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野の花えほん

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「野の花えほん1」
ー春と夏の花ー
前田まゆみ 
あすなろ書店 本体1500円


 今年の春は桜の花をながく見ることができたとおもうと、藤の花は早く咲いて、もう終わってしまいました。野の花はどれもしっかり、元気に咲いています。近くの駐車場にはタンポポが群れて、早くから今も陽に輝いてキラキラと咲いています。
 この本は野の花すべての本です。つまり、良くある植物図鑑でなく、遊びもあり、食べることもいろいろと書かれています。しかも手書き、いかにも野の花にふさわしい絵本です。
 この連休おでかけですか?混むし、お金もかかりそうだしと思っているのは私だけではないと思います。私はのんびりと近くの青葉の森公園へ。この本や野鳥図鑑をもって、公園のなかの県立中央博物館やその生態園へいって遊んでこようとおもっています。

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学校をまわっています

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 若葉の季節です。千葉高校の銀杏も柔らかい葉が繁って陽に輝いています。昨日、一昨日の強風で若葉が地面いっぱいに落ちていました。いくつかのものをひろってきてビンにいけてみました。銀杏、桜、欅など若い匂いがします。なかでも桜の葉はとても良い匂いです。
 20日から学校にご挨拶にまわり始めました。千葉市では市立の小中学校図書館に納品するのに、担当の書店が決まっていて、今年もその学校の図書主任の先生、事務の先生、そして司書にあたる指導員の先生にお会いして今年の相談をします。図書目録を届けたり、今年度の学校の方針や、それにともなっての希望をお聞きしたりします。もちろん今年の予算もお聞きしなければなりません。財政難から毎年図書予算は減、(多分東京都などの三分の一位です)先生はとても忙しく、指導員の先生は大規模校を除いて小学校は2校2日ずつのかけもち、中学校は4日の勤務でやはり大忙しです。それでも子どもたちは図書室が好き、先生方の力で図書室は子どもたちの学校生活の大切な場所になっています。
 会留府の担当の学校はなぜか千葉市の内陸側のはじにある学校が多いので、緑がたくさんの所にあります。連休をはさんで毎日若葉を愛でながら学校訪問をしています。

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ポークストリート小学校のなかまたち

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9「みんなそろって、はい、チーズ」
10「コンクリートで目玉やき」
ーポークストリート小学校のなかまたちー
パトリシア・ライリー・ギフ作
もりうちすみこ訳
矢島眞澄 絵
さ・え・ら書房 本体各1300円

ポークストリート小学校のみんなの物語も10巻そろいました。
 9巻は2年生最後にクラスでピクニックに行くことになりました。バーベーキューもするし、みんな大喜び。でも、一緒になる友だちがいないエミリーは憂鬱です。なんといっても親友と一緒なら楽しいに決まっています。でも、思ったようにいきません。ひとり離れて森のなかへ、迷子になってしまいます。
 10巻目はいよいよ夏休みです。エミリーの家にはプールがあります。ビーストとマシューはエミリーと毎日プールで遊ぶことができてごきげんです。ある日エミリーは出かけていないので、マシューはガレージで目玉やきの実験をしますが、たまごはつぶれてそうじをしなければならなくなります。だから今日はエミリーの所へはいかれません。そうじをしているうちにマシューの家にしようとします。マシューは引っ越しをすることになったからです。とうとうマシューとの別れがきます。


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この物語にでてくる子どもたちは決して優等生ではありません。たとえば1巻目からでてくるビーストは<読み>がにがて、落第していて2年生を2度しています。エミリーも気の優しい子どもで、いじめられっ子、おねしょのくせのあるマシュー、かけっこもなわとびもだめで泣き虫のジル、先生も権威的な先生もでてきますが、子どもたちの目線にたって、子どもたちの気持ちを受け止め励ます先生が描かれています。(たとえば8巻目ターザンロープがこわくてしかたがないビーストとイライラのミラー先生の話)子どもたちはとてもいろいろのことを感じています。悩んだり、喜んだり、悲しんだり、この物語に出てくる、いわばおちこぼれの子どもたちに等身大の自分を重ねあわせて読む、それがこの本の魅力です。地味な本なので小学校低学年の子どもたちに手渡しで薦めたい本です。

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いけないことしたうさこちゃん

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「うさこちゃんときゃらめる」
ディック・ブルーナぶん/え
松岡享子 やく
福音館書店 本体600円


