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2008年6月 4日 (水)

幼い子どもに昔話を語るということ

 おはなしに向く本〜『よみたい ききたい むかしばなし』
  (1)(2)中川李枝子(のら書店)〜をめぐって

1.本で覚える昔話
「昔話とは何か」...と、こう書き出しても、むずかしい事は私にはわかりません。「むかしむかし・・・」と年寄りが、家族や子供たちに語り継いだ口誦文化、といったイメージでしょうか。
 さて、昔話を子供に話している私達でも、耳から覚えた昔話は、いくらもありません。みな本で覚えます。いい本もいっぱいありますが、ひとつ問題があります。覚える本によって「語り口」が違うのです。私はなるべく本のとおりにやります。聞き手もいろんな語り口が楽しめますが、私が話すのですから、私の語り口に統一したい気もします。
 2.本と語り口
本にも二通りあるようです。1話ごとに語り口がちがうのは、研究者の採話した本に多い。また文学者の再話した本には、語り口の統一されたのがあります。松谷みよ子、木下順二などに多いようです。本の作者としては当然だと思います、その本からいくつか覚えるのですから、私の語り口に直してもいいと思いますが。
 3.口誦と文字
さて最初に「口誦文化」と書きました。しかし、その民族が文字を知ってからは、純粋な口誦は無理です。記録される価値があると思われたものは、昔話も史実も文字になるからです。奇談・怪談もそうです。しかも文字は「書き言葉」で書かれてるので、本を読んだ人はそれを、自分の「話し言葉」に直して人に話します。
 「話し言葉」のまま、文章がつづられる様になってはじめて、「語り口」の採話も出来たのです。それは画期的な事です。研究も飛躍的に進んだでしょう。(話し言葉と書き言葉の乖離や、完全な言文一致の問題は、むずかしいのでやめます)
 4.研究のための語り口と、変えられてきた語り口
でも、昔話を本から覚える人は、江戸時代にもいたでしょう。口誦されてきたとは限りませんし、語り口も話し手の一代かもしれません。我々の知っている『桃太郎』だって『浦島太郎』だって、教科書にのっていたものですし、『聴耳草紙』にのっている『大工と鬼六』だって、外国の昔話です。私達は、目の前の聞き手を楽しませるのが目的ですから、語り口は自由でいいと思います。(なおわかると思いますが、「語り口」は「口調」より広い意味で使ってます)

 5.『よみたい ききたい むかしばなし』

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 しっかり中川李枝子の語り口の本です。では具体的に、その理由を見てみましょう。と言っても、私が分析する必要はありません。著者が「あとがき」で余す所なく述べているからです。
 著者は、父親の昔話を聞いて育ったそうです。4つしかないレパートリーでも、自己流でも、いつもおもしろおかしく、語り手は陽気で、語り口には独特のリズムがあったそうです。戦時中で、子どもの本もテレビもない時代とはいえ、昔話で茶の間に、笑い声があふれたのは、幸せな体験でしょう「(昔は、)昔といっても戦争前のことで、お菓子や、きれいなものがたくさんあったんですってーと興奮しました」という時代でもです。小2の時、岩波文庫の『グリム童話集』が好きで、覚えて、友達にお話ししていたそうです。
 6.子どもが喜ぶお話
「子どもが喜ぶのは、まずお話の入り口がきちんとして、まごつかないで入っていかれること、お話が目に見えるように具体的に書かれていること、次にどうなるか、何が起こるかと期待させること、リズムとユーモアも欠かせません」まさにこれが、この本の目的であり持ち味なのです。とんとんと小気味よく進むストーリー。運がいい話と言われても、中川節と言われても気にしません。でも著者も、昔話コンプレックスがあったそうです。幸せな体験といっても、少ない、昔話とは無縁の生活とも言えます。
 7.保育園へ行く頃の幼い子のために
その著者があえて書いた、保育園へ行く頃の幼いの子のための昔話です。本来、昔話は小さい子向けには出来てません。小さい子向けのテキストは少ない、手を入れないと使えない。そんな時、名だたるストーリー・テラーが編んでくれた昔話集です。私はこれで、小さい子向けのレパートリーが一気に増えました。小学生になれば、もっと違う語り口で話してやれます。方言でも、わからない言葉があっても大丈夫です。方言を勝手にかえたっていいんです。私は福島弁しかできません。何をやっても結局福島弁になります。それでも標準語より味が出ます。聞き手に合わせて、使い分けられます。その前に、小さい子の望んでいる昔話をしてあげたい。
 「たとえ恐ろしい目にあおうとも、決して泣いたり逃げたりするものですか、主人公は元気いっぱい、勇気りんりん、気はやさしくて力持ち、いつだって強いのですから」
これが、小さい子の望んでいるお話です。   
(子どもたちにお話を語る者として 高橋峰夫)

この本は1巻目が2007年12月9日、2巻目は3月8日にこのブログで紹介しています。

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