みどりの町をつくろう

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「みどりの町をつくろう」
アランドラモンド・さく
まつむらゆりこ やく
福音館書店 本体1400円


アメリカ・カンザス州のグリーンズバーグに巨大な竜巻がおそいました。2007年5月4日のことです。その頃のグリーズバークには1400人くらいの人が住んでいました。(作者のことばより)カンザス州というと私はあの「オズの魔法使い」の物語を思い出します。あの物語も竜巻でオズは一瞬のうちにとばされてしまいます。住民の数は800人ほど、あたらしい街をめざして人びとは活動します。その新しい街、人びとは自然の恵を生かす街にしようと計画します。グリーンズバーグのグリーンというのはなんだろうと人びとは考えます。世界中から再建のためのものが集められます。物だけではありません。たくさんのボランティアの人びともかけつけました。ウォラックさんがみどりというのは自然のめぐみを活かして暮らす事だといいます。街をみどりにしよう!人びとは取り組みます。話し合いを持ちます。みどりの家、みどりの街ってどんなところでしょうか。
 わたしたちの日本も災害がいろいろのところでおこります。水害・火山・地震・・・今年の冬は北海道の方では寒波と大雪がありました。津波や地震などの自然災害ばかりではありません。なんといっても福島の原発事故がありました。この絵本では街の人びとが力をあわせて復興というか、グリーンバークの名前のような街をつくろうとします。この絵本はその実話にもとずいて描かれています。残念ながら福島の原発事故はこのようにはいっていません。事故をどう収集していったら良いかはまだわからず、混迷を深めています。それなのに経済を中心にして政府は今なお原発を再稼働しようとしています。自然と共生していくのではなく、自然のなかにはないものを人類はつくってしまいました。自然を征服するものとして捕えています。自然と共生をめざして、科学の力を使い豊かにするのにはどうしたらよいのか、この絵本はそれをわかりやすく具体的に描いています。

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わたしたちが自由になるまえ

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「わたしたちが自由になるまえ」
フーリア・アルバレス
訳/神戸万知
ゴブリン書房 本体1500円

ドミニカ共和国ってどこにあったっけ?ほとんどの人がそんな認識しかもっていないと思います。そしてかってあったことの真実をもとに書かれているとはいえ、あまり切実には思えないのが私たちの気持ちかもしれません。この物語は時代と状況はちがいますが、ドミニカ版アンネの日記のような物語といったらなんとなくわかるかもしれません。アンネの日記ではアンネは殺されましたが、この物語にでてくる主人公アニークのいとこがアメリカに渡っています。(圧政をのがれるために)作者はこのいとこと思われます。
 ドミニカでは1930年から1961年までトルヒーヨ大統領の独裁政治が続いていました。アニークは大統領を尊敬していましたがいとこたちが突然アメリカにいってしまい、それからも次々に親しい人がいなくなります。アニークは真実を知ります。そして、父たちが囚われアニークも母と乳母?も身を隠せずにはいられなくなります。物語の後半はクローゼットに隠れた生活のなかで日記を書くことがが生きていくことの支えになるアニークです。それはアンネの日記がいまなお若い人たちに読まれていると同じ、その中にはアニークの瑞々しい情感があふれているからだと思います。
 私たちは未来を考える時にやはり過去を振り返ります。それはなにも国家ということではなくとも、日常のなかで自分の生き方を思うとき、困難なことに突き当たったとき、身近な人が亡くなったりしたとき、新しい命の誕生を迎えたとき、全てにあてはまることです。
 でも、国家によって命があぶなくなるなんてありえないとおもうかもしれませんが、おこりうることです。(いまメディアでとりあげられている共謀罪などもそんな視点から考えなければならないことだとおもいます。)今はそうではないけれどあまり遠くない未来に私たちもアニークのようなことがおこるかもしれない、それは私の心配しすぎなことなのでしょうか。
 「わたしはただ日記をつけたいだけで、世界をすくいたいわけじゃないって、ママにいった」「手かふるえてしかたがないーだけど、世界の人に知ってもらうために、この記録を残したいー」アニータの日記より。12歳の少女の物語です。


