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2008年8月 9日 (土)

宮崎駿「折り返し点1997〜2008」      

宮崎駿「折り返し点1997〜2008」をめぐって 1

 宮崎駿の自己批判の面白さ 
0223940

「折り返し点」
1997〜2008
宮崎駿
岩波書店 本体2700円



 
 この本は、宮崎駿の文章や対談・インタビュー等をまとめたもので、『出発点1979~1996』(徳間書店)の続編になります。 51頁で佐藤忠男が「宮崎さんは非常に繰り返し自己批判をなさる方でね(笑)」と言っています。
 この本を見て思うのは、宮崎駿の企画書の格調の高さです。出資を促すためのものだから、格調高く、情熱的に謳いあげるのは当然ですが、映画のねらいがよくわかるいい文章です。ただ映画は、ねらいどおりには出来ないのがつらいとこですが。
 映画のタイトルを「大見出し」とし、その製作期間中の文章をまとめた形となっています。『ハウルの動く城』の製作期間中の文章だけでも 110頁入れてますが、奇妙なことに、その中に『ハウル~』に関する発言は一切ありません。この原作付きの映画は、私も失敗だと思いますが、本人も何らかの理由で入れたくなかったのでしょう。なにしろ『ハウル~』の企画書も入ってないのです。『崖の上のポニョ』の企画書さえ入っているのに。編集上の細かいことを言うと『シネ・フロント』の『もののけ姫』のインタビューが再掲されてます。雑誌には図版が載ってたと思うのですが、この本にはありません。ですから36頁の「このシーン」がいくら読んでもわかりません。
 それはさておき、宮崎駿は前から「日本人のマンガ的・アニメ的思考は世界では通用しない」と言っていました。この本ではそれがだいぶ詳しく述べられています。例えば 139頁「マンガという形で世界を切り取る時に、非常に普遍性を失ってしまう。つまり時間と空間を際限なくデフォルメできるものですから、どんどん現実世界を見なくなる。一部の感覚や心理を肥大化させて描くという傾向に入ってきているので、むしろそういうマンガに慣れてしまった目をもう一回、限定された時間や空間の中に戻す作業をやらないといけない」83頁「それは、日本人が現実認識をする時のリアリズムの欠如につながっていると思うんです。人間同士が葛藤しなきゃいけない。むき出しでぶつかり合わなければいけない場所においても、どこかリアリズムに欠けている」        
                       つづく
   (高橋峰夫)               

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コメント

ハウルに関する文章がないのは、細田監督降板というゴタゴタがあったからでは。

MISORAさんへ
 そのようですね。あと考えられるのは、原作者ともめた時ですが、ジョーンズは寛容だったようで、『ゲド』とは違いますね。そうすると、ご指摘のように細田守監督の件でしょう。
 ただ宮崎監督も、若い頃さんざんはしごを外されたわけですから、逆の立場に立つようになったという事でしょう。なにしろ利害関係者がごまんといて、億単位の金を動かすんですから、制作の裏側はドロドロしているでしょう。そこでゴリ押ししてでも、企画を通して映画を1本仕上げるのは並大抵ではないでしょう。ジブリでもボツになる企画のほうが多いんですから。 ただ作品の善し悪しとは別ですから、あまり詮索しないようにしてます。ブログで触れたのは、本として画竜点睛を欠くというか、本の資料価値が下がるという事です。『魔女の宅急便』も監督交替があったようですが、それでも企画書は『出発点』に載っています。せめて企画書は載せてほしかった。
 なお細田守監督の『時をかける少女』(角川映画06年)(私も DVDを買いました)が「日本アカデミー賞」と「シッチェス・カタロニア国際映画祭」で受賞してよかったですね。
            高橋峰夫

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