 うさこちゃんの本も40冊になりました。最近のうさこちゃんは大きくなって、学校に行ったり、美術館に行ったり、友だちもたくさんできて、キャンプにいってお泊まりもできるし、おとうさんやおかあさんにお手紙も書いたし、いろいろなことができるようになりました。
 驚いたのはこの本ではうさこちゃんは万引き?をするのです。よその物を取ってしまうまでとはいかなくとも、あんがい友だちの物を黙って持って来たり、親のお金をちよっと取ってしまったり、誰にも大なり小なり身に覚えがあります。うさこちゃんはふわふわおかあさんと買い物に行って、お店から黙ってキャラメルを持って来てしまいます。その晩うさこちゃんは眠れませんでした。ふわふわおかあさんはうさこちゃんがへんなようすなのに気がつきます。当然しっかり叱られてお店にかえしに、あやまりにいきます。とてもその行為が淡々と描かれています。取った理由も言い訳もなし、お店に行って”決して二度としません”といいます。なんとシンプルで、幼い子どもに適切な本でしょう。

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国境まで10マイル

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「国境まで10マイル」
コーラとアボカドの味がする九つの物語
デイヴィッド・ライス作
ゆうきよしこ訳
山口マオ画
福音館書店 本体1600円




 ここ連日メキシコとアメリカでの豚インフルエンザのことがニュースで流れています。生まれてからずっと日本で暮らしていると、国と国の距離感はあまり近くと感じられません。この物語の舞台はアメリカテキサス州の最南端、リオ・グランデ・バレー地域で暮らす人たち、10代の子どもたちと、それをとりまくおとな(老人たちもふくめて)たちの物語です。つまり国境まで10マイルなのです。見返しに地図がでています。そして、ちょっとわかりにくい読者のために解説がのっていて、それを読むとテキサスとメキシコの歴史と繋がり、そして「テックス・メックス」としてしられているメキシコと南部アメリカの融合文化のことが書かれていて、この物語の背景がより深く知ることができます。(通勤にしろ買い物にしろ毎日国境をいったりきたりする生活等、日本では考えられないことです。)
 でも、どこの国でもどの時代でも若い人たちは、まっすぐにそれらと係わりあいながら生きてきます。「まあまあ金持ちだった僕たちの家にいた家政婦カタリーナ、いつもは家政婦というより家族のような存在におもっていた。でも引っ越ししてカタリーナと別れなければならない理由のひとつには検問所の問題があった。カタリーナの孫のお葬式にいくと子どもたちは僕らのことをみんな知っていた。僕たちのお古を着て、ぼくたちが使わなくなった古いベットに寝て、僕たちを兄弟とよんでくれた。P52」帰りに国境監視員はみんなにアメリカ市民かと聞きます。”正真正銘のアメリカ人か”と聞かれ僕は答えません。ーもうひとりの息子よりー
 この物語集はおとなになりはじめの恋の話、好きな子の話、バレンタインや誕生パーティ、ピニャッタ割りの話、ダンスと音楽と食べ物、そして貧しさと人種差別と、魔術師や魔術、ポップで暖かくて、どこか哀しい、たくさんの青春がつまっています。
 おとなの入り口で精一杯生きていく若い人たちの物語は、はるか遠い国の物語なのですが胸をうちます。


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ツバメをみる

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 これはJR千葉駅の前にかかったツバメの巣です。図書館へ行こうと思って通ったら、例年のようにツバメの巣がありました。とても人通りのある通路の梁の上に作られていて、この二つの巣は別べつのものです。4つ位あり、元気な鳴き声がします。ヒナがうまれて、巣立つ頃は夏らしくなることでしょう。そういえば、先日書店組合にいったときに、やはり例年のように階段の上に巣がありました。今年は少し遅くて気をもんだとのことでした。

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「身近な鳥の図鑑」
平野伸明・著
ポプラ社 本体1600円




