2017年9月18日 (月)

キジムナーkids

Kids
「キジムナーkids」
上原正三 
現代書館 本体1700円




読むのにひどくつらい本だった。どう紹介したらよいのか迷いに迷ったけれどやっぱり書こうとおもったのは昨日のニュースだった。10代の少年がガマに入って乱暴した、遺骨まで。「心霊スポット」などと言っているとのこと、新聞を通してなのでほんとうのことはわからないけれど、新聞を読んだ時はおもわず絶句した。少年達は働いている。どんな育てられ方をしたのかな?2000年前後に生まれた子どもたちだ。
 この本は作者の自伝的小説とされている。1937年沖縄生まれ、シナリオライター。ウルトラマンのシナリオを手がけている。物語は熊本に疎開していた少年が家族で沖縄中城村の久場崎沖にきてDDTの洗礼を受けることからはじまる。小学5年生ハブジロー・ポーポー・ベーグァ・そしてぼくハナー・もうひとりサンデーがいる。サンデーはなにもしゃべらない。学校にもいっていないし、年もわからない、家がどこにあるかもわからない、ポケットにはいつもアメリカのタバコをしのばせている。少年たちはいつもおなかをへらしていて、栄養失調。飲み水はボウフラがわいているため水、だからマラリアが蔓延している。もちろんシラミやノミがいるのはあたりまえ、一番手っ取り早く物を手に入れる方法はアメリカ兵にたかることだ。これは沖縄でなくともいわゆる本土で当たり前にみられた光景だ。そして、沖縄と同じように広島も長崎も空襲で家族をなくした子どもたちのあらゆるところで見られた光景だ。これでもかこれでもかとその子どもたちの描写が続く。けれど決して悲惨と絶望ではない。どうしてちがうのか?一番大きなことは沖縄の人たちは負けない、あきらめないということかもしれない。少年たちは両親や兄弟たちが殺されるのをみている。けれど命がけで自分を助けてくれた人がいたことも知っている。
 この物語が私の胸をうつのはうそがないから、いいえ、うそがあるから。生きて行く為にうそをつく、ごまかすし、盗みは当然、でも自分には正直に生きていこうとする。それはなかなかできないことだ。裸になってしまわなければ生きていけなかったのた。少年たちは裸になれるギリギリの年齢だったからかもしれない。
 作者は「戦争が終わってほっとするまもなく戦後の混乱に巻き込まれた。だけど動じることはなかった。それはおそらく透視能力を身につけていたからだとおもう。その魔法の目で、一人ひとりがはるか彼方に色とりどりの光を見つけ、その光をつかむために走り出していた。ーあとがきからー」
 でも、いま心霊スポットなどという禍々しい物をつかむためにガマに入って狼藉をする少年がでてきた。なにをどう考えたら良いのか、もう一度この本を読んでみたいとおもう。
 

2017年9月17日 (日)

じゅう じゅう じゅう

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「じゅう じゅう じゅう」
こどものとも0.1.2. 10月号
あずみ虫 さく
福音館書店 本体389円
子どもたちが好きな?ホットケーキと目玉焼きにコロコロにんじん、ウィンナーもあります。焼ける音からつぎのページではお皿にのせられています。おいしそう。裏表紙には子どもの前にそのお皿がならんでいます。幼い子どもたちは食べものが描いてある絵本が好きです。ただひとつひとつ聞いてみるとアレルギーの子どもがいて卵は食べられなかったリ、やっぱり昔から人参が苦手な子どもがいます。でも、あまり絵が具象的でないせいか、おとなが思う程そこは割り切っている、食べられない食べものが描かれていても、食べものの本は人気があります。食べるということは生物がもっている基本的な欲望だからかもしれません。この絵本ではひとりでいるのがちょっと気になりますが、食べられないものが描かれているからといって本がきらいではないのは、食べる時のうれしさがが刷り込まれていて、孤食のつまらなさことすら気にはならないようです。

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「おにぎり」
平山英三ぶん
平山和子え
福音館書店 本体900円


