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2017年9月11日 (月)

森のおくから

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「森のおくから」
むかしカナダであったほんとうのはなし
レベッカ・ボンド作
もりうちすみこ訳


表紙に描かれているのは木の影から何かをうかがっている男の子、その後ろや草むらにはいろいろの動物の姿が見えます。かくれんぼをしているのでしょうか。(私の好きな「もりのなか)を思い出しました。ここはカナダオンタリオ州の深い森に囲まれたゴーガンダの湖のほとりにたっている宿屋のお話です。1914年この宿屋の息子アントニオが5歳になった夏のことでした。暑い夏には時々あることなのですが、森で山火事がありました。大きな火事で泊まっていた人たちも、どんどん燃え広がる炎のなか、もちろんアントニオもみんな逃げました。逃げたといってもどんどん山火事は大きくなっていきます。とうとうみんなは湖の中に入って炎から逃げようと思いました。人びとは水につかってじっと、そこへ森の中からやはり逃げ出してきたものがありました。森に住む動物、生き物たちです。ヘラジカやクマのような大きな動物もウサギやネズミのような小さな動物たちもいます。それらも人びといっしょにすぐ近くでいっしょに、静かに炎が小さくなり煙が小さくなるのを待ちました。とうとう火事の炎は小さくなり動物たちは静かに森に帰って行きました。アントニオも帰ります。泊まっていたおとなも静かに帰って宿屋が焼けなかったことを感謝しながら眠りにおちました。
 絵がとても良い、みかえしに描かれている動物たちも、ページいっぱいに描かれている人びとの食事のようす、働いている人たち、泊まり客の個々の小さな部屋、そして3階にあるいわゆる大部屋、ここでは底辺に近い鉱山の労働者や猟師などが泊まっている。(もっとも訳者はホテルと訳しているけれど、わたしには大きな宿屋のようにおもう、ホビット達も旅をしながら泊まった宿屋、食器のぶつかる音や食べもののにおいがする、時には歌声や楽器の音が聞こえたのではないかと思う食堂)。物語の後半のページは静かに固唾をのんで湖につかっている人びとと鳴き声ひとつあげない動物たち、じっと自然の怒りに耐えているようなシーンはまるで私自身がそのなかにいるように思われます。
 この話は作者の祖父の経験した、(アントニオは祖父なのです。)できごとから聞いた話をもとにして描かれたとのことです。作者には他に「ドーナツだいこうしん」偕成社刊、「あかちゃんのゆりかご」偕成社刊「牛をかぶったカメラマン」光村教育図書刊があります。どの絵本も静かな作風のなかにユーモアと人びとの暖かな生活がながれていて私の好きな絵本です。
 ゴブリン書房さんのおたよりによると作者はこの8月に亡くなられたとのことです。


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