 「自然観察図鑑シリーズ」の新刊です。鳥は翔んでいってしまったり、樹の上の方にいたりなかなかしっかり観察することができません。でも、私は声をたよりに立ち止まって、よく見えなくても鳴き声に耳を傾けます。図鑑類は名前をおぼえるというより、ひとつのドラマのように読んだりします。
 この鳥の図鑑は身近なところ、たとえば「海辺や干潟」というように鳥を観察し易い身近な場所にわけて全部で99種類の鳥と、その鳥が暮らす場所などが写真入りではいっています。そのほか言葉、見る、見つけるコツ、観察の道具、気をつけること、科で分けた鳥の名前、そしてさくいんなどが書かれています。とても写真が鮮明できれい、鳥のバックの風景も良く撮れていて、一家に一冊の本です。
 そういえば冬の間餌を与えていたヒヨドリが、まだ時々物干竿にとまってうるさく鳴くことがあります。私は冬の寒いあいだしか野鳥に餌はやらないことにしていますので、”またね”というと翔んでいってしまいます。鳥たちは繁殖の春で子育てにいそがしく、あと少すると幼鳥がうろうろする姿をみることができます。

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いたいといえる幸せ

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「いたいよ いたいよ」
まつおかたつひで
ポプラ社 本体1100円


 昨日のブログでは喉の手術をするために入院する男の子の不安と、でも安心していいということを、いろいろの角度から話をするおとなのようすが、たんねんに描かれている絵本の紹介をしました。この男の子はある年齢以上なのでそういう方法をとることができますが、この絵本の表紙のようにとても幼い子どもにはどうしたら良いでしようか。それは昔ながらの方法”いたいの いたいの とんでいけー”です。わたしも祖父母にしてもらったことをうっすらと憶えています。(両親からは憶えていませんが)
幼い子どもに、たとえ薬や注射が必要でも抱っこして”いたいの いたいの とんでいけー”をしてもらうのはとても必要です。それだけでずいぶん良くなると思います。
 細部まで描き込むいつもの作者の絵とは少し感じが違いますが、とてもシンプルでユーモアがある幼児絵本です。

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おとのえほん

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「でんしゃはうたう」
三宮麻由子ぶん
みねおみつえ
福音館書店 本体800円


 男の子がお母さんと電車に乗って降りるまで、電車の走る音の絵本です。走るといってもどこを走るのかでいろいろ違います。12時半近く「かざま」出発なので、昼間のことです。夜だったら電車はまた違う音をたてて走るでしょう。私は昔から乗り物酔いをするので、なるべく電車では眠ることにしているから当然電車がどんな音を出しているのか知りません。だからこんなふうに電車の音=声をきいたことがありません。線路と擦りあう音でしかないのですが、まわりの景色で電車が何か言っていたり、うたを歌っているように聞こえたり、電車の好きな子どもは、きっと乗りながら電車と話をしているに違いありません。各ページにかきこまれた駅や景色をいろいろと読み取るのも楽しい絵本です。

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「どんなおと?」
さくtupera tupera
教育画劇 本体870円


 この絵本は同じ音を表現していますが、子どもたちに問いかけています。”手をたたいたら?”に始まって動物のたてる生活音、これは表紙の絵、ぞうと子どものたてるおならの音や物がぶつかりあう音、自然の音などが続きます。そして、”そっと耳を澄ませてごらん”ちょうちょが森のなかで羽を閉じる音です。ただ残念ながらこの本はこれで終わりで良いのに”太陽がふっとんだらどんな音?”これは無くて良いのではと思います。だって”太陽がふっとんだら”の音は誰にも聞くことができない、想像することのできない音?だからです。しいて言えば無の音、これは音といえるのでしようか。どんな音でも、音があるということは生きていることです。”めをとじてみみをすましてごらん いまどんなおとがきこえる?”わたしの、あなたの心臓の音、生きている音です!

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入院体験

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「びょういんにおとまり」
文バラージュ・アンナ
絵ダーノシュ・ユディット
訳うちだひろこ
風濤社 本体1900円




