。
 剛立は1734年備後杵築藩(大分県杵築市)に生まれました。生まれた時の名前は綾部妥彰、父親の綾部安正は儒学者です。幼いときから天体に興味を持ち夢中になります。1762年当時の暦にない翌年9月1日の日食を予報し、それが的中して話題になります。本職は藩おかかえの侍医、1768年江戸へ、1769年には大阪へ行き藩主の腹痛を一人で治したことをきっかけとして侍医を辞めます。その後大阪に居をかまえます。脱藩したわけですから、まわりに迷惑をかけることをおそれ名前を麻田剛立にしました。日食や月食の観測はつづきます。1778年反射望遠鏡で月を観測しその時描かれた月面観測図は日本で初めてです。天文塾を興し1789年10月1日の日食を異地点で同時にグループ観測をしています。
 この当時の天文学は暦学と関係が深いのですが、学問的に立ちおくれていて、剛立が確立した天文学暦学が国の基礎を造るひとつだったことが詳しく書かれています。伊能忠敬の業績がこのように繋がっていきます。剛立は日本のレオナルド・ダビンチのようだと私は感じました。そして、この天才が親や兄弟はもちろんのこと、その他にもたくさんの人たちに支えられていたことも印象深いことです。現代の日本を造った人たちの生き方を知る事の大切さは、その人たちの生の延長上に私たちはいるからです。

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2008年6月 2日 (月)

菜の子先生がやってくる

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「菜の子先生はどこへ行く?」
学校ふしぎ案内❀花ふぶきの三学期
富安陽子 作
YUJI 画
福音館書店 本体1500円


 やっと菜の子先生がやってきました。でも、ちょっぴり残念なのはもう三学期でなく、新学期になってしまいました。三学期なので冬のお話からはじまります。「雪女」「節分」「雛祭り」「卒業式の頃」舞台は変わりますが、いつも学校です。そして、最初の話の桜のところに戻ります。桜の木はずっとたくさんの子どもたちを見てきました。それは、桜の木でもあり、学校でもあり、先生たちなのです。
 子どもたちは富安さんの本が大好きです。富安さんの物語にでてくる子どもたちは普通の子どもたちです。毎日笑ったり、悲しんだり、けんかをしたり、仲良くなったり、いつもの様子が書かれています。物語に出てくるのは読んでいる子どもそのものです。そして、普通の毎日のなかのちょっとした隙間、その隙間では時々不思議な事がおこります。隙間はとても日本的なので、すんなりと入っていくことができます。鬼やたぬきやきつねたちも、おばけでさえいつもいっしょにいるものたちなのです。そして、その不思議な体験のあと、元気になります。
 もしかしたら、菜の子先生は富安さん?今度千葉にいらっしゃるのでお会いできて、お話を聞く事ができるのが楽しみです。
 
千葉市文庫連絡協議会30周年記念講演会
「物語がうまれる時ー不思議への入り口ー」
講師 富安陽子さん(作家)
2008年6月28日(土)2時から4時
千葉市生涯学習センターホール(千葉市中央図書館となり)
参加費500円
定員250名(当日券はありませんので、お早めにお申し込みください。)
託児あり(事前申し込み制・10名)
お問い合わせとお申し込み・
 *TEL・FAX 043-252-7041石渡(とどろき文庫)
        043-424-4042中山(おひさまはらっぱ文庫)
主催 千葉市文庫連絡協議会 後援 千葉市教育委員会

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2008年5月27日 (火)

クロニクル 千古の闇 4巻

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「追放されしもの」
クロニクル 千古の闇 4巻
ミシェル・ペイヴァー=作
さくまゆみこ=訳
酒井駒子=画
評論社 本体1800円



このシリーズも4巻目を迎えた。トラクは胸に<魂食らい>のしるしを刻まれ隠していたが、とうとうみつけられ追放される。氏族の掟で、ハズシにして追放する、ハズシというのは死者として扱われ忌みきらわれることだ。死者なのでなにもかも取り上げられ追放され、トラクの魂は彷徨いあるく。寄り添うのはオオカミのウルフだけ。フィン=ケディンすらトラクをかばうことはゆるされない。けれど、レンもベイルもトラクを救うべく、トラクを探すが、見つけた時はトラクはクサリヘビ族の魔導師セシュルの魔力に従ってしまっていた。
 この巻ではトラクを救うべく、レン、ベイル、そしてウルフと視点をかえて物語がすすんでいく。そして、トラクやレンのもっている謎がそのなかで少しずつ明らかになっていく。物語の中にでてくるのはいまから6000年前と設定された世界、生き延びて行く為の力と智恵、そして、呪術の満ちていた世界、人と動物が同じ所で生きていた時代。いまの私たちからは考えられないような世界かもしれないが、同じように子どもを育て、愛を育み、敬愛と友情、そして、死者をおくり、明日を祈る。この丁寧に描かれた物語は読者がトラクになり、レンやベイル、時には嫉妬からトラクを殺そうとするイノシシ族の少年アキになってみる。
 トラクは最後に洪水から皆を救い、セシュルの魔力を封じ込めることができたのだが、父親が<魂食らい>にそむいてまで、自分の死と交換に<魂食らい>の力のよりどころになっていたファイアオパールの謎とはなにか?母親の邪悪な企みから解放されたレン、オオカミの仲間でなくトラクと暮らす事を選んだウルフたちに待ち構えているのはなにか?1年に1冊という発行がまちどうしい。

