神去なあなあ日常
「神去なあなあ日常」
三浦しをん
徳間書店 本体1500円
私は林業のことはまるっきりといってもいいほど知りません。この物語の主人公平野勇気も特別希望したわけでもなかったのですが、この神去村で働くことになります。高校を卒業してからも、取りあえずなんとなく生きていこうと思っていた勇気は学校と親の思惑のまま、神去村に来てしまいました。
特にひどく逆らおうと思っていたわけでもないのですが、”まあまあ”この神去村でいうと”なあなあ”で、とまどい、ブツブツいい、とうとうとてもやってられないと思い逃げ出してしまおうとします。そんな横浜生まれ、育ちの現代の若者の一年の物語です。
木を切る、植林、育てる、林業に代々たずさわってきた人たちと暮らしがとても豊かに書かれています。一本の木を切る、どうやって、どういうように切ったら木にも人にも良いか、それだけでなく神さまにも良いか、計り知れない自然の力と共存していく知恵と経験と言葉(なあなあはいろんな意味があります)、神隠しやオオヤマヅミさんの祭り、山火事などハラハラ、ドキドキとします。ちょっぴり恋がからみ、結婚、老人、古いしきたり、かなりエンターテイメント小説としてもおもしろく、ヤングアダルト向きの骨太な小説です。それは著者の綿密な資料の裏付けがあるからでしょう。
そういえば、昔から国を支え、生活を支えてきた職業を舞台にした若い人向けの小説があまりみられません。この本を読んでいて、日本の基盤産業、そして物づくりのなかで働いている人たちの現代の物語がほとんどないに等しいのに気がつきました。個性豊かな人たちがいる、いたはずです。
この小説がきっかけになって出版されると良いのにと望みます。
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