 子どもたちに”もしあなたが病気で入院することになったら、こんな感じですよ。”と描かれた絵本です。表紙の絵は窓で手を振っている子どもたちに別れてお母さんと出て来るところです。元気になって家に帰るのでしょう。そして、本を開くと見返しには病気の時つかう器具が並んでいます。薬や注射、顕微鏡までいろいろあるのは、この男の子が病院で使った物なのでしょう。男の子はのどが痛くなり、扁桃腺の手術で入院、いいえ!この絵本では=病院におとまりなのです。入院してから退院するまで、この男の子にどんなことがあって、どんなふうに感じたか、お医者さんや看護士さんのこと、いっしょに入院している子どもたちのこと、手術のときのこと、お父さんお母さんが来た日のこと、来なかった日のことなど、とっても丁寧に絵と文でわかりやすく、ページによっては自分で絵や文、おもに記録風に書くことができるように構成されています。
 入門書でもありますが、子どもたちの不安な気持ちに寄り添っていて、こうしたほうが良いとか、こうですよとかおしつけが描かれているわけではありません。親が見舞いに来ないとき、子どもは何をしたかなど、こんなふうに書かれています。<きようはぼくのおかあさんもおとうさんもおみまいにくることができません。ほかのこどもたちにはたくさんのおみまいがきていてうらやましいなあ。”だれもおみまいにこなかったときあなたはなにをしていましたか?”>。日本と状況がちがっていることもあったとしてもあまり類書がない絵本です。どうしたら心が元気になることができるのか、病気になって不安になっている子どもだけでなく、おとなにも読んだらよい絵本だと思いました。
 作家も画家もハンガリーの人で、作家は長い間自閉症の子どものケアにたずさわってきた小児科医です。

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海からのおたより4月

春は磯あそびがおもしろい

春と秋は潮の満ち引きが大きい季節です。潮は一日にほぼ2回、干潮と満潮をくりかえしますが特に春は昼間がよく引きます。潮は月の引力によって満月と新月に干潮と満潮の差が大きくなります。(大潮)ちょうど太陽と地球と月が一直線になるときにあたります。大潮の干潮時にはふだんは水に隠れているところが外に出るのでいきものが観察しやすくなります。

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潮が引いている時間に磯を歩いてきました。すると岩の間から水がぴゅっととんできました。ケヤリムシが人の気配におどろいて引っこんだのです。しばらくじっと見ていると管の中から触手(鰓冠)がのびてきました。これでえさを引き寄せて食べます。イソギンチャクのように触手に毒はありません。ゴカイのなかまです。

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こちらはこどもがつかまえたナマコです。やわらかいナマコは持ったとたんからだをカチカチに固くしました。さらににぎっていたら白い腸を出しました。これ以上はかわいそうなのでやめましたが、もっとさわっているとからだがどろどろになってしまうそうです。でも、ふしぎなことに数時間するとまたもとにもどります。

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 これはクモヒトデです。なかなかふだんは見ることができません。腕の先がぐにゅぐにゅと動いていました。星型のヒトデとちがって二枚貝を襲って食べるようなことはせず、魚の屍体や海藻を食べます。


新聞の地方版、ラジオの天気予報で翌日の月齢と干潮、満潮のこよみがわかります。ここちよい潮風を受けながら春の一日を楽しんではいかがでしょうか。
        
  どんぐりつうしん変集長  谷口優子

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少し遅れてのプレゼント

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「ボクシング・デイ」
樫崎茜
ポプラ社 本体1400円


 新学期になり学校がはじまりました。今年の本屋大賞受賞の作品が学校と教師のことが小説の舞台になっていて、一応読んでみた時に、少し前に読んだこの本を思い出しました。
 この物語は人も物もゆっくりと動いています。特別になにかおこるということもない地方都市の小学校が舞台になっています。事件といえば主人公の栞という4年生の子どもが通っている小学校にある、30メートルものセコイアが切られてしまうということでした。栞は一部の言葉がうまく発音できなくて、言葉の教室に通っています。その教室の佐山先生と、下校の時一緒になる仲良しの同級生、特に交通事故で病院へ入ったままの母親がいる千晶との交歓が描かれています。千晶が特殊な境遇というだけでなく、その他の子どもたちにもすこし何かしらあって、そのなかで大きくなってきました。栞にとっての大変なことつらいことは、言葉の問題、特に「ち」「き」がはっきり発音できないことです。そのためセコイアを切らないように署名を集めることや、母親のこともあり車いすを送る活動を続けて応援することも、栞はみんなの前で発言する勇気がわきません。千晶の名前すらちゃんと発音できず悩んでいます。物語の終わりちかく、少し言えるようになった栞に佐山先生は「何かの理由でクリスマスの日にプレゼントを開けることのできない子どものために、一日遅れのボクシング・デイがあること、すべての人にはプレゼントを開ける権利があること。そんな少し遅れてしまった子どもに贈りものを渡したくて教師を選んだ」と言います。また、セコイアの側には卒業生が創ったブロックの「スイミー」があり、悲しいときや淋しい時は「スイミー」のささやき声がきこえると言われています。佐山先生は嬉しいことばかりでなく、悲しいことやつらいこともまぜこぜにあってこそ喜びがある、そういう人にスイミーの声が聞こえるのだともいいます。佐山先生は定年になり学校を去っていきますが、栞や千晶や子どもたちにくれた贈りもの、栞はそれをもっておとなになっていきます。そして、10年後栞は昔の学校へ訪ねていって、もう会うことのない佐山先生からの贈り物を思いながら、ブロックのスイミーの下に埋めた手紙を見ることで終わっています。たしかにその時栞はスイミーの声を聞いたのです。
 おとなになって、子どもたちに本を手渡す立場になって、自分の立ち所を考えます。子ども以上に不安と癒しを声高く叫んでいるおとなたちと社会の波にのまれないように、考えなければならないとおもっています。

