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2007年2月 1日 (木)

物語のはじまり

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「物語のはじまり」
短歌でつづる日常
松村由利子
中央公論社 本体1800円




会留府が今の場所に来て間もない頃、若い新聞記者が良く来店した。駆け出しの新人記者は県警や県庁へ来ることからはじまる。最初に来た記者はデスクに警察まわりばかりしていてはだめ、もっと市民のなかに入らなければといわれ、また、読書することをしっかりいわれたとのことだった。そのA新聞社の千葉支局のデスクはやはり駆け出しの時、家庭文庫の人たちと接することがあったので、読書のなかに児童書が入っていて、それも会留府に来るきっかけになったようだった。彼は“子どもの時野球少年だったからあんまり本を読まなかったなぁ”。その時同じくらいに会留府にきたM新聞社の駆け出し記者がこの本の著者松村さんだった。松村さんは子どもの頃児童書をたくさん読んでいて、良く知っていたし、とくにファンタジーの分野で話が合った。そののち、みんな他所に配属され、だんだん会うこともなくなってしまった。それでも松村さんは結婚し、子どもができ、東京の生活家庭部や科学部の方へいかれたが、そのまま千葉に住んでいらっしゃったから時々消息を聞く機会があった。離婚して、理由はわからないが、子どもと離れてくらしていること、短歌を詠んで本を出したことなど。けれど、私の方が両親の遠距離介護と続けての亡き後のことや店のことで手一杯になり、松村さんの本をゆっくり読むこともなくそのまま過ぎてしまった。
この本は松村さんの生活そのもの、そのなかから読んできた数々の短歌をとおしての息づかいが感じられる。偶然ここしばらく「寺山修司」の短歌と俳句を読みなおしていたところだった。俳句は写真のように一瞬の時を短い言葉で切り取るところがある。たしかに短歌には松村さんが書かれているように物語を内包する力(おわりにから)があるのにちがいない。ただ私自身でいえば生きていくことで思い迷った時には、長い物語をすこしづつ読みながら旅をし、いきつもどりつしながら、内省を深めたいとおもう。短歌や詩はその旅をする心を奮い立たせるように思う。
それにしても生きていくことには物語があり、必要とする。本を読むことはその物語を生きることでもある。           


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コメント

私もこの本を読みました。

ページを繰るごとに、平凡な毎日が、それこそ「物語」になるのを感じました。こんな自分でも、「主人公」になれるんだなあ、と心から思えるようになる本でした。

翻訳家の清水真砂子さんも「ゲド戦記」や「ピアスの作品」など、物語るということについて書かれています。実際の人生の中では人はひとつの生を物語ることしかできませんが、文学の力はたくさんの物語を語ってくれます。松村さんが一冊の本の中にたくさんの物語をすくいとって語り部になり、私たちに語ってくださったのですね。

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