この世界の片隅に
「この世界の片隅に」上・中・下
ACTION COMICS
こうの史代
双葉社 本体各648円
北朝鮮をめぐってまた、核の問題が連日ニュースで伝えられています。けれど、ほんとにちょっとでしかとりあげられていません。そして、あっちこっちの戦いもおわりそうもありません。核実験をする、なんのために、だれが、どこで、いつ・・・一方私はわずかばかりに入ってくるニュースを聞き流している、もっと緊張して、そしてともかく否!といわなければなりません。言い訳なしです。特例なしです。ともかく言い続けなければいけません。
「夕凪の街 桜の園」で世代を超えて原爆の悲劇を現代につなげて静かに描いた作者の、漫画アクションに連載していた作品が3巻にまとめられ出版されました。(4月に下巻がでました。)
広島で育ったすずが呉に嫁ぎ、爆撃で片腕を無くしてしまう、穏やかで楽天的なすずと家族、まわりの人たちの戦争下の生活の物語です。物語は嫁ぐ前のすず、絵を描くのが好きで天真爛漫な少女が夫になる周作と出会うところからはじまります。そして、昭和18年12月周作が結婚の申し込みにくるところから昭和20年9月原爆の落ちた広島に家族を捜しに行ったものの、父は死んで母は6日にでかけたまま帰ってこない、妹は原爆症でねている、周作と浮浪児の女の子をつれて呉で暮らしはじめるところまで描かれています。表題どおり「世界の片隅に」営まれる家族の物語です。
作者はあとがきにこんなことを書いています。「私は死んだことがないので、死が最悪の不幸かわからない。他者になったこともないので、すべての命の尊さや素晴らしさも厳密にはわからないままかもしれない」それで「この作品では、戦時の生活がだらだら続くように書きました」「そこにいつも転がっていたはずの誰かの生の悲しみやきらめきを知ろうとしました」最後にたくさんの資料が載っています。この物語の中には戦争と背中あわせの庶民の日常の生活がとても細かく描かれています。
作者はこの物語を描き続けられたのは奇跡といいます。でも、いま、ここにこうしていられる私たちの生も奇跡なのではないかと時々思います。
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