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くらげのくに

 勝手なもので雨が降らないで、よいお天気の毎日が続くと少し疲れます。どこかでゆっくりとしたいと思ったりします。そんな時にこの本に出会いました。

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「くらげのくに」
photograph 水口博也
illustration しろ
ダイヤモンド社 857円


 私にとってクラゲといえばミズクラゲしかありませんでした。すっかり有名になったオワンクラゲのほか、こんなにもたくさんと思うほどのクラゲが泳いでいます。細い細い糸のような体、ぽっくりとした透明の傘の体、暗い海のなかであかりを灯しているような体がどこともなくユラユラと揺れて泳いでいます。
 明るい陽の中でしっかりと大地に立って風に吹かれている樹や植物をみると元気がでますが、こうして泳いでいる不思議なクラゲをみていると違った意味で気持ちが静かになります。
新江ノ島水族館
海遊館の案内が最後のページに載っています。

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駆けあしの春

 ソメイヨシノの花は散って、八重桜が盛りになりました。今年はお天気のようすで花が長いこと咲きほこりました。桜は下を向いて咲きますが、銀杏やわたしの好きな欅はいつでも枝を広げて、空と話をしています。駆け足の春といえば、つつじが咲きました。八重桜もつつじも5月でなかったっけ?
 まだ空が見える欅の上の枝にカラスの巣でしようかまるまる良く見えます。幼鳥がウロウロはじめました。これはムクドリのこどもです。(クリックすると見えます)
 写真には撮れませんでしたが、今年はじめてツバメを見ました。桜の花が散ると春はあわただしく駆けていってしまいます。

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姉弟の関係は

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「おとうとバーゲンします!」
作 イム・ジョンジャ
絵 キム・ヨンス
訳 星あキラ/キム・ソンミ
ひさかたチャイルド 本体1300円



 絵本の帯に「姉と弟のビミョーな関係」と書かれています。まさにそのとおりです。まったく弟ったら泣き虫で弱虫で、自分勝手で乱暴で、ちょっともおねえちゃんの言うことを聞きません。おもいきって売りに行くことにしました。聞いたおとなはそれぞれ”いいよ!○○と交換しようか”と言いますが・・・。でもね!とうとう、ばからしく嫌になって自転車の後に乗せて帰り道、おもわずおかしくて笑ってしまうオチでした。韓国の絵本ですが、韓国といえば道徳がきびしい国というイメージだったのですが、こんな絵本が出版されているのですね。カラッとした楽しい絵本です。

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カエルの季節

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「たんぼのカエルのだいへんしん」
内山りゅう 写真・文
ポプラ社 本体1200円



 桜吹雪の昨日、今日、もう若葉がではじめました。早いところでは田に水が入ります。すぐにおたまじゃくしが泳ぎだして、やがてカエルの大合唱です。
 このシリーズに新しく加わったのはカエルの写真絵本です。最近はめっきりカエルを見なくなりました。近くに田がないからでしようか。
 おたまじゃくしがカエルになるのは実は知っているようで、あらためてこの本をみると驚くことがあります。たまごがこんなにいろいろあることや、からだのみぎがわがでっぱってきて、みぎまえあしがでてくる写真、はんたいがわのえらあなから、ひだりまえあしがでてくる写真、こんなことは知らなかった、あらためてしっかり見ると不思議です。そして、いろいろのおたまじゃくしはいろいろのカエルに変身、成長していきます。
 カエルのあのヌルヌル感が嫌だという人もいますが、私はあまり気になりません。カエルの目がかわいくて好きです。

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パワーのある絵本「オルガ」

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「オルガ」
ストロングボーイTシャツのはなし
イリヤ・グリーン作
ときありえ訳
講談社 本体1200円