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2008年5月21日 (水)

幼年童話の楽しさ

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「ネコのドクター小麦島の冒険」
南部和也 さく
さとうあや え
福音館書店 本体1500円



小学校3,4年生になると読む物語もだんだんリアルになったり、成長していくためにどこか心に残るような物語を読むようになる。けれど、読んでいくうえで、正直疲れてきたり気持ちが重くなってくるものもあり、この物語のような本にいきあうと楽しく心が軽くなる。
 「エルマーのぼうけん」のような長い冒険小説を喜んで聞いている年齢の子どもたちに勧める本のひとつに、比較的新しく出版された本「ネコのタクシー」という幼年童話がある。世界一足の速いネコで、ひょんなことからタクシードライバーになったネコのトムの冒険物語だ。(トムの車は動力がない。トムが足で動かすのだ)2巻目は父親のジョンに会いにサルの王さまの招待状をもって、アフリカにいく話、この3巻目は父親ジョンの若いときの体験と冒険が中心になっている。
 ジョンは人類学者ポート博士のところで助手として働いている。街ではこの頃原因不明の「ゆっくり症」と言おうか、「ねむい病」が蔓延し始めた。どうも街一番おいしいパンやさんのパンを食べた人が、この「ゆっくり症」に罹るようだ。元気なジョンはパンを食べないから大丈夫とのことで、原因を突き止めるよう調査をたのまれる。成功の暁には科学アカデミーで正式なドクターになことができるというので、ジョンはひきうける。パンを焼く小麦粉に原因しているのではないかとおもったジョンは世話係のパコと小麦粉の作られるフラワー島にでかけ、原因になるキノコをみつける。キノコおじさん、発明家で医者の父親とくらしている女の子レンなどと知り合い、とうとう原因を突き止めるが、まちがってキノコを食べてしまう。
 なんともにぎやかなおかしな人たちのお話、こういう本を読むと気持ちが明るくなってくる。子どもの本は、特に幼年童話はだから好きだ。冒険の物語で、ナンセンスな物語なので笑いながら読んだ。この本は著者は日本人なので趣はちがうが「ドリトル先生」の本を読んでいるような錯覚をおこしてしまった。
 ネコの好きな人はもちろん、嫌いな人にもおすすめ、もちろんこういう本は読書コンクールの本にはしないように。笑い転げながら、のびのびと読めないのはもったいないから。

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2008年5月 3日 (土)

小さな動物物語

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「森のすみか」
 モモンガ クルルの物語
 さくらいともか
 福音館書店 本体1700円



アナグマが森の中を歩いています。もう少しがんばって歩けば、聞いた場所、おいしいものがいっぱいある所へたどりつくにちがいありません。川の揺れる橋を渡ると目の前の空を横切った者がいます。それがアナグマのズーイとモモンガのクルルの最初の出会いでした。クルルは母親と別れて新しい自分の居場所を探していました。
 この物語はそのクルルを中心にアナグマのズーイ、ヒメネズミのチイなど、冒険しながら成長していく森の小さな動物たちのおはなしです。フクロウに捕まって危なく食べられそうになって、読んでいるとちょっとドキドキする場面があったり、でも、モモンガの長老コバヤンやカモシカのヒヅメばあさんがクルルにいろいろと教えてくれます。やがて、森に冬が来る頃、クルルも大きくなりました。そして、ケガをした長老コバヤンと歳をとったカモシカのヒヅメはクルルにあとを託して旅立っていきます。
 作者は現代美術で活躍しているので、作品中の挿絵(カラーです)もすべて描いています。動物物語が好きな10歳位からの子どもたちにお薦めできる作品です。

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2008年4月27日 (日)

ぼくの羊をさがして

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「ぼくの羊をさがして」
ヴァレリー・ハブズ
片岡しのぶ=訳
あすなろ書房 本体1300円



 牧羊犬ボーダーコリー、ジャックの物語です。ジャックは産まれたときからジャックだったわけではありません。ジャックはボブさんの農場で幸せな子犬時代を送りました。とても元気ないたずらだったけれど、ジャックの使命はりっぱな牧羊犬になることだと知っていました。ただ遊んでいたある日、はじめてトラックにのせられて、たくさんの羊がいるところにつれていかれました。とうさんとリーダーのオールド・デックスの仕事をみながらボブさんにいろいろなことを教えてもらえるとおもっていましたが、農場は経済的に逼迫していました。そして、嵐がきて農場は火事になり、それがもとでとうとうボブさんは子犬たちを手放す決心をして、ペットショップで売られる事になりました。新しい家に連れられていったけれど、そこではまさしくペット、みじめな気持ちでとうとう逃げ出してしまいます。
 それから、いろいろな人に出会い、飼い犬にされそうになります。そのたびに牧羊犬としてのほこり、きっと、農場に戻る事ができると信じて旅を続けます。
 ひたむきでけなげなジャックにハラハラしながら、かならずジャックは農場に戻り、りっぱな牧羊犬になると思いながら、読み進んでいきます。この物語の中には不屈な魂が込められているとはおもいますが、読者は子犬の冒険物語として読む事とおもわれます。けれどただそれだけでなく、ジャックが旅をともにする人、貧しい屋台を引っ張っているおじいさん、どろぼうの兄弟、野良犬収容所、サーカスの動物たち、父親の形見のストップウォッチを大切にしている男の子と養護施設少年の家を転々とし、最後にジャックは里親週間に少年ルークの里親になってくれる人をみつけ、ジャックもその農場で牧羊犬として暮らしていかれることになります。
 最後のおじいさんがジャックに語った言葉「生きていくことでだいじなことはそれほどない。自分なりに考え、努力をし、世の中をすこしは住み良い場所にした、と思えることだ」は新しい環境のなかでスタートをきった人たちに贈られている言葉になります。