華やかな食べ物が描かれているのが多いわりにこのシンプルな絵本も人気があります。おにぎりができるまでの絵本です。絵を描いている平山和子さんの絵本に「くだもの」福音館書店刊がありますが、”さあどうぞ”と子どもたちに呼びかける同じ手が描かれています。そして、やはり子どもたちに呼びかける言葉”ほらできた””たくさんできた”など。そして、ごはんはおいしそうなおにぎりになります。おにぎりが魔法のおにぎりになります。”はい、どうぞ””いただきま〜す”母がつくったおにぎりはまん丸でした。

2017年9月16日 (土)

海のかたち

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「海のかたち」
ぼくの見たプランクトン
たくさんのふしぎ10月号
吉野雄輔 文・写真
福音館書店 本体667円


台風がくるという。明日あたり東の方へもむかってくるという。台風が去った後秋が訪れるのだろう。台風そのものは目に見えない。風の強さとか雨の降り方とか、現象として認識される。それは海にも言えそうだ
とくに海の中、人の目では見えないものがたくさん蠢いている。陽のあたりかたとか、光の反射とか、風が動かす波、でも海の中にもたくさんのものたちが生きている。そのなかでとても不思議な形をしているけれど、人の目ではみえないもの、プランクトンのことが写真をとおして描かれている。プランクトン、この本のぺージをめくっていろいろなプランクトンの写真を見ると、ほんとに不思議なものたちだ。プランクトンは自分で泳ぐことができない。漂っている、だから浮遊生物、ギリシャ語では放浪者という。(18Pから)貝殻のように身体を覆っている物がない透明だ。海の中というか底というか、いることが多い。イカとかヒラメとかヒトデとかカニ、エビ、タコなど、かれらはみんな水に抵抗がない丸い身体をもっていて、そういえばみんな小さな丸い目をもっている。プランクトンもその幼魚も透明な身体を持っているものが多い。
 台風がきた時、海の中はどうなっているのでろうか。この透明な生き物たちはじっとしているのだろうか。自分の方から動くことはなくいつも漂っているという浮浪者たち、こんな生き方もよいかもしれないなぁ。

2017年9月13日 (水)

エンリケタ、えほんをつくる

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「エンリケタ、えほんをつくる」
リニエルス作
宇野和美訳
ほるぷ出版 本体1500円


見返しには本棚から本をとって木陰で読む”本はもちはこべるうちゅうだね”とエンリケタが猫のフェリーニ言っています。エンリケタはママからすごい色鉛筆のセットをもらいました。さぁ!これでお話を描こうと思います。まずタイトル「3つのあたまと2つのぼうしのモンスター」なかなかいいね。ーよる、エミリアはベッドのなか、すきすきちゃんもいっしょ。暗くなるとなんだかへんな音がしますーこんなふうにエンリケタの物語はすすんでいきます。本の端にエンリケタのお話をつくっているようす。中心にはそのお話が描かれています。この本は絵本となっていますが作者は漫画家なのでいつもの私たちが読みなれている絵本とちょっとちがいます。なかなか新鮮でおもしろい。わたしはすっかりお気に入りの本になりました。エンリケタは子ども、想像力豊かな子どもです。もちろん描いているのはおとななのですが、読んでいるうちに私も昔こんなことして1人の時あそんだっけ!と思い出しました。そのままの気持ちを持ち続けていたら、私も偉大?!な作家になっていたかも。でも残念ながらどこかにおいてきてしまったみたい。でも、時々こういう楽しい本にであうと、エンリケタのように元気がでます。
 (ところでリニエルスの大親友のデザイナーのパンツがあたると帯に書いてあります。応募してみたら!!)

2017年9月11日 (月)

森のおくから

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「森のおくから」
むかしカナダであったほんとうのはなし
レベッカ・ボンド作
もりうちすみこ訳


