ベルおばさんが消えた朝
「ベルおばさんが消えた朝」
ルース・ホワイト作
光野多恵子・訳
徳間書店 本体1500円
50年代のアメリカの小さな町、12歳のジプシーの家と同じ敷地にあるおじいちゃんの家にいとこウッドローが引き取られて引越して来ました。ウッドローも12歳、母親同士が姉妹だけれど、二人の育った家はとても対象的です。ウッドローの家はジプシーの家から離れた山の際にあり、父親は貧しい炭坑夫、母親はある朝起きたままの姿でいなくなってしまいます。ようとして行方がわからないまま、父親はアルコールにおぼれウッドローは母親の姉にあたるジプシーの家に引き取られます。一方ジプシーの家はお金持ちで、母親もジプシーも大変な美人、なにひとつ不自由がないようですが、ジプシーの父親はすでに死んでいない、義理の父親にはなかなか心を開くことができません。そして、時々みる悪夢に苦しめられています。
ウッドローは斜視です。本が好きで母親に良くお話を語ってもらっていました。そのためかウッドローは目に見えない世界を感じたり想像することができるといいます。
ジプシーもウッドローも心に傷をもっていて、それには、二人のみならず母親同士から続いてきた確執がありました。二人はその物語を確かめながらお互いの絆を強くしていきます。
ジプシーの義理の父親はさりげなく、けれどしっかりと描かれています。”きみがきみらしく生きていれば、いつだってだれよりも輝いていられるはずだ。”とはげます言葉(P192)それと、とてもきれいな声で歌う眼球のない浮浪者のようなペニーさんが、見かけだけにまどわされず、見えないだけにほんとうをみていることを知るなかで、ジプシーもウッドローもパパやベルおばさんが二人を捨てたのではない、”ただ、苦しみが愛より大きかっただけなのだ”(P262)と思えるようになります。ジプシーが死んだパパが大切にした長い髪を切る場面、ウッドローが空を見上げながら母親と語りあったことを話す場面など、二人の気持ちが良く描かれています。
とかく、幼い時のトラウマから逃れられない、一生癒えない心の傷とか、現代も事件があったりするとよくいわれます。でも、こういう物語を読むと、その中にも人が人らしく生きていこうとする力、魂の力があり、それに信頼していくことが最善のことだ、それが物語の力なのだとおもいます。
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