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2008年4月19日 (土)

ソフィーとガッシー

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「ソフィーとガッシー」
マージョリー・ワインマン・シャーマット文
リリアン・ホーバン絵
三原泉・訳
BL出版 本体1300円




この物語の主人公は2匹のリスです。森に住んでいてとても仲良しです。絵がたくさん入っている短いお話が4つ入っています。本をみると小学校1・2年生向きのように思われますが、読んでみるとむしろ中学生などに良いのではないかとおもいます。
例えば1話目、ガッシーがソフィーに遊びに来ないかと誘い、楽しみにしているとの返事をもらい、ガッシーははりきって家をきれいにしてお料理をつくります。でも、ソフィーは他所の家に遊びに行く気分にならないからと断ってきます。ガッシーはすっかり落ち込んでしまいますが、ハタとおもったことは、ソフィーが家をでかけたくないなら私が行けば良いのだということでした。作った料理をもって、ソフィーの家へ、ふたりはとても楽しい時間をもちました。思ったようにいかない、期待がはずれてしまっても、がっかりすることはありません。発想の転換です。
落ちついた色で描かれている絵、おしゃれなゆったりしたお話をゆっくりあじわってください。


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2008年4月 9日 (水)

まんがサイエンス

     かなり高度かも?でも子供に読ませたい!

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 あさりよしとお(浅利義遠)の『まんがサイエンス』11巻が出ました(学研・ノーラコミックス)。学研「5年の科学」で87年に始まり、もう20年以上連載してます。
 私は前に「まんが日本の歴史」の類いは評価しないと書きました(みなもと太郎の『風雲児たち』(潮出版社・リイド社)は例外だとも書きました)。同じ理由で「科学まんが」の本も評価しないのですが、あさりよしとおは例外です。それは、監修者の文章の漫画化でなく、漫画家オリジナルの漫画になっているからです。科学知識を、漫画家自身が血肉化したあと、漫画表現しているからです。
 20年以上の連載ということで、その評価がわかりますが、まだ11巻目では2年に1冊くらいです。いかに「科学まんが」が割の合わない連載かわかります。ほかの長編漫画で食べているから、取材に手間ひまかけられるのでしょう。
 内容は、専門家の書く啓蒙書を越えた、漫画家の視点からのオリジナル表現になっています。題材は、科学技術、自然環境、生命進化と多岐にわたりますが、著者の関心の高い分野に秀作があります。特に宇宙開発に造詣があり、2巻の「ロケットの作り方おしえます」では、人類のロケット開発の歴史を、物理、技術、政治経済まで目配りし、ツボを得た表現をしています。 漫画だから図解もお手のもの。ストーリーは、ツオルコフスキー・ゴダード・オーベルト・ブラウンといったロケット開発の錚そうたるメンバーが総がかりで、小学5年生の手作りロケットを手伝うという破天荒もの。人類はなぜ宇宙を目指すのかを描いた感動作です。4巻では、宇宙開発の日本版も描いています。ロボットものでは93年に3巻で「我が輩はロボットである」02年に8巻で「ロボットの来た道」と2回特集し、読みくらべると10年間の技術の進歩がわかります。科学技術が、思想にどう影響するかも読み取れます。
 本川達雄の『ゾウの時間ネズミの時間』(中公新書)はベストセラーですが、これを子供にどう説明するかは、結構むずかしい。6巻の「どちらが長生き!?ゾウとネズミ」は,16ページで生命とは何か?を描いています。きわめつけは、5巻の「インフルエンザ大戦争!」ウイルスと免疫の関係を16ページで描ききっています。往年の映画『ミクロの決死圏』のようです。7巻は「『見る』科学」。ビデオから顕微鏡・望遠鏡・AFカメラのテクノロジーを支える、海外の基本特許と日本の最新技術の関係、まで考えさせられます。
 とにかく現在でも全巻が入手可能なのですから、驚異的です。「科学まんが」の先達・内山安二が、あさりの本を「かなり高度なことをやっているね」(7巻)と評していましたが、あさりの苦労をかった褒め言葉と取るべきでしょう。
   (高橋峰夫)

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2008年4月 8日 (火)

宇宙への秘密の鍵

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「宇宙への秘密の鍵」
作 ルーシー&スティーヴン
     ホーキング
訳 さくまゆみこ
岩崎書店 本体1900円




