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2007年4月19日 (木)

4月のおたよりーひろや

「脈絡のない感想」

 この前人生で3度目となるカンボジアに行きました。今回は特にこれ、という理由や目的があったわけではなく、「国境なき子どもたち」のレポーター仲間のナツキさんに誘われ、断る理由もなかったので了承したのです。それでも、1度目とも2度目とも違うカンボジアが見えて、それはなかなか嫌いでない感覚でした。
 カンボジアでは、「若者の家」を訪問したり、自転車でスコールの中を走ったりしましたが、考えていたのは普段日本で考えているようなことでした。旅をするのにあたって何か自分に課題を課す、というのがぼくにはどうにも好きになれなくて、あくまで自分の人生の一部、日常の延長線上としての旅がしたいと常々思っています。しかしそれは飛行機によって海外に手軽に行けるようになった、という類の意味での「日常の延長線上」ではありません。あくまで自分の物事への見方という、スタティックな部分を常にもっていたいという願い、或いはエゴです。だから勿論カンボジアで、普段とは違う特別に感じた諸々はあります。ただそれに対する自分の思考というのは、特に日本でのそれと変わらなかったということです。
 人々は往々にして異邦人の私たちに優しく、子どもたちは無性に元気溌剌でした。シエムリアップではトゥクトゥク(3輪車の後ろに荷台をつけたタクシー的な乗り物)の運賃を吹っかけられたりしましたが、『どの国にも良い人も悪い人も居る』という常識的な観念を観念としてでなく、経験として実感できたのはある意味幸運なことなのかもしれませんでした。それに対して「金がいかに人をだめにするか、よくわかった」という風なことを同行者の人が言っていましたが、しかしぼくは金、物質的な諸々の豊かさが欠乏している状態を『精神的に豊か』というキャッチフレーズの元に、手放しで賞賛することはできないとも思います。ぼくは幼い頃から読書が好きで、多分に本の内容から影響を受けた部分があります。本の影響を受けて形作られたぼくの思考は、ぼくにとっての1つの精神的財産であり「精神的な豊かさ」と言うことも出来るでしょう。しかしその精神的財産を形作った本、それらの購入を支えるのは物質的な豊かさです。物質的な豊かさと精神的な豊かさというのは区別されてしまいがちですが、或る程度のレベルまでは――少なくともぼくにとって――物質的な豊かさが精神的な豊かさを支えていることも事実なのです。勿論、ぼくの思考が「豊かさ」などと呼べる代物であるかは、わかりませんが。
 ぼくが「国境なき子どもたち」に関わらせていただいて行っている諸々など、所詮は偽善です。最初のカンボジアで見た過酷な現状、その断片がぼくの頭から離れなくて、そしてそれでも尚、知らんぷりを決め込むのは心が辛すぎて。その心の辛さを紛らわすために行っている諸々です。しかしエゴでそれをして何故悪いのでしょう。全て物事を志向させるのは、個々人のそれをしたいという欲求、エゴであるのなら、自分本位で何が悪いのでしょう。ボランティアという単語の語源は「自由意志」であると聞いたことがあります。個人のエゴが他者への眼差しに導かれるとき、奉仕の気持ちとエゴイステッィクな気持ちが重なるとき、それは1つの「希望」と呼んでいいのだと、ぼくは思うのです。
  いがらしひろや

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