真っ赤な色の表紙に子どもがひとりりきみかえっています。オルガです。オルガは元気な女の子です。その秘密はオルガの着ているシャツ「ストロングボーイTシャツ」、このTシャツを着ると力もりもり”このシャツを着ている人は強いのだからみんないうことをきくのよ!”だってこのTシャツは一枚しかない強くなるTシャツ、みんなはしぶしぶ言うことを聞きます。けれどそれはウソとわかります。アイスクリームを買った子は景品にもらえるからです。みんながもらってきます。しかたがないので、このTシャツを着ていない子に命令することにします。でも小鳥だけです、Tシャツをもっていないのは。てんでんに小鳥に命令して大混乱。だれだって命令はしたいけれど、されたくないのは当然です。
 ともかくおかしくて、なんども笑ってしまいました。笑い事ではありませんよ、まるで誰かさんのことみたいですが、やっぱり最後のオチでも大笑い。子どもたちの表情がとってもいいのです。(小鳥の”ぴゃ〜だ、ぴゃ〜だ!”もいいですね。それこそ、このさい政治家にみんなで言いましょうか。
”ぴゃ〜だ、ぴゃ〜だ!こんな政治はたくさんだ!”これはおとな読みでした。


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マンガ「暁星記」

壮大な失敗作(?)マンガ『暁星記』

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 菅原雅雪の『暁星記』(講談社モーニングコミックス)が8巻で完結しました。99年から08年まで9年がかりです。暁星は、明けの明星の事だそうです。マンガは以下の文章で始まります『白く輝く花のように天蓋を覆う鏡の太陽…その口から大量の水を吐き続ける岩の巨人…樹高千メートルを越す巨大な森の上空にそびえ立つ風船蔓は、今も大気を浄化し続けています…ここはかって金星と呼ばれた世界…数十億年もの間灼熱地獄だったこの惑星を、人類はたった3世紀で造り変えてしまいました…しかしその後の1万年の歳月とこの惑星の圧倒的な自然は、取り残された人間たちから、かっての叡智を奪い去るに十分なほど、過酷だったのです』
 生き残った人間たちは、この森の樹上・樹冠に虫の様に登って暮らしています。いや普通の大きさの人間なのですが、樹も虫も大きすぎるのです。なにしろ樹の枝の上を、人間が街道がわりに行き交い、虫を大型獣として狩るのです(もちろん普通の大きさの昆虫もいますが)樹の幹を、東四が一、南四が一、のように四区分し、それぞれの区分の枝々に人間の村々があるが、その幹自体が、樹の枝の1本にすぎなかったという、とてつもない大きな樹々の森なのです。虫やリスと違い、人間には木登り用の爪は無いのですから、街道の枝を踏みはずせば即、奈落に落ちます(もっとも、地獄まで落ちる前に、どこかの枝に引っ掛かるのでしょうが)…という立体的な、ビジュアル向きの世界です。        

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櫻いろいろ

千葉ではどこもここも櫻が満開です。気温が低い日が続いたので一気に春爛漫になりました。
身じかなところの櫻です。(クリックすると画面が大きくなります。)

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いつもこの木の下を通る千葉高校の櫻です。枝が私の顔の位置にあるので花の匂いもわかります。

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勉強会に行く途中の道の側に一本風に揺れていました。作草部町は少し入ると自然が残っています。

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近くの千葉寺には櫻の木がたくさんあり、花霞です。このお寺の大銀杏には小さな拳のような芽が出始めました。


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 大原の天徳寺の櫻です。夫はここに眠っています。一面たんぽぽとすみれが咲いていてウグイスが、まあ!じょうずに鳴いていました。やまぼうしの芽は少し柔らかくなっていました。お寺の櫻は古木が多く、山桜も見えました。桜葬の櫻はまだ若い木が多いのですが、樹木葬の樹々はおもいおもいに春になっていました。大原は田にもう水が入り、空には気の早い鯉が泳いでいました。杉の木が多いので、山桜はあまり見られないのですが、各家に櫻の花と並んで夏みかんでしょうか、橙色の実が陽に輝いていました。ちょっと不思議な春の風景です。


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ぺにろいやるのおにたいじ

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「ぺにろいやるのおにたいじ」
ジョーダン=文
吉田甲子太郎=訳
山中春雄=絵
福音館書店 本体800円