宇宙のことに興味をもったのはいつのことだったろう。私にとって宇宙は星の世界だった。アナグロ世代の私は弟がもっていた望遠鏡(たいしたものではない)を借りて、良く屋根の上にあがって星をみた。小学生の頃だった。いつの間にかそれから遠くなって、宇宙や星の世界は本の中になってしまった。最近はおもしろいというか、宇宙の写真が載っているわりあいやさしい本がたくさん出るようになった。たとえば「ハップル宇宙望遠鏡」の本だ。ほとんどが科学としての本だけれど、とても写真がたくさん載っていて私はそれを見ているだけでも楽しい。(ロケットにはあまり興味がないので、宇宙船などの本はあまりみない。)
 今回出版されたこの本は一応物語の本ではあるが、宇宙についての科学的な解説もしっかり書かれている。写真もたっぷりだ。難しいところは昔のように写真だけしっかり見るだけでも楽しむことができる。
 一方、SFを読むように物語のみを読んでもいっこうにかまわない。物語はこんなふうに始まる。ジョージの両親はエコロジストだ。特に父親は活動家なので、食べ物からすべてエコロジー、現代っ子のジョージは不満だ。ある日飼っていたブタ(これはプレゼントだった)がいなくなったので探しているうちに隣の家の庭に入り込んでしまった。そのジョージの前にあらわれたアニーという少女、誘われて入ってみると不思議な家のなか、父親エリックは科学者だという。それに、アニーの家にはパワフルなコンピューターコスモスがあり、宇宙の話を聞くうちにすっかりとりこになってしまう。次の日、アニーに誘われ宇宙に出かけて行って危険な思いをするが、コスモスとエリックにたすけられる。ジョージの担任の教師はなぜかよからぬことを企んでいて、いじめっ子を使いエリックをおびきだし、ブラックホールにおいてきぼりにしてしまう。コスモスを連れ去りエリックを永久に帰ってこられなくしようとするのはなぜか?コスモスを治してエリックを助け、リーバー先生の手から逃れる事もできたが、宇宙の謎はこれで解き明かされたわけではない。
 この本の物語性はところどころ入っている挿絵が読む人の想像力をかきたてることにある。最後のベージは屋根に上がったブタのフレディが夜空の彗星、ほうき星をながめている。1巻のこの本はブラックホールのことを書きたかったというが、2巻目は彗星かそれに関係あることなのではないだろうか。<彗星は太陽のそばを通ると、熱せられて、表面の氷が溶けはじめ・・・P300>と2巻へと物語は続く。1年に1冊づつとか、待ちどうしい。
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宇宙の入門書には「宇宙を読む」カラー版 谷口義明・著(中公新書)が天文学をやさしく解説している。やはり写真がいっぱい入っていてわかりやい。

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2008年4月 6日 (日)

マイカのこうのとり

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「マイカのこうのとり」
ベンノー・プルードラ作
上田真而子 訳
いせひでこ 絵



マイカの家にこうのとりが巣をつくり卵を産みました。雛が三羽産まれましたが一羽だけ色が違います。そして、その一羽は親鳥に巣からつきおとされます。命が助かった雛はマイカの父親が何度か巣へ戻そうとしますが、またも落とされて、雛鳥も帰ろうとしないばかりか、犬のヴィトーの寝カゴに入ってくつろいでしまいます。しかたがないので小屋へ連れて行って巣を作ってやります。けれどある日、知らない男の人がきて、こうのとりを連れてってしまいます。
 親に突き落とされてしまったこうのとりと、それを育てようとするマイカ。でも、その考えに父親は反対です。たしかに理屈はそうなのですが、マイカの気持ちは納得しません。母親はマイカの気持ちに添ってなんとかしたいと思います。こうのとりは自然の鳥です。だからいつまでも人の手の中にいてはいけないし、ましてこのこうのとりは渡り鳥なのです。
 こうのとりはある日飛び立っていきます。その前にマイカに別れの挨拶にきました。
こうのとりをめぐっての少女の孤独感を詩情豊かに描いています。その物語に絵がとてもあっていて、絵を見ていると、マイカの気持ちがひしひしと伝わってきます。

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2008年3月30日 (日)

つぐみ通りのトーベ

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「つぐみ通りのトーベ」
ビルイット・ロン作
佐伯愛子 訳
いちかわなつこ絵
徳間書店 本体1400円



 女の子が木にしがみついている表紙の絵、女の子はトーベという名前の小学校2年生です。元気な子どもなのですが、最近ちょっと浮かぬ顔をします。それは仲良しのエンマが他の子と仲良くしていて、トーベによそよそしいからです。エンマの誕生日プレゼントを買った帰り、木に登っておりられなくなったこねこを見ました。その時はトーベも同じようなことになるなど思っても見ませんでした。誕生日のパーティーに行く日、いろんなことがあって遅れそうになり、パパが車で送ってくれました。車に乗っていたので、道が良く解らなくなり、着いたエンマの家ではみんなとてもおしゃれなようすをして来ているので、トーベはすっかり気が重くなってしまいます。しかもミスをしてスカートを汚してしまいみんなに笑われたので、とうとう途中なのに抜け出して、黙ったまま一人で家に帰る事にします。歩いているうちにトーベは帰り道がわからなくなってしまい、木に登って高い所から探そうと思い、木に登ったまではよかったもののこんどは降りられなくなってしまいました。さんざんな日でしたが良い事もありました。男の子と友だちになれた?、エンマのほんとうの気持ちは決してトーベを嫌っているわけでもないことを知ります。なんといつてもトーベは消防車に乗ったのです。これってすごいことです。トーベはエンマや同級生とまた仲良くなり、新しい友だちもでき、ペットも持ちました。
限られた場以外にも新しく行動をひろげていくこの年齢の子どもたちの気持ちが良く描かれています。それに、スウェーデンのお話なので、トーベの両親が家事を分担して働く様子など、おとなからみてもなかなか興味深い場面がある物語です。たくさんのさし絵がはいっていて、ひとりでも楽しく読むことができます。