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学習指導要領改訂案について

 今日の新聞に「学習指導要領改訂案」がのった。なんだか悪い夢をみているようだ。
*「生きる力を育むこと」3つの柱
 1 知識や技能」
 アクティブ・ラーニング プログラミング・カリキュラム・マネージメント
 どれも???(千葉市の公立小、中学校の図書館はまだPCがつかえません。本に貼ってあるバーコード
 は空、入力がされていません。(本屋がお金を一枚いくらとはらって貼ってありますが)
 2 思考力、判断力、表現力
 こんなに授業が盛りだくさんで時間がない子どもたち、教師も教材研究すらできないと悲鳴。そのなかで 思考力や判断力や表現力はつちかわれるのでしょうか?
 3 学びに向う力、人間性
 毎日の新聞紙上はいじめであっちもこっちも日本中、学校は決まったように頭をさげています。
 
 このなかで「生きていく力」が育まれるのでしょうか。今でも帰りが遅い子どもたちは遊ぶ時間がありません。しかも足りない時間は朝の時間とか土曜日を使うとか、こうなると虐待ですね。
 ボランティア等で学校へいっているわたしたち、もっと考えましょう。もっとNOといいましょう。思っている意見を言いましょう!

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オオカミから犬へ!人と犬がなかよしなわけ

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「オオカミから犬へ!人と犬がなかよしなわけ」
ハドソン・タルボット作・絵
真木文絵・訳
岩崎書店 本体1500円

犬好きな人集まれ!空前のネコブームだそうですが、犬好きの人あなた向けの絵本ができました。オオカミと犬は親戚、残念ながらオオカミは絶滅に近い状態です。(カナダにわずか)ニホンオオカミは絶滅したといわれています。作者は犬と人間はどうしてこんなに仲が良いのか?それで犬のはじまりについて調べたところオオカミが人間とふれあってだんだん犬へと進化して来たということがわかった(あとがきより)とのことで、それをもとにしてお話を考えたとのことです。
 オオカミと人間が出会い(この絵本では人間の子ども)仲よくなって一緒に進化したとのことです。どうやって犬になったかということが描かれています。犬も人間もひとりぼっちでは生きられないということが良くわかります。そして、犬も人も子どもたちがその力を担います。つねに未来に向って。

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とのさまがえるにはるがきた

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「とのさまがえるにはるがきた」
こどものとも年中向き3月号
小風さち さく
山口マオ え
福音館書店 本体389円


 静かな土の中でねむっていたとのさまがえるが目をさましました。なんだか外で音がします。寝過ごしたか?!そっと外をのぞいてみるとまだ真っ白です。”なぁーんだ”とのさまがえるはまた、眠ってしまいました。少したって土のなかで眠っていたものたちがもぞもぞ動き出します。”うるさいぞ””なにいっているの春だよ、春がきたよ””そんなことあるものか、おれがさっきのぞいた時はまだどこもかしこも真っ白だったぞ”でもみんな笑って外に行ってしまいました。あんまりうるさいのでようやく外にでてみると、”やや!”人間のことでいうと、とのさまがえるは2度寝をしたということですよね。2度寝の気持ちよいのはいうまでもありませんが。
 昨日我が家のアカハライモリ(くーちゃんとこーちやん)の水槽の水をかえました。我が家のイモリは冬眠しませんが寒い時期はじっとしています。(ひょんなことから飼って12年、かえると同じ両生類なのでうるうるとした目をしています。)まだ、あまりえさを食べません。ゆるゆると動いています。
 とのさまがえる、あわてるとまたまちがったことをしたりするから、ゆっくりと春の空気をあじわってね。近くではヒガンザクラが満開です。でも2月はまだ寒い、春までもう一歩です。

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ほわほわひつじ

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「ほわほわひつじ」
こどものとも年少版3月号
池谷陽子 さく
福音館書店 本体389円