 ある国の山の上にお城があります。山の途中には鬼のお城があって、鬼は上のお城に行く人たちを脅しこわがらせます。王子が鬼を退治しようと馬に乗って元気に出かけますが、出て来た鬼は王子と馬をつかんで頭をぐりぐりすりあわせます。すると王子も馬も小さくなってしまいます。お城に逃げ帰った王子も馬もしばらくは小さいままでした。戦ってみたけれど鬼にかないません。皆が困っていると、お城の小さい男の子ぺにろいやるが鬼に引っ越しをしてもらうように話して来るとでかけます。持って行ったのはいしけりだまとたことたいこだけです。さあ、こんなことで鬼退治ができるでしょうか。
 物語は鬼退治にはなっていません。絵もしっかりと描かれていて動きがあるのに、鬼退治とはほど遠く静かな雰囲気があります。。私がこの絵本を初めて見たのはいつ頃だったかちょっと思い出せません。1957年4月に月刊誌「こどものとも」ででた絵本です。心に残った絵本、記憶にはしっかりとありテキストや絵に違和感はありませんでした。いま、また読み直してみると文も絵もとても不思議な雰囲気をもっています。どうしてか考えてみたら、思い当たったのは私自身がおとな?というか歳をとったからだと気がつきました。鬼退治にいくのにおもちゃをもっていく。だいいち、鬼を退治したのは王子でもなければ、ぺにろいやるでもありません。最後の場面は鬼も男の子ぺにろいやるもかわいいおもちゃのお人形のようになって、鬼のお城の後にあらわれた大きな木の下のテント小屋で仲良く遊んでいる、というおしまいの仕方です。これはこどもの想像の世界です。なかなかおとなにはわかりにくい、なんとも不思議なそれでいて心に残る絵本です。


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ひみつのカレーライス

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「ひみつのカレーライス」
井上荒野 作
田中清代 絵
アリス館 本体1400円



 フミオの家ではみんなカレーライスが大好きです。ある日食べているとフミオの口の中から小さなものがでてきました。なんでしょうか?おとうさんが調べてみると「カレーのたね」ということです。庭に埋めてみました。ただ埋めただけではだめなのです。本に書いてあるとおりにうたを唄いながら踊ります。”カレースキスキ、カレーノタネガ”とこんなふうに。すると芽がでてカレーライスの木が育ちました。そして、カレーの実とライスの実がたくさんなりました。
 この画家の絵はとてもエネルギーのあるタッチです。おいしそうなカレーライス、しかも大盛りです。ところがちょっと不思議なことにフミオのお母さんは着物をきています。お母さんだけでなくお父さんまで着物姿、二人とも下駄を履いています。家並みもみんなすこしばかり古いのです。高度成長前の日本の風景です。そう!その頃カレーライスはおおごちそうだったのです。ラーメンとならんで日本人の国民食といっても良いですね。画家の絵がいきいきとしています。
 そして、みんなですっかり食べたはずなのに、あれっ?!不思議な物語です。

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ファーディのはる

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「ファーディのはる」
ジュリア・ローリンソンさく
ティファニー・ビークえ
木坂涼やく
理論社 本体1400円


 あわてん坊ファーディのシリーズ春の巻です。ファーディは春の森を元気に歩いて行きます。でも、空から白いものが降ってきました。”ゆき?”あわてて友だちに伝えます。また、ねむり直しでしようか。みんなで森にいってみると、”な〜んだ、きれいだね!”雪ではなくて・・・。黄色が鮮やかに春色です。動物たちのはずむようなうれしさが画面いっぱいにひろがっています。
 桜が満開に近く、夕方から風がでてきたので心騒ぎます。気温も下がって来たので、週の初めの入学式まで桜はもつでしょうか。ここ近年咲くのが早くて入学式にはしっかり葉桜になってしまいます。それはそれで緑がきれいですが。(外国みたいに9月入学という声もありますが、私はやっぱり春がいい、桜の下をくぐって入学がいいですね。)
 小学校入学の一年生は嬉しいような、心配なようなきっとドキドキしているにちがいありません。

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言葉の力「風の靴」

朽木さんの文は美しい、イメージが豊かにふくらみます。ていねいにきちんと書かれているから。でも、それだけでなく朽木さんご自身がとても豊かなものをもっていらっしゃる、たくさんの本を、とくに詩を読んでいらっしゃるからだとお話をお聞きして思いました。そして、柏村さんの絵がまたいいです。キラキラした希望に満ちた海です。
このことについては4月1日のブログ、3月29日のブログにくわしく載せてあります。特に3月29日は朽木さんを囲んでお話を聞きました。その感想も載せてあります。