表紙に描かれているのは木の影から何かをうかがっている男の子、その後ろや草むらにはいろいろの動物の姿が見えます。かくれんぼをしているのでしょうか。(私の好きな「もりのなか)を思い出しました。ここはカナダオンタリオ州の深い森に囲まれたゴーガンダの湖のほとりにたっている宿屋のお話です。1914年この宿屋の息子アントニオが5歳になった夏のことでした。暑い夏には時々あることなのですが、森で山火事がありました。大きな火事で泊まっていた人たちも、どんどん燃え広がる炎のなか、もちろんアントニオもみんな逃げました。逃げたといってもどんどん山火事は大きくなっていきます。とうとうみんなは湖の中に入って炎から逃げようと思いました。人びとは水につかってじっと、そこへ森の中からやはり逃げ出してきたものがありました。森に住む動物、生き物たちです。ヘラジカやクマのような大きな動物もウサギやネズミのような小さな動物たちもいます。それらも人びといっしょにすぐ近くでいっしょに、静かに炎が小さくなり煙が小さくなるのを待ちました。とうとう火事の炎は小さくなり動物たちは静かに森に帰って行きました。アントニオも帰ります。泊まっていたおとなも静かに帰って宿屋が焼けなかったことを感謝しながら眠りにおちました。
 絵がとても良い、みかえしに描かれている動物たちも、ページいっぱいに描かれている人びとの食事のようす、働いている人たち、泊まり客の個々の小さな部屋、そして3階にあるいわゆる大部屋、ここでは底辺に近い鉱山の労働者や猟師などが泊まっている。(もっとも訳者はホテルと訳しているけれど、わたしには大きな宿屋のようにおもう、ホビット達も旅をしながら泊まった宿屋、食器のぶつかる音や食べもののにおいがする、時には歌声や楽器の音が聞こえたのではないかと思う食堂)。物語の後半のページは静かに固唾をのんで湖につかっている人びとと鳴き声ひとつあげない動物たち、じっと自然の怒りに耐えているようなシーンはまるで私自身がそのなかにいるように思われます。
 この話は作者の祖父の経験した、(アントニオは祖父なのです。)できごとから聞いた話をもとにして描かれたとのことです。作者には他に「ドーナツだいこうしん」偕成社刊、「あかちゃんのゆりかご」偕成社刊「牛をかぶったカメラマン」光村教育図書刊があります。どの絵本も静かな作風のなかにユーモアと人びとの暖かな生活がながれていて私の好きな絵本です。
 ゴブリン書房さんのおたよりによると作者はこの8月に亡くなられたとのことです。


2017年9月 6日 (水)

きょうはたびびより

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「きょうはたびびより」
ちいさいかがくのとも10月号
とうごうなりさ さく
福音館書店 本体389円


千葉に住んでいる私たちにヒヨドリはとても馴染みのある鳥です。わがやの空き地にある木の枝に果物の食べ残しなどを刺して置くと集まってきます。前にはよく寒くなるとそうしたのですが、今はやめてしまいました。ヒヨドリはうるさくて裏の家にご病人がでたのと、カラスがやってくるので、木はやめてベランダにしたところ今度は猫が鳥を狙い、ある日帰宅してみると鳩が無残になっていて、そんなことでもあり野鳥の餌やりはやめました。ただ冬寒くなると米粒のような鳥の餌をカゴに入れて木に吊るすようにしました。
餌が粒だとカラスは食べられない、木に吊るすと猫には届かないということを発見しました。幼鳥のヒヨドリが3年越しできます。(同じ鳥だと私が思っているだけかもしれません。そのヒヨドリはこの絵本のように綺麗でなくボサボサ頭なので同じヒヨドリと思っています。それに人なっこくてそばまできておせいじにも美声とは言えない鳴き声をあげるのが特徴なので私がそう思っているのです。
 この絵本でヒヨドリの中には渡りをするというものもいることがわかりました。その時集まる場所に千葉の富津岬があることを知りました。一度行ってみたいなぁ。渡りをする鳥としない鳥があるとのこと、理由はわからない、それは人間の手の及ばない範囲でそれもちょっと嬉しい、そして何度も挑戦しながら群れをつくって渡っていく。刷り込まれた行動だとはわかっても頑張れ!と声をかけたくなります。
 秋が少しずつしのび寄ってきます。陽か落ちるのか早くなって、店から帰る頃には暗闇の中に電気がともるのか暖かく嬉しい気分になります。この絵本のヒヨドリは消しゴム版で描き、気がつくと灰色の部分だけでも100種類もつくったとか、すごいなぁ。山口さんの解説も面白いです。

2017年9月 5日 (火)

