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傷はぜったい消毒するなーその1

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「傷はぜったい消毒するな」
ー生態系としての皮膚の科学ー
夏井睦・著
光文社 本体840円



 形成外科医である著者は既に、『痛くない!早く治る!キズ・ヤケドは消毒してはいけない「うるおい治療」のすすめ』という分かりやすい実用書を、主婦の友社から出しているが、今回の新書は、副題に「生態系としての皮膚の科学」とあり、その理論書です。
 従来の「消毒して傷を乾かす」治療は、傷が治るのを妨害するだけだ。「消毒しない、乾燥させない」だけで傷が速やかに治ってしまう。著者はそれを「うるおい(湿潤)治療」と呼んでいます。
 消毒薬は、病原菌やウイルスを殺す前に人体細胞を殺し、皮膚常在菌まで殺してしまう。また乾燥させると細菌の増殖は止まるが、それ以前に皮膚の細胞(真皮や肉芽)が乾燥で死んでしまう。それがカサブタです。ですから傷口の浸出液を乾燥させないようにすれば「食品ラップ」で覆っただけでも治るそうです。そもそも傷口に細菌がいただけでは化膿しない。(細菌はどこにでもいるのだから)それが増殖できる場(体液が溜まって澱んでいる血腫や膿やカサブタ)がなければ化膿しない。そういう場は血管との交通がないから、免疫細胞も抗生物質も届かない。消毒薬は血腫のタンパク質と結合して細菌に届かない。つまり血腫や膿を取り除き、傷口を乾燥させなければ、消毒も抗生物質も不要で、カサブタも出来ずに治ってしまう。この治療法は、傷にもヤケドにもアトピーや床ずれにも効くそうです。
 ではこの実証された治療法がなぜ普及しないのか?まず皮膚科は、皮膚内科医であって、皮膚外科医でないと指摘します。それなのに皮膚外傷(擦り傷やヤケド)を分担させられてる。こういった首をかしげる現状を導入部に、消毒して乾燥させる間違いが、なぜ起こったか、医学史をさかのぼっていきます。
 つぎに、傷薬(クリーム)に含まれる界面活性剤が、人体の細胞膜を破壊すると指摘します。皮膚科の教科書にも「クリーム基剤の軟膏は健常な皮膚にのみ使用する」と書かれている。それなのにヤケド治療用のクリーム基剤の軟膏が作られてる。むしろ薬剤(主剤)なしの油脂性基剤(白色ワセリン)を塗るほうがいい。白色ワセリンは炭化水素の分子量が小さいために抗原性(アレルギーを起こす性質)を持たず、常温での反応性が乏しく、生体との反応もほとんどなく、皮膚の乾燥を防ぐのに最適だそうです。
 一方、界面活性剤は皮膚常在菌の細胞膜を破壊します。つまり洗剤による過度な手洗いは常在菌を殺し、バリアーのなくなった皮膚は、病原菌に直接さらされます。ーつづくー
         (高橋峰夫)

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