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2008年3月29日 (土)

フイツシュ

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「フイツシュ」
L・S・マシューズ作
三辺律子 訳
ずずき出版 本体1600円



私の両親はある国の村で救援活動をしている。この国は酷い暑さ、雨が降らないので水がたらない。それだけでなく内戦が激しくなって私たちも危険になってきた。
 そんなある日水たまりといって良いほどの小さな池で魚を一ぴきだけみつけた。この国の戦闘が激化してきたので、私たちはここをのがれて、安全な所に行くことにした。私はこの魚を連れいてきたいと思ったが、むろん両親は反対、でも執拗な私の頼みでとうとう魚をつれて、国境を越え、安全な所へ脱出することにした。ロバを連れたガイドに導かれて出発する。魚ははじめペットボトルにいれられたが、やがて使いふるしのお皿に入れられ運ばれるが、水も無くなりかけていく。険しい山道を通るのに、足を滑らし谷底に落ちそうになったり、積んだ荷物もろともロバを失いそうになったり、部族の捕虜になったり、目の前で人が殺される。もちろん必死に守った魚は一滴も水がなくなり、いまにも死んでしまいそう。最後の手段は魚を口にいれて運ぶことだった。最悪なのは部族に捕えられた時、けれどガイドの口添えで命は助かり、やっと難民キャンプにたどりつくことができた。魚は生きていた。警備兵に渡して川にはなしてもらう事にした。
 この物語は一人の少女が困難な道を、死と隣り合わせのなかで希望を持ち続けて自由になるまでの物語だ。自分を信じる事、そして、はじめて他の人を許せた時にほんとうに自由になる、この少女といっしょに旅をしたあなたが、この不思議な物語のなかにみつけるものはなんだろうか。

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2008年3月28日 (金)

ゴッホの本

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「にいさん」
いせひでこ
偕成社 本体1500円




 ゴッホと弟テオの関係は有名である。南フランスで片耳を切り落とし、近くの人びとから恐れられ、無理解のうえに精神病院にいれられてからも、弟テオは兄の良き理解者だった。理解者というより、兄ゴッホの命は弟のテオによってささえられていたのだ。ゴッホは37年間のなかで700通もの手紙を弟に送っているという。この絵本ではその弟テオの兄への賛美と共感にみちた物語が描かれている。それはこの絵本の作者である画家いせひでこの想いにしかならない。ゴッホの、たとえば「ひまわり」はいせひでこから見た「ひまわり」であるから、ゴッホの燃えるような色彩でなく、テオをとおしたいせひでこの、濃い青と黄色で描かれた「ひまわり」だ。
 一方偶然だろうか、ゴーストになったゴッホが日本にきて、広重や北斎を訪ねるなかでの夢を描いた物語がでた。

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「時の扉をくぐり」
甲田天・作
大田大八・絵
BL出版 本体1400円



 主人公佐吉は絵師広重のもとで見習いをしている。見習いといっても、ていのいい奉公人だ。でも、そんなことに広重は頓着していない。ただ絵のことばかりで頭がいっぱいだった。そこへ現れたのは赤毛で瞳が深い青の男ゴッホの幽霊だった。生き続けると弟の迷惑になるので自殺したゴッホ、けれど、その弟テオも半年もたたないうちに精神を病み死んでしまう。向こうの世界で弟に会い、一生懸命に祈って日本に行ってあの浮世絵を見てみたいとの切実の願いでここに来たという。出島にいたことのある又三の通訳で、広重は長野の小布施にいる北斎の元にゴッホをつれていくことにする。佐吉は荷物持ちだが一緒について行く事になった。3人が北斎に会うまでの旅のようす、いろいろな人と出会うだけでなく、ゴッホは広重の絵の秘密を、広重は北斎に対しての屈折した思いのなかで、ゴッホの自分とは全然違う表現の仕方を学びながら、そして、佐吉と又三は旅をするうちに自分の生きていく意味を考えていく。
 日本の浮世絵が印象派の画家に大きな影響をあたえていたことが、こんな本になって読む人のなかで一層の想像力がかりたてられる2冊である。

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2008年3月23日 (日)

なわとびしましょーフュージョン

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「なわとびしまょ」
長谷川義史
学習研究社 本体1200円




今日はとても暖かい、光の輝いていた春の一日でした。こんな日は「なわとび」を跳んでみるのもいいかもしれません。今、一番のっている長谷川義史の絵本です。男の子がひとり、口をあけて、飛んでいます。でも、縄跳びでもこれは、一人縄跳びではありません。表紙の折り返しの所に子ども、握った縄は裏表紙の子どもが持っています。そして、表と裏の見返しには縄跳びの歌が載っています。“おおなみ〜 こなみ〜”さあ、つなをまわしますよ!子どもの頃の縄跳び、ゴム跳びを思い出しました。とってもじょうずな同級生がいました。いま、どうしているかしら。
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「フュージョン」
濱野京子
講談社 本体1300円