絵本「よるのおと」の制作

 昨日4日、前にお願いしていた絵本「よるのおと」が「よあけ」と同じ手法で作られたと聞き、どういうことかと偕成社に聞いたところ、説明するからどうぞという話になりご好意に甘えて偕成社にうかがった。
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6月14日のこのブログに感想を書いた「よるのおと」たむらしげる 偕成社刊が入ってきた時、この絵本の基調の青色がすごく綺麗なのに目をみはった。画家はデジタルを十分に使って何冊の絵本を描いている。
音のない世界、少年が池の周りを歩いておじいちゃんの家に行くまで、いわゆる生活音のない夜、音はほとんどというか全然表記がない。ただあとがきに書いてあるように作者は芭蕉の「古池や 蛙飛び込む 水の音」(ページがある)に啓発されて描いたということは良くわかる。その点「よあけ」も漢詩からとられたというとおり、ほとんど説明の文がない。静かに夜が明ける、おじいさんと孫はその中を船を漕いで出かけて行く。どちらも文は説明としてないけれど自然の沈黙の中で、むしろ豊かな物語が展開される。でも一方は水彩のような画風、「よるのおと」はデジタルを生かして制作されていて、色が綺麗なのは単純に印刷技術の進歩と技術の違いとして捉えていた。それが同じような印刷のやり方がされている、これは何としてもどういうことか教えてもらわなければと偕成社に申し込んだ。快く広松編集長が話してくださるというので、それなら何人かに一緒に勉強してもらおうと、これも快諾してもらえた。

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(クリックすると拡大できます)
この絵本制作の共通のところ、「かきわけ版」いうのだということ、ただ違うのは「よあけ」が手仕事「よるのおと」はデジタルとのこと、そして、手仕事でできる印刷の職人さんはもういないということだ。広松さんは一枚一枚、一場面ずつ色の三原色から始まって色を重ねて作られる方法を説明してくださった。
 私はよくお客様に最近の絵本は本当に綺麗になったと話をする。強い色はもちろんでも、淡い中間色なども原画に近くなっている。(もう一言・・・墨色がいいー色を引き立てる)
 一緒に行った店の「絵本の会」の人はもちろん、こういうところにほとんど行ったことのないという図書館の人たちもとても勉強になったと言っていた。
画家は命を削って描き、編集がより良い本の形に位上げて行く、優れた絵本の中にある感性と時間とエネルギー、さあ!それをどうやって子どもたちに届けようか・・・私も考えなければ!!
 広松様はじめ快く引き受けてくださった偕成社の皆様どうもありがとうございました。

2017年9月 3日 (日)

エルマーとブルーベリーパイ

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「エルマーとブルーベリーパイ」
ジェーン・セアーさく
シーモア・フレイシュマン え
おびかゆうこ やく
ほるぷ出版 本体1400円


妖精のエルマーが住んでいる家はパイを時々作ります。冷凍パイではありませんよ。ちゃんとパイ生地を伸ばして作ります。今日はブルーベリーがたくさんなったので摘んでブルーベリーパイです。エルマーの大好きなパイです。甘くてとろりとしていてね。お腹いっぱい食べたけれどまだ残っていたので、明日の朝を楽しみにして寝ました。ところが朝起きて見ると、みんなですっかり食べてしまったあと、家族はちがうパイを食べますが、エルマーはなんとしてもブルーベリーパイがたべたい。いろいろと頼んで見ますが、残念ながら妖精は人間には見えないし、声も聞こえない。あんまりがっかりしてお皿から出るときに魔法の布で足を拭かなかったので足跡をつけてしまいました。エルマーはそれを見て知らせる良い方法を考えました。
大成功です。!妖精のエルマーの表情がとても可愛い。そうだ!私もパイではないけれどジャムがあった。明日の朝食はご飯でなく、パンにブルーベリージャムをつけて食べよっと。
 9月はおいしい食べ物の絵本を紹介します。食欲の秋ですから!