外は雪です。いいえここ何日も寒い日が続きますが、今日の千葉では青空の良いお天気、ただ寒いです。
この絵本のなか描かれているのは、冬で雪がすっかり積もって軒にはつららが下がっています。そういえばつららみないなぁ!現実でなく絵本のなかでの話です。
まあちゃんの冬の日、羊は丸々としていて、毛はもこもこしているので手をつっこむとフワフワの暖かさです。まあちゃんのところには羊は2匹メリーさんとチャカチャカです。
 羊の暖かい毛のなかに手もなにももぐらせて、でも春になると羊は丸裸に苅られその毛でまあちゃんはセーターを編んでもらいます。まあちゃんの幸せそうな笑い顔をみると、わたしまでうれしくなってしまいます。


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さばくのジン

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「さばくのジン」
こどものとも3月号
新藤悦子 文
荒木郁代 訳
福音館書店 本体389円

とても身の回りにない風景です。寒暖の差が激しい。広い、ラクダに乗っての移動民族、イスラム圏のこの物語のバックがイメージできない、それくらい遠い国の話だとおもいます。
少年シャーの家族は父さん、母さん5人の兄弟、シャーは末っ子です。母さんはケマンチェという楽器をせおっていて、らくだに荷物をつんで、一家は砂漠の中を進みます。母さんのケマンチェは魔物から一家やラクダたちを守ってくれます。砂嵐がおそってきました。それを切り抜けるのは母さんのケマンチェだけです。母さんはもし身体の調子が悪い時、シャーがかわりをできるようにとケマンチェの引き方を教えてくれました。肩の力をぬいて心をこめてひく、うまくいかないときは空の星をみて、ココロを込めてひくことを教えてくれました。
 旅にでかけます。母さんの身体の調子が悪いので今回はシャーがケマンチェをひきます。猛烈な砂嵐がやってきて、なにもかも飲み込もうとします。シャーはかあさんのかわりにケマンチェをひきますが、ひどい音がでるだけ、かあさんがその時は空をみることと言っていたのを思い出しました。ジンは砂漠の魔物、体色と姿を変えられる魔物ジン、が現れてシャーをまどわします。でも、シャーは一心不乱でケマンチェをひいてとうとう魔物をおいはらってしまいました。
 細密画で描かれた不思議な世界、でもこの道はシルクロードに、日本でも正倉院まで続いています。

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ぼくはスーパーヒーロー

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「ぼくはスーパーヒーロー」
アスペルガー症候群の男の子のはなし
メラニー・ウォルシュ作
品川裕香 訳
岩崎書店 本体1600円


アスペルガー症候群の人、子ども、最近よく聞く言葉です。一番多いのは残念ながら学級崩壊のようなことが話題になると、「アスペルガーの子どもがいるから・・・」のようにつかわれることも多くなりました。
学級がまとまらない、みんなと一緒に行動する事ができない子どもがいると教師の指導力がうまくいかなくてバラバラになってしまう。それに教室を飛び出す子どもがいるとクラス全体がパニック状態になっていく。そして、言葉だけが一人歩きをしてしまう。
 この絵本はアイザックという男の子を描く事でアスペルガー症候群とはどういう特徴があるかということを描いています。アスペルガー症候群は発達障害の一つです。ただ一口にアスペルガー症候群といっても実は様々な形をとるので(症候群だ)わかりにくいが、いえることはこの人たちは相手のことが考えにくいので、いっしょになにかをするとか、相手の気持ちを考えることが苦手・・・・こう書くとそれはわがままとか育て方が悪いのだと思う人も多く、トラブルが起きる事が多い。そうでなくとも一人っ子(または二人としても)で育つことも多く、時には親もそのまた親も一人っ子だったりして、小さいときから自分一人という育てられ方をするこどもは多い。しかもアスペルガー症候群の子どもは言葉だけをみると非常に達者な子どもが多いし、それもストレートに感じた事(思った事ではない)を口にするので、嫌がられることも多い。
 この絵本にはアイザックというアスペルガー症候群の男の子がどんなふうに感じ、どうしたら授業に参加していけるかが書かれている。最後の解説にかなりくわしく書かれている。私は読んでいるうちに個人的な体験を思い出した。「アスペルガー症候群の子どもは光や音等特定な感覚に敏感」ー少し前に支援学級の先生にどんな本が良いかと聞かれたことがあった。「もこ もこもこ」をすすめたらあの本の中の「ぎらぎら」はダメとのこと。こういう刺激的な言葉はパニックをひきおこすといわれて驚いたことがあった。なるほど!
 こうして、本を読んだだけではわからないことも多いけれど、この絵本は物語風になっていて、読み手の気持ちがアイザックをとおして伝わっていきやすい。道徳ではなく感ずる事を大切にしていくのには本は大きな力がある。そして、実際に交流を深めることで私たち自身が豊かになることを知っていく。