この本を読むまで「ダブルダッチ」という言葉を知りませんでした。その「ダブルダッチ」に音楽の要素を取り入れたのを「フュージョン」といいます。
主人公朋花は偶然家から少し離れた公園で、同級生と隣のクラスの3人が縄跳びをしているのに出くわします。その縄跳びが「ダブルダッチ」と呼ばれるもので、きっちりと優等生の美咲、茶髪にしていてヤンキーな玲奈、そして、おとなしくていつも玲奈のパシリをしているような玖美、到底友だちになるようなことはないと思っていたメンバーでした。誘われるというより、挑発されて勢いで跳んでみた朋花はすっかり虜になってしまいます。朋花の母親は高校の教師をしていて、子どもたちに要求度の高いいわば教育ママ、秀才の兄はその重圧から飛び立とうとして家出をします。朋花だけに写真だけのメールを時々送ってきます。いつもきちんとしている優等生の美咲が服装や髪型をかえて、いわゆる問題児の玲奈といっしょに、気持ちを揃えて「ダブルダッチ」で汗をかいて練習しているなんて、朋花には思っても見ないことでした。高校の文化祭で「ダブルダッチ」を見て4人はコンテストにでることにしますが、教師の誤解から、校則に厳しい学校と対立してコンテストにでられなくなります。朋花から事情を聞いた親友の彩乃の提案できちんと自分たちの主張と実力を学校に認めさせるためにあることを密かに計画して実行します。
 この物語は一応いま流行の運動物語かもしれません。そして、縄跳び=ダブルタッチは気持ちを揃えないと跳ぶ事ができない、個人プレーの競技ではないのですが、だからといって根性物や道徳的な物語ではありません。
 友だち、親とのかかわりと考え方、だれもが青春期に何度か親や世間と対立しながら成長していきます。そのなかで自分らしく、自立していくとはどういうことなのかを考えていきます。
 音楽が大事な背景になっていて、文体はスピード感があり、開放感が感じられます。

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2008年3月15日 (土)

シャーロック・ホームズ外伝

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<カラス同盟>事件簿
シャーロック・ホームズ外伝
アレックス・シモンズ/ビル・マッケイ
片岡しのぶ・訳
あすなろ書房 本体1300円




この本もまた、「シャーロック・ホームズ外伝」と書かれているようにホームズのシリーズのなかの「ベーカー街不正規隊」として活躍する少年たちをもとにして、物語がすすんでいる。この本もまた、というのは、このブログ1月14日に紹介した「ベーカー少年探偵団」と同じ部分を背景にした物語だからだ。
 ロンドンの貧民街に住む私設隊員がホームズのために情報集めをする。特別の待遇を受けるわけではないのに、少年たちはホームズの力になることに誇りをもっている。また、どちらの作品もホームズが困難におちいる(捕まって殺されそうにな)のを少年たちが助けるのだが、相手の悪党が政権転覆と女王暗殺を企てることをめぐっての事件なので、歴史の裏面事件を読んでいるようなおもしろさがある。そういえば、シャーロック・ホームズには関係ないのだが、やはりこのブログ2月27日に紹介した、エイキン作の「ダイドーと父ちゃん」の物語の背景も、ヴィクトリア女王暗殺を企てる一味に加担する父親に、巻き込まれてしまう子どもたちが、事件を阻止するために活躍する物語だった。霧の中、石畳を走る馬車、ガス灯、貧しく、孤児も含めて大人と同じように働き、生活している貧民街の子どもたち。主人公のウィギンズ少年は親友ティムが殺されてしまい、<カラス同盟>をつくり敵討ちをしようとして事件にまきこまれ、はからずしも殺されそうになっていたホームズの命を救うことになる。子どもたちが一人一人の特性を発揮してのいきいきとした集団の動きはとても魅力的だ。

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2008年3月12日 (水)

新刊「衣世梨の魔法帳」

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「衣世梨の魔法帳」
たんじょう日のびっくりプレゼント
那須正幹・作
山西ゲンイチ・絵
ポプラ社 本体840円




衣世梨のシリーズ6冊目です。この物語は衣世梨の10歳の誕生日におこった不思議な話、ちょっと季節外れですが、8月、夏休みの話です。衣世梨は4年生、今年は誕生会はしないでおこうかと迷うところから、話ははじまります。誕生日は9月9日、スーパーで働いているお母さんは仕事を休む?それはまずい!と考えるくらい衣世梨も大きくなったということです。呼ぶ友だちのことなど、なんとなくめんどくさいと思っていましたが、やっぱりすることになりました。そして、両親や友だちと話をしているうちに、幼い頃の思い出が浮かんできました。たとえば、幼稚園、行きたくない事があったことなど、前に住んでいたところのことなど、思いついて幼稚園や住んでいたアパートに行ってみることにしました。花丸と一緒に。いつの間にか衣世梨は幼くなっています。そして、誕生日、びっくりプレゼントをもらいました。そのびっくりプレゼントとは・・・衣世梨はタイムスリップしていろいろのことを知ります。大きくなりたかった衣世梨、すててしまってすっかり忘れていたぬいぐるみのイービーちゃんのこと。
 このシリーズは、とくに今回のように、ドキドキするような事件があったり、その謎解きがあったりするわけではない物語は、ゆっくりと考えながら読みたい。そして、その観点で考えると、表紙の絵もふくめて、衣世梨が幼すぎ、かわいすぎます。
 ともかく、なにはともあれ、衣世梨は10歳になりました。”そうか、あたしたちって、もう十年も生きてきたんだ”と意味の深い事をいっています。

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2008年3月 8日 (土)

