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2006年10月 4日 (水)

「見習い物語」を読むー高橋

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「見習い物語 上・下」
レオン・ガーフィールド作
斉藤健一・訳
岩波少年文庫 本体各720円




 奇妙な味、名短編の連作
  レオン・ガーフィールドの『見習い物語』上・下(岩波少年文庫)は、まず挿絵がいい。冒頭には18世紀イギリス(ロンドン)の見習い(徒弟制度)の説明があります。当時は見習い期間は、7年間と決まっていたそうです。日本は江戸時代中期にあたりますが、日本の丁稚奉公を小説にするとしたら、歴史人情物でしょうか。 この『見習い物語』は、それとはテイストが違います。それよりドライと言うか、とにかく聖人君子は出てきません。見習いの子供たちも、素行不良が大半です。それでいて、どの話も短編小説として完結し、登場人物の生き方にも、親近感を持たされます。
 挿絵も当時のロンドンの雰囲気をよくあらわしています。と思って、画家を見たら、岩淵慶造でした。太田大八もイギリス人と見まがう挿絵を描きますが、岩淵の、何気ない挿絵も洒落ています。  登場人物が子供たちですから、子供向けの作品ということになるのでしょうが、はたして子供たちが読んでくれるかどうか。働いている子らが大人びていると言うよりも、作者の描き方が、斜めに構えているというか、凝った繊細な構成になっています。むしろ大人の方が楽しめる、と思って訳者あとがきを見たら、もともと福武書店から出た本だそうです。いかにも福武や徳間好みの作品です。
見習いの主人公が点灯夫、鏡細工師、産婆、質屋と続き、前の短編の主人公が、次の短編のどこかに登場する作りになっています。 好き嫌いはあるでしょうが、質屋2人が主人公の「外套」や、鳥かご作りとかつら商人「ロージー・スターリング」、印刷工と本屋の「トム・ティトマーシュの悪魔」、ペンキ屋と絹物商の「きたないやつ」、人形店とパイ店の「敵」などは傑作です。 どの短編も、当時のロンドンの風俗や見習い仕事が、詳細に書き込まれ、それだけでも面白いのですが、プラス人生の機微というか、人物のやりとりが一筋縄ではいきません。訳者が「あとがき」で言っているように「子どもたちは小さな大人のように扱われていました。ですから、そのような時代を生きている子どもたちは、酒も飲めば、けんかもするし、悪さもする、親方の金を盗みもする、とにかくたくましかったのです。」 機会を見て、子供たちに勧めたい本です。
 高橋峰夫


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