ひとりたりない
「ひとりたりない」
今村葦子・作
堀川理万子・絵
理論社 本体1300円
琴乃の家のたりないひとりは志乃おねえちゃん、もうすぐ夏休みが終わりという日でした。中一のおねえちゃん、私は五年生で弟の周斗は二年生、三人でアイスクリームを買いに行くところでした。周斗はサッカーが大好きで、その日もサッカーボールをバウンドさせていました。どうしたのかボールが横に跳ね、それを追いかけて車道に飛び出しそうになった周斗をおねえちゃんがつかみました。でも、つかみそこねておねえちゃんが前のめりに車道へ、そして車のブレーキの音、おねえちゃんは車の下に。その時から私の家は一人たりなくなったのです。たりなくなったどころか、なにもかもが狂ってしまいました。自慢の娘がいなくなった両親はお酒におぼれ、弟は話をしなくなり、おもらしをするようになり、いつも指を吸いながらかげにかくれてじっとしています。琴乃の家族はプッンと糸が切れたように、みんながばらばらになり、どうなっていくのかわかりません。とうとう苦しくておばあちゃん、おかあさんのおかあさんにS・O・Sの電話をしました。”おばあちゃんたすけて!”
とても重たい物語です。作者はこの決してありえないとはいえないことに、この家族はどうむきあっていったかを語っています。S・O・Sでやってきたおばあちゃんは、たとえ誰も食べなくとも決まった時間に食事の支度をしました。それ以外にも、いつものどおりに規則正しく生活をしていくこと、とくに自分のせいだと苦しんでいる幼い周斗をそのままに受け入れます。歌をうたったり、本を読んでやったり、自分流にまっすぐに。
すこしずつ、もとの生活に戻っていきます。そしておばあちゃんの病気で、周斗は自分を必要としている家族がいることに気がつきます。ただ、かといってこの物語は「家族で不幸を乗り越えていきました。おしまい!」というふうになっていません。「時間が解決してくれる」というような結論にもなっていません。やっぱり「ひとりたりないのです」それで良いのではないかと、経験のあるおとなの私は思います。
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