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こんとごん

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「こんとごん」
てんてん ありなしのまき」
かがくのとも 3月号
織田道代 ぶん
早川純子 絵
福音館書店 本体389円


こんとごんはふたごのようです。ちがうのはこんの耳の先がちょっと黒い、それはてんてんがついているからです。ついていないのがこん、ついているのはごんです。ごんが昆虫網をもって、こんは水筒だけです。二人で冒険にでかけます。しばらくいくうちにおきたこと、てんてんにてんがつくと弾みがつきます。どんどんすすんでいくとそらには、いかーいが、たいやーだいや ほんーぼん、こまがとんでいくーごまがとんでいく。もっともひらがなで書かれているので音を聞いただけではよくわからないところがあります。でも、そこに絵がつくとみるまに楽しいことば遊びがはじまります。家族で遊んでみましょう。はいはいーばいばい!

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つかめるかな?

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「つかめるかな?」
ちいさなかがくのとも3月号
大橋政人 文
片山健 え
福音館書店 本体389円

男の子が「つかめるかな?」という疑問でいろいろのものをつかんでみます。見えるものなのに以外と掴めません。固形のものをつかめるかどうかをつかんでみました。形のあるものは掴むことは簡単ですが形のないものはできません。たとえば空気、それから自分のこと喜び、悲しみなかなか難しい、しかたがないので物に置き換えて、それなら掴む事ができます。はなびらも掴むのは難しいけれど何かに置き換える、それはものだったりしますが、置き換えることが難しいもの、感情などの形を掴む事はできません。そのものずばり掴むという行為はできてもはたしてそれは掴むという行為につながるとはおもえません。
 でも、時にはしっかり掴める気持ちがあります。それは自分を知ることで、どうやったら掴めるのでしょうか?第1掴めるかな?という気持。希望は第一歩をつかむことです。
 

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走れ!!機関車

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「走れ!!機関車」
ブライアン・ブロッカ作/絵
日暮雅通 訳
偕成社 本体2400円

土曜日のことでした。近くの文化施設にイベントがありました。幼い子ども対象のイベントなのでしたが家族づれも多く、賑やかでした。そのなかでのこと、両親と妹が一緒の男の子、入って来るなりこの本を見つけました。あとはどうでもよいらしくこの本を抱えて離しません。父親の賛成もあって買ってもらいました。次にまた、この本を欲しいといった男の子、なかなか母親が「うん」といいません。でもねばってOKでした。どちらの男の子も学齢前、聞いてみると4歳と5歳でした。ちょっと難しいのではないかと思ったのですが、2人共鉄道ファンなのでしょう、それくらいこの絵本はインパクトがあります。大型の絵本、表紙は機関車の正面の絵が真中に、裏表紙はその機関車の側面、6人の男たちがみがいたり油をさしたりしています。レトロっぽい、ほんとにこんな機関車が走ったのかしらとおもうほど装飾ぽいけれど力強く走っているようすが伝わって来ます。乗り物好きの子どもだけでなく、おとなの好奇心も充分にそそられます。
 1896年ある家族がアメリカ大陸の東、カルフォルニア州サクラメントから西、カルフォルニア州サンフランシスコへ旅をします。その時乗った大陸横断鉄道のことが描かれています。時代はリンカーンの時代南北戦争のころです。東から西にセントラル・パフィク鉄道会社と西から東へのユニオン・パシフィック鉄道会社、二つの合流点はユタ準州のプロモントリー・サミットが選ばれました。この鉄道がひかれるまでの社会の背景、そして、その機関車そのものが走る様子が描かれています。機関車がどういう原理で動くかということ、そこに携わっている人びと(機関士とか)のことが時にはユーモアいっぱいに描かれているのは楽しい。後のページにくわしく書かれている解説もたっぷりと書かれています。この工事をした人びと、新しい人たちをつれてきたということ、一方先住民を抑圧したことなども書かれていて、しっかりおとな読みができました。こうだいな土地をこの機関車に乗ってわたしもまた、旅をしているような気持ちになりました。
 買っていった男の子、いまは絵をながめているだけかもしれないが、その小さな心の中では好奇心が渦巻いていることでしょう。

