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2017年1月28日 (土)

塩田の運動会

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「塩田の運動会」
那須正幹 作
田頭よしたか 画
福音館書店 本体1500円

この絵本の語りの子ども田所正一、山口県防府市立中関小学校4年生です。防府市は昔塩田で栄えていた街で1997年4月塩の専売制が廃止されるまで100年の歴史をもっています。その後自由経済のもと専売制がなくなり、塩はどこでも買えるようになりました。それにともないかっての塩田は再開発で住宅や工業団地に姿をかえていきました。正一が出かけようとしている所もそのひとつ中関の塩田のあとの広い空地です。そこでこの街の人たちが町内大運動会を開こうとしています。
 塩は生きていくのに欠かせないものです。外国のように岩塩などがとれない日本では海の水から塩をとってきました。有名な話に武田信玄と上杉謙信の話があります。私が塩に興味をもったのは千葉市にある加曽利貝塚に行ったときの事です。地層におびただしい貝が埋まっています。それも小さい貝殻です。おそらく昔は小さな人がいたのだと言った私の言葉は皆に笑い飛ばされてしまいましたが、今は地形もかわってわからないけれどとった貝を川沿いに運び、それを煮詰めて塩をとったのではないか、その貝が捨てられていて貝塚の地層から見えているのだという説でした。なるほど、それにしてもそんなに大量の塩はどうしたのか、塩の採れない長野の地へ運んで替わりに鉄平石を持って来て矢じりなどにつかった、この説は私には驚きでした。はるか昔縄文時代?に交易があったという事実です。
 塩の製法と歴史が描かれています。そしてその間に50年前の最後の町内大運動会の様子が描かれています。歴史は淡々と語られていて、そのページの間に描かれている、おとなもこどもも夢中になった運動会の熱気が迫って来ます。残念なことにその熱気は戦争と近代工業化でなにもかも失ってしまい、いま、またそれを語りつぐ人も歳をとってきました。この本の文を書いた(正一かもしれません)作者は1942年生まれ、原爆2世です。絵を描いている画家は1950年生まれ、そして、この絵本を編集したMさんはこの絵本が最後の仕事、これで退職とのことです。
 高度成長という時があって、どこの仕事場でも次の橋渡しがうまくできない、50代がうすく、経験が継承されていってるとはいえません。すごいスピードで生活が変わっていきます。かって山口の中関に塩田があった。(そして、もうひとつ日本人にはきってもきれない米がある。)人の営みや生活は積み重ねと継承です。そのなかで時々若い世代が飛躍的にすすむ、その勢いで新しいものが生まれていく、残念ながらそれがうまくいっているとはかぎらない、Mさんから送られて来たこの本に添えられた手紙に「多くの若いひとたちにこの本を手にしてもらえるよう、お力添えを・・・」とありましたが、本を世におくるということはこういうことなのだと思いました。

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