むかしばなし「いたずらぎつね」

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 1のまきを以前紹介したが、2のまきがでた。
よみたい ききたいむかしばなし
 2のまき「いたずらぎつね」
 1のまき「ねこのおんがえし」
中川李枝子 文
山脇百合子 絵
のら書店 本体各1300円

1のまきと同じように12編はいっている。タイトルどうりに幼い子どもが自分で読んでも良いようにもなっている。それはなによりも親しみやすい絵に負う事が多い。また、読んでもらうのに良いのは、やはり聞きやすく、イメージが浮かびやすい作者の言葉におう事が多い。それは声をだして読んでみると良くわかる。今の子どもたちがイメージしやすい言葉、昔話の特徴である繰り返しの言葉、ところどころに入っている歌のような言葉(そういえばこの二人の共著である「ぐりとぐら」のなかで歌われるうたのルーツはこういうところにあるのかもしれない。)おもわずうたってみたくなる。例えば「きつねとかわうそ」はこんなふうに"さかな 一ぴき おっぽに かかった おれのもの”"もう一ぴき おっぽにかかった おれのもの”そして、"さかな どっさり おっぽにかかった おれのもの”でもきつねはかわうそをだましたために、かわうそにしてやられてしまう。"くっつくな こらっ あっちいけ さかな このおっぽは おれのもの”こんな調子で唱えごとのように歌がはいっている。「たにしときつね」にいたつては"口のとんがり”とか"けつのとんがり”とかおもわず笑ってしまうくらいおかしい。
 12編目のおはなし「マミチガネのぼうけん」というお話は私ははじめて読んだけれど、ファンタジー物語のようにちょっと不思議なお話だ。マミチガネは最後には生家の名声と栄誉をすてて「わたしは、ふたりの父親をやしなうことはできない。父上は養子をもらってください。わたしは、いのちをすくってくれた、妻の家ではたらきます。P136」とさっぱりとおよめさんの家に行ってしまう。
今日も店で新一年生に良い本は?と聞かれた。今の時期子どもはある意味ではずいぶん緊張しているので、こんな本を読んであげてくださいと、この本を薦めた。テレビを消して、ゆっくりとね!

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2008年2月27日 (水)

物語の愉しみ

 エイキンの新刊をほんとに久しぶりに読みました。そして、久しぶりン物語の愉しさを堪能しました。
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「ダイドーと父ちゃん」
ジョーン・エイキン作
こだまともこ訳
富山房 本体1819円




「ウィロビー・チェースのおおかみ」からはじまる一連の物語といっても知らない人も多いくらい、本が品切れ状態になって長い時間があった。今度新刊が出て、この続編も前のものも出版されるとのこととても嬉しい。前の本の大まかな内容は「そもそものお話は・・・」とまえがきのように書かれているし、これを機会に読んでもらう事にして、とりあえずこの本の紹介をしたいとおう。
 舞台はイギリス1832年良き王ジェームス゛三世が即位した。イギリスのドーバーとフランスのカレーをむすぶ英仏海峡トンネルが完成・・・えっ?ちょっとちがうのではない!そう、エイキンにすっかりだまされてしまう。ほんものの歴史ではちがう、これは、この一連の物語のひとつの特徴だ。架空の時代の架空の物語なのだが、読み手はそんなことはどうでも良く、あたかも史実のように思ってしまう、それくらい物語はリアルだ。はらをすかせたオオカミがぞくぞくとヨーロッパ本土を渡って来る。それはけもののオオカミとオオカミのような人間とにかけているのだけれど、ダイドーとサイモン(バターシー公爵になっている)ふごの妹ソフィー、あたらしく登場のイスという少女、そして、たくさんの孤児や浮浪児たちが力をあわせて戦う、ドキドキハラハラの物語だ。対する悪人辺境王アイゼングリム、孤児たちを慈善事業のようでじつは孤児から収奪しているアヘン中毒の女ブラッドヴェセル、音楽家としては天才なのに悪人に加担して、しかも自分だけでなく娘のダイドーを利用しようとする父親トワイト氏、とても魅力的な人たちが丁々発止とやりあうさまは、読み手はいつしかエイキンの物語にはまりこんでしまう。
 そのわけはこの物語の背景の事柄や場所がほんとうに目の前に実在するかのように書かれている事にある。人だけでなくオオカミがぞくぞくとふえてくるところや、氷ったテムズ川を渡るところ、子どもたちが広場や街角で、歌い遊ぶわらべ歌や、トワイト氏の音楽まで、すぐ側に聞こえてきそうだ。それは、ファンタジーの王国でもあり、デッケンズをうみだしたリアリズム小説の王国でもあるイギリスの文学と、ヨーロッパやカナダに暮らし、詩人の両親の資質をもったエイキンの才能に裏付けられている。
 ダイドーやサイモンたちの活躍でこんどもハノーバー党の王殺害の悪巧みは失敗に終わった。続きが待ちどうしい。
 エイキンはこの本のような長編のほかに少し不思議な世界を物語にした短編集「しずくの首飾り」「海の王国」(共に岩波書店刊)など多数あります。

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2008年2月 6日 (水)

ヒキガエルとんだ大冒険シリーズ完結

 小学校入学頃の年齢の子どもたちに「エルマーシリーズ」についで人気のあるシリーズものに、この「ヒキガエルとんだ大冒険」があります。しばらく1巻から4巻まででていて、やっと続きがでました。ところがなにか事情があったのか5巻目がとんで6巻、7巻。この5巻がやっとでて、これで全部そろいました。幼い子どもは律儀?なところがあってシリーズものは1冊読んで(または、読んでもらって)おもしろいと全部に手をだします。しかも順番通りに、1冊づつ別べつのおはなしだから続けて読まなくてもいいのだと言ってもなかなか納得しない子どもがいます。

