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2017年11月 3日 (金)

オオカミを森へ

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「オオカミを森へ」
キャサリン・ランデル
原田勝 訳
小峰書店 本体1700円


久しぶりに一気に冒険小説のおもしろさを堪能した。この物語の最後のクライマックスの舞台は、1917年に実際にあった労働者や兵士によるクレスティ刑務所の襲撃をモデルにしている(訳者覚え書きによる)とのことです。現代のサンクトペテルブルク・私の年代ではレニングラードといった方がわかりやすいが、そのロシアの森深くオオカミと母と暮らしているフェオと呼ばれている少女がいました。その頃ロシアの貴族の間ではオオカミをペットとして飼っている風習があった。けれどオオカミは犬のように飼いならすことはむつかしく、やがて手に負えなくなると、迷信から殺したりできないため預かり人といわれる人のところにつれていかれます。預かり人はオオカミを森のなかで暮らしていかれるよう訓練して森奥深く放す、フェオの母親はその預かり人でした。フェオも母親といっしょに、時には母親のかわりに傷ついたオオカミを手当てして、森に帰すことをしていました。フェオはその仕事を4歳のころからしていて、その仕事に満足していました。けれど、フォアの母親は反逆罪でラーコフ将軍につれさられ刑務所に送られてしまいます。ファオは母親を助け出そうと行動します。はからずしもその行動はその頃圧政に苦しんでいた人びとや兵士の心を揺り動かし反乱をおこします。こういう筋書きだけの話は単純で良くある物語のひとつでしかないといわれますが、読んでいるうちに冬のロシアの深い森の中の描写やアフリカのジンバブェで子ども時代を送ったという作者の動物観が感じられる美しいオオカミたちの描写、フェオといっしょに冒険する仲間たちや、無気力だった民衆のなかで動き出していく人びと、みんなひとくくりができないくらいに状況と性格がみごとに書き分けられています。そして、なによりも民衆のもっているエネルギーが本のなかからたちあらわれ、読み人の心をゆすぶります。赤いマントが象徴的です。
 フェオの母親を求める愛とオオカミにとって母親のようなフェオとのきずなは単なる動物物語や愛情物語ではない力があり、観念的で情緒的な児童文学が多い中で、児童文学の原点にも通ずるように読みすすめられたのは私だけでしょうか。次作も小峰書店で予定されているとのこととても楽しみです。


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