2017年9月 2日 (土)

お知らせ

      rain今日2日の「えるふ夏のお話し会」は台風のため一週間延期です。
      flag9月9日(土)になります。時間は変わらず7:00からです。

2017年9月 1日 (金)

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「て」
こどものとも年少版10月号
とのむらせつこ さく
福音館書店 本体389円

手をあんまりしみじみ見たことがなかった。手に限らず自分自身の体をあまりしみじみと見ることはなかった。特に若い時には。それをしみじみと見る時は、何らかの形でマイナスの時だ。病気をした時、けがをした時、その人が亡くなってしまった時だ。「て」、私自身の「て」を見たのは店をすることになって自動車の運転免許書を取りに教習所へ通い始めた頃、右手の指、小指から始まったのだけれど第一関節が痛みと同時に腫れた時だ。リュウマチではないかと病院へ行った時、そうではなかったので気にしないようにしたけれど、痛みには困った。あまり長い時間ボールペンや鉛筆が持てない。ただいつも痛いかと思うと時々でそうでもない。そのことはいまでも変わらない。どうなっているのかとじーっと手を見る。わからない。
 この絵本の家族の「て」大小様々、どの「て」もそれなりにがっしりとしている生活者の「て」だ。でも大人が作業している時の「て」はまた、随分違うと思う。人と人をむすびつける「て」、それを通して血が流れ込むような気持ちになる。
 母の手は綺麗だった。ふっくらと色が白くて、指先が細かった。難病になって注射のあとだらけ痣だらけの腕、でも手は細っそりと生きていた。時々母のことといえば「て」を思い出す。


ごちそうの木

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「ごちそうの木」
タンザニアのむかしばなし
ジョン・キラカ作
さくまゆみこ訳
西村書店 本体1500円

アフリカ・ケニアのお隣の国タンザニアの昔話が絵本になりました。アフリカの昔話は時々語る人がいて聞く機会があります。日本からは遠い国ですが、意識の中には少しばかりの知識があって、そのくせほとんど知らないのはどうしてからかと思ってみました。新聞などのメディアをとおして、本から知るということが多いのは、まだまだ少ないとはいえ絵本などが出版されているからと思い当たりました。作者の本も私は初めてではありません。岩波書店からだされていた「チンパンジーとさかなどろぼう」を面白く読んだことをおもいだしました。どろぼうがやめられないチンパンジー、紙の質がちがうのでこの本のように鮮やかな色づかいの絵本ではありません。なんともまぬけな?おおらかなおはなし、でも、この本もそうですがひでりで食べ物が手に入らない、アフリカといえば人種差別と、飢餓、内戦、なんだかいつも悲惨なことを聞くことが多くて、悲しい大陸というイメージが強い、それだけにゆかいな絵本は人々のエネルギーを感じます。
 ティンガティンガ派という独特の手法の絵は昔話にはぴったりです。先日来日されて講演会もあったようですが、残念ながら行くことはできませんでした。原画が見たいなと思います。

2017年8月30日 (水)

いえすみねずみ

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「いえすみねずみ」
ジョン・バーニンガム作
谷川俊太郎 訳
BL出版 本体1500円


この家の家族は4人、パパとママと女の子と男の子。ところがこの家に住んでいるのはこの家族だけではない。誰だかわかる?そう、ねずみの家族なのです。ねずみは大家族なので子どもがどれくらいいるかわかりません。それに、毎日の食料を集めるのも大変です。人間の家族が寝てしまってから、そっと集めます。
ともかく見つからないように。でも、ある日とうとう人間に見つかってしまい、ネズミ退治の人がくることになりました。子どもたちはおとなにどうして悪いことをしないのに退治するのかと聞いてみましたが、あんまり良い返事はもらえません。子どもたちは相談して、ねずみたちに”逃げて!”と手紙を書きます。もちろんねずみは子どもたちのいうことを信じて引越しをしました。
 ある夜子どもたちが外を見ていると、ねずみの子どもたちが遊んでいるのがみえました。それで子どもたちは子ねずみのために遊ぶ道具を作ってやります。秋が過ぎて冬が来てもう、ねずみの子どもたちの遊んでいる様子がみられません。それにブランコなども見られません。でも、ある春の夜、男の子はねずみを見ます。もちろん子どもたちはおとなにそのことは一つもいいません。
 バーニンガムは絵本の中にユーモアに包んでそっと子どもたちの主張をいれています。かわらずバーニングの絵本は色がきれいです。

2017年8月28日 (月)

