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2015年2月26日 (木)

ふたばからのおたより -2月―

          
             さらば、新宿寮

 先日仕事で飲む機会があり、児童養護施設に長く勤めた人たちと子どもをどこまで迎えに行ったことがあるか、という話題になった。家出した子を探しに九州だったり、東北だったり、見つけたとたんに、また列車に飛び乗られ、また追いかけて・・・、「わかるわかる」と頷いて、そんなお酒を飲んだ。
 東京で長く勤めた自立援助ホームの少年たちのことを思い出すと、さまざまな逸話に事欠かない。自立援助ホームとは、養護施設で育ったり家庭で暮らすことのできない15歳から18歳くらいまでの子どもたちが生活するホームで、そこから仕事に通い、やがて社会に巣立って行くのを支えるホーム、そういうと立派に聞こえるが、毎日の生活はドタバタの連続である。お小遣い欲しさに給与明細を食べてしまった子、やっと雇ってもらっている職場で「今日はメモリアルデイだから休みます」とニコニコと告げて誕生日に欠勤した子、子どもたちが仕事に行っている間に全館害虫消毒をしたら、煙の中からサボって隠れていた子が出てきたこともあった。暴走族の頭だった子もいたし、家庭で家具を積み上げて籠っていて保護された子もいた。
 私の勤めていたホームは線路沿い、駅からまっすぐに歩いていくと夜には窓の灯が遠くからでもよく見えた。近くの橋を渡ると小さな踏切がある。狭い土地に棒みたいに建てられた5階建てで、その3階が食堂だった。20人分くらいの食事を作って、私は料理なんてしたことなかったから、失敗ばかりでよく泣いた。それでも慣れてくると、手巻き寿司のお寿司屋さんになったり、「ただいま」と帰ってくる顔をみて肉を焼いたり、おはぎなんか山みたいに作った。夕食が終わると、図体のでかい男の子たちが食堂のテレビの前でゴロゴロとしていた。ギターを持ち出してくる子もいてトランプに興じたり、何でもない話もしたな。最近の少年事件のニュースを聞くたびに、人間の抱える深い深い孤独や絶望感に触れてしまうのだけど、そして、かって出会ってきた子どもたちもものすごい寂しさを背負っていたはずなのに、何故か思い出の中の食堂の光景は、明るくて、どこかはしゃいでいる。
 その自立援助ホームがとうとう取り壊されて、移転することになった。壊す前にOBで集まろうよ、と急な連絡があったが、急すぎて行けなかった。
 いいことばかりではなかった。今の私だったら、もっと違ったことができたろうに、と思うことも多い。昔の思い出として懐かしむのとも少し違う。
ずっと昔、図書館でたまたま読んだ本の、何が私を突き動かしたのか、何の約束もなく、ただ本にあった住所を頼りに電車を降りて歩いた。アルバイト帰りで、真っ暗な線路沿いの道の先に明るい細長い建物があった。見上げて、階段を上った。それが今に繋がっている、と、はっきり思う。私にとっても、そして多くのかっての少年たち、職員たちにとっても、あの窓の灯はずっと点っていてほしい、そう願う。          
Photo
写真は、取り壊される前のホームです。ハガキにして送ってくれました。
            (の)

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