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まゆとおおきなケーキ

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「まゆとおおきなケーキ」
やまんばのむすめ まゆのおはなし
こどものとも 4月号
富安陽子 文
降矢なな 絵
福音館書店 本体390円

 春のパーティーをひらきます。もちろん、やまんばかあさんとそのむすめのまゆがひらくパーティーです。山じゅうの鳥たちがお知らせをくばってくれました。まゆは世界一大きい春のケーキを作ることにしました。特製のケーキの材料をよくかきまぜて、できたタネはおひさまの光でこんがり焼けて、大きくふくらむはずです。ところが、おひさまの光が暗く陰ってきます。さぁーたいへん!まゆはきばちを持ち上げておひさまの光のあたるところまで走ります。
 おなじみ力持ちで元気なまゆの大活躍です。子どもたちはこのシリーズが大好きです。まゆが女の子に描かれていても、男の子も大好きです。元気で食べること=おいしそうなものがでてきて、途中トラブルがありますが、最後にはみんなで食べています。とても、みんな嬉しそうです。これは「ぐりとぐら」にも共通しているモチーフです。富安さんの文はリズムがあり、物語はおおらかです。そして、降矢さんの絵もまた、エネルギーにあふれていて、絵に勢いがあります。この二つは子どもの絵本の基本です。どれもあきずに子どもたちは読んでくれます。もちろん、あたかも自分がまゆになっているように思うのでしょうが。それだけでなく、もしかしたら、各ページに描かれているこぎつねを、自分のことのようにおもうのかもしれません。

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風の靴

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「風の靴」
作・朽木祥
画・柏村勲(カバー・見返し)
  服部華奈子(挿絵)
講談社 本体1600円

 3月29日に朽木さんのお話を聞く会を予定していたので、この新刊の刊行に気をもみました。しかも取次ぎの決算とぶつかってしまい、会に参加した人たちに読んでいただくのは間に合いませんでした。
私一人がともかく内容を知りたいとねばって直接おくっていただきました。
 柏村勲さんの画はさすがです。空と海と混じりあってキラキラと輝いている湘南地方の海、裏の見返しには相模湾をヨットが走っています。私は日本海の近くで幼少期を過ごしたのですが、太平洋の海はちがった輝きがあります。その絵がこの物語のはじまりです。
 海生は私立の中学受験に失敗します。兄は秀才、勉強だけでなく運動も抜群です。両親、とくに母親は海生の気持ちがわからず嫌な気持ちをずっと引きずったまま、しかも海生の良き理解者だったおじいちゃんが急死してしまいます。海生の気持ちはプツンと切れてしまいます。家出をしよう!おじいちゃんの別荘まで、おじいちゃんの残していたヨットに乗って。一緒に航海するのは親友の田明と見つけられてしまい乗せることになった田明の妹、そして、犬一ぴき、途中で大学生を助けて江ノ島から三浦岬の先端まで航海をする冒険物語です。もちろん海生は小学生時代ですがヨットの操縦の仕方は知っています。
 朽木さんの他の作品のようにとても自然描写が的確でていねいで美しい。海の上をタイトルのように風の靴を履いて進んで行くヨットと情景が、船のことを全然知らない私にもイメージがわきあがります。静かな文体のなかにはたくさんの詩や外国の本からの引用もあります。でも、読んでいて胸がワクワクするのはこの海とヨットについての確かな表現力だとおもいます。(なんと船舶免許をもっていらっしゃるそうで、びっくりしました。)
 ただちょっぴり残念だったのは話が盛りだくさんすぎて、つい朽木さんには続編がありますか?とお聞きしてしまいました。最後の秀才の兄が船酔いをするからヨットはだめ、という落語のようなオチはいらないのではないだろうか、おじいちゃんと父親との確執や遺言したものを見つけるためのところなど、中途半端に思えました。これだけの冒険を描ききる日本の児童文学の作家はなかなかないので、たんなる冒険小説としても充分ではないか感じました。でも、きっと朽木さんはそれだけでなく、物語をとおして訴えたいものがあるのでしょうね。
 この夏休み、男の子たちを中心に薦めてみたい一冊の本です。

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