ふたばからのおたより  -8月―

理想と現実と      

 皆さまの中にも新聞等で読まれた方もいるかもしれない。さまざまな事情で親と暮らすことのできない子どもたちの受け皿として、未就学児の75%を里親に委託しようという新たな数値目標を厚労省が発表した。(今現在の里親委託率は全国平均で20%に満たないという状況であるのに・・・) しかも3歳未満児は5年以内に、3歳以上の未就学児も7年以内には目標を達成しようと掲げたのである。
 現場は、呆然としている。施設の現場というより、施設の中で里親啓発を担う立場の現場職員として、掲載された夕刊の一面を見て、ぼーっとしばらく座りこんでいた。幼い子どもたちは、できるなら、その代替となる家庭で養育されてほしい。それは日々、子どもたちを育てている施設職員も同じ気持ちだ。でも、やってくる子どもたちの抱えているものの大きさ、子どもとはいえ人生の途中からの養育であることの難しさを身をもって痛感しているのも職員である。今のように里親家庭への支援体制が貧弱なまま、支援体制が絵空事のままに、足りない里親を増やせ増やせとというのには無理がある。委託された家庭でうまくいかず施設に再入所してくる子どもたちの数は一向に減らない。その一方で、里親家庭で細やかに育てられ、いくつかの山を乗り越えて、しっかりと社会に巣立っていく子どもたちの数は確実にもっともっと多い。保護された子どもたちのその後の人生は、誰が決めるのだろう。いったい誰に決められるのだろうか。突如跳ね上がった数値目標を前に考え込んでしまった。
 ある国で、頻発する児童虐待を何とかしようと法律を厳罰化したという。それでも、虐待は期待していたようには減らなかった。ところがそれから30年経って、突如激減した。何故だろう・・・、結論はこうだった。法律を厳罰化した時代に子どもだった人たちが親になったから。つい先日の研修で語られた、あるエピソードだ。
 そんなささやかなエピソードに希望を見出す。1世代2世代の単位で、物事はゆっくりと変わっていく。数値目標に振り回されず、方向を見定めたら、丁寧にゆっくり耕していきたい、そんな現場でありたいと思う。
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写真は、今年も友人たちと見に行った清里萌え木の村の野外バレイ、今年の演目は「ジゼル」でした。昔の仕事仲間たちと、もう10年近く通っています。背景の暗い木々、飛び交う羽虫、その中に浮かぶ白い群舞、ポツリと急に雨が落ちてくる山の天気・・、そんな夏の夜を今年も味わってきました。
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いつも泊めていただいているペンション、20周年だそうです。帰り際に小さなプレゼントをいただきました。「ファーストトレイン」という、木のぬくもりのする、とてもあたたかなペンションです。清里にいらっしゃったら皆様もぜひ泊まってみてください。

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2017年8月25日 (金)

アリになった数学者

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「アリになった数学者」
たくさんのふしぎ9月号
森田真生・文
脇坂克二・絵
福音館書店 本体667円


作者はある日突然アリになった。アリはどんなふうに感じ、どんなことを思うのだろうか。そのままアリになってそれらのことを体験するなかで書かれたのがこの本だ。「たくさんのふしぎ」らしい本だ。「たくさんのふしぎ」は小学校高学年向けに出版されている科学絵本だ。けれどもいつのまにかおとなのファンが増えて、今では子どもが楽しんで読んでいるとはあまり聞かないし、買いにくるのはおとなの人だ。人気で月刊誌のなかでは毎号かなりの数が売れる。思ったより女の人が多い(若い人はそうでもないけれど、)中年から上の男の人はすこしずつ増えてきているけれど、まだ子どもが生まれて絵本を手にすることが多い。どうしてかなと思うけれど、ちょっと子どもには内容が難しいのかもしれない。科学というと実際的のことのように思うけれど、じつはとても哲学的なのだ。時間がかかる、だからスピードを競う現代社会のなかで今を生きている子どもは、実際的な算数はできるけれど、数学は難しいのかもしれない。
 じつをいうと私は算数が苦手だった。子どもの時「0」という概念がどうしても理解できなくて、それはその頃の私には(小学生)「0」というのは「ない」ということと思い込んでいたから、どうして「ない」ものからひいたり「ない」ものにたしたりできるのかわからなかった。「0」は「ない」ということではなく「0」があるのだ。そのことに気がついたのはずっと後になって、とても尊敬していた先輩が亡くなった事件があった時だった。
 数学はとても哲学的な学問だ。学問というか考え方なのだ。そんなことをこの絵本を読みながら思った。その時ちょっぴりこの作者のように私もアリになったのかもしれない。

