「王さまと九人の兄弟」の世界
「王さまと九人の兄弟」の世界
君島久子
岩波書店 本体1700円
先日のシルバーウィークとやら、いろいろとあって出かけ損ねたので、2日間は本を読んですごした。しかも児童書は一冊も読まずに、積んであった本をひたすら読む、そのうちの一冊がこの本だった。
私は赤羽末吉さんの大ファン、一度来ていただいておはなしをお聞きして、ますます尊敬するようになった。日本の文化を深く描いてある本はもちろんのこと、モンゴルや中国の広い世界を描いたものも大好きだ。私にとって、中国は近くて遠い国、広く壮大な国、そして、人々は元気というか激しく、エネルギーに満ち満ちている国、そして、「西遊記」のなかにでてくるふしぎな者たちがいる不思議な国だ。
「王さまと九人の兄弟」は中国の昔話を絵本にしたものである。作者の君島久子さんはこの絵本の誕生についてこう書いている。”それぞれの特技を発揮して、王さまの押しつける無理難題をのりこえていく、あっぱれな兄弟たち、おもしろくて力づよい兄弟たちの元気の秘密はどこにあるのでしょう”・・・。この本の中に書かれているようにこの話は雲南省での調査団によってイ族から再話されたものがもとになっているとのこと、それを絵本にしたのはその頃の岩波書店の編集者いぬいとみこさんが”こどもたちに元気をあたえるお話”をいうことで民話集「白いりゅう黒いりゅう」がだされ、赤羽末吉さんがそれを大乗り気で絵本にしたとのことだ。たぶんその調査団のようすをもとにしての講演(スライドも見た)を国学院大学で私は聞いている。その時の講演は「西遊記」のことだったのだが、とても興味深く聞いた。ちょうど福音館書店刊の「西遊記」を読んだり「孫悟空の誕生」(玉川大学出版部)を読んだ後だったので、また、講演もユーモアいっぱいでとてもおもしろかった。
この本は一部は地理的に、二部ではそれを歴史、時間をさかのぼって書かれている。中国は広い、その広い国土と深い文化のなかで類似しているお話を述べながら、中国という多民族の国の民の願いのあらわれたものと、互いの個性のちがいをみとめあいながら成長していくことの意味をのべている。
もうひとつ私にとってやっと納得できたことがある。同じような絵本「シナの五人きようだい」のことだ。物語のはじまりといい、最後のオチといい、村人たちの立場は権力者と同じ立場になっている場面など、私はとてもなっとくがいかなくて、あぁ!「シナの五人きようだいは」描かれているのは中国であり、中国人なのだけれど、フランスやアメリカの国の一遍を見る思いだったし、どうしてこの絵本がもてはやされるか正直わからない。しかも、「王さまと九人の兄弟」という絵本があるのに。ここでは「浜辺の五つ子」と「シナの五人兄弟」がくらべてくわしく書かれている。それにしても同じようなお話が中国にはほんとにたくさんある。
このような地味な本が、異なる国や文化を掘り起こし、平和への架橋になるのだとあらためて強く思った。
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