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「ウォートンとモリネズミの取引屋」
ヒキガエルとんだ大冒険5
ラッセル・E・エリクソン作
ローレンス・ディ・フィオリ絵
佐藤凉子・訳
評論社 本体1300円



 この巻はヒキガエルのウォートンの大活躍です。モートンの作ったおいしそうな料理をトゥーリアおばさんのところへ持って行く事にしました。日が暮れて枯れた木の根元をみつけて食事をしてやすんでいるとぞっとする声が響き渡り、小さな動物が逃げる音がします。ウォートンのところへ逃げてきたのは沼地に住む2匹のモリネズミ、ヤマネコに追われてきたのでした。ミリネズミはおもしろいことに、なんでも取り替えっこ、取引をするのです。ところでおばさんは留守、そして、ヤマネコがおそってきます。逃げる事はできたのですが、やっと出会ったおばさんは足を痛めた子鹿の手当をしていました。子鹿の食べ物を見つけなければなりません。ウォートンは取引屋のモリネズミに手伝ってもらうことにしました。かわりの取引はヤマネコを沼に誘い出し追い出す事。さぁ!うまくいくでしょうか。小さな動物たちが協力する様子、しかも、なかなかユーモアのある方法です。
 このシリーズはどの巻も食べられそうになってドキドキします。食うか食われるかの世界が、(もちろん智恵をしぼってのがれられるのですが)展開されます。それに、ちょっとドジなご愛嬌のある動物がでてくるのも楽しいことです。
 装丁がこの巻から変わってしまい、おとなはちょっととまどっていますが、子どもたちはじきになれるとおもいます。前の巻も変わっていくようです。

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2008年1月31日 (木)

「テラビシアにかける橋」本と映画

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「テラビシアにかける橋」
キャサリン・パターソン作
岡本浜江・訳
偕成社文庫 本体700円
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この本はかなり昔に読んだ。作者が来日したおりに話を聞きに行ったこともある。その時の印象はきちんと言うべき事を持ったおとな、媚びる事なく、おもねる事もなく、それでいて今に生きている子どもたちをちゃんと受け止めていっしょに歩いていこうとするおとなの人だと思った。パターソンの作品はどれも家族のことを描いているように思う。ベトナム戦争以後、ちょうどいまの日本がそうなように、人間関係が再編成されるなか、一体、親子って家族(国家)ってなんだろうと問いかけている。。いままでの家族、血のつながりがあって、父親が一家を養い、母親は子どもの成育をにない、貧しくとも助け合い、国家に信頼をおいて・・・親は子どもの成長になにができるのだろう。
 ジェスの家は農家兼、父親は食べていくためにそのほかにも雇われている。4人の姉妹のなかのたった一人の息子、親から見ればたよりにしたいが、あまりたよりにならない11才。父親に反抗はするものの、一方では家の貧しさも親の期待も充分わかっているやさしい子どもだ。ジェスは絵を描くことで学校や家庭からのがれようとする。一方、となりに引っ越してきたレスリーの家庭は対照的だ。一人っ子、両親共知識人で本を書いている。男女は平等で、進歩的な自分たちの思想がすべてだとおもっていて、自分たちのことにいそがしくレスリーの孤独を想う事がない。
ふたりは当然仲良くなり、2人だけの王国テレビシアを森の奥につくる。けれどもその王国は一人で行くには危険な橋を渡らなければ成らない。誰もが一度は渡ろうとする橋、ジェスはレスリーに助けられて渡たり、しスリー亡き後は妹メイベルに手をかそうとする。
 担任の厳しい教師と若くて子どもたちに人気のある音楽教師、貧しくていっけん厳しくレスリーを叱ってばかりいる余裕のない親、子どもに理解があると思い込んでいる親、この二組の、善きおとななのだがレスリーの死に絶望しているジェスの気持ちに真に寄り添うのは。担任の教師とジェスの両親の描き方は作者が言いたかった事だと思う。
 ジェスは作者の息子で映画の脚本を手がけたデヴィット・パターソンがモデルだとのこと、映画のジェスやレスリーは適役で思春期の子どもたちの悩みも憧れも良く描かれている。背景の自然も魅力的、それだけに最後のテレビシア王国の映像はいかにもアメリカ映画らしく、丘の上の宮殿、王国の巨人や妖精たちは底が浅く類型的でつまらない。良く出来た娯楽映画になってしまった。まあ、映画はそれでもいいのだけれども。心の想像の世界を映像にするのはなかなか難しい。

 

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2008年1月29日 (火)

伝えることの難しさ「彼岸花はきつねのかんざし」

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「彼岸花はきつねのかんざし」
朽木祥・作
ささめやゆき・絵
学習研究社 本体1200円




 前作「かはたれ」と「たそかれ」(共に福音館書店刊)の著者、原爆2世で次の作品はそのことを含んだものになるとのことで、期待していた作品だった。
 原爆が落とされた年の春から夏のおわりまで、当時4年生だった也子(かのこ)と子ぎつねのはなしが9章までつづられている。そして、10章はピカドン、11章は子ぎつねの家族のこと、終章は也子