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2007年3月 7日 (水)

「環境問題のウソ」を読む

目からウロコの環境読本〜私もダマされていた?
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「環境問題のウソ」
ーちくまプリマー新書
池田清彦・著
筑摩書房

  池田清彦の『環境問題のウソ』は去年出た本ですが、「ちくまプリマー新書」のベストセレクションで、店頭に並んでいます。むずかしい漢字には、仮名が振ってあるし、ヤングアダルト向けの新書ですが、著者の口が悪いというか、言いたい事をズバズバ書いています。そして著者の言いたい事は「あとがき」を見ればわかります。「…マスコミに流される情報は完全に統制されている点では北朝鮮とさして変わりはない。統制はより巧妙にソフトになっているので多くの人はその事に気づかないだけだ。…環境問題に関する情報はまさにその典型であろう。…ここでは、正義の物語りと利権が結び付くと…あれよあれよという間にウソも「本当」になることだけを指摘しておきたい。」この本では、4つの環境問題が取り上げられており、著者は生物学者なので、外来種問題と自然保護問題は自説を述べ、地球温暖化問題とダイオキシン問題は、他者の意見を参考にしたそうです。
 1、地球温暖化問題のウソとホント
 ここでの著者の指摘は簡潔です。地球の温度は、地球に入ってくるエネルギー(太陽光)と、地球から出ていくエネルギー(放射熱)の差で決まります。太陽光エネルギーの増減を無視して、温室効果ガスの増減だけを見ても、温暖化か寒冷化かはわからないと指摘します。結論として、京都議定書は破棄せよと言います。また著者は「アメリカは賢くも議定書から離脱した」と言いますが、私はイラク戦争のためだと思います。戦争しながら、炭酸ガスが減らせる訳がありません。議定書から離脱した時点で、ブッシュはイラク攻撃を決めていたのです。
 2、ダイオキシン問題のウソとホント
 ここでは著者は、渡辺正・林俊郎の『ダイオキシン』(日本評論社)を参考にしています。専門家同士の論争の中から、優れた本を探し出すにはコツがいります。相手の本の矛盾点をどう的確に突くか、これによって学説も進歩するのです。私は前に『ダイオキシンの本』という文章で、長山淳哉『しのびよるダイオキシン汚染』(講談社ブルーバックス)と宮田秀明『ダイオキシン』(岩波新書)を紹介しました。渡辺正・林俊郎は、この2冊を徹底的に批判しています。
 ダイオキシンが猛毒なのは確かです。それらを踏まえた上で、池田清彦はこう書いています「毒というのは摂取量が問題なのであって、物質そのものの毒性だけを云々してもしようがない。アルコールの半致死量はヒトで6〜8g/kgと言われている。ダイオキシンの1千万分の1も、毒性は弱いけれども、急性中毒で死ぬ人が時々いる。私は毎日2〜3合ほどの酒を飲む。これは半致死量の7分の1から5分の1の量だ。ダイオキシンは一生かかっても半致死量の十分の1も摂取しないことを思えば、ダイオキシンで大騒ぎしたのは、やっぱり誰かの陰謀じゃないかと思えてくるよね。」
 ダイオキシンの体内摂取量の95%位は食品からで、その食品の75%位は魚だといわれています。その食品の汚染源も、農薬だといわれています。過去に使われた、PCPやCNPといった水田除草剤です。その水田の残留ダイオキシンは、川から海へ流出し、魚に含まれたものが、私たちの体に入るわけです。つまりダイオキシン問題の原因は焼却炉ではないのです。
  しかしそもそも、日本のダイオキシン放出規制は遅れていたのです。規制が始まったのは、WHOの耐容1日摂取量の勧告が厳しくなったからです。ここでやっと、それまで野放しになっていた小型焼却炉の、ダイオキシン放出規制が始まったのです。著者は、ダイオキシン法を廃止せよと書いてますが、用務員の私は「ダイオキシン法は神風だ」と組合で書いたことがあります。組合の焼却炉問題は、目に見えないダイオキシン以前の、煙と灰の問題でした。塩ビが燃えてダイオキシンで苦しむ前に、塩素ガスで苦しんでいたのです。しかし小型焼却炉の規制基準は、なにもありませんでした。煙も灰も有毒ガスも出し放題だったのです。扱う人を守る法律は、なにもありませんでした。いくら県に頼んでも、煙と灰を除去する小型焼却炉は、高価なため買えませんでした。そこへの、ダイオキシン法はまさに「神風」でした。目に見えないダイオキシンを除去するには、まず、目に見える煙と灰を除去しなければなりません。これでハイテク小型焼却炉が買えると、小躍りしましたが、それどころか「神風」は、焼却炉そのものを吹き飛ばしました。「焼却灰の掻き出し作業」の問題も吹き飛ばしました。(埋まった灰はそのままですが) 「なあんだ」です。私たち組合の訴えは、ムダだったのです。結局「大企業の陰謀」様サマです。「目に見えない」ダイオキシン様サマです。著者は「塩ビを燃やすと大量の塩化水素が生じ公害のもとだから、塩ビはなるべく燃やさない方がよいが、『これはダイオキシンとは関係ない』。」と断っているのですが。私が前に書いた『ダイオキシンの本』という文章は、アジビラだったかもしれません。言い訳を書かせていただきました。
 3、外来種問題のウソとホント
 重要な問題を提起していますが、紹介するスペースがありません。中国原産のトキを日本で繁殖させようという計画の、矛盾点を例示しています。
 4、自然保護のウソとホント
 温暖化問題はウソだ、ダイオキシン問題はウソだ、外来種問題はウソだ、と言っている著者の言う、自然保護とは何か。著者が原告となっている、高尾山トンネル工事差し止め訴訟を例示しています。
 『曇りなきまなこで見定め決める』ことの、なんとむずかしいことか。ぜひ、若い人に読んでもらいたい。著者に賛同するかどうかは、その次です。
  高橋峰夫


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コメント

こんにちは。
新書も最近たくさん出版されて選ぶのが大変になってきました。近くの書店には置いてありませんでしたが、ぜひ読ませていただこうと思います。ご連絡が遅れましたが、記事にリンクさせていただきました。

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