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スマート

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「スマート」
ーキーラン・ウッズの事件簿ー
キム・スレイター作
武富博子 訳
評論社 本体1400円

ぼくは母さんと父さん?と兄さん?と住んでいる。父さんにも兄さんにも?をつけたのはほんとうの父さん。兄さんではないからだ。ほんとうの父さん、兄さんでないからといって嫌っているということにはならない。けれどトニーはぼくにも母さんにも気に入らない事があると暴力を振るう。兄さんのライアンはトニーの子どもで一日中ゲームをしている。どっちもぼくは嫌いだ。ぼくは中等学校の9年生(日本でいると中学2年生くらい)学校へいくのは好きだけれど、嫌いな先生もいるし、嫌いな勉強もある。ただぼくは将来イブニング・ポスト新聞の記者になるつもりだ。だからなんでもノートに書いている。将来記事を書く能力を認めてもらうために、なんでも書き留めておくことにしている。 
 ジーンさんがベンチで泣いていた。ジーンさんはホームレスのおばあさんだ。声をかけたらジーンさんは川に浮かんでいるぼろきれを指差した。けれど、ぼろきれと思って川をのぞきこんだらそれはぼろきれでなく人だった。昔、消防隊で活躍したコリン、けれど英雄になったコリンは大やけどと心に傷をおってやっぱりホームレスになってしまった。警察はあやまって川に落ちて死んだといったけれど、ぼくは殺人だと思う。ぼくはなんでもノートに書いていたけれど、文だけでなく絵も描く。コリンさんは殺されたのだ。ぼくは犯人をみつけようとおもった。
 この物語には場所や人の固有名詞がたくさんでてきて、この物語に厚みをあたえています。事件の始まりの川、ノッティンガムの街の様子、人気のテレビドラマ、なによりもキーランが尊敬している画家ラウリーとその絵のこと。登場人物もキーランの学校のクレーン先生、ウガンダからの転校生カーワナ、そしておばあちゃん、どの人も個性的で魅力的だ。
 トニーにおびえてキーランのことをちゃんと考えられなかった母さんにおばあちゃんは言う。「人間って、誰かといっしょにいないと生きていけなって思う事もあるんだよ」「でも、覚えておくんだよ。本当はいつもたよりにできるたったひとりの人間は、自分自身なんだってね」P294より
 読者はキーランに特定の固有名詞はつけられていないけれど、たぶんアスペルガー症候群とよばれる少年なのだと思うかもしれない。そのことについて、作者は学校で長く働いていて、キーマンのような個性的なものの見方をする子どもたちをたくさん見ていたにちがいない。読者がそれをどうとらえるか、社会のやっかいもの、困った人、かわいそうな人。私はとても興味深くこの本を読む事ができた。そして、この人たちが絵を描くことがすぐれているという特質を考える。豊かなイメージ=絵、これは私の課題にしたい。

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紅のトキの空

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「紅のトキの空」
ジル・ルイス=作
さくまゆみこ=訳
評論社 本体1600円