2017年8月24日 (木)

お船三部作

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淀川ものがたり お船がきた日」
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「長崎ものがたり お船が出る日」
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「チョプラン漂流記 お船がかえる日」
小林豊文・絵
岩波書店 1600円/1600円/1800円
 1600年代から1700年代、そして1800年代の各々少年を中心に日本の夜明けを描いています。それは国策であったり、まだ見ぬ地への憧れだったり、嵐にあってはからずしもたどりついた「チョプランの地」、そこからの生還だったり、いままで知ることのなかった歴史のひとこまです。異国からきた船、異国へ旅立って行った船、そして、祖国に帰ってきた船に乗った少年を中心に海でつながった風景が描かれています。今のように簡単に記録されているわけでもない、いろいろな書物から掘り起こし描かれた作者の力作に感謝します。特定された場所ですが、それを繋ぐ海と船、そして少年の夢がみごとに描かれています。
 今年の夏は偶然かもしれませんが、海を描いたすばらしい絵本を見ることができました。

2017年8月22日 (火)

サルってさいこう

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「サルってさいこう」
オーウェン・デイビー作
越智典子 訳
偕成社 本体1800円



絵本のなかでも物語のなかでも、昔話のなかでもサルは私たち人間と身近な動物です。しかも昔は人間は単純にサルから進化したものという説が当たり前に信じられていたので、進化の意味もよくわからなった人たちはサルは人間の劣ったような存在と考えられていました。「進化」の意味が良く解っていなかったのです。この本のオビには「サルってなにもの?」と書かれています。そして、「ぼくたちのいとこ」と書かれています。この絵本はその「サルってなにもの?」と生態から歴史から現代のサルのことなど多方面からサルの謎について描かれています。まず人間に近いようで大きく違うところ、人間は2本足で歩くけれどサルは4本足で歩きます。2本足で移動できるということは手があいて使えることです。同じ祖先から生まれたけれどそれぞれに進化した。それは親から子に伝えられてきました。小さいサルもいるし大きいサルもいる。住んでいるところも様々、それによって適応しながら生きてきた。同じところはいろいろとあるけれど一番人間に近いのは社会性があるということかしら?つまり群れをつくって生きているし、身体をとおして仲間同士のきずなを深めたり、意味を伝えあったりする。リーダーをつくったり、競争したりする人間臭いことも多い。えっ!もしかしたら人間がサル臭いのかもしれません。千葉市動物公園はいまこそライオンがいますがサルの動物園として出発しました。(できてすぐ見に行きました一日いてもあきませんでした)また、昔、海水で芋を洗うサルのことが話題になったことがあります。塩味がついておいしい、そしてそのことで興味をそそられたのは始めたのは若いサルで、後から年寄りザルがまねをしたということ、社会の変革はやはり若い人なのです。
 動物をあつかった絵本は写真が多いのですが、この絵本は特徴のある描き方で、作者はイラストレーター、スマートホンのアプリなどで活躍しているとのこと、とても解りやすく楽しく描かれています。訳はやはり私の好きな訳者で物語性のある科学絵本をたくさんだしています。
いま、千葉では農作物を荒らすと、ちょっと厄介者のあつかいをされていますが、なんとかこの愛すべきサルたちと共生していきたいものです。だってわたしの好きな誰とかさんに良く似ているのですから。

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    読書は知識や楽しみも含めて心の栄養を与えてくれます。そして考える力になります。 被災地の子どもたちに本を届けたい、身の回りの子どもたちの環境を考えていこうという、二本の柱をたててボランティア活動をすることで出発しました。 いろいろの方たちの希望と力を持ち寄って、すばやく、やわらかく、活動を続けていきたいと思います。参加される方は参加登録してください。 世話人 坂上・宮田・大山