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2010年1月10日 (日)

リアリティーとは?

 宮崎駿の『折り返し点』(岩波書店)を読んでたら『千と千尋の神隠し」』のインタビューで「僕はね、この作品を作る過程で(略)そこにある世界が現実なんだと思ってやっちゃうから、時折、現実の方が現実感なくなっちゃう。どこかで自分の生活よりも、リアリティー持ってきますからね、その世界のことの方が。(略)…で、あんまり深く入ると、戻れなくなる。」(270p)と言ってました。他でも、もっと詳しく言ってます。「僕らは『アルプスの少女ハイジ』をやっている時も(略)、自分達は(実写の)映画だと思ってやってきましたから。絵を見ているくせに、自分の頭の中には、本当に生きた人間が動いているふうになっているんですよ。イメージはそうなんです。僕ですらそうですからね。絵を全部見ているくせに。なんとなくそういう世界ができ上がるんです。映画が終わると、その世界が本当にあった風景のようになって、ちゃんと残るんですよ。絵の形で残っていないんです。(略)“そこに世界があって、それを絵に描いたら、今はこの程度にしか描けないんです”というふうにして描くしかない。」(374p)と言ってました。
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これを読んでいて、もっとすごい例があったのを思い出しました。「私は子供だった頃、つまり、いたいけなかわゆい小学生だった時ね、ずーっと本の中の世界の方がホンモノで、ホントの世界の方がニセモノ、だと思ってたのだ。今考えると嘘みたいな話だけど、ホントの話よ、これ。(略)だからさあ、わかるでしょ?そーいう誤解、と思い込み、がどんな不幸をもたらすか!私にも、私のまわりにもさ!今考えると、私も不思議だ、と思って、なんとかつじつまをあわせようとしたフシもあるのよね。たとえばさー、ホントにこの世界がうそこなら、おなかすくわけないでしょ?それなのに、やっぱりおなかはすくわけよ!私はある時期、なんとなく納得できなくて、おかしい、おかしい、と思いながら食べてた時があったのだ。そうじゃない時も、アッチの世界はホンモノ、コチラはウソこ、という思い込みだけが存在してて、他の事は全然何も考えずに、スムーズに両立していたんである。(略)だからそーゆーのが出てくるのはたいてい私にとっては都合の悪いことが起きた時!たとえば先生に怒られるとかさ!ところが私はコッチの世界はニセモノ!と固く信じてたから、全然平気なのね。だって本というのはイヤになったらパタン!と閉じればいいんだから−(略)今考えると先生方に同情するね。だから私は怒られてるのにあきると、突然“じゃ、これでおしまいね”とマジメな顔でいって、自分の方から会見をうちきりにしたことさえあったのだ。(略)
         * * * *
 それが変わったのは中学二年の春の事で、私は、はっきり覚えてるの。私は暗い、くつ箱のところから、水を飲もうと思って、明るい所へ走り出たのよね。その時、まるで雷にうたれたみたいに突然、そうじゃないんだ!こっちの世界が本物なんだ!ってわかったのよね!そうか、そうか、わかった!!だから今まで、どっかおかしい、どっかおかしいと思ってたんだ、これでわかった!!こっちの世界がホンモノだったのよ!だからさあ、私はその時、本当にボー然として動く事もできなくて、そのうち水を飲みにきたことなんてすっかり忘れて引っ返したのよ。それから、ようやく自分がどういうふうに感じてるか、他人に話せるようになったのよ!そして、ああ、これが“自我の目覚め”とかいうやつなんだな、と勝手に解釈したんですが、あってっかね?でも、ともあれそうやって私はこっちの世界に戻ってきて、他人とつながれるようになったけど、完成するまでに、十五年かかりました。だけど今では昔の世界も、今の私をしっかり支えてくれています。よかったね。」(赤木かん子「水飲み場の目覚め」・新潮選書『北村薫の創作表現講義』298p所収)
 自我(意識)と身体性(身体や無意識)は、すんなり同調するものでもないんですね。
     
       (高橋峰夫)


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