物語の始めから最後まで文から立ちのぼる熱気にあてられっぱなしになって読んだ。その熱気というのはこの物語の主人公スカーレットだったり、母親だったり、スカレットの里親になったルネやその夫のシーオだったり(この家族が一番あたりまえにある家族のかたちか)、魔女といわれているマダム・ポペスク、どの人をとっても尋常ではないように思える。主人公スカーレットは12歳で肌は褐色、会った事のない父さんと同じだ。弟のレッドは実年齢は8歳だけれど4歳位にしかみえない。肌の色は白、オレンジ色の髪の色をしている。母さんも白い肌、薬とタバコが片時も離せない、もちろん子どもたちの世話もできなく一日中タバコを手に家の中にいる。幼くて自閉症でアスペルガーのレッドは鳥にしか興味を示さない。だからこの家の主婦はスカーレットだ。家をきれいにして、食事をつくり、レッドのめんどうをみて学校に行く、尋常ではない生活だけれどスカーレットにはなにものにも変え難い生活だった。それは3人でいられるということが理由だ。ベランダの隙間にリトルレッドが巣をつくり卵を産んだ。レッドのためだけでなく、スカーレットはこの卵から孵るヒナを守る事が家族を守る事だと思っている。それは自分自身の存在にかかわることだ。けれど、母親のタバコの不始末から火事になり、3人は別べつに、母親は入院、レッドは保護施設、そして、スカーレットはルネとシーオ一家のもとに一時ひきとられることになる。このままではレッドといっしょに暮らす事にはならないとレッドをひっさらって逃げる決心をして、魔女といわれながらも傷ついた鳥の世話をしているマダム・ポペスクにかくまってもらうように頼み連れて行く。スカレットはルネとシーオ一家と暮らすなかで、自分の渇望だけでなく、少しづつ客観的に考えることができるようになる。
 登場人物のどの人をとっても描写がしっかり描かれているので、読む人は引き込まれてしまう。「家族」この深くて心を包み込むもの、でも深く傷つけあうものでもある。この物語のなかにはいろいろの家族の形がでてくるので、読む人は自分と置き換えて読む事ができる。スカレットの絶望感と渇望と望みが熱気のなかに胸にせまってくる。
 ありきたりの疑問、家族ってなんだろう。血の繋がりだけが家族ではない、とすると!

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塩田の運動会

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「塩田の運動会」
那須正幹 作
田頭よしたか 画
福音館書店 本体1500円

この絵本の語りの子ども田所正一、山口県防府市立中関小学校4年生です。防府市は昔塩田で栄えていた街で1997年4月塩の専売制が廃止されるまで100年の歴史をもっています。その後自由経済のもと専売制がなくなり、塩はどこでも買えるようになりました。それにともないかっての塩田は再開発で住宅や工業団地に姿をかえていきました。正一が出かけようとしている所もそのひとつ中関の塩田のあとの広い空地です。そこでこの街の人たちが町内大運動会を開こうとしています。
 塩は生きていくのに欠かせないものです。外国のように岩塩などがとれない日本では海の水から塩をとってきました。有名な話に武田信玄と上杉謙信の話があります。私が塩に興味をもったのは千葉市にある加曽利貝塚に行ったときの事です。地層におびただしい貝が埋まっています。それも小さい貝殻です。おそらく昔は小さな人がいたのだと言った私の言葉は皆に笑い飛ばされてしまいましたが、今は地形もかわってわからないけれどとった貝を川沿いに運び、それを煮詰めて塩をとったのではないか、その貝が捨てられていて貝塚の地層から見えているのだという説でした。なるほど、それにしてもそんなに大量の塩はどうしたのか、塩の採れない長野の地へ運んで替わりに鉄平石を持って来て矢じりなどにつかった、この説は私には驚きでした。はるか昔縄文時代?に交易があったという事実です。
 塩の製法と歴史が描かれています。そしてその間に50年前の最後の町内大運動会の様子が描かれています。歴史は淡々と語られていて、そのページの間に描かれている、おとなもこどもも夢中になった運動会の熱気が迫って来ます。残念なことにその熱気は戦争と近代工業化でなにもかも失ってしまい、いま、またそれを語りつぐ人も歳をとってきました。この本の文を書いた(正一かもしれません)作者は1942年生まれ、原爆2世です。絵を描いている画家は1950年生まれ、そして、この絵本を編集したMさんはこの絵本が最後の仕事、これで退職とのことです。
 高度成長という時があって、どこの仕事場でも次の橋渡しがうまくできない、50代がうすく、経験が継承されていってるとはいえません。すごいスピードで生活が変わっていきます。かって山口の中関に塩田があった。(そして、もうひとつ日本人にはきってもきれない米がある。)人の営みや生活は積み重ねと継承です。そのなかで時々若い世代が飛躍的にすすむ、その勢いで新しいものが生まれていく、残念ながらそれがうまくいっているとはかぎらない、Mさんから送られて来たこの本に添えられた手紙に「多くの若いひとたちにこの本を手にしてもらえるよう、お力添えを・・・」とありましたが、本を世におくるということはこういうことなのだと思いました。

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ふたばからのおたより  -1月―

       
 
              病気の日

 1月の半ば、思いがけずインフルエンザに罹った。土曜日の夜になって急に熱が出た。週初めに仕事の予定をいくつか入れていたので、とにかく1日で熱を下げようと、じいっと寝ていた。でも月曜の朝になっても下がらない。腰や腹まで痛みだした。解熱剤をもらって早く下げようと、医者に行った。
「では、インフルエンザの検査をしましょう。」 焦った・・・。予防注射もしていたし、まさかインフルエンザとは想定外。しまった!!
「いえ、検査はいいです。」と私は、あわてて首を振る。「そういうわけにはいきません。」ピシャリと医者は言って綿棒を鼻に突っ込んだ。見事A型だった。
 予定キャンセルの連絡を入れ、母の世話を旦那に頼み、再び布団に潜り込んだ。枕に頭をつけて耳を澄ますと、平日の日中の生活の音が遠慮がちに聞こえてくる。意外に静かな時間・・・。「病気の日」は不思議だ。生活のど真ん中から、ちょっとはずれ、日常から滑り落ちた時間に落っこちたみたい。
 樹村みのりさんという漫画家がいて、その作品にも「病気の日」という短編があったな、と寝ながら思い出した。樹村みのりさんは学生時代に見つけた漫画家で、作品は少ないのだが、10~⒓歳くらいの女の子の気持ちを拾いあげた小品がとても好きだった。未だに何冊か大切に持っている。この「病気の日」も、やっぱり小学生の女の子の心の風景をなんでもなく描いている。病気が治りかけて、おまけのように学校を休んだ1日、
いつもより少し優しい時間が女の子を包んでいる。
 そう、子育て中も似たようなことがあった。突然熱を出した子どもに、もうどうしようもなく、職場に休みの電話を入れる。そんなことが何度かあった。受話器を置いて、ああ、休みがもらえたとほっとしたとたん感じる、静かな解放感。カーテンをあけると朝の暖かな日差しが畳の上まで射しこんできた。子どもは静かな寝息をたてている。その横に座り、思いがけずできた時間の中で、小さなお雛様を作った日もあった。
 結局インフルエンザで3日間休んだ。水曜の夕方に治癒証明をもらい、木曜日から職場復帰、そうしたら今度は旦那がインフルエンザだって!!
 あさっての土曜日に予定している小さな映画会のチラシです。急なので無理とは思いますが、もし関心のある方がいらしたら、連絡ください。
                     (の)
P1010125


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ヤマネコ毛布

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「ヤマネコ毛布」
作・画 山福朱美
復刊ドットコム 本体2000円


ヤマネコはハリネズミに宣言しました。「旅にでようとおもう。」キッパリと。驚いたハリネズミ、説得してもヤマネコの決意は固いとハリネズミは悟りました。そこで、針と糸を買ってきて思い出を刺繍してはなむけにしようとおもいました。猿は木から木へとびゅんびゅんと渡った楽しかった思い出を刺繍しました。クマのかあさんはよくお昼寝に来たヤマネコのことをおもいだします。トラとヤマネコは親戚のように良くきました。カワウソ、オオカミ・ホレおばさん・トリ・ノウサギ・いやだと言っていたシマリスまで、みんなの刺繍が集まりました。出発の日皆の刺繍された布を縫い合わせてできた毛布です。シマリスはまくらをもってきました。たくさんの思い出のつまった毛布、お日様のように暖かい毛布にくるまってヤマネコはねむったそうです。
 ぶっきらぼうなヤマネコと森の仲間たち、楽しかった思い出が荒削りの温かみのある木版画、素朴な力強い木版で描かれています。旅立ちのブレゼンとに贈りたい絵本です。


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